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ミステリの祭典

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レッドキングさんの登録情報
平均点:5.28点 書評数:943件

プロフィール| 書評

No.543 7点 灰王家の怪人
門前典之
(2022/02/28 19:09登録)
門前典之第四弾。前二作の建築ネタを離れ、今回は廃温泉館が舞台のバラバラ殺人密室もの。「孤島の鬼」「シャム双生児の謎」(両方とも好物)に「ドグラマグラ」「姑獲鳥の夏」混ぜて煮込んだミステリシチュー。密室からの犯人消失より「被害者なぜ出られなかったか」がユニーク。グロ風味は悪くないが、人面瘡展開はちとくどすぎ。もう一つ薄味の解離性人格云々でまとめた方が美味しかったかな。
※第一人称叙述「~」で虚偽を記せばミステリしてアウトだが、叙述者が「~」を確信している場合そうとも言えず、京極「姑獲鳥」は傑作と思うが、その塩梅は難しく。
※見取り図に鏡あるんだから「三つの棺」ネタもほしく・・思ってたら最後にチョビッと・・。


No.542 5点 浮遊封館
門前典之
(2022/02/26 19:33登録)
「屍の命題」面白い!「建築屍材」つまらん!ですっかり忘れてた門前典之。その後も頑張ってたんだね。墜落した航空機から130人分の死体が消え、カルト教団「密室」施設から日々信者達が半滅して行く・・そして、雪密室の殺人。トリック志向よいが、作者、建築士でもあるせいか、作風が半端にアポロン的。もっとディオニュソス成分がほしく。伊坂幸太郎道尾秀介より、この人や小島正樹みたいなのを応援したいんだが、もちっと何とかならんのか、小説力。


No.541 5点 血に飢えた悪鬼
ジョン・ディクスン・カー
(2022/02/25 06:40登録)
「妻は俺を熱愛しており、俺も妻を愛している。が、一緒に暮らしてるあの女は・・妻ではないんだよ・・」カー最後の小説はハロウィンの密室殺人未遂事件。この作のネタ、現代ならばもっとずっと下世話な描写も可能かな、その方が説得力あるし。探偵役コリンズ(月長石作家)は語る「作者は謎解きに必要なデータを全て提示しておく必要がある。が、単純に全てを語ってはならない。読者の先手を打ち意外な展開に・・さらに高級読者の立場で・・」ヴァンダイン同様に言ってることは至極もっともで「ミステリ」を「サスペンス」「ハードボイルド」等その他ジャンルから厳密に分けて評価することもやぶさかではない。でも、なかなかそうもいかないんだよな、「ミステリ小説」はまた「小説」でもあるからねえ。

てことで、ディクスン・カー(カーター・ディクスン除く)全長編46作の採点修了したんで、私的カー長編ベスト10(12)
    第一位:「三つの棺」
    第二位:「囁く影」
    第三位:「曲った蝶番」
    第四位:「火刑法廷」
    第五位:「死者のノック」
    第六位:「引き潮の魔女」
    第七位:「死が二人をわかつまで」
    第八位:「疑惑の影」
    第九位:「仮面劇場の惨劇」
    第十位:「連続殺人事件」
    同十位:「皇帝のかぎ煙草入れ」
    同十位:「眠れるスフィンクス」

※結論、何と言ってもミステリは、カーとディクスンにとどめを刺す。


No.540 5点 亡霊たちの真昼
ジョン・ディクスン・カー
(2022/02/14 00:37登録)
今は昔の前世紀初頭ニューオリンズ。議員候補・作家・編集者・上流婦人・謎の女・高級(なんじゃそれ)娼婦・警部補(なに補って)・老将軍入り乱れての醜聞脅迫騒動と、犯人と凶器消失の不可能射殺事件。少女売春ネタと人物正体ネタがもっと練り込まれてたらハードボイルドしてたかもしれんが・・とりあえず「密室」出て来たんで良しとしよう。


No.539 6点 深夜の密使
ジョン・ディクスン・カー
(2022/02/08 17:37登録)
今より二世紀(カー執筆時から数えて一世紀)前の19世紀に、齢九十老人が物語る、更にそこから遡る事150年前17世紀英国のお話。王党派・清教徒派・カトリックが複雑に絡む内憂と、プロテスタント・カトリック諸国間で複雑に揉める外患の最中、対仏国際陰謀に己の地位保全を模索する亡命帰国王チャールズ2世。国王と使わされた密使達と妨害者達、それぞれの思惑と裏切りが錯綜する冒険サスペンス&ラスボスWho及びHowツイストミステリ。ロマンスも少しつく。
SF異世界なみの時代考証描写が魅力的で、これまた点数オマケ付き。


No.538 5点 喉切り隊長
ジョン・ディクスン・カー
(2022/02/06 13:22登録)
皇帝ナポレオンの下、対英戦争に布陣した仏軍内部を脅かす、姿なき連続殺人鬼「喉切り隊長」のWhoWhyHowミステリ。と同時に、仏革命の怪物フーシェ・・ロペスピエールとナポレオンに仕えた・それだけで凄いが・のみならず、ジロンドからジャコバン、共和政府から帝国政府の権力中枢を寝返り歩き警察組織を築き上げた、まさに怪物・・そんなフーシェを黒幕とした複数男女の英仏スパイ合戦。姿なき不思議刺殺者Howはチャチだが、WhoWhyが凄い。いかにもなフーシェの上を行くあの英雄出しちゃうんだもん、そりゃ・・スゴいさ。


No.537 6点 ロンドン橋が落ちる
ジョン・ディクスン・カー
(2022/02/02 00:08登録)
18世紀英国、ダークなお伽の街を上に乗せたロンドン橋。電気はおろかガス灯もない蝋燭と松明の時代、マザーグースかグリム童話、はたまたSF異世界の如き、ファンタジックでグロテスクかつドタバタなミステリ。
仕掛け人梅安トリック付き。


No.536 7点 死が二人をわかつまで
ジョン・ディクスン・カー
(2022/01/29 07:51登録)
「完全なる密室」毒殺事件の、あまりにも基本的なトリックAを成り立たせるためのトリックB、
「『Aを容疑者にするためのトリック』を仕掛けるB」を偽装する真犯人X・・・この手の「複雑系」好きよ。
褐色の髪と瞳の女Aと、金髪青眼の女B、二人の美女のうちどちらかが虚偽を述べている・・犯人は?
Till Death Do Us Part(死が二人を別つまで)・・結婚宣誓の表題が、最後の一行に適合して、まるで落し噺みたい。


No.535 6点 ヴードゥーの悪魔
ジョン・ディクスン・カー
(2022/01/27 07:34登録)
米国南部・・黒人奴隷、ラテン混血、カトリック+呪術のヴードゥー信仰・・非WASP光景に彩られる世界、エドガー・アラン・ポー没後にしてリンカーン南北戦争前という不思議な時代が舞台。フォークナーや映画「エンゼル・ハート」の匂いたつ南部臭はないが、消失トリックと墜落殺人トリックと呪術幻影が・・両トリックに関連性なく幻影効果も薄味なのが残念だが・・付いている。


No.534 5点 火よ燃えろ!
ジョン・ディクスン・カー
(2022/01/25 19:15登録)
これまた活劇シーン絶品で点数オマケ。カーには「燃えよ炎!」てなカッコ良い土方歳三トリップ物を希望したい。
< 以下、露骨なネタバレ >
「座頭市」仕込み杖進化系の仕込み銃トリック。(「コブラ」のサイコガンて「百鬼丸」仕込み義手の進化系だよね。)


No.533 6点 ビロードの悪魔
ジョン・ディクスン・カー
(2022/01/20 20:46登録)
王党派・清教徒派・カトリックが三つ巴に絡み、やがてトーリー党(保守)vsホイッグ党(ややリベラル)二大政党制が形作られる近代英国。とかく「保守=悪玉」vs「ホイッグ=善玉」風な進歩史観に反し、カーは明らかに王党派系びいき。
悪魔との契約で、泥とホコリと下水悪臭まみれで、入浴と歯磨き習慣が無い(それキツイ)17世紀ロンドンへタイムスリップした主人公。美貌の妻と愛人、同志と使用人達と政敵を巻き込んだ歴史サスペンスがワクワク展開したあげくに、驚きのミステリエンドへ。エロとチャンバラ(実はカーが一番精彩放つのって、この類では)と毒入トリックと、おまけに17世紀英国グルメ(!)描写までもが豊富な、魅惑の一篇。


No.532 2点 霧の国
アーサー・コナン・ドイル
(2022/01/16 18:43登録)
ひねたジャリだった頃、幼稚園の友達に向かって「サンタなんていないんだぞ」とケイモウした。
怪獣マニアだったガキの頃、「怪獣なんていないんだ」としたり顔した叔父を、「あたり前じゃん」と内心軽蔑した。
高校生の夏合宿の夜、「コックリさん」始めた連中を茶化したら、「おい!そういう態度は恐ろしい現象を招くぞ!」とやられ、「え! こ、こいつらマジだ・・」って内心驚愕した。


No.531 3点 毒ガス帯
アーサー・コナン・ドイル
(2022/01/15 17:15登録)
チャレンジャー教授シリーズ第2~4弾。
 「毒ガス帯」 有毒エーテル通過による全生物絶滅・・からのどんでん返し。
 「地球の悲鳴」 地球巨大ウニ(!)説。これ元ネタに膨大な大ぶろしきSF展開ができるんじゃない?
 「分解機」 これ元ネタに「ハエ男」展開が可能なんだな・・・
何かSFらしくなっちゃって「失われた世界」お伽噺感が薄まっちゃったな。いずれにしても、「実はとんでもトリックによる幻影だった」ならばミステリだったんだけどね。


No.530 6点 失われた世界
アーサー・コナン・ドイル
(2022/01/14 00:26登録)
今は亡きネバーランド・・断崖によって外界から隔絶された世界・・の素晴らしきお伽噺。ミステリではない・・ちょびっと記号地図トリックもある・・が、面白かったから、これまた点数大オマケ。
※ただ、「進撃の巨人」て少年漫画もそうだが、壁等によって隔絶された世界観に飛行手段が描かれてしまうと、少し緊張感が弛緩してしまう。それが飛行船であれ翼手竜であれ。(だって外界に出られるじゃん、プテロダクティルス)


No.529 6点 北極星号の船長
アーサー・コナン・ドイル
(2022/01/09 22:56登録)
怪獣・怪奇・ファンタジー・サスペンス・・「ウルトラQ」「怪奇大作戦」元祖筋。ミステリではない・・半ミステリどころかアンチミステリとさえ言える・・怪獣ものはポー「スフィンクス」解決でこそミステリとなる・・が、面白いからいいや。あと、怪獣出てこない「寄生体」とかのホラーサスペンス具合もなかなかで、点数、おおまけにオマケ。


No.528 4点 ドイル傑作集Ⅲ 恐怖編
アーサー・コナン・ドイル
(2022/01/08 16:37登録)
「新しい地下墓地」 ローマ地下遺跡の迷路を舞台にした、二人の考古学者の恐怖の復讐譚(さぞや恐かったろう)
「サノクス婦人の場合」 乱歩の「踊る一寸法師」にも通ずる戦慄の復讐劇(痛くてイタい!)
「ブラジル猫」 「技師の親指」風味の危機一髪スリラー(あれを「猫」とは!)
※「大空の恐怖」「革の漏斗」「青の洞窟の恐怖」三作については「北極星号の船長」にあるので割愛。


No.527 4点 ドイル傑作集Ⅱ 海洋奇談編
アーサー・コナン・ドイル
(2022/01/07 11:43登録)
「縞のある衣類箱」 無人の漂流船に残された死体と謎の箱。新しい船でも同様な殺人が起きて・・(ミステリしてる)
「ジェランドの航海」 幕末日本が舞台だが「幕府=トーリー党、維新=ホイッグ党」って・・(ミステリとは言えん)
「ジェ・ハバカク・ジェフスンの遺書」 黒人伝承の「黒石」をめぐる航海冒険譚。(ミステリと言ってもいいかな)
「あの四角い箱」 疑惑の箱をめぐる船上サスペンスのオチは・・てっきり通信機器(外れとは言えず)の類かと・・
※その他、「北極星号の船長 」「樽工場の怪」の二作は別本に収録あるので割愛。


No.526 5点 ドイル傑作集1 ミステリー編
アーサー・コナン・ドイル
(2022/01/06 23:15登録)
ホームズ抜きのドイル短編ミステリ集で、ほぼ全部が「ちょっといい話」オチエンディング。
  「消えた臨時急行」 駅間走行中に消失した列車。そのトリックは・・
  「甲虫採集家」 ”甲虫マニアにして医師”が採用条件の募集に応募した青年。「赤毛連盟」の直球(捻りなし)版。
  「複数の時計を付けた男」 走行中の列車から消失した三人の男女と、出現した射殺死体・・
  「漆(ジャパンed!)の箱」 旧家に君臨する峻厳なやもめ主人。禁断の部屋から漏れて来る謎の女の声・・
  「ハダ(ハラでなく)黒い医師」 不利な状況証拠で医師殺害の被告となった兄を助けるべく妹の弁護は・・
  「ユダヤの胸当」 宝石はなぜ盗まれない?のミステリ。
  「悪夢の部屋」 男女三人の緊迫サスペンスからの・・(まあ、コントやね)
  「五十年後」 運命に翻弄された若き善男善女の五十年後の奇跡。


No.525 6点 シャーロック・ホームズの事件簿
アーサー・コナン・ドイル
(2021/12/30 20:33登録)
「高名な依頼人」 人殺しの過去さえなければ、あまりにも残酷な、と言える報いを賜る色事師。
「白面の兵士」 ホームズ一人称叙述。「ワトスンの結婚という自分勝手(!)な行為のせいで、私は独りぼっち・・」
「マザリンの石」 ホームズ必殺技の変装、女装レベルに高まり・・何で三人称叙述と思ったら、このトリック。
「三破風館」 過去の恋文が足枷になるってパターン多いな。百年昔とは言え、有色人種への偏見醜悪描写が露骨で・
「サセックスの吸血鬼」 口元を赤く染めて、赤子の首から血をすする若き母親のWhy
「三人のガリデブ」 日本語の「がり」と「でぶ」でなく「ガリデブ」・・これまた「赤毛連盟」タイトバージョン。
「ソア橋の怪」 ○○と見せかけた✕✕・・「本陣殺人事件」「そして誰もいなくなった」etc.・・
「這う男」 意表突くトリックがあるのかと期待させて・・プチ「ドクターモロー」原始SF・・ま、これはこれで・・
「ライオンのたてがみ」 「まだらの紐が・・」でなく「ライオンのたてがみが・・」の岸壁密室殺人。
「ベールの下宿人」 ベールで顔を隠した「人三化七」異相婦人の過去とは・・・
「ショスコム・オールド・プレイス」 絵に描いた様な悪役横暴夫にかかる、絵に描いた様な容疑の真相・・・
「隠居した絵具屋」 絵に描いた様にみじめな寝取られ亭主が被った、絵に描いた様な哀れな被害の真相・・・

 て、ことで、私的シャーロック・ホームズ(コナン・ドイルでなく)ベスト10(12)
        第一位:「唇の捩れた男」
        第二位:「踊る人形」
        第三位:「まだらの紐」 
        第四位:「恐怖の谷」
        第五位:「ライオンのたてがみ」
        第六位:「ブルース=パーディントン設計書」
        第七位:「シルバーブレイズ号」
        第八位:「正体の場合」
        第九位:「赤毛連盟」
        第十位:「六体のナポレオン像」
        同十位:「フランシス・カーファクス婦人の失踪」
        同十位:「サセックスの吸血鬼」


No.524 6点 シャーロック・ホームズ最後の挨拶
アーサー・コナン・ドイル
(2021/12/25 12:39登録)
「ウィステリア荘」 「赤毛連盟」タイト版を利用して企図される悪漢成敗と歴史奇譚。
「ボール紙箱」 婦人に送付された男女の片耳、滾るような愛憎譚の真相は・・・
「赤い輪」 「赤毛連盟」タイト版「ウィステリア荘」の更にタイトな導入から展開する悪漢成敗劇。
「ブルース=パーディントン設計書」 死体移動トリックと国際スパイ活劇の見事な結合。
「瀕死の探偵」 凶悪犯罪者達の写真をアイドル写真か聖画のように壁に飾るホームズ。
「フランシス・カーファクス婦人の失踪」 失踪した貴婦人、閉じ込められたはずの棺には別の屍体が・・・
「悪魔の足」 同室の兄妹3人が発狂・変死し、更に4人目も・・さすがのコカイン愛好ホームズでも・・・
「最後の挨拶」 ワトスンに向けたホームズ最後の謝辞は、世界大戦という一つの時代の終わりと始まりを予感する
        暗く情熱的な覚悟であった。
       「風が吹き始めたね、ワトスン・・・ 身を切るような冷たい風だよ・・・」

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