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ミステリの祭典

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午前0時の身代金

作家 京橋史織
出版日2022年03月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点 ぷちレコード
(2024/06/26 22:19登録)
女子学生を誘拐した犯人が10億円の身代金を要求するという事件を、被害者の法律相談に乗っていた新米弁護士の視点から描いている。
クラウドファンディングでの身代金要求という着想の妙に惹かれるのだが、それを実現するためのIT事業者の葛藤もスリリングに描いており、単に流行の素材を利用しただけで終わっていない。
誘拐事件を軸としつつも、次から次へと事件の様相が変化する展開もいい。最後の問い掛けも深く刺さる。

No.2 5点 麝香福郎
(2023/12/20 21:13登録)
弁護士の小柳大樹は、本條菜子から法律相談を受ける。振り込め詐欺グループに関わってしまったという。自首することで話が進んでいたが、菜子はその夜に姿を消してしまう。そして翌朝、菜子の身代金を要求する脅迫状が、IT企業サイバーアンドインフィニティ社に届いた。身代金の額は10億円。それを同社が運営するクラ、ウドファンディングのサイトで、国民から募れというのだった。
被災地復興支援などに有効な、不特定多数の人々の善意を悪用するというアイデアは、現代的な趣向といえるだろう。大樹の上司で事務所の共同経営者である美里千春が、サイバーアンドインフィニティ社の顧問弁護士であることが、さらに事件を複雑化させる。
美里に対する疑問や、大樹自身の過去も絡み、強い正義感を持つ彼の感情が揺さぶられていくところも後半の眼目である。多少納得できかねる点はあるが、これまで見てきた景色を一変させる趣向には驚かされた。

No.1 5点 zuso
(2023/01/07 23:07登録)
クラウドファンディングで10億円の身代金要求という設定が奇抜。誘拐小説の興趣は身代金の受け渡しにあり、どういう風に行うのかが肝となるが、作者は身代金募集に力点を置いて、誘拐の裏側に何があるのかを探っていく。
設定が十二分に生かし切れていない点や、訳ありの家族模様は目を引くが、主人公にもうひとつヒーローとしての魅力が乏しいのが難。それでも語りは滑らかで、真相を追求するくだりは起伏があって面白い。

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