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ミステリの祭典

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壜の中の手記

作家 ジェラルド・カーシュ
出版日2002年07月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 ALFA
(2017/04/02 17:27登録)
サイトのカテゴリーに「短編集(分類不能)」とあるがまさにその通り。サスペンス、ダークファンタジー、SF、ミステリ等々、むしろ分類することにあまり意味がないかもしれない。いずれも奇妙でブラックな持ち味の12の短編集。
作家自身も成功するまではパン屋、用心棒、賭け屋、レスラーを転々としたというから分類不能な人だったようだ。
メキシコのジャングルを舞台にした表題作「壜の中の手記」と孤島を舞台にした「豚の島の女王」の二編、ともに現代西欧のロジックが通じない状況での奇譚が傑作。
フェイバリットは表題作のほか、「時計収集家の王」。特にブラックではないが実在の王も彷彿とさせて不思議な読後感が楽しい。
ある短編を読んで思い出したこと。、高校時代生物を担当していたスペイン人の神父が、「私の宝物をお見せします」と言って見せてくれた。白い布に包まれていたのは、骨を抜いて乾燥させテニスボールくらいにシュリンクした真っ黒な首のミイラ。それも三個。ニューギニアで少し前まで(当時)作っていたとのことだったが、そんなもの作るほうも作る方だが、それを手に入れて宝物として所持できるカトリック修道士の価値観にも戦慄した。のどかな日本の高校生にはかなりのカルチャーショックだった。
なお、「ブライトンの怪物」は現代のコードからすればNGだろう。

No.1 8点 mini
(2009/05/11 09:30登録)
辛辣な風刺で有名な実在作家アンブロ-ズ・ビアスは、70歳の晩年にメキシコを旅行してそこで謎の失踪を遂げるのだが、未だに失踪の経緯は謎に包まれ現在でも色々憶測されている
作者カーシュがメキシコで、ビアスが最後に書いた手記を偶然手に入れた、という設定の表題作「壜の中の手記」はMWA短篇賞を受賞した
この表題作など、大いなるホラ話とでも言うべきイマジネーションに溢れた粒揃いの短編集である
中でも冒頭の「豚の島の女王」は、北村薫が”奇蹟のように生まれた作品”と評したのも肯ける、まさにカーシュでなければ書き得ない超傑作だ
以前は晶文社のハードカバーでなければ読めなかったが、現在では安価な角川文庫版が出ているので是非手に取っていただきたい
最近カームジンものシリーズの短編集が角川から出たが文庫版じゃないし、やはりカーシュの短編集の代表作は「壜の中の手記」だろう

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