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ミステリの祭典

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早朝始発の殺風景

作家 青崎有吾
出版日2019年01月
平均点6.00点
書評数7人

No.7 7点 sophia
(2024/07/09 00:39登録)
薄味の連作短編集なんですが、私は好きですね。青春とは薄味で意味のないものであり、劇的である必要はありません。これくらいで丁度いいのです。限られた人数で、限られた空間で、限られた時間で繰り広げられる高校生たちの駆け引きおよび敗者のいない決着が何とも言えず心地よかったです。

No.6 5点 E-BANKER
(2024/05/24 18:04登録)
2016年から2018年にかけて「小説すばる」誌に発表された短編作品をまとめた作品集。
作者らしいロジックの効いた作品が並んでいることを期待。
単行本は2019年の発表。

①「早朝始発の殺風景」=『殺風景』って、まさか「苗字」だったとは・・・。作者らしく、何気ない1つの物証から推理を広げていく展開。なぜ、高校生の「男」と「女」は朝5時台の始発電車に乗っているのか? 
②「メロンソーダ・ファクトリー」=テーマは「赤」と「緑」である。こう書いてしまえば、ミステリーファンにとっては真相は自明なのでは?
③「夢の国には観覧車がない」=「夢の国」の近くにあるという「ソレイユランド」が本編の舞台。で、タイトルの理由は「〇〇〇〇だから」ということ。これはまあ有名な話かも。本筋はというと、何もそんな回りくどいことをしなくても・・・
④「捨て猫と兄妹喧嘩」=とある公園のベンチ下に置き去りにされた捨て猫と、両親が離婚して別々に引き取られた兄と妹のお話。割といい話。でもそれだけ。
⑤「三月四日午後二時半の密室」=「密室」というのは言葉の「アヤ」のようなもの。謎といっても、女子高生がちょっとばかりいたずらした、という程度のもの。

以上5編。最後に締めとなるエピローグ編あり。
緩く繋がった5つの物語。登場人物はほぼ全員高校生。
ということで、オッサンの読むものではありません。どこか甘酸っぱいような、私自身も遠い昔に経験したような、しないような雰囲気をまとった物語。
そこにちょっとした「謎」というスパイスがふりかけてある・・・とでも言えばよいか。

でもなかなか良いですよ。たまにはねぇ。作者らしいロジックも効かせてあるし。
あーあ、帰れるものなら帰りたい。あの頃に。そんな無茶を考えてしまった。
(ベストは・・・特になし)

No.5 6点 虫暮部
(2024/04/21 12:29登録)
 前半3話は何が謎なのか読者に示した後でそれが解かれるのに対して、後半2話はいきなりヌッと真相が突き付けられて世界が反転するところが圧倒的に良い。謎と真相の格差がそれほどたいしたものではないので、“この点が謎だ” と予め読者が心の準備をしてしまうと効果半減なのである。演出の重要性である。

 私も “必ずメロンソーダを飲んじゃう奴” だ。本物のメロンよりあの作り物っぽい “メロン味” の方が好き。

No.4 6点 ぷちレコード
(2023/12/25 22:13登録)
電車の中、観覧車の中、放課後の喫茶店など、見慣れた風景の中に紛れ込む謎を描いた青春密室劇集。
青春特有の悩みや距離感が謎に絡んでくるのが特徴で、あまり話したことのないクラスメイトを電車の中で鉢合わせる、という状況がそもそも謎であるというような、視点を変えることで成立する事件の数々にハッとさせられる。
ラストを飾る「三月四日、午後二時半の密室」は、青春の醸すエモーションがぎゅっと濃縮されている。卒業式を欠席したクラスメイトに会いに行ったところから始まる事件と、新しい関係。刻一刻と変わりゆく日常の中で今しか成立しない刹那性も、日常の謎ミステリにしかない魅力かもしれない。

No.3 7点 makomako
(2022/07/09 19:31登録)
私はこんな小説が好きです。
確かに殺人事件などはなく、ありふれた日常の謎、しかも初めは謎とも思わないことを少しずつ追及して最終的に解明する。これって本格推理小説そのものですよね。
青春小説でもあり、登場人物も感じがよい。
読後感もよく感じのよいお話でした。

No.2 5点 パメル
(2019/06/20 01:27登録)
いわゆる日常の謎を解き明かす短編集。
始発の電車で高校生の男女が始発に乗り込む理由を探り合う表題作、女子高生3人がファミレスで学園祭用のTシャツのデザインを決めながら、ある秘密に思い至る「メロンソーダ・ファクトリー」、高校の卒業式を欠席したクラスメートの家で嘘を見抜く「三月四日、午後二時半の密室」など5編のほかに関係者たちのその後を描くエピローグがついている。
青春は「気まずさでできた密室なんだ。狭くてどこにも逃げ場のない密室」という言葉が出てくるけれど、まさに5編とも、青春の密室の中で気まずい思いを抱きながら相手が隠していることを解き明かしていく。
観察・発見・論理が緻密で、それが単にミステリとしての謎解きに終わるのではなく、人物たち(ひいては読者)の生きている世界の鼓動を改めて伝える仕掛けになっている。
優しく温かで、何とも言えない余韻があり、後味がとてもいい。
ただ、謎自体が小粒すぎてミステリとして物足りないし、青春小説としても・・・。ミステリ小説としても、青春小説としても中途半端な感じは否めない。

No.1 6点 まさむね
(2019/03/21 19:03登録)
 「ワンシチュエーション(場面転換なし)&リアルタイム進行」を謳った短編集。
 舞台は、始発の電車内、放課後のファミレスの席、観覧車のゴンドラの中、公園レストハウス、そして同級生の自宅の部屋の5つ。原則2名(時に3名)の高校生の会話で進行していきます。なるほど「青春密室劇」を観ているような感じ。
 個々の短編の出来栄え自体はマチマチといった印象ですが、全体としては飽きることなく読み進められたし、さりげない伏線の配置と回収や、高校生らしい瑞々しさの表現などは良かったですね。

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