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ミステリの祭典

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早朝始発の殺風景

作家 青崎有吾
出版日2019年01月
平均点6.00点
書評数5人

No.5 6点 虫暮部
(2024/04/21 12:29登録)
 前半3話は何が謎なのか読者に示した後でそれが解かれるのに対して、後半2話はいきなりヌッと真相が突き付けられて世界が反転するところが圧倒的に良い。謎と真相の格差がそれほどたいしたものではないので、“この点が謎だ” と予め読者が心の準備をしてしまうと効果半減なのである。演出の重要性である。

 私も “必ずメロンソーダを飲んじゃう奴” だ。本物のメロンよりあの作り物っぽい “メロン味” の方が好き。

No.4 6点 ぷちレコード
(2023/12/25 22:13登録)
電車の中、観覧車の中、放課後の喫茶店など、見慣れた風景の中に紛れ込む謎を描いた青春密室劇集。
青春特有の悩みや距離感が謎に絡んでくるのが特徴で、あまり話したことのないクラスメイトを電車の中で鉢合わせる、という状況がそもそも謎であるというような、視点を変えることで成立する事件の数々にハッとさせられる。
ラストを飾る「三月四日、午後二時半の密室」は、青春の醸すエモーションがぎゅっと濃縮されている。卒業式を欠席したクラスメイトに会いに行ったところから始まる事件と、新しい関係。刻一刻と変わりゆく日常の中で今しか成立しない刹那性も、日常の謎ミステリにしかない魅力かもしれない。

No.3 7点 makomako
(2022/07/09 19:31登録)
私はこんな小説が好きです。
確かに殺人事件などはなく、ありふれた日常の謎、しかも初めは謎とも思わないことを少しずつ追及して最終的に解明する。これって本格推理小説そのものですよね。
青春小説でもあり、登場人物も感じがよい。
読後感もよく感じのよいお話でした。

No.2 5点 パメル
(2019/06/20 01:27登録)
いわゆる日常の謎を解き明かす短編集。
始発の電車で高校生の男女が始発に乗り込む理由を探り合う表題作、女子高生3人がファミレスで学園祭用のTシャツのデザインを決めながら、ある秘密に思い至る「メロンソーダ・ファクトリー」、高校の卒業式を欠席したクラスメートの家で嘘を見抜く「三月四日、午後二時半の密室」など5編のほかに関係者たちのその後を描くエピローグがついている。
青春は「気まずさでできた密室なんだ。狭くてどこにも逃げ場のない密室」という言葉が出てくるけれど、まさに5編とも、青春の密室の中で気まずい思いを抱きながら相手が隠していることを解き明かしていく。
観察・発見・論理が緻密で、それが単にミステリとしての謎解きに終わるのではなく、人物たち(ひいては読者)の生きている世界の鼓動を改めて伝える仕掛けになっている。
優しく温かで、何とも言えない余韻があり、後味がとてもいい。
ただ、謎自体が小粒すぎてミステリとして物足りないし、青春小説としても・・・。ミステリ小説としても、青春小説としても中途半端な感じは否めない。

No.1 6点 まさむね
(2019/03/21 19:03登録)
 「ワンシチュエーション(場面転換なし)&リアルタイム進行」を謳った短編集。
 舞台は、始発の電車内、放課後のファミレスの席、観覧車のゴンドラの中、公園レストハウス、そして同級生の自宅の部屋の5つ。原則2名(時に3名)の高校生の会話で進行していきます。なるほど「青春密室劇」を観ているような感じ。
 個々の短編の出来栄え自体はマチマチといった印象ですが、全体としては飽きることなく読み進められたし、さりげない伏線の配置と回収や、高校生らしい瑞々しさの表現などは良かったですね。

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