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[ 本格 ]
カクテルパーティー
エリザベス・フェラーズ 出版月: 2016年03月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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論創社
2016年03月

No.3 6点 人並由真 2016/05/23 17:09
(ネタバレなし)ミス・マープル不在のセント・メアリー・ミードみたいな地方の村で、毒物による変死事件が発生。その現場にいた関係者、さらにはそれ以外の村の人々によって、事件の真実を巡る仮説が取り交わされるが…。

 登場人物を絞り込みながらもきっちりと明快に配置し、地味ながら緩やかに楽しめる英国ミステリ…と思いきや、終盤で物語が劇的にドライブ! 良い意味で予想を裏切られた。
 解説の横井司氏も書いている通り、××を随所に巧妙に組み込ませたプロットは良くできている。真相の大ネタは存外シンプルなものだがなかなか意表を突くものではあり、一読後、ある登場人物の行動についての叙述を改めて読み直すとニヤリ。
 ホームランではないけれど、ファンの記憶に残る絶妙な二塁打か三塁打という感じの一冊ですな。 

No.2 6点 kanamori 2016/04/08 19:58
ロンドン郊外の村で骨董店を営むライナム家で、女店主ファニーの義弟キットの婚約を祝うパーティが開かれていた。ところが、ファニーが料理したロブスター・パイを口にした招待客たちは、その苦い味に顔をしかめ食べるのを止めたが、一人食べ続けた男性が帰宅したのちヒ素中毒で亡くなる--------。

エリザベス・フェラーズ中期のサスペンス本格。
だれもが顔見知りで穏やかな村に、キットの婚約者ローラという異分子が現れることで、小さなコミュニティーの安寧が壊れ、やがて悲劇が起きる......と書くと割とありがちなストーリーかもしれませんが、重層的に提示される謎が効いていて、なかなか面白く読めました。
犯人はだれか?という謎はもちろんですが、ある”偶然”によって誤った毒殺だった可能性があるために”本来の被害者”がはっきりしないうえに、明確な探偵役を置かない三人称多視点によって、主要登場人物それぞれの思惑で仮説が披露される多重推理風の展開になっているため、誰が最終的に謎を解くのかも分からないのです。最後の最後の”どんでん返し”で、探偵役と真犯人が判るというこの構成は見事だと思います。また、クリスティがよく使用するようなミスディレクションも要所で効いていて、とくに隣人のコリンの行為やローラの終盤の言動には見事に騙されました。
結末の処理にはnukkamさんと同じ感想を持ちましたが、解説で”新本格”について触れているように1955年発表の本作も、”もはや黄金期ではない”本格ミステリということでしょうか。

No.1 6点 nukkam 2016/03/26 09:10
(ネタバレなしです) 1955年発表の本格派推理小説ですが、警察も含めて第三者による捜査や推理はほとんど描かれません。事件関係者同士のやり取りの中に推理場面があるのですが思いつき程度のため、謎解きの進展を感じないまま物語が進行するところは「私が見たと蠅は言う」(1945年)といい勝負です。料理の中から味のない毒(砒素)が発見される一方でその料理には誰の仕業か強烈な味付けがされていて常人ならほとんど食べられないという仕掛けがあり、ほんの少し食べさせて気分を悪くする程度に留めようとしたのではないかという説も出て殺人か事故死かさえもなかなかはっきりしません。盛り上がらないまま最終章に至りますがこの最終章の重苦しさはインパクト大です。ここでは推理による真相説明もありますが、謎解きのすっきり感よりもあまりと言えばあまりの結末に愕然としました。


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