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ミステリの祭典

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赫衣の闇
物理波矢多シリーズ

作家 三津田信三
出版日2021年12月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 5点 ALFA
(2023/08/03 14:58登録)
第二章まではプロローグ。終戦直後の闇市を描いて読みごたえがある。
その数年後を描く第三章からが本編。
ミステリーとホラーのハイブリッドが作者の真骨頂だが、この作品では肝心のミステリー部分が継ぎはぎで弱い。
シリーズ第一作のような重厚な本格謎解きが欲しかった。この動機と時代背景なら深い作品になり得たのに残念。

同年に出版された別作品は、ミステリーとホラーを見事に融合させた傑作である。そちらのシリーズの探偵らしき若者がチラッと登場するのは面白い。

No.2 6点 みりん
(2023/07/20 04:11登録)
むむ…どうやら物理波矢多シリーズの読む順番を間違えたらしいが特に問題はなし 

戦後の日本の闇市などがのさばる退廃的な雰囲気を存分に味わえました。どれだけ忠実に描かれているかはわかりませんが。物理波矢多シリーズはその時代のレトロな雰囲気と主人公の置かれた状況が魅力的です。刀城言耶は放浪してるだけなので…(笑)

そして切り裂きジャックや赫衣などは怪談としていつもより想像に容易くて怖いが、今回の殺人現場は三津田作品史上1番怖い(というかグロい)。動機はかなり攻めてるな〜という印象。ということで、作品の雰囲気やホラーは素晴らしいが、肝心の謎解きがほぼホワイダニットだけだとちょっと物足りなさを感じました。

No.1 6点 人並由真
(2022/02/23 07:30登録)
(ネタバレなし~少なくとも、謎解きミステリ部分に関しては)
 昭和22年の東京。少し前に九州の抜井炭鉱の周辺で怪異な殺人事件を解決したアマチュア探偵の青年・物理波矢多(もとろいはやた)は、ひさびさに再会した大学時代の友人・熊井新市から、ある相談を受ける。それは新市が懇意にする的屋(闇市の元締め)の親分、私市(さきいち)吉之助が仕切る闇市の街「赤迷路」に出没する謎の怪人「赫衣(あかごろも)」の正体を暴くことであった。吉之助をはじめとする赤迷路周辺の人々と親交を深めながら、これまでに起きた怪異な事件についての情報を集める波矢多。だがやがて、密室状況といえる殺人、そして怪人の出現、不可解な人間消失? 事件……が続発する。

 物理波矢多シリーズ第三弾。ただし作中の時系列としては、第一作の『黒面の狐』→本作→前作の『白魔の塔』の順番で、タイムラインが流れる。
 
 時代設定を戦後直後に据えた世界観ゆえ、昭和20年代前半の日本人の苦境や混乱図がみっちりと語られるのが本シリーズの特色のひとつだが、本作では「闇市」という主題を介して、特にその辺が色濃く語られる。

 厳しく凄惨な時代が描き出される一方、意外にしたたかな当時の人々の活力なども物語のなかには滲み出し、そういう意味での臨場感でいえば三作中、一番であろう。
(あと、この時代設定なら<いつかやってくれるであろう>とかねてより期待していた<かの趣向>がついに今回、ここで実現! というわけで<向こうのシリーズ>のファンの人は、こっちの路線も読んだ方がいいよ(笑)。
 まーなんかラノベの『緋弾のアリア』と『やがて魔剱のアリスベル』の関係性的な、マイナーシリーズにメジャーシリーズのファンを呼び込む作者の作戦というか、ぶっちゃけ客寄せパンダっぽい(中略)みたいな気もしないでもないが・汗。)

 で、ミステリとしては、例によって多重解決っぽいことをしてくれていいんだけれど、同じく昨年に刊行の刀城言耶シリーズの方の『忌名の如き贄るもの』が優秀作だった分、こちらは向こうの終盤のダイナミズムに比較してちょっと弱く感じてしまう。
 あと、何より肝心の真相が、いわゆる<短編ネタ>ぽくもある。そういう意味では、三作中、一番弱いか。
 くわえて、かなり大きな謎? が放っておかれたまま終わってしまったような……。
(個人的には、犯人の動機そのものは理解はできた。共感も賛同もできんけど。)
 
 今のところ本シリーズでは、ロケーションの求心性で『白魔』が一番スキ。でも僅差で残りの2つも、妙に惹かれる面はある。  

 評点は、他の作者だったら7点だけど、というところで、この点数。

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