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ミステリの祭典

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八二一さんの登録情報
平均点:5.76点 書評数:397件

プロフィール| 書評

No.317 7点 キマイラの新しい城
殊能将之
(2023/08/04 20:31登録)
石動戯作のコスプレ姿に笑い、カー顔負けの密室談議に唸り、ロポンギルズにおける大アクションに喝采し、堅牢なロジックに脱帽し、最後に用意された島田荘司ばりの大トリックに腰を抜かす。バカミス好きにおすすめな作品。


No.316 5点 サウダージ
垣根涼介
(2023/08/04 20:27登録)
人間の暗部を見つめながらも、ノワール系とは対照的にラテンのリズムでからりと描いたクライムノベル。
愚かで淫らで強欲で、しかも美しい娼婦、DDが強烈な印象を残す。


No.315 5点 カジノに罠をかけろ
ジェイムズ・スウェイン
(2023/08/04 20:24登録)
作者の描くギャンブル界の舞台が、なんとも楽しい。あの手この手を披露しながら、さらに読者にいっぱい食わせてみせる。
フロリダで暮らす元警察官という主人公の稼業もユニークだし、その飄々たるキャラクターもいい味出している。


No.314 5点 幸運は誰に?
カール・ハイアセン
(2023/08/04 20:19登録)
主人公のジョレインをはじめとして、悪漢のコンビ、コンビニの店員、新聞記者、そして住民たちまでもがとにかく個性的で愉快。
田舎町を舞台に、捧腹絶倒のスラップスティックを繰り広げる。


No.313 7点 草の根
スチュアート・ウッズ
(2023/07/16 20:29登録)
弁護士として引き受けざるを得なかったレイプ裁判の弁護、CIAの女性高官とのロマンス、テロリスト集団の暗躍、それを追う刑事など、ストーリーは多岐にわたる。これを結末で収束させる手際はお見事。
作者が米大統領選に関与しただけあって、議員選挙を巡る話がとりわけ読ませる。


No.312 9点 推定無罪
スコット・トゥロー
(2023/07/16 20:25登録)
プロットを実によく練り上げてある。ハイライトの法廷場面に至るまで、検事局内での勢力争いなどを描きながら、サビッチ夫妻や彼を助ける刑事らの心理の綾を浮き彫りにする。
法廷での激しい駆け引きに目を奪われているほど、どんでん返しをくらう。そして先が全く読めないままサプライズエンディング。


No.311 5点 弁護士は奇策で勝負する
デイヴィッド・ローゼンフェルト
(2023/07/16 20:22登録)
作者のコメディセンスは、なかなかのものがあるが物語の底を流れるテーマである父と子の絆や、危機的な状況を切り抜ける反則すれすれの法廷戦術の面白さもある。個性派揃いの脇役も充実。


No.310 6点 炎の色
ピエール・ルメートル
(2023/06/24 20:24登録)
1930年代前後のフランスを舞台にしたサスペンス。
資産家の女性が奸計により資産も邸宅も失うが、数年後、曲者たちを集めて自分を裏切り栄華を極めた者たちに復讐していく。
波乱万丈の変転劇は、ぐいぐい読ませるし後半はコンゲームの連続で楽しめる。


No.309 5点 指名手配
ロバート・クレイス
(2023/06/24 20:19登録)
性格は軽いが頼りになるエルヴィス・コールが、連続窃盗の罪を犯した少年のために奔走する。
二人組の犯罪者が少年を追っており、その手から守りながら彼を警察に自首させるという難しい依頼にコールは取り組むのである。動きの多いも物語の中に、探偵の大人の魅力が光る。


No.308 6点 夏の沈黙
ルネ・ナイト
(2023/06/24 20:16登録)
秘密にしておきたいある夏の出来事。それが何者かの手によって、20年の沈黙を破り、静かに動き出す。出来事の断片は寄せ集められ、一つのものが仕立て上げられる。
決して気持ちがいいとは言えないその物語は、最も知られたくない最愛の家族の元に本という形で届けられる。最後まで沈黙を貫いたのは誰なのか。ラストにやるせなさと希望の光が押し寄せる。


No.307 6点 廃墟ホテル
デイヴィッド・マレル
(2023/06/24 20:11登録)
うち捨てられた廃墟を専門に探検するクリーパーと呼ばれる人々を材にとったところがなんともユニークな本作だが、ホラーサスペンスの文脈が、後半サバイバル調になるあたりのサービス精神もたっぷり。
作者がランボーの生みの親であることをふと思い出させてくれる展開も楽しい。


No.306 5点 ラブスター博士の最後の発見
アンドリ・S・マグナソン
(2023/06/06 20:16登録)
ある科学者の数々の発明で、悪童は人生を「巻き戻し」され、ぴったりな恋人は、「計算」され、死後は夜空の「星」に。
合理的でハッピーな人生が約束された社会で、一組のカップルが試練に直面する。アイスランド発のポップな終末と再生の物語。


No.305 3点 死体と一緒にヴァケーション
ギリアン・ロバーツ
(2023/06/06 20:12登録)
美人教師アマンダ・ペッパーシリーズ第五弾だが、ミステリとしては標準以下の薄味であり、短編で十分の内容だ。
水増しされた分だけ、冗長になり三分の一もいかないうちに、底が割れて先を読む興味が減退する。せめてユーモアが冴えた会話が洒落ていれば救われるのだが、この点でも標準以下である。


No.304 6点 火星の人
アンディ・ウィアー
(2023/06/06 20:07登録)
事故でたった一人火星に取り残された植物学者が、知力・体力・精力の限りを尽くして生き残ろうとする奮闘を描いた作品。
ストーリーラインは単純だが、創意工夫の面白さ、科学技術の論理的思考の凄さ、ポジティブ思考の素晴らしさなど実に勇気づけられた宇宙SF。


No.303 6点 裏切りのノストラダムス
ジョン・ガードナー
(2023/05/10 19:26登録)
ノストラダムスの詩句を利用した第二次大戦中の諜報活動の謎を、戦後の現在から解明する物語だが、とりわけ主人の英国諜報局員ハービー・クルーガーが魅力的。
叙情詩的に重厚さがあり、主人公の偏愛するマーラーと彼の人間性との結びつけ方が巧み


No.302 5点 プリムローズ・レーンの男
ジェイムズ・レナ―
(2023/05/10 19:22登録)
熱烈に愛した妻を失ってから、一人息子を育てつつも執筆に戻れないノンフィクション作家を、不可解な殺人事件がひきつけた。調査するうち、事件と亡き妻との奇妙な繋がりが浮上。
捻りの旅に出来事は様相を変え、ミステリ・恋愛小説・ダークホラーが一つによりあわされる。


No.301 3点 見られている女
リザ・スコットライン
(2023/05/10 19:16登録)
作者は、法律事務所勤務の経歴を持つだけあって、弁護士の世界の内情や随所に挿入される法廷シーンにはリアリティが感じられる。
だが、事件に絡んでくる人物たちの描き方は、どうにも平板で魅力に乏しい。そのため、肝心のストーカーの正体とその動機が判明しても、とってつけたようで今ひとつピンとこない。サスペンスとしては、いささかインパクトに欠ける作品と言わざるを得ないだろう。


No.300 5点 バタフライ・エフェクト
カーリン・アルヴテーゲン
(2023/04/20 20:40登録)
あの時、別の選択をしていたら別の現実があり得たかもしれない。
家族との間で数々の思いを断念してきた中年女性の回想を軸に、いずれも人生の困難な分岐点を迎えた三人の語りが交錯する。スウェーデンのミステリ作家によるサスペンスフルな心理小説。


No.299 6点 暗号機エニグマへの挑戦
ロバート・ハリス
(2023/04/20 20:35登録)
第二次世界大戦中の史実を背景とした暗号解析小説。
最初から最後まで徹底した暗号にこだわった作品で、派手さこそないものの、緊迫した状況下における暗号解析のディテールが丁寧に描かれている。
また訳者の力によるところも大きいだろうが、作品全体が厳かで重々しいトーンに包まれており、それが戦時下のイギリスの暗く、くすんだ世相を見事に浮かび上がらせている。


No.298 5点 呼ぶ声
ジョン・ソール
(2023/04/20 20:30登録)
砂漠地帯の寂れた油田町の住民が、巨大資本による秘密プロジェクトによって知らぬ間に心身を蝕まれてゆく恐怖が、堅実な筆致で描かれている。
冒険小説のように展開するスリルとサスペンスに最後まで惹きつけられた。見事に勧善懲悪で終わる痛快な結末にしばし呆然。

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