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ミステリの祭典

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地図と拳

作家 小川哲
出版日2022年06月
平均点8.00点
書評数4人

No.4 9点 八二一
(2024/01/27 20:11登録)
日本が建国した「満州国」に架空の都市を設定し、そこに関わる人物たちの軌跡を追う。
作者の問題意識、美学、話作りの巧みさが見事に練り合わされた架空歴史小説の傑作。

No.3 9点 糸色女少
(2023/10/27 23:23登録)
中国・日本・ロシアの人々が繰り広げる建設と破戒、理想の模索と現実の闘争の物語である。
奉天の南東、鶏冠山の麓の小さな集落。人々は根も葉もない噂に導かれてこの地に移住し、集落はやがて都市へと発展する。ロシアや日本の思惑も交錯し、この地では様々な企みが絡み合う。題名にもある地図は、作中でも大きな役割を担う。地図に記されるのは地形だけではない。歴史、文化、政治。そうした事象を紙の上に記した地図は、鉄道の敷設と都市の発展にも関わっている。そして、地図に記された人々の思惑が衝突するところに戦いが起こる。
多数の人物が行き交い、一本の川が無数の支流に分かれ、やがて合流し、また分かれてと、複雑に入り組んだ流れをたどる。叙述の力になぎ倒される快楽を満喫でき、国家と都市、歴史と地図への考えが膨らむ一冊となっている。

No.2 8点 zuso
(2023/01/07 23:12登録)
旧満州の架空の都市を舞台に、日中戦争を世界史の中でとらえる視点と、人々の個人史を絡ませて時代性を見事に浮かび上がらせた異色作。
主人公が登場するまでの前史をまるで創世記のように語り、満州に異世界を創り出す才気に引き込まれる。
SF的な新感覚の歴史小説とでもいえる。これからの歴史小説の可能性すら感じさせる。

No.1 6点 虫暮部
(2022/12/08 13:04登録)
 長い。
 しかもこれ、物語の核がどこにあるのか、一向に摑めない。何がどうなれば大団円と言うわけでもなく、例えば第五章から読み始めても第十三章で読み終えても平気そう。過去から未来へ歴史が流れていく中で、ここからここまでを切り取って一つの作品です、とする根拠が見当たらない。全然読み終えた気がしない。

 それ故に(逆に?)、どこからどこまでも続く時間の長さが物語の背後に見えて来る。人がポコポコ死ぬのも、戦争が終わらないのも、まぁそういうもんだ、仕方ない、と思えてしまった。大山鳴動して結論はただ無常。怖い本だ。

 全然ミステリだとは感じなかったんだけど、このミス2023で第9位だから登録してもいいかな?

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