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ミステリの祭典

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ALFAさんの登録情報
平均点:6.65点 書評数:204件

プロフィール| 書評

No.4 5点 夕萩心中
連城三紀彦
(2017/03/06 10:49登録)
(若干のネタバレ注意)
花葬シリーズの3編とコメディタッチのミステリ1編で、短編集としてのまとまりはない。
評点は「花緋文字」5、「夕萩心中」6、「菊の塵」4、「陽だまり課事件簿」5。
「夕萩心中」はこのシリーズらしい抒情的で重厚な作品。構図の反転も申し分ないのだが基本的なところで腑に落ちない。
心中というのは魂の純化の行為である。そこにこんな大きい不純物(不純な動機を持った嫌悪すべき人間)を伴うことはあり得ないと感じてしまう。
物理的にはともかく心理的には受け入れがたい「解」である。
「菊の塵」にはわからないところがある。何のために死者の服を着替えさせたのか?
どなたか解説してくれませんか?
「陽だまり課事件簿」はミステリとしてはともかく、ドタバタぶりがイタい。「どうです面白いでしょう?」と言われながら読んでるようで困ってしまう。
ドタバタはこの作者のキャラではないということか。


No.3 5点 恋文
連城三紀彦
(2017/03/06 10:17登録)
連城三紀彦「恋文」・・・字面を見るといささか気恥ずかしいが、中身は上質でやや薄味の人情噺5編。ミステリではない。
評点は「恋文」5、「紅き唇」6、「十三年目の子守唄」4、「ピエロ」5、「私の叔父さん」5
フェイバリットは「紅き唇」。謎解き(らしきもの)もあって後味はいい。
いずれにも読み手の予想を超えた「無私」の人物が登場する。
世の中に100%「無私で善意の塊」という人間はいないのだから、彼、彼女らを「無私」たらしめている「何か」がキモになると思うのだが、「紅き唇」以外はそれが希薄であるか、または無理がある。
「ピエロ」に至ってはそれが全く描かれていない。したがって読後はただむなしさだけが残る。
その「何か」が描かれれば深い話になると思うのだが。
ピエロもメイクを落とせば生身の人間になるはずだから。


No.2 8点 変調二人羽織
連城三紀彦
(2017/03/05 10:42登録)
作者自身のあとがきにもある通り、ぎりぎりまで犯人がわからない五つの短編。
評点は「変調二人羽織」8、「ある東京の扉」6、「六花の印」10、「メビウスの環」6、「依子の日記」8
フェイバリットは「六花の印」。明治と現代のカットバック構成が最後に辻褄が合うのが見事。トリックは物理的にきわどいが。
他は「メビウスの環」は怒涛の反転攻勢、「ある東京の扉」はミステリ風味のコメディ、とそれぞれ持ち味が違うのは楽しいが表題作を含めてやや「とっちらかった」印象は否めない。
表題作の美文調に名作「花葬」シリーズの予兆を見ることができるが。


No.1 10点 戻り川心中
連城三紀彦
(2017/03/05 09:53登録)
連城三紀彦はそのケレン味たっぷりなペンネームに恐れをなして敬遠していた。
もっと早く読めばよかった。
大正から昭和初期の時代設定、花をモチーフにした抒情的な五つの短編は、いずれも大仕掛けな構図の反転によって見事なミステリーになっている。
お気に入りは「戻り川心中」「藤の香」「桔梗の宿」。
表題作は、真の動機が明かされた瞬間、犯人の才能と肥大化した自我のありようが腑に落ちて、謎解きだけではなく文学創作の本質をも問う作品である。
「桐の棺」はチェスタトン張りの逆説的なトリック、「白蓮の寺」は構図の反転がともに見事だが、心理的にしっくりこない。
つまりこのような犯人がこの動機でこの犯罪をするか?と思わされる。
ディテールが美しいだけに残念。

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