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ミステリの祭典

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平均点:6.23点 書評数:286件

プロフィール| 書評

No.166 5点 The Orange-yellow Diamond
J・S・フレッチャー
(2019/11/27 08:46登録)
『ミドルテンプルの殺人』の翌々年、1921年発表の長編。全39章。

場所はロンドン・パディントン。
貧乏作家のスコットランド人Lauristonは、ついに親が残してくれた金も尽き、同じ下宿人のMelkyに相談し親戚の質屋を紹介してもらう。その日の店番は老主人ではなく孫娘のZillah(Melkyのいとこ)。無事父の時計を質に入れ、当面の生活費を確保する。
Lauristonはその金で過ごすが、届くはずの原稿料の小切手がなかなかやって来ないので再び金欠に。
仕方なく今度は母の形見の指輪2つを持って質屋に向かう。今日もZillahが店番だといいなと思って店を覗くが誰もいない。店に入って奥の部屋を見ると、店主と思われる老人が殺されていた。ただでさえ疑われる第一発見者であるが、彼が持参した指輪が店にあった指輪に酷似していたため、彼は文句なしの容疑者筆頭になってしまう。
容疑を晴らすため、Lauristonと彼を慕う人々が協力して真犯人捜しに奔走する・・・・

『ミドルテンプルの殺人』同様、畳みかけるようにストーリーが進行する。相変わらず証人が都合の良い事実を知りすぎていることが多いが、そこは気にしないでおきます。
Melky、Zillahを含む数人がユダヤ人であるが、この作品ではかなり好意的に書かれている。Lauristonが主人公だと思っていたが、いつの間にかMelkyが主役になっている。
逆に、後半出てくる中国人と日本人には差別的というかステレオタイプ的というか、「何をしでかすかわからない奴ら」と言った感じの扱いである。中国人2人はChen Li、Chang Liとおそらく存在する名前だろうが、日本人男性Mr.Yadaの下の名前はMoriで、29章のタイトルはMr.Mori Yadaである(笑)。
それを除けばまずまずかと思ったが、最後ページ数の都合なのか、未解決で投げ出した事件が一つあるので減点。日本の何人かの量産作家と同じく、最後どうするか決めないで書き始めるタイプだったんだろうな、この人。


No.165 6点 三つ首塔
横溝正史
(2019/11/27 06:07登録)
題名から『八つ墓村』同様、ホラーに近いミステリかと思っていたけど違った。ジャンルは「本格」じゃなくて「サスペンス」になってますね。今気付きました。
一気に読んでしまいましたから面白かったのは間違いないんですが、プロットは分かりやすいです。犯人はヒントが無さ過ぎて全く予想できなかったですけども。
楽しめたので6点で。


No.164 9点 亜愛一郎の狼狽
泡坂妻夫
(2019/11/26 06:12登録)
①『DL2号機事件』
亜愛なんて姓、五十音順は絶対に1番だなと思ってたら・・・。
犯人の奇妙な行動に関して言えば「そんな奴おらんやろ」って感じだが、それを見抜く奴の存在は更にありえないな。
②『右腕山上空』
これはある意味密室だ。真相はコロンブスの卵的な感じ。この作品は周りのキャラが濃すぎて探偵の影が薄い。
③『曲った部屋』
名作だと思う。この手の造りの社宅に住んだことがあるので(曲がってはいませんでしたが)懐かしさを覚えた。本当に、向かいの家が世の中で一番奇妙で落ち着かない場所なんです。
④『掌上の黄金仮面』
トリック云々より、こんな変わったセッティングをよく考え付くものだと感じた。
⑤『G線上の鼬』
今までの4作に比べると普通の設定か。ところで、警察側も仕事中に飲んで飲酒運転と相殺したということなのだろうか。
⑥『掘出された童話』
暗号物。この作品にしても次の作品にしても、完成度の高い短編は長編を読んだような錯覚を覚える。
⑦『ホロボの神』
これが一番好き。素晴らしい小説。トリックも全く思いつかなかった。読み終わった後ちょっと放心状態に。
⑧『黒い霧』
公害を扱った社会派ミステリみたいな題名なのに、ものすごく緩い。
終盤まで、どこに謎が存在しているのかすらよくわからない、読み終わって、なるほどと納得するパターン。

バラエティー豊かな上、ハズレもない。③⑥⑦あたりは文句なしの短編。この愛すべき探偵の能力は、今までに読んだ推理小説の中では頭一つ秀でていると感じた。これ以上となるとそれはもう超能力で、推理小説でなくなってしまう気がする。


No.163 8点 ミドル・テンプルの殺人
J・S・フレッチャー
(2019/11/20 06:39登録)
ちょうど100年前の作品。タイトルは本格推理ぽいが、実際は意外にも2時間ドラマ的とでも言おうか。『新聞記者探偵スパーゴの事件簿-ミドル・テンプルの殺人』と言った感じだ。要するに警察がすべき捜査を、たまたま殺人現場に遭遇した新聞記者がほとんどやってしまうタイプの話である。

などと書くと、つまらなさそうに思えるかもしれないが、本書は非常に面白かった。全36章だが、毎章ほとんど停滞することなく新事実が浮かび上がっては、次の章への興味を掻き立てる。殺人事件は冒頭の1件だけなのだが、あれほど話を展開できるのには驚いた。都合の良い証言があまりにも簡単に集まりすぎるが、その分流れが良くなっているので読み進む手が止まらない。
終盤、墓を掘り起こす辺りまでは文句なしに近い出来だったが、その後突然、野を越え山越えの冒険になってしまったのは面喰った。あの描写は必要だとは思えなかった。
最大の欠点は終結部。最後犯人が明かされるが、かなり説明不足である。証拠不足であるし、犯人の自白もなしに終わってしまう。もっと言えば他の人が犯人でないという決定的な証拠もない。
とはいえプロットは横溝氏の名作群と同じくらい気に入ったので、時代も考えてちょっと甘目に8点で。


No.162 5点 謎解きはディナーのあとで 2
東川篤哉
(2019/11/15 05:44登録)
大ヒット作の第2弾。短編6つ+ショートショ-ト。
①『アリバイをご所望でございますか』
相変わらずギャグを交えながらのストーリー進行だが、それらが事件と全く無関係というわけでないのが良い。内容もなかなか練られていると思った。
②『殺しの際は帽子をお忘れ無く』
一番最後の推理が気に入らない。自分が犯人なら、あんな妙なことをすせず、アレがなくても意地でも帰る。
③『殺意のパーティにようこそ』
宝石トリビア以上のものを感じられない。
④『聖なる夜に密室はいかが』
よくある雪上の足跡ネタ。特に目新しいものはない。
⑤『髪は殺人犯の命でございます』
パッと見不要そうな行動や描写が、実は推理に関わってくるのが良い。
⑥『完全な密室などございません』
まあ楽しめたが、犯人当てはちょっと無理だ。読み終わってから話の最初に戻ると、なるほど警部が仰天したのもよくわかる。
⑦『忠犬バトラーの推理』
東川先生は動物ミステリを書こうと思えば書けそうだと感じた。

全体としては1作目を上回ってるとは思えないから、1作目の採点が5点以下の方はスルーでよさそう。


No.161 6点 ポアロ登場
アガサ・クリスティー
(2019/11/14 05:51登録)
初期のポワロもの、短編11作

Part1 The Adventure of ‘The Western Star'
序盤のポワロの小さな推理はシャロークホームズで読んだ描写そっくりだ。この宝石盗難事件は謎も解決もよく出来ていると思う。
それにしてもポワロはいやなやつだ。最後10行くらい、大尉の内なる怒りが爆発しているがよく理解できる。

Part2 The Tragedy at Marsdon Manor
多額の保険金がかかっている旦那が死んだが、果たして他殺か自殺か?これはいまいち。冗談半分でも最後、旦那があんな危ない真似をするかな?子供じゃあるまいし。

Part3 The Adventure of the Cheap Flat
訳ありの安すぎる物件の謎を解く話。パターン的にはありがちな話だけど、アクロバティックで面白い。

Part4 The Mystery of Hunter's Lodge
論理的に考えればそれしかないという結論に落ち着く。ホームズの犯人も同じことをよくやっていたが、バレるだろ、というのは禁句なのかな。

Part5 The Million Dollar Bond Robbery
これは犯人も見え見えだし、トリックもつまらなかった。

Part6 The Adventure of the Egyptian Tomb
自分からエジプト行きを提案したのに、砂や気候に腹を立てて、スフィンクスにまで突っ込みを入れるポワロさんの反応が楽しい。謎解きはそれほどでもないか。
 
Part7 The Jewel Robbery at the Grand Metropolitan
わかってみればものすごくシンプル。シンプルすぎてわからなかった。

Part8 The Kidnapped Prime Minsiter
首相の監禁場所は意外というほどではなかったが、話自体は楽しい。

Part9 The Disappearance of Mr Davenheim
なんだか読んだことがあるような話に感じた。たぶんホームズの何かの話に似てるのだと思う。

Part10 The Adventure of the Italian Nobleman
短いが内容が詰まっていて面白かった。季節と時間の感覚が日本人には分かりにくい。

Part11 The Case of the MIssing Will
これはしょぼい。しょぼいだけに、見抜けなかったポワロさんが珍しく自虐的。3倍じゃなくて36倍馬鹿だったという36という数字には何か意味があるのだろうか?


全体としては、謎解きはそれほどでもない物も多かったが、ポワロとヘイスティングの掛け合いは長編以上にバリエーションにあふれていて楽しかった。


No.160 9点 クビシメロマンチスト
西尾維新
(2019/11/09 10:11登録)
この方の本は2冊目だが、かなり特殊で、なかなか全貌を捉えられない。なんだかよくわからない作家のままだ。
この作品も一度読んだだけでは完全に理解しきれていないんだけど、間違いなく読みがいのある作品ではあった。「うにー」の人がほとんど出てこないので、アニメっぽさは1作目より減じていると思う。
第一の殺人の真相は『獄門島』の梅の木の殺人を思い出した。順番と位置が完全に逆だけど。


No.159 7点 ダビデの星の暗号
井沢元彦
(2019/11/04 14:50登録)
『猿丸幻視行』は折口信夫が主人公だったが、今回の主役は芥川龍之介。
伊達騒動にまつわる暗号解読がメイン。タイトルを見ただけで分かるが、日猶同祖論ももちろん絡んでくる。
『逆説の日本史』と同じく説明が所々くどい。どこまでが事実でどこからがフィクションなのかわかりにくいが、後西院天皇が後西天皇に表記が変わったあたりの話は興味深い。
ミステリ度合いは『猿丸幻視行』より低いが、ストーリーは楽しかった。


No.158 8点 悪魔の手毬唄
横溝正史
(2019/11/02 04:21登録)
著者の他の超有名作のエッセンスを贅沢に詰め込んだような作品、ではあるが、かなり薄まってしまっているように感じた。読んでいてあまりストーリーに引き込まれなかった。ただし、最終節、犯人の意外さと謎解きで盛り返したので8点はキープ。
とはいえ現状の上位6作中から5作選べと言われれば、他と毛色が違う6位『悪魔が来りて笛を吹く』は残して本作を外すだろうなあ。


No.157 5点 午後からはワニ日和
似鳥鶏
(2019/10/31 04:58登録)
<少しネタバレあり>

ほのぼの動物園ミステリ。ミステリとしてはそれほど特筆するものはないと思う。ストーリーは、メイン数人のキャラが際立っていて良い。ゆえに犯人を知らされた時に「ん?誰だっけ?」と思ってしまったのは、私だけではないだろう。


No.156 6点 悪意
東野圭吾
(2019/10/29 05:05登録)
講談社文庫版。
249ページまでで、一応作品として成立している。この時点では6点くらいの普通の作品。
あと110ページ残っているので、全てをひっくり返すつもりなのだろうと思って読み進む。予想通りひっくり返ったが、それほどの衝撃はなし。動機がユニークだと感じたくらいか。よって6点のままで。


No.155 1点 岐阜羽島駅25時
西村京太郎
(2019/10/29 05:04登録)
どこかでトンデモ本として推薦?されていたので読んでみた。
色々と滅茶苦茶で突っ込みどころが300か所くらいあるが、最終章は想像をはるかに超えるトンデモぶりだった。最後の3行には唖然。
どういう理由でこんな本ができてしまったのかが最大のミステリだ。


No.154 7点 ガラス張りの誘拐
歌野晶午
(2019/10/26 04:47登録)
2時間程度で読める作品だが、短い割にはミステリとして押さえるべき所はしっかり押さえている良作だと感じました。動機よりは、起こっていることが現実的でなさすぎる(特に浅草のシーン)というのが欠点でしょうか。


No.153 9点 厭魅の如き憑くもの
三津田信三
(2019/10/25 00:44登録)
刀城言耶シリーズの第1作目。

最初数ページは取っつきにくかったですが、その後は思ったよりも読みやすく、個人的には冗長さを感じることもなく楽しめました。横溝作品と同じく、推理部分だけでなく、小説としても非常に面白い。満足です。

ミステリとしては『首無の如き祟るもの』の方が上でしょう。あちらは、読んでいる途中何度も茫然としましたから。本作はかなりの部分の謎解きは想定内でした。ただ、全体としての仕掛けは驚きでした。もう1回読まなきゃ。

ところで、以前読んで自分は2点を付けた『隻眼の少女』ですが、今思い返すと、この作品の劣化版しか思えない。


No.152 7点 ダリの繭
有栖川有栖
(2019/10/22 12:46登録)
なんだかいつもの有栖川作品と雰囲気が違う。
ダリに心酔する名物社長が、自慢のダリ髭を剃られた状態で繭のような健康器具の中で殺されている、という設定からしてユーモアミステリのようだ。謎解きにしても、使えそうなネタは何でも使っちゃえ、という感じで、ストーリーとしては非常に楽しい。
低評価が多いのは、偶然の多さ、後出し設定のようなものもあり与えられたデータのみから真実を推理しにくい、あたりが原因か。要は、緻密な論理が売りの有栖川作品にしては大味とでも言いましょうか。
変な話、もし作者の名前が「有栖川有栖」でなければ、平均点は6点台になっていたのじゃないかと思ってしまう。


No.151 2点 ハーメルンの誘拐魔
中山七里
(2019/10/21 05:14登録)
<ネタバレあり>

言いたいことは他にも色々あるが、どうしても納得いかない点のみ書く。
まず、警察があそこまで無能なのは、ちょっと考えにくい。狂言誘拐の可能性なんて十分考えられるんだから、関係者は全員尾行しておけよと言いたい。捜査員を数百人使ってるのに、なぜ村本医師に誰も付いていないのか。
それから、身代金の引き渡しで、あの場所を警戒してないのはありえない。意外どころか、一番可能性が高い方法だと思ったんだけど。(あの辺りの地理感がある人なら真っ先に思い浮かぶのでは。つまり大阪府警がそれを考慮に入れていないのは考えにくい)
あと、最後の真犯人?は、意外性を狙ったのだろうが、いくらなんでも無理があると思う。


No.150 3点 殺戮にいたる病
我孫子武丸
(2019/10/18 03:20登録)
<ネタバレあり>
ミステリであるからには、どこかに読者には見えていない「落とし穴」があります。99%読み終わった時点で、それがまだ出てきていません。このまま終わるはずがないので、最後に落とし穴が仕掛けてあるのは間違いありません。となると、残りページもないし、一気にひっくり返すとなると、十中八九、人物誤認の叙述トリックだろうな。

というのが私の思考回路でしたので、オチはあまりにも予定調和すぎました。しつこく出てくるブリーフに違和感がありすぎて、稔は絶対大学生じゃないだろと思っていたので余計にそう感じました。1992年は大学生がブリーフでもおかしくなかったのかな?

<追記>
このジャンルの本をこの作品の後も何冊か読みましたが、この作品がなんというか一番一発狙い感が強く、ホームランと感じる人もいれば私のように三振に感じる人も多いのでしょう。発売当時に読んでいれば印象は違ったのかもしれませんが、時代の流れに耐えられない作品のような気がします。


No.149 4点 マレー鉄道の謎
有栖川有栖
(2019/10/16 05:49登録)
日本推理作家協会賞受賞作とのことだが、氏の長編の中では『海のある奈良に死す』と並んで退屈だった。
マレーシア旅行の雰囲気を楽しめるほど周遊しているわけではない。蛍を見るあたりは良かったけど、そのくらいしか覚えていない。かといって、ミステリ部分、例えば密室トリックなども、この方の実力からすると平凡な気がした。


No.148 8点 湖底のまつり
泡坂妻夫
(2019/10/05 01:47登録)
冒頭、何が起こっているのかよくわからない。仕方がないのでそのまま1章を読み進める。今度は起こっていることは理解できるが、全体像が見えてこない。2章、さらに困惑する。まさかの二重人格?それとも夢オチ?それだけは勘弁してほしい。3章から少しずつ謎がほぐれ始め、そのまま終盤に。

解説通り、強烈な騙し絵だった。読み終わった後、もう1度1章だけ読み返したけど、本当によく出来ている。
疑問に感じたのは多くの方と同様の箇所。積極的な女性ならまず気付くだろうけど、偶然にも、経験の少ない受け身の女性だったということか。あとたいしたことじゃないけど、当時は震度8とかあったのかな?


No.147 7点 卒業−雪月花殺人ゲーム
東野圭吾
(2019/10/03 04:14登録)
大学4年生、仲良しグループだったはずの7人の間で起こる事件。
密室トリックは確かに期待はずれだったが、そんなのはどうでもよくなるくらい、茶道のゲームのトリックが良かった。

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