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ミステリの祭典

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zusoさんの登録情報
平均点:6.29点 書評数:228件

プロフィール| 書評

No.88 9点 六人の嘘つきな大学生
浅倉秋成
(2022/03/30 22:48登録)
IT企業の新卒採用の最終選考に残った六人の学生たちの密室劇。
一人の内定を決める課題を会社から出された学生たちが、告発文を交えた暴露合戦を行うのだが、後半になると別の視点から本当の犯人探しが始まる。イヤミス全開の暴露合戦が、最終的には心温まる展開に。これが見事。


No.87 5点 R.P.G.
宮部みゆき
(2022/03/14 22:46登録)
ネット上の疑似家族を巡る事件を扱っていて「理由」の変奏的なところもある。
疑似家族のテーマを語るために、あえてフェア・プレイを破った形でミステリ的な仕掛けを使っている。


No.86 6点 怪盗グリフィン、絶体絶命
法月綸太郎
(2022/03/14 22:44登録)
絵本のタンタンみたいな世界観のもとで行われるドタバタ私立探偵もの。二転三転する展開が論理的で作者らしい作品。


No.85 6点 交渉人・爆弾魔
五十嵐貴久
(2022/02/26 23:44登録)
タイムリミットが迫る中で犯人と爆弾の所在を突き止めなくてはならない。サスペンスの王道のような作品だが、常に予想を裏切る展開が待ち構えているのに加え、奇抜なアイデアと意外な真相が絡み合っている。


No.84 7点
麻耶雄嵩
(2022/02/26 23:40登録)
異郷という舞台を綿密に構築し、そして破壊する手腕の鋭利さが際立つ。
対比・対照の秀逸さも印象に残る。ミステリのエッセンスが詰まっている。


No.83 5点 さよならドビュッシー
中山七里
(2022/02/13 22:48登録)
延々と続くヒロインの独白と少女コミック風のお話作りにいささか食傷したが、終盤それは十分に報われる。前半の伏線やミスリードが一気にカタルシスとなって実を結ぶ終盤は圧巻。


No.82 6点 嘘をもうひとつだけ
東野圭吾
(2022/02/13 22:46登録)
加賀恭一郎シリーズ。バレエ団をめぐる殺人事件の顛末を描いた表題作・他五編は、謎解きよりも人間洞察に長けた加賀のキャラクター造形や、嘘をモチーフにしたドラマ演出が味わい深い。


No.81 8点 告白
湊かなえ
(2022/01/29 22:27登録)
二転三転する真相、新たに起こる事件など各章、異なる類の衝撃が待っている。感情を抑えたドライな口調で緊迫感を煽る一方、あまりの毒々しさが時にどこかユーモラスにも感じられ、その緩急のバランスが読み手を飽きさせない。最大の衝撃は結末だが、嫌な気持ちになるか、清々しく思うかは意見が分かれるでしょう。


No.80 9点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2022/01/29 22:23登録)
殺人犯と間違われた男が潔白を証言してくれる女を必死に探す。発見できなければ、主人公は死刑台に上がらなければならない。
刻々に迫る死刑の時刻を逆表示することで焦燥感を倍加する。大都会の詩情で包んだ傑作サスペンス。


No.79 5点 赫眼
三津田信三
(2022/01/11 22:47登録)
奇妙な吸引力を持つ転校生の住む河原の廃屋に、崖の上からこちらを見つめている新築住宅。裏山へ続く道の先に潜む者の影、路地を歩く後ろにひたひたと迫るものの気配。古典的な幽霊譚が時に本格推理や文体トリックに結び付くホラー短編集。


No.78 7点 ストロボ
真保裕一
(2022/01/11 22:44登録)
写真家を主人公にした連作で、フィルムを巻き戻すように人生を振り返る。第五章「遺影」から始まり、第一章「卒業写真」で終わる仕掛け。
情感豊かな逆成長小説・青春小説であり、さりげない夫婦愛の小説としても良く出来ている。


No.77 8点 兇人邸の殺人
今村昌弘
(2021/12/28 22:41登録)
舞台となるのは、古さを売りにしたテーマパークにたたずむ「兇人邸」。そこに秘匿されている「重要なもの」を回収するのに同行してほしいと依頼を受けた剣崎比留子は、同じ大学の後輩葉村譲らと共に深夜、屋敷に侵入する。しかし、鉄の扉の先で待っていたのは、大なたで人間の首を刈る隻腕の巨人だった。
外部への脱出が困難になるだけでなく、脱出方法によっては巨人を外界に解き放ってしまう恐れもあるという仕掛けがユニーク。死体が増えていく中で、巨人以外にも殺人者がいることが判明、幾重もの謎が巨人の生まれた悲しい過去に結び付く。物語のラストでは意外な展開が待っており、次作への期待も高まった。


No.76 4点 転生
貫井徳郎
(2021/12/28 22:32登録)
臓器移植という難しいテーマに挑戦した意欲作。ストーリーは自らに移植された心臓のルーツをたどっていく形の青春小説。ミステリとしては弱いか。


No.75 9点 冤罪者
折原一
(2021/12/13 23:08登録)
冤罪事件という社会派ネタを本格の視点で再構築すると、こんなにも面白くなると証明した作品。叙述ミステリの達人ぶりがいかんなく発揮されている。


No.74 6点 猫丸先輩の推測
倉知淳
(2021/12/13 23:06登録)
ほのぼのとした風景の中に、人間がそれと意識せずに陥っている落とし穴や、醜悪な面を敢えて取り出してみせる猫丸先輩の視線は、相変わらず健在。
人を食ったような言動など、かなりの曲者ではあるが、不快感は無い。思わぬ結論を取り出してみせられ唸らされた。


No.73 5点 プリズン・トリック
遠藤武文
(2021/11/25 22:40登録)
大胆な仕掛けには好感を持つものの、いざ明かしてみると狙いほど成功しているとは言い難い。個性や人間味に乏しい人物など、小説の熟成度も今ひとつ。
ただ、交通事故を巡る加害者と被害者の葛藤は、社会派として評価できる。


No.72 4点 誘拐児
翔田寛
(2021/11/25 22:36登録)
プロローグこそ目を見張るものの、結局は昭和の推理小説を再現してみましたという程度の印象にとどまってしまったのが残念。
郵便を使ったトリックなど小手先のもののように思える箇所もあり、やや興ざめ。


No.71 8点 密室キングダム
柄刀一
(2021/11/10 22:41登録)
作中に五つもの魅力的な密室を配しつつ、それらをトリックではなく、論理によって解体してゆく過程はまさに圧巻。そしてこの論理の応酬が結末に至って暴く、驚くべき真犯人の姿には鬼気迫るものがあった。


No.70 3点 訣別の森
末浦広海
(2021/11/10 22:38登録)
冒頭からいきなりご都合主義のオンパレード。登場人物たちの行動原理もさっぱり理解できない。場面ごとの盛り上げ方に熱がこもっていることは評価するが、全体としては破綻している。


No.69 7点 第八の探偵
アレックス・パヴェージ
(2021/10/26 23:42登録)
かつて一冊のミステリ短篇集を刊行した後、隠居生活を送る作家。彼を訪ねてきた編集者の目的は、短編集の復刊だった。二人は収録作を読み返して議論を重ねる。
個々の短編は数学的な部類によって並べられ、最後には精緻な構造が浮かび上がる。もちろん、作中作が並んでいるだけの小説ではない。どんな趣向が隠されているのかは、読んで確かめていただきたい。

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