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ミステリの祭典

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作家 ラーラ・プレスコット
出版日2020年04月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 YMY
(2024/04/30 22:04登録)
東西冷戦期真っ只中の一九五〇年代末に、CIAにより実行されたドクトル・ジバゴ作戦に材を取り、運命を左右された男女の半生と諜報戦の内幕を、多種多様な視点から描いたエスピオナージュ。
これまでほとんど語られることのなかった冷戦期の諜報戦での彼女らの活動と人生を、現在の視座から見据え、愛と憎しみ、野心と挫折、希望と絶望、欲求と献身、そして彼女らに対する偏見と抑圧を瑞々しい筆致で紡いでゆく。
圧倒的な男性優位社会であった当時の諜報機関で働く女性職員を取り巻く空気を、冷徹に皮肉を効かせつつもユーモアを漂わせて活写し甦らせる手腕は見事。

No.3 6点 八二一
(2023/11/06 19:17登録)
東西冷戦下、ソ連国内で禁書となった反体制的小説「ドクトル・ジバゴ」を国民に密かに流布し、政府への批判的世論を形成しようとする。
CIAの作戦を巡り、タイピストの女性たちと、作者パステルナークの愛人として生涯を捧げたオリガの物語が、政治的分断を越えて共鳴する。小説が武器になり、文学に歴史を変える力があるという強い信念に揺さぶられる。

No.2 7点 SU
(2022/12/18 22:40登録)
冷戦下のソ連において発禁処分となった詩人・ボリス・パステルナークのノーベル賞受賞作「ドクトル・ジバゴ」を東側の圧政の証としてCIAがソ連国内で流通させようとしたという実話からとられたエスピオナージ作品。
一冊の小説が体制を揺るがす武器になると信じる人々へのロマンもさることながら、CIAの中では下に見られがちなタイピストたちやパステルナークの愛人など女性たちを主人公に、冷戦という女性やマイノリティといった被差別者が抑圧されやすい状況下において、彼女たちがいかに戦い、生き方が克明に描かれている。

No.1 7点 猫サーカス
(2020/08/20 18:33登録)
一冊の小説と、それが体制を揺るがすものになると考えた人々を巡る物語。冷戦下の米国。タイピストとして中央情報局(CIA)に雇われたロシア移民の娘イリーナは、ひそかに諜報員にスカウトされる。彼女は訓練を受け、やがてある作戦に起用される。当時のソ連で禁書とされたパステルナークの小説「ドクトル・ジバゴ」。これを秘密裏にソ連国内に流通させ、人々に体制への疑問を抱かせようというのだ。話は大きく二つのストーリーからなる。一つはソ連側。愛人オリガの視点から語られる。パステルナークと妻、そしてオリガの三角関係。もう一つは、CIA女性諜報員たちの物語。体制に抑圧される側と、その体制を揺るがす側、CIAの女性も、男性社会では抑圧される側なのだ。パステルナークたちの人間関係、CIAの女性たちの人間関係が重なり合う。国や社会に対して個を貫こうとする人々を描いた、読み応えある作品。

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