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ミステリの祭典

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さよなら、シリアルキラー
ジャスパー(ジャズ)・デント

作家 バリー・ライガ
出版日2015年05月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 6点 小原庄助
(2017/06/11 16:18登録)
主人公は、幼いころから父親に殺人のノウハウを教えこまれて育ったため、連続殺人犯の心理と手口がありありと感じ取れる。
そして死体や現場を冷静に分析しながらも、もしかしたら自分も父親のような変質的殺人者になるのではないかと恐れている。
意表を突く設定と、異様な緊迫感と、思いがけない展開で楽しめる。

No.1 6点 tider-tiger
(2017/03/07 21:34登録)
100人以上を殺害した稀代のシリアルキラーであるビリー(現住所は豚箱)を父に持つ高校生ジャズ。子供の頃からビリーに殺人術やら隠蔽術やら人心操縦術やらと殺人の英才教育を受けて育ったジャズは普通の高校生になろうと欲すも、ときおり顔面を覗かせる内なる殺人者との葛藤に苦悩している。
多くの冷ややかな視線や僅かながらの温かい支援の中でジャズは自分が殺人者ではないことを証明すべく、習い覚えた知識と技をもって街で起きた殺人事件に挑む。
殺人鬼の息子ジャスパー(ジャズ)三部作の一作目。

殺人者に育てられた少年という設定をどう料理するかに注目したが、リアリティにはさほど重きを置いていない模様。ジャズの周囲は(父親の仕出かしたことを考えれば)なんとも平穏な環境が保たれている。
シリアルキラーの誕生の過程や生態に肉薄するようなものではなく、またグロで客寄せという風でもない。悪の道に陥りそうな青年が仲間の助けを借りて人間らしく生きようとする姿が描かれている。
キャラはまあまあいいし、読みどころもけっこうあって悪くない。青春小説のツボはきっちり押さえ、さほど驚きはないものの手堅いプロットでリーダビリティも高い。ただ、せっかくこの設定なんだから殺人教育を受けた少年ならではの視点がもう少し欲しい(それ以前に快楽殺人鬼は教育で生み出せるものかどうか疑問だが)。
ジャズが殺人鬼の仕事について語るが「この犯人は秩序型だ」って、おまえはFBI心理捜査官かい! このへんは作家として想像力を働かせないと。専門家視点ではなく、もっと張本人っぽい視点、張本人っぽい言葉を盛りこんで欲しかった。
正義と悪の戦いという単純な図式、群れからはぐれた俺とその仲間たち、アメリカ的な作品だと思う。
しかし、この終わり方は汚い。次作を読まざるを得ない。
↑読みたくないわけではなく、けっこう楽しみにしている。

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