| ALFAさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.63点 | 書評数:246件 |
| No.126 | 8点 | 世界でいちばん透きとおった物語 杉井光 |
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(2023/07/22 12:15登録) 直接の犯罪は出てこないが骨格はまちがいなく本格ミステリー。 唯一の肉親である母をなくした青年の清潔感のある人物造形がいい。 ミステリーらしい興趣に満ちた物理的な仕掛けを面白いと思えるかどうかが評価の分かれ目かな。 つけられたタイトルもベタでいい。 最後、義理の兄が妙にいいヤツになっていて笑える。 |
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| No.125 | 7点 | 前夜祭 連城三紀彦 |
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(2023/07/22 08:54登録) ミステリー(不思議)はいつも犯罪を伴うとは限らない。人の心、その動きそのものが大いなるミステリーだから。クリスティはウェストマコット名義で名作を残したが、連城は筆名を変えることなく愛憎のミステリーを多く残している。 「前夜祭」は夫婦や家族間の謎を描いた8編からなる心のミステリー短編集。 お気に入りは表題作のほか「それぞれの女が」「薄紅の糸」。かなりアクロバティックなプロットが荒唐無稽に堕ちないのは登場人物の造形が確かだからか。 |
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| No.124 | 6点 | 桜宵 北森鴻 |
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(2023/07/19 09:12登録) 香菜里屋シリーズ第2作。 謎を肴に酒を飲むといった風情の短編5話。謎が次第に重くダークになっていく。 読み応えがあるのは第5話「約束」。 辛口の真相はいいが開示がやや説明的になったのが惜しい。よりドラマチックなエンディングが欲しかった。 |
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| No.123 | 4点 | 葉桜の季節に君を想うということ 歌野晶午 |
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(2023/07/18 12:41登録) 寛い心でエンタメノベルとして読めばそれなりに楽しめる(かもしれない)。 このミス1位の本格モノのつもりで読んだらカベ本。 騙すところはそこですか・・・ |
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| No.122 | 4点 | ロートレック荘事件 筒井康隆 |
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(2023/07/13 13:44登録) 読みやすい文体といい巧みな人物造形といいさすがの練達。 しかしミステリーとしては叙述トリック一発で芸がない。 エンディングもあまり好みではない。ここでシミジミとさせてどうしようというのか。 見取り図をあらためて見ると笑える。 |
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| No.121 | 7点 | 作者不詳 ミステリ作家の読む本 三津田信三 |
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(2023/07/13 09:53登録) なんだか乱歩風味で楽しい。 作中作の「迷宮草子」は純然たるミステリー短編集。ところがそれを読む者は怪異に襲われ、ミステリーの謎を解くと無事救われるという仕掛け。 作者らしいミステリーとホラーのハイブリッド構成になっている。 ミステリーのキッチュ感と襲われる怪異のベタさ加減が乱歩風味を出しているのか・・・ 作中作のなかでは「朱雀の化物」が作者の某有名長編を思わせる叙述で読みごたえがある。 無限地獄を思わせるエンディングは余計だったかも。 |
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| No.120 | 8点 | 双頭の悪魔 有栖川有栖 |
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(2023/07/08 14:30登録) 冒頭からクリスティの「春にして君を離れ」を思わせるマリアの内省的な叙述が続く。200ページあたりまで異変は起こらず冗長にも感じられる。しかしこれは読者を熟成させるのに必要な長さなのだろう。 やがて事態は動き始める。川の向こうとこちらでそれぞれに。 テンポは速からず遅からず、あちらこちらに張り巡らされている伏線を探りながら読み進めることとなる。 精緻なロジックを堪能できる新本格の大作。 しかし残念ながら・・・ 以下ネタバレ 唯一にして最大の問題はXを仲介者とするxx殺人であること。両犯人ともにXが仲介者ではなく当の契約相手であると信じている。しかしこれはXの属性を考えるとまずあり得ない。 動機(Xにとっての)の脆弱さも減点要素。 |
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| No.119 | 7点 | 生霊の如き重るもの 三津田信三 |
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(2023/06/26 09:30登録) 「魔偶」「密室」を含め刀城言耶シリーズの短編はどれもホラー風味のミステリーとして気軽に楽しめる。ただこれはという傑作には行き当たらなかった。この作者の世界観で刃のように鋭い短編を読みたいものだ。 中編「顔無」はなかなかの読みごたえだが、この真相は無理がある。これはむしろダミーの捨て解として使った上で、ある想定外の人物を犯人にしたら面白いと思うが・・・ |
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| No.118 | 5点 | ヨモツイクサ 知念実希人 |
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(2023/06/25 13:48登録) 洗練されたプロット、なめらかな文体。とてもよくできた正真正銘のバイオホラー。 これ以上は何も書けない。 相性のいい読者なら満点間違いなしだが、私にはどうにも馴染まなかった。 |
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| No.117 | 7点 | 密室の如き籠るもの 三津田信三 |
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(2023/06/20 10:07登録) 短編三作はホラー風味に合理的な解決をつけるお馴染みのパターンだが、なかでは「迷家」が楽しめる。行商の風俗描写も時代感が味わえて面白い。 長編ともいえる表題作は重厚。精緻な伏線とその回収がダミー解決のために使われるとは何とも贅沢というべきかもったいないというべきか。 先妻の変死や開かずの箱などのおどろおどろしいトピックが回収されないままというのが何とも残尿感に・・・ |
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| No.116 | 7点 | 魔偶の如き齎すもの 三津田信三 |
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(2023/06/15 08:48登録) シリーズ長編ほどのねっとりとした重厚感や緻密さはないけど、ホラー風味の謎解きが楽しめる。ただ、本格視点で読むと少し物足りないかも・・・ 横溝や清張を思わせる独特の昭和感もよく出ている。 その昭和感についてイチャモンをひとつ。「敗戦」「敗戦後」というワードはあの時代にそぐわない。『終戦』、そして敗戦後でも終戦後でもなくただの『戦後』こそがあの時代の固有名詞なのだ。 |
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| No.115 | 3点 | 十角館の殺人 綾辻行人 |
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(2023/03/09 08:46登録) 「まだミステリの読書量が少ない頃に読んでいたら、それなりに楽しめただろう。」しかし私の場合、そんな時期はこの作品が世に出るはるか以前なので、この仮定法過去完了は事実上意味をなさない。 スレッカラシになってからの初読ではアラが目立って楽しむどころではない。 以下ネタバレします。 アラその1.設定が「そして誰もいなくなった」と同じであるだけならまだしも、犯人のトリックがアガサ・クリスティの別の有名作と「同じ」であること。ミステリのメイン要素である設定とトリックが同じ大家からの引用となると、これはもうオマージュや本歌取りでは済まされない。 アラその2.動機とその背景が後に出版される自身の有名作と「同じ」であること。複数の人物による悪ふざけが一人の死を招き、ある人物がそれに復讐するというパターン。 アラその3.クローズドサークルの中と外でそれぞれの話が展開されるという構成が上に述べた作品と「同じ」であること。 アラその4.小瓶の中の手紙という使い古されたネタ。真相開示の後に登場するのだから劇的な効果はないしエピローグとしても蛇足。 舞台設定、トリック、動機とその背景、構成といったミステリとしての要素のほぼすべてが過去の有名作の使いまわし、もしくは後に自身の作品で使いまわすミステリ作法をどう評価できるのだろう。 人物の造形や情景の描写が深ければまだそれなりに小説として楽しめたのだろうが、パズルミステリに肉付けをした程度ではそれも無理。 あえて誉めどころを探すとすれば、例の一文の置き方。まことに効果的ではある。 なお、新本格のムーブメントを起こした歴史的意義はここでは評価の対象外とした。 |
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| No.114 | 7点 | 黒真珠 恋愛推理レアコレクション 連城三紀彦 |
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(2023/03/07 08:37登録) 数か月前に出たばかりの、連城最後の新刊と銘打たれた単行本未発表の拾遺集。短編6編とショートショート8編。どれも連城らしいというか連城しか発想できないような作品ばかり。 お気に入りは恋愛ミステリ「黒真珠」と、ミステリ風味の「ひとつ蘭」。 「黒真珠」は真相が明かされると、それまでのセリフの一つ一つが一瞬にして色合いを変える、連城お得意の反転もの。 「ひとつ蘭」はあるきっかけでOLから旅館の若女将に転身した女の「恋愛根性ものミステリ風味」。昭和の人気ドラマ「細腕繁盛記」を連想する。と思ったら、掲載時の副題が「新・細うで繁盛記」だった。長編のような読みごたえ。 続く「紙の別れ」はその7年後を描く続編で面白い趣向だが、まあ余計かな。 ところで短編とショートショートでは小説作法が違うことに気づいた。 いい短編は起承転結あるいは起承結が手際よくまとまっているのに対し、いいショートショートは起承転としてあとは余韻となっているように思う。短歌と俳句の違いみたいなもんか。 ショートショートではあえてオチらしきもののない「花のない葉」が面白い。 どれも連城ファンなら読んで損はない。 |
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| No.113 | 5点 | 小さな異邦人 連城三紀彦 |
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(2023/03/04 17:36登録) 表題作を含む8編の短編集。 どれも連城らしい短編だが、本画ではなく習作を見るような感じがする。 着想に比べて話の展開がいまいち切れ味に欠ける。 中でも表題作はとても面白いアイデアなのだが、プロットが説明的になってしまっているのが残念。 いつもの流麗な文体と大胆な構成で読みたかったなあ・・・ |
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| No.112 | 2点 | 草原からの使者 浅田次郎 |
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(2023/03/03 08:41登録) わざわざ登録をして酷評というのもいかがなものかとは思うが、シリーズ第2弾なので、つられて読む人のために書評。 前作とは雲泥の差。あちらはミステリー風味の人情噺として楽しめたが、こちらはその風味もない。 この作者の俗っぽさが裏目に出ている。エスタブリッシュメントにはリアリティーがないし、下ネタはユーモラスというよりただ下品。暇潰しにもならないが、よほどヒマならまあ表題作くらいか。 |
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| No.111 | 7点 | 沙髙樓綺譚 浅田次郎 |
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(2023/02/25 07:56登録) 都心の高層ビルに設けた謎めいたサロンで語られる、百物語形式の奇譚5編。 あえて分類すればミステリ1編、スリラー2編、ホラー1編、倒叙クライム1編となるが、いずれも「~ 風味」とつけたほうがふさわしい。 お気に入りはヤクザの大親分が語る「雨の夜の刺客」。大出世のきっかけになったチンピラ時代の出入りを語る倒叙クライムだが、人情噺として読ませる。 泣かせの浅田として知られるが、ここでもたった一つのセリフで涙腺を不意打ちするワナが二か所仕掛けられている。 他には刀剣の真贋を主題にしたミステリ風味「小鍛冶」。真贋物は清張が得意だが、もう少しドライな持ち味で面白い。 もう1編、「立花新兵衛只今罷越候」。撮影のたびに現れる侍姿のエキストラ・・・ 暗くないホラー。 以上3篇は高得点だが他の2編がピンとこないのでこの得点。読んで損はない楽しい短編集。 |
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| No.110 | 7点 | 白夜行 東野圭吾 |
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(2023/02/23 08:19登録) 事件発生からエンディングまで、約20年の歳月をたどる重厚なクライムノベル。 (以下ネタバレします) 動機や犯人二人の関係性などの謎解き要素もあるが、本質は「けものみち」や「火車」に通じる犯罪小説だろう。 あまり得意ではない心理描写を省き、たとえと出来事だけで二人の関係を暗示するのがいい。 老刑事の迫力とくたびれ加減がいい味を出している。終盤、かつては容疑者の一人だった居酒屋の女将との会話の中から、事件の輪郭が浮かび上がってくるのが印象的。 エピソードが多すぎてそれぞれが必ずしも着地していないこと。トイレットペーパーの買いだめなど、各時代のトピックが多すぎてわざとらしいことを減点してこの評価。 |
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| No.109 | 7点 | オランダ靴の秘密 エラリイ・クイーン |
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(2023/02/17 08:41登録) ロジックが美しく、テンポもよく、多くの登場人物もよく整理されている。パズルミステリの完成形といえる。 ただし、ミステリのもう一つの楽しみである人間ドラマとしては薄味。名探偵が妙に浮き上がっているのに、対になる犯人はショボイ。ここはやはり存在感のある名犯人が欲しいところ。 |
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| No.108 | 5点 | ミス・オイスター・ブラウンの犯罪 ピーター・ラヴゼイ |
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(2023/01/29 13:57登録) 表題作を含む18編からなる、著者の第二短編集。 バラエティに富んだ第一短編集「煙草屋の密室」や切れ味のいい第三短編集「服用量に注意のこと」に比べると、同工異曲が目に付く。 状況説明に続くひねったエンディングというパターンなのだが、ひねりがいまいちでヌルい感じ。 唯一のお気に入りは「床屋」。これは「切れ味」いい。 |
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| No.107 | 4点 | 方舟 夕木春央 |
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(2023/01/28 13:57登録) ロジックの美しいミステリ。 本格ミステリと見せかけたサスペンスが本質か。 いかにもなクローズドサークル、しかもタイムリミット付き。いかにもな殺しの手口。いかにもな探偵。そして明かされるいかにもな動機・・・ こうして作者は我々の思考を本格ミステリのフレームにはめておいて、衝撃のエンディングをかます。 明かされた真の動機はシンプルかつ根源的なもの。犯人は途中はっきりと口にしている。 犯人の最後の告白も、状況を考えるとエグイ。衝撃度は強いがその分後味も悪い。 最大の減点要素は登場人物が記号的であること。その割に最後の大技には強烈な「情」が絡んでいること。全体が豊潤な物語性に支えられていれば申し分なかったが、すべてはラストの大ネタのための長い前振りとなってしまった。 それでもなかなか読み応えのある作品です。 |
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