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ミステリの祭典

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sophiaさんの登録情報
平均点:6.94点 書評数:370件

プロフィール| 書評

No.350 8点 でぃすぺる
今村昌弘
(2024/01/21 19:10登録)
ネタバレあり

謎が多すぎるよ!と悲鳴を上げつつメモを取って読み続けましたが、頑張った甲斐がありました。この手の作品はリドルで終わるのが常だと思うのですが、まさかの完全決着で新鮮でした。それに伴いジャンル投票がネタバレになってしまいかねないという、このサイト特有の問題が発生していますね。「ノックスの十戒」が出てきたのにもびっくり。そしてただ出しただけではなく、謎解きの重要なファクターだったのにもびっくり。小学校の卒業を間近に控えた少年少女のセンチメンタルな冒険譚としても読めます。ラストの主人公の心情描写が素晴らしかったです。この方の例のシリーズ以外の作品は初めて読みましたが、作家としての底の深さを思い知らされました。ただ、ジュブナイルというには少々難解に過ぎるでしょうか。


No.349 7点 名探偵のままでいて
小西マサテル
(2023/11/20 22:06登録)
中盤にサプライズを作ったり、クライマックスで犯人を特定する手がかりとしたり、「幻視」の活用が上手いです。連作短編集としては典型的な安楽椅子探偵もので割と楽しめたのですが、第五章「まぼろしの女」の出来がよろしくない気がします。祖父の洞察力がいくら並外れているとはいえ、まぼろしの女が××××だと断ずる根拠がさすがに弱すぎます。さらに作者が刑法や刑事訴訟法に関して勉強不足のように見受けられました。なお本作はこのミス大賞の大賞受賞作ですが、本作と文庫グランプリ受賞作「レモンと殺人鬼」はちょっと似てしまっていますね。


No.348 8点 世界でいちばん透きとおった物語
杉井光
(2023/10/20 00:19登録)
正直な話この作品の仕掛けとその意味は半ばほど読んだところで分かってしまったのですが、それはこちらの事情なのでそれで減点はいたしません。伏線の張り巡らし方はしっかりと本格ミステリーのそれでありますし、遺稿をあるいは父親の影を追う主人公の心境の移り変わりが言葉巧みに描かれた素晴らしい作品であったと思います。最後の鍵括弧の使い方でプラス1点です。本屋大賞狙えるんじゃないでしょうか?

追記 すいません。ノミネートされませんでした。うーん、そうか。


No.347 5点 フォトミステリー ―PHOTO・MYSTERY―
道尾秀介
(2023/10/08 16:44登録)
読者の受け取る力が求められる異色のショートショート集。あっと言わされたのは「土の馬」「今夜」ぐらいでしょうか。作者の意図のよく分からないものもありますが、まあ深く考えるようなものでもないでしょう。簡単に読めて気分転換にはよかったです。


No.346 7点 レモンと殺人鬼
くわがきあゆ
(2023/10/06 18:52登録)
ネタバレあり

終盤に主人公の家庭の秘密が明かされるところが最高潮でしたかね。その後のもうひとつのどんでん返しは無理にもうひとひねりさせた感じがあり、蛇足に感じました。しかしながらサスペンスとして出来がよく、一気に読ませる力がありました。主人公の妹に対する複雑な感情など心情描写もよく出来ています。それだけに最後の着地をもっとしっかり決めてほしかったかなと思います。それと姉妹が××であることを伏せていたところと、ある人物がある人物を自分が勝手に付けた名前で呼んでいたところは多少引っ掛かりを覚えました。


No.345 6点 可燃物
米澤穂信
(2023/10/03 00:35登録)
●崖の下 7点・・・まさか×××じゃないよなってみんな思いましたよね(笑)
●ねむけ 6点・・・これはミステリーでよくある話のような 
●命の恩 7点・・・これが一番出来がいいですかね
●可燃物 5点・・・これはがっかり
●本物か 6点・・・注文数を確認した意味があまりないような

多彩な作風の米澤穂信ですが、唯一苦手なのが警察小説ではないだろうかと思っています。本作はミステリーとしても期待を超えてきませんでしたが、それよりも何よりも主人公の葛警部に人間的な魅力が乏しいです。機械的に捜査をして事件を解決しているだけで、彼の経歴や生い立ち、家庭環境や思想・主義など何も描かれていません。警察官に太刀洗万智のような「エモさ」は必要ないという考えなのでしょうか。どうにも物足りない作品でした。


No.344 5点 一寸先の闇 澤村伊智怪談掌編集
澤村伊智
(2023/09/22 00:37登録)
全21編、分かりやすい幽霊話か意味の分からない話か大体どっちかです。面白かったのは「せんせいあのね」「さきのばし」「はしのした」ぐらいでしょうか。「さきのばし」のような非心霊系の現実的な話がもっと欲しかったです。


No.343 4点 プリズム
貫井徳郎
(2023/09/18 23:35登録)
ネタバレあり

これは難解な作品ですが、要は各章の視点人物の間で疑惑の連環を作りたかっただけの作品ですよね。最後に疑惑を向けられる第一章の男子児童がシロなのは明白ですし。その構造を面白がれるかどうかが評価のポイントなのでしょうが、自分はいまいちでした。それをやりたいがために終盤で急に話が変わるのがどうにも不自然でしたし。やはりリドルストーリーは基本的に合わないようです。


No.342 5点 恋する殺人者
倉知淳
(2023/09/11 19:14登録)
この構成とギミックは著者の過去作の二番煎じでありますし、今回はスケールも小さく真相が脱力系です。サラッと読めるところ以外に特に評価するポイントがありません。しかしこのトリックを成立させるためだけに舞台をヨガ教室に設定したのかなどと考えるとちょっと微笑ましいのです(笑)


No.341 7点 十戒
夕木春央
(2023/09/04 22:25登録)
ネタバレあり

タイトルを「百戒」に改めてほしいんですけど(笑)それはさておき。「方舟」とは違い、最後のどんでん返しがあまり効いていません。最初の解決で終わっていても、この作品の評価に変化はそう生じないと思うのです。「十戒」というテーマもあまり活かされていません。読み終わって「十戒」の内容を思い出せる人はあまりいないでしょう。なぜそのような条項を入れたのかというような謎があったりするとよかったんですかね。それとアリバイに関する記述がフェアなのかどうかはこの作品の問題点だと思われます。

追記 上記を書いた後しばらく考えていて気付きました。そういうことだったんですね。なぜ主人公以外は苗字しか出さないんだろうという地味な疑問がずっとあったんですが納得しました。しかしそれはあくまでプラスアルファの部分であって、分かったからと言って点数をプラスするには及ばないかなあと判断します。


No.340 6点 大雑把かつあやふやな怪盗の予告状: 警察庁特殊例外事案専従捜査課事件ファイル
倉知淳
(2023/08/31 00:16登録)
「片桐大三郎とXYZの悲劇」と同様、どの話も内容に比して冗長で筆がくどいです。ページ数を稼ごうとしているのが見え見えで何とも嫌ですね。作品の本質とは関係ない部分かもしれませんが、どうしても密度が薄くなってしまっているように感じるのです。7割ぐらいの分量に収めてくれていればプラス1点したかもしれません。
主人公の属するよく分からない組織の設定も活かし切れているのかどうか。表題作だけはまあまあ面白かったと思いますが、人間の心理として果たして入れたままにしておくだろうかという疑問が残ります。


No.339 7点 しおかぜ市一家殺害事件あるいは迷宮牢の殺人
早坂吝
(2023/07/24 23:59登録)
ネタバレあり

「迷宮牢の殺人」のグズグズっぷりに立腹しかけていたのですが、それすらも伏線でしたか。キーパーソン死宮遊歩の正体へ迫るヒントが初登場シーンに示されているのは実にフェアです(しかも助詞一文字の違和感という細かさ)。これはこれで面白かったのですが、当初期待していた通り真っ当なクローズド・サークルものとして読みたかった気もしますし、六つの未解決事件のインパクトの強さの余りスケールダウンした印象で損をしてしまったのではないでしょうか。しかしこの作品は誰もがあの新本格作家のあの作品を思い浮かべると思いますが、オマージュなのですかね。米澤穂信のあの作品っぽくもありますが。


No.338 8点 清里高原殺人別荘
梶龍雄
(2023/07/10 19:18登録)
ネタバレあり

「梶龍雄 驚愕ミステリ大発掘コレクション」と仰々しく銘打たれた本作。こんなに面白い作品がよく今まで未文庫化だったものです。別荘(ビラ)に最初からいた秋江と闖入者の勝浦グループの双方が秘密を抱えており、解決編で2つのサプライズが味わえます。目ぼしいトリックはそう使われていないのですが、唯一と言ってもいいとあるトリックが明かされることで犯人の抱える秘密も明らかになるという技巧が冴えます。また本作は本格ミステリーと恋愛小説が融合しているとも言えるでしょう。難点を挙げるならば、章タイトルである程度結末が予想できてしまったことです。それと序盤から頻繁に名前が出る「川光」という人が何者なのかよく分からなかったので早めに説明してほしかったです。いやしかし、勝浦の女性蔑視がすごいことと呉殺しの動機が酷いこと(笑)


No.337 9点 ヨモツイクサ
知念実希人
(2023/07/02 22:04登録)
ネタバレあり

「エイリアン2」様のパニックホラーとしては大変面白かったのですが、ミステリーの観点から言うと、行動を支配されるという設定にした以上何でもありになってしまいましたし、ヒントが多かったので終盤の丸々1ページを使った満を持した真相開示にも「やっぱりそうなのね」という気持ちが勝ってそこまで驚けませんでした。とはいえ××であることまでは読めませんでしたし、改めて章タイトルを見返すとその真の意味が分かる仕組みが優れており戦慄が走ります。このギミックは目次で「エイリアン2」を思い浮かべた私のような人間に特に有効でしょう。それ故にこの話は第三章で終わっていれば奇麗だったのではないかと思うのですが、エピローグは必要だったでしょうか。

追記 再読すると作者が整合性にとても気を遣っている作品だと分かりましたので1点プラスします。


No.336 8点 逆転美人
藤崎翔
(2023/06/13 22:45登録)
若干ネタバレ気味です

以前某所でこの作品のネタバレ(誰々の何々という作品と同じトリックが使われているという)を見てしまい、その作品を既読の私は興味半減の状態で読むことになったのですが、それでも最後まで気付きませんでした。まあミステリーなんて騙されるために読んでいるようなものなので、まだしも幸運だったと言えるでしょう。前例(遥か昔ではあります)があるとはいえやはりよく頑張りましたし、この作品はこの作品でトリックの必然性が高いので賞賛に値すると思います。特に畳みかけの二つ目には参りましたよ。ただ「紙の本でしかできないトリック」という煽り文句も見かけましたが、そんなことはないですよね。


No.335 6点 七人の証人
西村京太郎
(2023/06/01 17:39登録)
ネタバレあり

無駄な描写を極力排したプロット特化型の文章が大変読みやすいです。これは量産型作家の長所ですね。それで内容ですが、これはちょっと簡単でしたね。1年前の事件に真犯人がいると仮定すると、明らかに矛盾した証言をしている人物がいますし、凶器を手に入れることが出来た人物も限られますからね。これはミステリー小説というよりも推理クイズの域であって、トリックらしいトリックもないですし、文章の読みやすさと設定の面白さを加味しても6点が精々です。しかし「殺しの双曲線」もそうでしたが、最後唐突に終わるんですね。「殺しの双曲線」の方はそれが余白を生むという効果を上げていたと思いますが、本作の方は投げ出したように感じられました。


No.334 7点 栞と噓の季節
米澤穂信
(2023/05/16 23:58登録)
ネタバレあり

まず、前作と同じく連作短編集だと思って読み始めたら長編で不意を突かれました(笑)タイトルに偽りなく主要人物がみんな嘘を抱えており、その嘘が暴かれる度に真相に近付いていくという趣向がよかったです。ラストに明かされる配り手捜しの真の動機にも唸らされました。事件のスケールが大きくなった割に結局は身近な人間ばかりで固まっているところがご都合主義と言えばそうなのですけど。


No.333 6点 キングを探せ
法月綸太郎
(2023/05/02 23:06登録)
ネタバレあり

捜査陣が交換殺人に気付いてからそれが四重であることにまで思い至る過程や、中盤の脅迫状を起点とする捜査陣と犯人グループの攻防の図は凝っていて面白いはずなのですが、終盤で付いて行けなくなってしまいました。著者の過去作「怪盗グリフィン、絶体絶命」もやや複雑な話でしたが、あちらは考える楽しさというものがありました。ですので比較してマイナス1点かなあと。


No.332 8点 雷神
道尾秀介
(2023/04/25 00:07登録)
ネタバレあり

二つの大きな取り違えがストーリーの肝となった作品。何と言っても「二本の線」のミスリードが秀逸で、完全に誤った読みをさせられました。途中に挿入された直筆の手紙が中間的な答え合わせの役割を果たしています。著者が過去作「いけない」でやろうとしたことは、本作において完成したのですね。登場人物の心情描写も作品の物悲しい雰囲気とマッチいていて素晴らしい。最後の最後の毒がなければもうプラス1点したかもしれません。どうしようもなく救いのない話だったので、せめて最後ぐらいは希望を感じさせて欲しかったのです。


No.331 8点 屋上のテロリスト
知念実希人
(2023/04/18 23:25登録)
クライムノベルというかテロ小説としては意外とよく出来ていて面白いけど、この物語において主人公の男子高校生が存在する意味はあるのかと思いながら読んでいました。この点がまさに評価の分かれ目だったのですが、最後に上手くまとめてくれましたのでプラス1点します。

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