home

ミステリの祭典

login
火喰鳥を、喰う

作家 原浩
出版日2020年12月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 5点 八二一
(2023/11/06 19:07登録)
ニューギニアで戦死した大伯父の日記が発見され、その墓が何者かの手で傷つけられるのを発端んに、死者への執念を感じさせる怪異が次々と起こり始める。
設定に曖昧なところもあるが、怨念話からさらに別種の恐怖へと転じるところが意欲的。

No.2 5点 虫暮部
(2021/04/22 13:09登録)
 夢の中の情景が繰り返し語られるが、夢=何でもありの設定で怖がるのは難しい。文章が、却って怖さを遠ざけてしまう種類の上手さである気がする。着地点が読めてからは消化試合みたいで、取り返しのつかない領域に踏み込んでしまった怖さが無い。
 但し、そうやって“怖さ”にこだわってしまうのはホラーと言う先入観があるからで、現実改変SFとして読めばまた違った楽しみがあったかもしれない。
 ところで、“ヤムヲエズ”とか書いてあるし、“火喰鳥”ってアレのこと? その点を敢えて作中では伏せ、しかしタイトルに掲げるってのはなかなか強気じゃないか。

No.1 6点 はっすー
(2020/12/16 22:59登録)
あらすじ

全ては「死者の日記」から始まった。これは“怪異”か、或いは“事件”か。

選考委員、激賞!令和初の大賞受賞作!
「恐怖と謎がしっかりと絡んでいる。ミステリ&ホラー大賞にふさわしい」――有栖川有栖氏
「謎への引きこみ方が見事。読了後は心地よい酩酊感に襲われました」――辻村深月氏

信州で暮らす久喜雄司に起きた二つの出来事。ひとつは久喜家代々の墓石が、何者かによって破壊されたこと。もうひとつは、死者の日記が届いたことだった。久喜家に届けられた日記は、太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父・久喜貞市の遺品で、そこには異様なほどの生への執着が記されていた。そして日記が届いた日を境に、久喜家の周辺では不可解な出来事が起こり始める。貞市と共に従軍し戦後復員した藤村の家の消失、日記を発見した新聞記者の狂乱、雄司の祖父・保の失踪。さらに日記には、誰も書いた覚えのない文章が出現していた。「ヒクイドリヲクウ ビミナリ」雄司は妻の夕里子とともに超常現象に造詣のある北斗総一郎に頼ることにするが……。 ミステリ&ホラーが見事に融合した新鋭、衝撃のデビュー作。
(amzon内容紹介より引用)


仕事が落ち着いたこともあり、今後はなるべく読んだらすぐ書評を書くようにしていこうと思います。よろしくお願いいたします。


今作は横溝正史ミステリ・ホラー大賞受賞であり、タイトル・あらすじに惹かれて読みました。

当たり前ではありますが、帯の選考者の方々が絶賛しているように書かれていますが、実際の選評を読むと、複数の選考者がホラーとして怖くないと述べており、中でも黒川氏は少し酷評気味でした。
ちなみに選考者ではありませんが、ホラー作家の澤村伊智氏は今作を絶賛していたので、かなり賛否の分かれる作品だと思います。
(なお辻村氏の選評はネタバレを含むので、読後読まれることをお勧めします。)

個人的にはホラーとしては怖く感じず、色々と起こる出来事が不気味なだけでした。
ただ少しグロテスクな描写や主人公の心理描写など、人によっては怖いかもしれません。

ミステリとしてはヒクイドリヲクウの意味は何か?・墓に悪戯をしたのは誰か?とかなり興味がそそられる内容ですが、それ以上に途中から「そういう話なの!?」と色々な意味で驚かされる急展開により、もはやミステリなのか?となるので、ミステリとして読むと少しガッカリするかもしれません。

ネタバレ以降も色々と書きますが、今後も新作を読みたいと思える内容であったので6点にしました。

あと余談ですが、デビュー作なのに原浩という名前を見て、「どこかで見たことあるなぁ」と思っていたのですが、荻原浩氏と一文字(?)違いというのが既視感の原因でした…。なるほど…。

ちなみに原浩の浩は「ひろし」ではなく「こう」と読むそうです。



この先ネタバレ有り












途中からホラーではなくSF的なパラレルワールドの展開となり、怒涛の展開となります。
しかしその現象のルールなどの書き込みが少なく、SFとしても少し粗いと感じました。
ミステリとしても黒幕はやはりあいつで、ホラーとしては先述のように、全体的に中途半端な印象を受けました。

途中からのSF的な展開は個人的には好きなので、もう少し早い段階で現象を明らかにし、『リング』のように惨劇を食い止めるために奮闘する、といった感じに振り切っていたら面白いかもなどと、素人ながらに思ってしまいました。(というよりそういった作品が個人的に好きという、本当にただの素人意見です…。)

3レコード表示中です 書評