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ミステリの祭典

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小原庄助さんの登録情報
平均点:6.64点 書評数:267件

プロフィール| 書評

No.7 7点 ブラックサンデー
トマス・ハリス
(2017/06/22 09:45登録)
米政府の対イスラエル武器供与に報復するため、パレスチナゲリラが大規模なテロを計画するというのが大まかな筋。
作者は元々、米大手通信社の敏腕記者。
取材で得た膨大なデータで物語をよりリアルに描写していく。
ページをめくるたび、犯人グループの緻密な計画が現実味を帯びていき、犯人を追うイスラエルの情報機関の精鋭部隊、FBI捜査官たちの具体的な対抗策を垣間見ることもできる。
刊行は40年以上前だが、この物語は異様なほど現代の国際情勢や頻発するテロ事件と重なる。
過激なテロ実行犯たちが同作を参考にしているとは考えたくないが、それほど現実に世界各地で起こっている悲劇と、想像の産物である小説が示すメッセージが合致してしまう。
ソフトターゲットテロに備える意味でも、悲しいかな本書は秀逸といえる。


No.6 6点 ノア・P・シングルトンの告白
エリザベス・L・シルヴァー
(2017/06/19 16:46登録)
自身の生い立ちから裁判までを語る、ノアのシニカルな口調が忘れがたい。
過去の回想と獄中の現在を行き来しながら、予想を覆す展開が連続する。
ノアのユニークな人物像と、驚きに満ちた結末が記憶に残る作品。


No.5 5点 報復
ドン・ウィンズロウ
(2017/06/19 16:41登録)
テロとの戦いをテーマにした冒険小説はすでに数多く書かれているが、この作品もその系譜に連なる作品。とはいえ、この作者にしてはかなりの異色作。
旅客機爆弾テロで、妻子を失った元特殊部隊員が、資金を集め、傭兵を集め、自らの手でテロリストをかりたてる。
作者の魅力である独特の語り口をあえて抑えて、ぜい肉をそぎ落とした文体で語られる物語。
テロリストに対する、そして祖国アメリカに対する怒りをも内包した作品。


No.4 6点 伴連れ
安東能明
(2017/06/14 19:52登録)
少年犯罪・ストーカー・医療過誤・介護など現代的なテーマを積極的に扱っている。
しかもその問題点をえぐりつつ、展開にひねりをきかせ、予想外の結末へと導いていく。
とくに二転三転する「Mの行方」と表題作が秀逸。
毛並みはいいものの、いかにも現代的で責任の重さをしかと認識できない女性刑事が成長していく姿と、やり手の女性署長との対峙とサポートなど本筋を支える脇筋も悪くはない。


No.3 5点 ジョニー&ルー 絶海のミッション
ジャック・ソレン
(2017/06/14 19:45登録)
「ジョニー&ルー掟破りの男たち」の後日談。
盗まれた美術品を盗み返す怪盗、ジョニーとルー。
新たな依頼の背後には、世界をまたにかけた謀略が。
クライマックスは日本が舞台になるところも興味深い。
大味な作りではあるけれど、豪快な展開と緊密なアクションで読ませてしまう勢いあふれる作品。


No.2 5点 樫乃木美大の奇妙な住人 長原あざみ、最初の事件
柳瀬みちる
(2017/06/11 16:43登録)
引っ込み思案の主人公とその仲間がアクリル造形が変形した事件、図書館脅迫事件、クリエーターをめぐる醜聞を追及していく。
キャラが生きる要素は仲間と舞台と事件だが、個性的な「ぼっち」(ひとりぼっち)たちを集めて謎を解くグループを作ったところに新しさがある。
しかも舞台は美大で独特の雰囲気があるし、事件は日常の謎でも考え抜かれている。
キラキラした青春ミステリ


No.1 6点 さよなら、シリアルキラー
バリー・ライガ
(2017/06/11 16:18登録)
主人公は、幼いころから父親に殺人のノウハウを教えこまれて育ったため、連続殺人犯の心理と手口がありありと感じ取れる。
そして死体や現場を冷静に分析しながらも、もしかしたら自分も父親のような変質的殺人者になるのではないかと恐れている。
意表を突く設定と、異様な緊迫感と、思いがけない展開で楽しめる。

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