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ミステリの祭典

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美女

作家 連城三紀彦
出版日1997年03月
平均点6.67点
書評数12人

No.12 6点 ボナンザ
(2022/01/21 23:11登録)
ミステリとしてはシンプルな内容だが、鬼気迫る感情と濃厚な心理描写で一気に引き込んでしまう怪作揃い。

No.11 6点 蟷螂の斧
(2021/07/04 14:53登録)
①夜光の唇 6点 浮気相手と結婚したが・・・女性はつくづく怖い?
②喜劇女優 6点 怪作?煙に巻かれた気もするが、ミステリーとしては好きな部類ではない。ただ、著者の技巧には敬意を
③夜の肌 5点 死に間際に妻が語ったこととは・・・他に方法があるのにそこまで?
④他人たち 4点 マンションで別々の部屋に住む家族の物語。オチがない
⑤夜の右側 9点 あなたの奥さんが、私の夫と浮気していると見知らぬ女がいう・・・これぞ短篇ミステリー。途中の仮説のオチでも面白かった
⑥砂遊び 4点 女優と男優の夫婦。それぞれが演じる男と女
⑦夜の二乗 7点 謎は面白いが、構成がよくないので著者らしい切れ味がなかった
⑧美女 5点 里芋のような女将を浮気相手に仕立てるが・・・芝居は成功?失敗?

No.10 6点 じきる
(2021/06/27 14:32登録)
連城ミステリの極北とも言うべき「喜劇女優」やミステリとして優れた「夜の右側」など、相変わらず技巧を駆使した短編を読ませてくれますが、作品全体としては玉石混淆にも思えたので評点はこれくらいです。

No.9 6点 ALFA
(2018/04/04 14:48登録)
連城三紀彦らしい反転が楽しめる8編からなる短編集。
共通するテーマは人間の外側と中身(?)の乖離とでもいうか・・・
フェイバリットは「夜の二乗」。もう少し長い尺で主人公の虚無感を丁寧に描いたら「戻り川心中」のような読みごたえのある中編になっただろう。
「美女」は男女の心の綾はとても味わい深いのだが最後のオチが物足りない。
「喜劇女優」は作者らしい技巧の粋を尽くした作品だが、ストーリーがトリックの説明となってしまっているため、読み疲れする。「幻戯」を連想したが中井英夫ならこのテーマで魅力的なダークファンタジーに仕立てただろう。
以上の3編と「夜の右側」が評点8から7。他の4編が評点5から4。

No.8 6点 まさむね
(2018/03/26 23:14登録)
 8篇から成る短編集。個人的な感想としては、ハマった作品と、そうでもない短編の両極端に分かれましたね。ベスト3は、順不同で「夜の右側」、「夜の二乗」及び「美女」。
 「夜の右側」は、いかにも連城らしい凝縮型の捻り。「夜の二乗」は、本格どっぷりの上質な連城作品。ある1点に意識が及ぶか否か。「美女」は、大人こそが噛みしめるべき作品で、これまた連城らしい。個人的には、ミステリー云々は措きつつ、最も記憶に残るかも。
 解説で一押しの「喜劇女優」については、その趣向は認めつつも、結末が想像しやすいし、何よりも途中から面倒くささが先立ってしまって、前述の3作品には及ばない印象。単純に私の読み方が浅いだけのような気もするのですが。

No.7 6点 take5
(2017/01/11 21:36登録)
7点は、「かなり楽しめた」という評価ですが、楽しむというより、文体の表現できる可能性について奥行きを学ぶという感じがします。学ぶのですので読んでいて疲れるのです。『喜劇女優』がその最たる作品でしょう。
戻り川を読んだ時は、その美しい表現にただ浸れば良かったのですが…

という訳で(訳ではないか)6点にかえます。

No.6 10点 斎藤警部
(2015/12/14 14:56登録)
性愛、それも同性愛や異常性欲(異常心理?)を大いに含んだ枠組みで進行する、文学性豊かな超絶反転ストーリーの数々。本格あり、サスペンスあり、日常の幻想あり。

そろそろ物語も切り上げの頃合いかな、それだと物足りないな、とふと思うタイミングで更に延びるストーリーの嬉しさ。ショートショートの感覚でサラッと終わってくれない嫌らしい快感。そして読者の進む先で作者が待ち構えているのに何度も遭遇する感覚、しばらく読み進んでから「ええっ!?○○=××だったの!?(←一人二役とは限らず)」等々。氏の偉大なる特徴の一つである’反転’も単純に最後の最後で引っくり返したよ、又は更にもっかぃやったよ、更に更にもっかぃもっかぃやったよ、ってのとは中身の上でも外形の上でも立脚点からまるで違う味わい深さ。そして本書にくっきり伺い見えるのが、本格興味を唆る、謎や伏線や解決の’対称性’への企画性あふれるこだわり。。

『夜光の唇』。。 本作だけは普通に面白い普通作。ただ終結の心理的グロテスクさはなかなか。分かりきった不倫劇に加えて同性愛者のキーマンが登場し、本書全体の傾向をあからさまに匂わせる。
『喜劇役者』。。 サスペンス→本格→叙述→サイコ→神秘の書 という流れ ?? 疾風怒濤の告白展開に翻弄されつつ’○○と××が同一人物って、ありえねぐね?’と、どこかで気付く。 そういや主人公(と思われた人?)の造形が奇妙につかめない。。こういうしっかりした積み重ねの有る連続反転なら好きだが、どこまで続くのやら。。最後は「輪廻の蛇」を心のどこかで想い出した。フゥ○○イットではなくフゥズフゥ(ホヮット?)。 まさか、筆まかせか? それとも、クリスティの向こうを張る企画ありきか。。?
『夜の肌』。。 サスペンスの冷気と人を宥す力の温かみが弾き合い引き合う、好きな類の短篇。
『他人たち』。。序盤いきなりの大反転を前提とし、物語は続く。日常の幻想、或いは日常の社会派かも知れない。
『夜の右側』。。 本格系も最高のセンス。その純度の高さが終盤を回るにつれ予想を超えた領域へ。。こんなビッグアイディアを一つの短篇に凝縮しちゃうんだから、しみじみ贅沢だ。贅沢過ぎて、むしろ多少緩んでも構わんから長篇で読んでみたかった気もする。
『砂遊び』。。 一瞬の反転に うっ 
『夜の二乗』。。 ありきたりからありきたらぬへの移行にスピーディな胸騒ぎ。何処と無く鮎哲の良品短篇を思わす。大枠も細部も。。と一種の油断をしていると後半あたりからぐんぐん鮎哲軌道から弾力を付けて遠ざかっている!! 最後は連城氏だけ隠し持つ蜂蜜壺の中へ放り出され。。奇妙な捩れくねりを見せてばかりの一方で、あわや絵空事一歩前の対称性へのこだわり。圧巻のハード本格と言えましょう。
『美女』。。 分からん奴には分かったつもりにさせて終わらせるのか。。と思えば最後に最高の優しさと寂しさで誰にも分かる〆。冷ややかで温かい話だ。いや、やはりこれは半分だけリドルストーリーなのだろうか。。 しかし秋田出身の不美人って。。故郷ではさぞかしマイノリティの悲哀を味わった事でしょうなあ。 振り返れば本作がいちばん心に残っています。

まとめよう。 演技・変態・対称性だ。 (LGBTを変態に包含する言葉の綾はまことに恐縮千万!)
反転に意味があって美しい。日本のクリスチアナ・ブランドはやはり彼だ。本当かな。 9.5点相当の10点を献上。

No.5 8点 あさぎ
(2015/06/19 06:26登録)
〝演技〟をテーマにした8編の恋愛ミステリー集。

何はさておき「喜劇女優」は一読呆然、二読三読してもなぜこんな趣向が成立してしまうのかさっぱりわからない、連城三紀彦以外は書こうと思っても書けないだろう空前絶後の怪作にして傑作。これを読まずして連城ミステリは語れない、連城三紀彦のひとつの到達点だ。
他にも〝殺人のアリバイを別の殺人で主張する〟という抜群に魅力的な謎にくらくらする「夜の二乗」、お家芸と言える構図の反転が鮮やかに決まる「夜の右側」、やたら複雑な計画をたてる犯人の視点で描く倒叙ミステリー(?)「他人たち」など、見逃せない作品が揃う。
色々な意味で、90年代の連城短編集を代表するに相応しい一冊だろう。

No.4 6点 E-BANKER
(2013/10/17 21:37登録)
1997年発表の作品集。
連城というと逆説に満ちた切れ味鋭い短編が思い浮かぶが、本作は恋愛系とミステリーの中間というような作品になっている。

①「夜光の唇」=ダブル不倫の夫婦。夫の前に現れたのは、妻が送り込んだ美貌の女性。当然の如く、夫はその女性に手を出すことに・・・。しかしながら、この女性には秘密が・・・。蓮城らしい”ひねくれた”プロット。
②「喜劇女優」=これは巻末解説で評論家の千街氏が絶賛していた一篇。確かに、他の作家では考えつかないような“ひねくれた”プロットだ。多くの登場人物たちが徐々に消えていく・・・
③「夜の肌」=癌に蝕まれ、風前の灯のようにやせ衰えていく妻。その妻を抱き寄せながら・・・ラストに重い一撃がやってくる!
④「他人たち」=これもスゴイ話だなぁ・・・。とにかく唖然とさせられるわ、この展開。「他人」のはずなのに、いつの間にか全ての関係者が肉親またはそれに準ずる人々になってしまう・・・。どんなマンションだ!
⑤「夜の右側」=これも①につづきダブル不倫のお話。男女のドロドロした恋愛系ストーリーに蓮城らしい“ひねくれた”仕掛けが加わるとこうなる。
⑥「砂遊び」=これはごく短い作品。ただし技巧はすごい。
⑦「夜の二乗」=これはミステリー色の比較的強い一篇だが、これもひねくれた仕掛け+男女ドロドロは同じ。
⑧「美女」=表題作だがあまり印象に残らず。これも不倫がモチーフ。里芋のような女性の顔っていったい??

以上8編。
なかなか読了するのに苦労してしまった。
何回も書いたけど、とにかくどの作品もドロドロ恋愛愛憎劇とひねくれたプロットの連発って感じなのだ。
さすがにここまで続くと食傷気味になる。
連城らしいといえばそれまでだが、もう少しミステリー寄りの切れ味を期待していたのでちょっと期待はずれ。

まぁそれでもレベル的には決して低くはないので、評価はこの辺にしておきます。
(ベストは②か④かな。どちらも他の作家には書けない、いや書かないだろう作品)

No.3 6点 シーマスター
(2011/10/23 23:11登録)
浮気、不倫をテーマにしたドロドロのミステリー風短編集。

やっぱり、この人の文体は自分には合わんわ、と改めて認識させられた一冊。
なにしろ短編なのに一つ一つの話が長く感じられてしまうのだから相性の悪さは言わずもがな。
各話ともプロットの巧みさには感心するが、この人が場面々々に絡ませる情景描写、比喩表現は概して不自然で無理付けな飾り物に思えるし、とにかくまどろっこしくてページをめくる手を鈍らせるハンプにしかなっていない。自分には。

・「夜光の唇」・・・凝ったドロドロ捻りだが心に響くものはなかった。
・「喜劇女優」・・・これは凄い話だ。おおよその展開は早々に読めてしまうが読み終わった時、予想を遥かに凌駕する大いなる○○感はデカルトの格言をも揺るがさんものがある。(大げさな)
・「夜の肌」・・・妻の臨終際のドロドロ劇。暗鬱この上ないが心に響かない。
・「他人たち」・・・前半の叙述だけ少し面白かった。
・「夜の右側」・・・これぞ連城ミステリーの真骨頂といえる構図のイリュージョン。推理作家協会賞だか何だかを受賞してもおかしくないレベルにあると思う。
・「砂遊び」・・・前半の叙述だけ少し面白かった。
・「夜の二乗」・・・ミステリー的には比較的よくできているが、心情面の要素がやはり個人的には打たれない。
・「美女」・・・カバーの紹介文から大いに期待していたが、割とありがちな展開。

先述のとおり好みとは言えないが、連城の職人技が詰まったこの短編集はもう少し注目されてもいいと思う。
やはりミステリーとしては若干主眼がずれているため本格ファンにはスルーされてしまうのだろうか。

No.2 7点 isurrender
(2011/07/12 23:07登録)
「喜劇女優」や「夜の右側」、「夜の二乗」はなかなかミステリとして面白い作品でした。
表題作「美女」は小説として良い話で、2時間ドラマ化されてもおかしくない話だと思います。

No.1 7点 江守森江
(2010/04/18 00:38登録)
恋愛(特に不倫)をテーマにした短編集。
八話全てが恋愛小説として読めるが、坦々と男女の機微を描けば必然的にミステリーになる。
しかも、描く作者が連城なら言わずもがな。
反転の繰り返した先がリドルな「砂遊び」・「美女」は結末にモヤモヤする。
反転はするが「他人たち」・「夜の肌」のオチは切れがない。
ラストがホラーまがいな「夜光の唇」も好みではない。
それでも、よくある手口を上手く処理し、反転の更に先を隠蔽した「夜の右側」・「夜の二乗」は正に連城ミステリの真骨頂。
しかし、ここまでの書評はオマケでしかない。
妄想が炸裂しながら何度も捻る超絶技巧と結末に、どれだけの読者がついて来れるか疑問な「喜劇女優」こそが、この作品集の肝なのは間違いない。
一読での理解と納得は、まずもって得られず頭が爆発するレベルで、読んで楽しい作品でもないが、作者の‘凄み’だけは存分に味わえる。
理解力と好みで最低~最高まで振れ幅のあるだろう‘特異’な作品。
作品集全体が鬱々として楽しくなかったので技巧面では満点だが7点に留めた。

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