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ミステリの祭典

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作家 中村文則
出版日2014年07月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 zuso
(2023/01/19 23:05登録)
個人が何らかの大きな圧力により、狂気と呼ばれてもおかしくない状態に陥ってしまう状況は、表題作のような戦時中も平時でも変わらない。「自分はいま正気でいるだろうか」と、読後自らに問いかける人もいるかもしれない。
軽妙なタッチで描かれた作品も魅力的であり、一作ごとの作風の違いに驚かされる短編集。

No.1 7点 メルカトル
(2018/11/25 22:05登録)
「一度の過ちもせずに、君は人生を終えられると思う?」女の後をつける男、罪の快楽、苦しみを交換する人々、妖怪の村に迷い込んだ男、首つりロープのたれる部屋で飛び跳ねる三つのボール、無情な決断を迫られる軍人、小説のために、身近な女性の死を完全に忘れ原稿を書き上げてしまった作家―。いま世界中で翻訳される作家の、多彩な魅力が溢れ出す13の「生」の物語。
『BOOK』データベースより。

何だこれは。ミステリではない、幻想小説、寓意小説、官能小説、不条理小説などなどの塊だ。これらの作品は私の脳内に得体の知れない何かを侵蝕させる。それは恐怖、畏怖、畏敬、尊敬、軽蔑といった様々な感情かも知れない。中には全く無意味な小説すら混じっている。無意味さの中に意味を見出そうとするのは難しい。頭が痛い。しかし作者はそれを強要するのが私には腹立たしい。いや、そうではない。私自身が意味不明だと決めつけているだけで、多くの読者はその真意を既に掴んでいるのだろう。私には解らない。とにかく多くの作品が壊れているか、壊れかけている。しかし、どこか欠落している方が美しいと思うのは偏見だろうか。一つ一つの短編の中には確かだが未完成な小宇宙が存在している。その広大で歪な世界は我々を異郷へと誘うであろう。これはそうした・・・


そうした、一篇を読み終えるごとにため息を吐きながらインターバルを取ることしか許されない作品集なのです。

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