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ミステリの祭典

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パメルさんの登録情報
平均点:6.12点 書評数:658件

プロフィール| 書評

No.198 6点 体育館の殺人
青崎有吾
(2018/03/20 22:24登録)
平成のクイーンと呼ばれるだけあり、現場に残された物証から次々とロジカルに推理し、消去法で犯人を特定する過程は、パズラー好きには十分楽しめると思います。
探偵役が、アニメオタクでノリが軽いためラノベ風な作品に仕上がっている点は好みが分かれるでしょう。(何を言っているのかわからない時があった)
巻末の選評で北村薫氏が、あることを指摘し、可能性をひとつにあっさりと切り捨てるのは乱暴だと述べていたが、この点は同感でした。


No.197 6点 マリオネットの罠
赤川次郎
(2018/03/07 14:03登録)
ユーモアミステリで有名な作者だが、この作品はそのような特徴は皆無で、ダークな雰囲気を存分に味わうことが出来る。サスペンス調に物語は進行しスピード感があり、意外性のある展開、そして終盤のどんでん返しと楽しませてくれる。
ただし、ある記述にアンフェアさを感じるところが残念。


No.196 6点 倒錯の死角−201号室の女−
折原一
(2018/03/01 14:43登録)
「騙されないぞ」と気合を入れて読んでみた。
まず、登場人物が奇人変人ばかりで魅力的。三人の視点で書かれた日記、独白による構成でサスペンス調にストーリーは展開し、最後まで飽きさせないし、真相に辿り着かせない点は見事。ある人物が語ったことに違和感を覚えるが、全体に仕掛けられたトリックは、見えそうで見えてこず最終的には騙されてしまった。
最後に明かされる叙述トリックの真相(オチ)は、人それぞれ意見があると思うが個人的には納得できない。
最後まで楽しませてくれた分、落胆も大きい。


No.195 6点 どんどん橋、落ちた
綾辻行人
(2018/02/16 00:59登録)
読者への挑戦を掲げた遊び心たっぷりの叙述トリック短編集。
アンフェアのように思わせておいて、地の文には虚偽の記述は無くフェアに徹している点は好印象。
ただし、「フェラーリは見ていた」は真相は完全に推理不可能だしオチも今一つ。
表題作では「十角館の殺人」でもおなじみの海外の有名作家が登場してくるし、「伊園家の崩壊」では、あの陽気な家族で有名な漫画がパロディ化されホラー色たっぷりで楽しませてくれる。


No.194 7点 時鐘館の殺人
今邑彩
(2018/02/10 00:58登録)
6編からなる短編集。
ガチガチの本格もの、サスペンス、ホラー、SFと様々なジャンルが楽しめる。
展開も二転三転したり、切れ味抜群揃いなのも嬉しい。
冒頭作品は山口雅也氏の、表題作は綾辻行人氏の作品を意識して書かれたのだろうが、単なるパロディに終わっておらず、作者らしい雰囲気に仕上げ緻密なパズルとして組まれており読み応えがあります。


No.193 7点 私という名の変奏曲
連城三紀彦
(2018/02/05 13:22登録)
七人の人間が、自分が犯人と確信しているという状況とはどういう事か?少し考えれば、思いついてしまうトリックだし綱渡り的で感心できないが、文章が流麗なため物語に引き込まれてしまう。
奇妙な状況の裏には、何か途方もない仕掛けがあるのだろうと読み進めるが全体像がなかなか見えてこないような描き方も上手い。
結局、加害者は誰なのかは、最後まで明かされず、それでいて謎があり解決があるというアクロバティックな趣向が巧妙。


No.192 8点 屍人荘の殺人
今村昌弘
(2018/01/29 13:53登録)
「本格ミステリ・ベスト10」「このミステリーがすごい」「週刊文春ミステリーベスト10国内編」全てで第一位。それに加え鮎川哲也賞まで受賞となるとさすがに読まずにはいられなくなりました。
この作品の設定は、現実離れしているため好き嫌いがはっきりと分かれると思うが、その点を受け入れられる方で、本格ものが好きな方は相当楽しめると思います。
合宿所近くでテロ事件が発生、同時に合宿所でも事件が発生する。この二つの事件に関係性はあるのか?また合宿企画時に届いた脅迫状の真意は?と惹きつけられる。
●●●を最大限に活用した殺人トリックは、今までにない斬新さで唸らされたし、それらを精緻なロジックで暴く推理も素晴らしい。
フーダニット・ハウダニット・ホワイダニットと最後の最後まで楽しめる。
次回作も期待せずにはいられないと思わせてくれた。


No.191 6点 強き蟻
松本清張
(2018/01/24 01:07登録)
夫の遺産を狙う女と彼女を取り巻く四人の男が入り乱れる物語。
自分の欲望を満たすためには、手段を選ばない女は男たちを手玉に取り、支配していく過程が読みどころ。欲望の激しさ、哀しさを冷たくリアルに見つめ作者らしいピカレスク小説に仕上がっている。
ただ利用される側が逆襲を図るラストは途中で想像出来てしまう点が残念。


No.190 6点 夢幻花
東野圭吾
(2018/01/19 13:42登録)
殺人事件の捜査が難航するなか、黄色いアサガオが事件に何らかの関係性があるのではないかという謎が浮上する。3人の視点で語られており、それぞれの人生模様が物語が進むにつれ複雑に絡み合っていき、謎が謎を呼ぶ展開で惹きつけられる。
リーダビリティも高く最後には、散りばめられていた伏線やエピソードが見事に回収されて鮮やか。
ただドラマ性やミステリとしての真相も強烈な印象を残すことはなかった。


No.189 8点 田沢湖殺人事件
中町信
(2018/01/12 02:00登録)
トラベルミステリっぽい安易なタイトルが残念だが、中身はガチガチの本格もの。
有名な作品群「●●の殺意」と比較しても決して引けを取らないという事で読んでみた。連続する殺人事件に過去の事件を絡ませ、密室トリック、フーダニット、アリバイ崩し、そして作者お得意の叙述トリックなど、本格ミステリの要素がたくさん詰まっていて楽しむことが出来る。
緻密なプロットにストーリー展開も二転三転し、これで決着と思わせてのもう一波乱を持ってくるなど驚かせてくれる。哀愁漂うラストも素晴らしい。


No.188 5点 ディレクターズ・カット
歌野晶午
(2018/01/06 01:20登録)
殺人鬼をテレビのやらせディレクターが追跡する物語。
物語に大きな仕掛けがあり、終盤で驚くことになるのだが、それ以上に面白いのはテレビとネットの関係でしょう。すでに終了しているコンテンツとしてテレビを見ているネット信奉者に対し、巨大なテレビがあるからこそネットが光っているのであり、テレビがなかったらネットの影響など大したことがないことを訴える。
犯人との対話や駆け引きをリアルタイムで中継しようとするテレビマンの独善的苦闘の一部始終が、単にトリッキーな小説としてではなく、社会派ミステリとしての広がりをもつ。テレビに対する大衆の肥大化した欲望と、それにこたえるべくいたずらに刺激を追求するテレビマンの姿が強烈な印象を残す。


No.187 4点 クリスマス・イヴ
岡嶋二人
(2017/12/23 12:49登録)
クリスマスに合わせて読んでみた。まあ、最初からそんな楽しいストーリーではないとわかっていたが、なぜ作者は、このタイトルにしたか全く理解できない。タイトルって大事だと思うんだけど。
昔、13日の金曜日というホラー映画がったが、それに近い感じでオチも大体予想できてしまう。
またその映画程、恐怖感は味わえないし展開力にも不満が残る。
ホラー小説と恋愛小説を合体させたような作品だがどちらも中途半端な感じが否めない。


No.186 5点 魔術師の弟子たち
井上夢人
(2017/12/19 01:22登録)
超能力をめぐるSFサスペンス。
パンデミック(感染症大流行)パニックものとしての緊迫感あふれる場面がいきなり冒頭から描かれ、たちまち物語に引き込まれてしまう。
中盤以降は、まさに魔法使いさながらの超能力を高め自分のものとしていく3人の姿がじっくり描かれると同時に、奇妙で異常な出来事が重なりサスペンスが増していく。どこに着地するのか、全く予想できない。
さらに後半、ウイルスと超能力の謎にまつわる生死をかけた闘いが、時空を超えてスペクタルに展開する。
奇妙なアイデア、いま目の前で起きているかのような緻密でリアルな描写、そしてあっと驚く意外性と良い所ばかり並べてきたが・・・。
謎解きのようなミステリとしての魅力は皆無に等しいし、(SFエンターテインメント作品と割り切れば良いのだが)冗長のため途中で飽きてきてしまう点が残念。(もう少しコンパクトにまとめられたはず)


No.185 7点 叫びと祈り
梓崎優
(2017/12/12 13:58登録)
世界を旅するジャーナリスト・斉木が遭遇した奇妙な事件をめぐる物語が5編収録されている連作集。
苛酷な環境や、特異な集団内で起こる出来事に対して、まずは謎とその推理が次々と示されていく。異国の気候や風景を記す文章も臨場感があり鮮やか。広大な砂漠、夏のスペイン、秋の修道院と毎回場所や季節は違っても、たちまち物語に引き込まれてしまう。
作者は、それぞれの土地の風俗や伝説、人々の習慣や信仰などをもとに、残酷な殺人、ロマンチックな謎、狂気の世界を用意し、毎回ラストで驚くべき真相を明かしている。日本人旅行者の視点を巧みに生かした語りもお見事。


No.184 6点 高層の死角
森村誠一
(2017/12/04 12:46登録)
企業間争いという社会的背景と怨恨、愛憎、金銭以外の動機を示した社会派ミステリのモチーフの中に、外側と内側の両方に鍵がかかった状態での二重の密室、アリバイ崩しという本格ミステリとが融合している。
乱歩賞選考委員は、密室トリックを褒めていたらしいですが、後半からの容疑者の鉄壁のアリバイを崩していくところが、やはり読みどころでしょう。
アリバイ崩しの攻略のヒントとなる発想も、特に不自然に感じることなく、刑事の執念による追及の演出の描き方は素晴らしい。
ただ、●●●を利用したアリバイに、少々不都合に思える点が残念。


No.183 5点 暗い宿
有栖川有栖
(2017/11/29 01:10登録)
取り壊し寸前の民宿、南の島のリゾートホテル、冬の温泉旅館、都心のシティホテルと宿屋ホテルを舞台にした事件を描いた四編からなる短編集。
雰囲気を味あわせて読ませる作品集で、ミステリとして秀でた作品は無く、また短編ならではの切れ味の鋭さを感じることは出来なかった。
特に残念だったのが「201号室の災厄」で、その場しのぎのパターンでのオチになっており、ロジックが売り?の作者とは思えない作品。


No.182 5点 真実の10メートル手前
米澤穂信
(2017/11/24 01:12登録)
「王とサーカス」のヒロイン、フリージャーナリストの太刀洗万智を主人公にした短編集。
ミステリ的には、電車の人身事故の背景を探る「正義漢」と高校生の心中事件に迫る「恋累心中」が良く出来ているが、ベストは豪雨による土砂崩れで孤立した家の老夫妻の秘密をめぐる「綱渡りの成功例」。
救出された夫婦を取材する話で、食事という、とりあげれば何でもない日常の出来事なのに、特殊な状況下では意味合いが異なる。あたかも罪のように捉え、人間がもつ営みの重さを静かに提示している。
アイデアが練られ、筆致は繊細で、プロットは驚きを秘めている。
ただどの作品も、テーマ・ストーリー共に地味すぎて「巧い」と感心させられる部分はあったが、「面白かった」という感覚は残念ながら少なかった。


No.181 8点 冤罪者
折原一
(2017/11/19 01:04登録)
このサイトで評価が高かったので読んでみた。
全体にわたり不穏な空気と緊迫感に包まれている。この何とも言えない雰囲気があるため、分厚い本でありながら長さを感じさせず、とにかく先を読み進めたくなる。
登場人物も個性的というか、胡散臭い人物が多く、誰もが怪しい人物と思わせるような描き方も上手く、意外性のある真相と結末は衝撃的。
多少ではあるが、エログロ描写があるため、それを受け入れられない人にはおすすめ出来ないが、サスペンスとしてとても優れた作品だと思う。


No.180 6点 真夜中の詩人
笹沢左保
(2017/11/13 01:08登録)
幼児誘拐事件が発生する。普通ならここで、犯人と警察との身代金の受け渡しなどでの駆け引きで、楽しませる展開なのだろうが、この作品は毛色が違う。
犯人は、何も要求しないどころか、さらに誘拐事件が発生するという展開で惹きつけられる。
ストーリーは進行するとともに、過去の人間関係が浮かび上がり、少しづつ謎が明らかになっていくが、肝心の誘拐の目的はなかなか見えてこない。
この作品は、誘拐された母親が探偵役となっているが、些細な手掛かりから真相に迫っていく姿は魅力的。
意外性があるといえばあるのだが、結末はあっさりしていて衝撃度は低い。


No.179 6点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2017/11/07 00:58登録)
汚職問題といった社会的な題材が扱われているが、単なる社会派の作風にはなっておらず、あくまでも本格志向の鮎川氏らしい作品であるといえるでしょう。
この作品も作者が得意としているアリバイ崩しの系列に属しており、捜査の進展につれ容疑者が絞られるが、その人物には鉄壁のアリバイがあるという設定で、これをどう崩していくのかが楽しみになってくる。
また女性が一種の探偵役として大きな役割を演じているが、これがなかなか魅力的。
ただアリバイ工作は、あまりにも偶然性に支えられていて危うい感じが残念。

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