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[ 本格/新本格 ]
心臓と左手 座間味くんの推理
座間味くんシリーズ
石持浅海 出版月: 2007年09月 平均: 6.00点 書評数: 11件

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光文社
2007年09月

光文社
2009年09月

No.11 6点 パメル 2024/03/20 19:38
「月の扉」で探偵役を務めた座間味くんが、警察関係者から聞いた話から、その裏に隠された真相を暴く7編からなる短編集。
「貧者の軍隊」世直しのために、社会的地位の高い悪人を殺すテロ組織である「貧者の軍隊」。そのアジトで密室の状態で死体が発見された。密室トリックは大したことないが、その裏に隠された真相を解き明かす過程が見事。
「心臓と左手」新興宗教の教祖が、遺言で自分の心臓を食べた者が後継者となると幹部に宛てる。教祖の心臓を巡って幹部が殺し合いを演じる。予想外の展開、それを演出するミスディレクションが光る。
「罠の名前」過激派組織「PW」のリーダーが、穏健派の弁護士を拉致した。警察が踏み込むも、リーダーは窓から逃げようとして落下、弁護士も仕掛けられた罠を警察が作動させてしまったために死亡してしまう。人を喰った真相が印象的。
「水際で防ぐ」在来種を保護しようと活動する団体で殺人事件が起きた。死体の傍らには外来種のカブトムシがいた。社会問題を取り込みながら、捻りの効いた展開が楽しめる。
「地下のビール工場」輸入会社社長が、自宅の地下室で殺されていた。警察はその社長を自家製ビール醸造キットを不正に輸出しているのではと疑っていたのだが。法の裏をかくのは犯罪者とされているが、それを逆手に取った論理の構築が見事。これぞどんでん返し。
「沖縄心中」沖縄の米兵と、米軍で通訳のアルバイトをしていた先生が心中しているのが発見された。米兵は前日、はずみで人を殺してしまっており、自殺であると判断されたが。不確定要素が多い推測で少し無理がある。
「再開」「月の扉」の後日談。ある意味、苦い結末。

No.10 6点 nukkam 2024/02/14 07:50
(ネタバレなしです) 「月の扉」(2003年)で印象的な活躍をした座間味くん(本名は最後まで明かされなかったかな)を作者が気に入ったのか、2007年に彼を再登場させた短編7作を収めた短編集が出版されました。短編であっても過激派組織、テロリストグループ、新興宗教団体、環境保護団体、反戦団体などが関わる作者得意の特殊設定を背景にした本格派推理小説が多いです。一応の決着をみせた事件を大迫警部が語り、座間味くんが隠れた秘密を明かすパターンの作品が多く、その着眼点はG・K・チェスタトンのブラウン神父シリーズの逆説を時に連想させます。真犯人が別にいたというどんでん返しでなくても十分に読者を驚かせるアイデアを楽しめました。気づきにくい不自然さを見破る推理が鮮やかな「貧者の軍隊」、猟奇的な事件とドライなたくらみの対比が鮮やかな「心臓と左手」、ちょっとリドル・ストーリー風に着地する「水際で防ぐ」が個人的に印象に残ります。「月の扉」の後日談的な「再会」は推理もありますが人情談を狙った異色の作品です。強引に納得させてはいますがすっきり感ある解決とは言えないような気もしますが。

No.9 6点 青い車 2017/02/09 19:40
 大迫警視と美味しいものを飲み食いしながら事件を推理するのが基本フォーマットの連作。そのためどれも変化には乏しいですが、すっきりした無駄のない文章やそつない伏線には感心します。やはり白眉は表題作でしょうか。ちょっとした不合理を突っ込むことで真相が浮き彫りになる論理展開が見事な快作でした。

No.8 5点 yoneppi 2013/10/15 19:55
意外と高評価なのは座間味くん人気か。個人的にはたくさんいい店を知っている大迫警視と友達になりたい。

No.7 6点 まさむね 2011/07/22 22:16
 作者の代表作のひとつ「月の扉」の探偵役・座間味クンが再登場する短編集。
 「月の扉」で知り合うこととなった大迫警視と座間味クンは,時折酒を酌み交わす仲に。その席で,大迫警視が組織としては解決した(ことになっている)事件について語るのですが,座間味クンの推理でガラッと事件の姿が変わってしまうという,まぁ,安楽椅子モノですね。
 決して真相究明に特化している訳ではなく,大岡裁き系も,リドルストーリー調もあるのがミソ。小気味よいロジカルな展開でストレスを感じずに読めましたね。短編集としてなかなか高水準だと思います。(「月と扉」の後日談だけは期待はずれでしたが・・・)
 ちなみに,推理とは全く関係ないですが,この2人の酒を酌み交わす情景(海鮮鍋やら石垣牛やら一夜干しやら鶏料理やら炉端焼きやら…)が浮かび,羨ましくてしょうがなかったです。特にアジの一夜干し!そして日本酒!

No.6 7点 E-BANKER 2010/09/23 22:30
代表作「月の扉」で探偵役を務めた”座間味くん”が安楽椅子型推理に挑む短編集。
なかなかいい味わいです。
①「貧者の軍隊」=密室物ですが、いわゆる普通の密室物とは違うテイスト。
②「心臓と左手」=個人的には本作品中ベスト。プロット的にはバラバラ殺人などによく登場するものですね。
③「罠の名前」=カラクリは何となく読めましたけど・・・
④「地下のビール工場」=あの程度の「機械」がまさかそんなふうに使われるなんて・・・
⑤「再会」=これは「月の扉」の後日談的な内容。
他2編の全7編。
話の展開は共通しており、大迫警視が誘った食事の席で、座間味くんが警視から聞く話だけで事件を看破していく内容。
ムダを一切省いたストーリーが小気味よく、なかなかの良作だと思います。

No.5 6点 いけお 2009/10/13 09:08
正当なロジックに加えて、犯人に対しての座間味くんのプロファイルも含んだ推理は読みごたえがある。
ただ、月の扉の後日談には最も期待していたがいまいちだった。

No.4 6点 あるびれお 2009/06/23 05:43
出世作の一つとなった「月の扉」の後日談的な短編も収録されているとのこともあって楽しみにして読み始めた。視点を変えると、一見単純に見えた事件が別の様相を呈してくる、という共通項があるが、それぞれのデキは様々である。それはちょっと動機としてムリムリじゃないの?というのもあったし、なるほど、そう来るかと感心させられたものもあった。ただ、個人的には「扉は閉ざされたまま」のようなガチガチの長編をこの作者には期待しているので、少し物足りなかったのも事実である。

No.3 6点 なの 2008/10/21 23:16
なかなか楽しめました
逆転のロジックは思考実験として面白いものですし
しかし、ロジックに対象の人格を持ち出すのは如何なもんでしょ?
彼(彼女)は、こういう性格と思われる → こう行動したのでは?
って、半ば言い掛かりのような気が

No.2 5点 こう 2008/05/28 21:31
 月の扉で探偵役となった座間味くんが再度探偵役となって登場する短編集です。直接月の扉11年後の描写をした短編「再会」も入っています。
 他の短編集に比べてロジックの光る好短編集だと思います。犯罪事件を扱っていることもロジックが溶け込みやすい要因となっているのではと思います。日常の謎、男女の思惑などを扱った作品よりもロジックに納得しやすいかなと思います。
 ただ科学捜査全盛のこの時代で警察がわからない真相を安楽椅子探偵が解き明かすという構成なので不自然といえば不自然ではありますが泡坂妻夫の亜愛一郎シリーズなどを楽しめた方なら楽しめるのではないかと思います。

No.1 7点 北浦透 2008/01/15 21:57
『月の扉』で登場した座間味くん。大迫警部から語られる「事件」と「料理」と「お酒」の話である。
 テロ、外為法、基地など、著者の言うように、本格ミステリでは敬遠されそうなテーマを扱っている。しかし、アクロバティックな推理を見せる座間味くんの活躍は、おそらく本格好きにはたまらないのではないだろうか。(僕個人は、『驚くべき真相』にあまりひきつけられないので)
小気味よく、テンポもいい。料理もお酒もおいしそうだ。高水準な作品だと思う。


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