パメルさんの登録情報 | |
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平均点:6.13点 | 書評数:623件 |
No.163 | 6点 | ノッキンオン・ロックドドア 青崎有吾 |
(2017/08/03 13:33登録) 七編からなる短編集 「不可能」担当と「不可解」担当の二人が主人公でそれぞれ得意分野を活かし補い合いながら真相に迫り事件を解決していく それは無いだろうという部分もあるがそれ以外はトリックのアイデアには唸らされるし新しさを感じる 特に「髪の短くなった死体」はどうしてこのような状況が生まれたかを現場に残された手掛かりから再現してみせ犯人を特定するところなどパズラーの傑作といえるでしょう このシリーズは続くようなので次回作も非常に楽しみだ |
No.162 | 7点 | 満願 米澤穂信 |
(2017/07/29 01:04登録) 切りつけてきた男を交番勤務の巡査が射殺した事件の真相に迫る「夜警」 いわくつきの温泉宿で拾った遺書の謎を解く「死人宿」など一作ごとに舞台や設定は異なるがいずれも奇妙で不可解な出来事とその真相を解くロジックが丁寧に書き込まれた六つの短編が収録されている 表題作「満願」は周到な伏線がしかれたうえで驚きの真相が最後に明かされる 「柘榴」・「万灯」は生身の人間が持つ心理をしっかり描きつつ思いも寄らない展開を用意している 個人的には「関守」が一番好みだが全体的に上質で読み応えのある作品が揃った一冊 |
No.161 | 6点 | 夜歩く 横溝正史 |
(2017/07/24 13:24登録) 旧家で発生する連続首無し殺人事件に複雑な血縁関係と男女関係が入り乱れ真相をなかなか掴ませてもらえない その登場人物も夢遊病者・酒乱で刀を振り回す老人・淫蕩な未亡人・佝僂(「くる」せむしの意)など個性派揃いで申し分ない またケレン味に満ちた道具立ても揃っておりワクワクさせてくれる要素が満載 そして誰もが開けられるはずのない金庫に保管していた刀が凶器として使われていたという不可解さに惹きつけられる ただ死亡推定時刻の解釈には不満が残るし佝僂に関しては身体的差別用語を文字面だけ残し読み方も意味も記述していないのは不親切に感じる |
No.160 | 5点 | イニシエーションラブ 乾くるみ |
(2017/07/18 13:49登録) 1980年代後半の静岡と東京を舞台に若い男女の恋愛を描く作品。 「クリスマスイブのシティーホテル」「ソフトスーツ」「男女七人夏物語」・・・と当時の世相を思い起こさせるキーワードが散りばめられ携帯電話が無い時代状況が恋が始まるじれったさやもどかしさを加速する 若さゆえのまっすぐさ・愚かさ・残酷さもストレートに描き引き込まれる 「これは伏線か?」と思う部分はあるが「次はどうなるんだ?」とページをめくるうちに疑問は薄れてしまう 読んでいる最中は素直でほろ苦い恋愛小説にしか思えない 最後の数行に差し掛かるまでは・・・ それにしてもあれだけ「必ず2回読みたくなる」と煽られ気をつけて読んだのにまんまと術中にはまってしまった 「再読のお供に」と題された解説・80年代の風俗を紹介した用語集もしゃれている ただ上手く騙された感はあるがミステリとしてはどうかと思う |
No.159 | 5点 | アムステルダム運河殺人事件 松本清張 |
(2017/07/13 23:43登録) 1969年の中編2編を収録 表題作は実際に起きた事件をもとに作者が再構成し推理を加えた作品 被害者は行方不明の被害者なのかと前半はドキュメンタリー調に事件を紹介している 後半になると主人公と医者の二人組で現地で迷宮入り事件を再調査していく展開 「死体が首と手首を切断されたのは何故か」の意表を突く真相には驚かされる ただ作品の性質上仕方がないといえば仕方ないのだが盛り上がりに欠ける点は残念 セント・アンドリュースの事件はアリバイ工作には鮎川哲也氏の前例あるトリックと江戸川乱歩氏ばりのトリックが融合している |
No.158 | 6点 | 黒い白鳥 鮎川哲也 |
(2017/07/08 23:41登録) 前半は疑わしい人物を多く配置し第二第三の事件が発生しフーダニットとして興味を抱かせてくれる また労働争議と新興宗教という社会的題材が扱われておりその状況がミスディレクションを容易にしている点が実に巧妙 ただ中盤になると容疑者は一人に絞られメインは時刻表トリックなどアリバイ崩しとなっていくためこの時点で個人的にはトーンダウンとなってしまった |
No.157 | 7点 | 殺人ドライブ・ロード 井沢元彦 |
(2017/07/04 01:12登録) 第一部では犯人による殺人計画の遂行課程そして第二部ではそのルートにそって探偵役が捜査し終幕にすべての事柄が暴かれるという最後まで息もつかせないようなテンポで進む展開に惹きつけられる トリック自体はある程度地理に詳しい方ならすぐにピンとくると思うし少し無理があるため感心は出来ない ただ冒頭のある部分と序盤に描かれた事実が後半に大きな意味を持ってくるという構成力は素晴らしい これですべて決着がついたと思わせておいての最後のどんでん返しは驚かされるしフーダニット・ホワイダニットとも十分楽しめる |
No.156 | 6点 | 轢き逃げ 佐野洋 |
(2017/06/27 01:02登録) 小紙文化面に掲載された追悼文で「骨法正しい謎解きミステリを現実社会と緊密に結びつける作風を松本清張氏より引き継ぎ発展させた第一人者は佐野洋氏にほかなりません」と宮部みゆき氏が語っている この作品も思いも寄らない事件により被害者・加害者またその周りの人物の人生が変容しそれによりフーダニットとしての面白さが増していく 本格ミステリであると同時にサスペンスでもあり新聞記者出身らしい社会派の視点も備えており現代社会の深淵をとらえた感性が光っている |
No.155 | 7点 | 赤い帆船(クルーザー) 西村京太郎 |
(2017/06/22 01:07登録) スケールの大きな企みが仕掛けられた海洋ミステリ 毒殺された被害者には彼を恨んでいた人物が数多くいた ただ真犯人は早い段階で想像がつくと思う しかしアリバイ工作はレベルが高く十津川警部補もいくつかの方法を思いつくが容易にアリバイは崩れず犯人の仕掛けた罠に嵌っていく展開 脇役の使い方も上手く被害者が犯人に●●●●●●を●●●●●●というのも面白い 余談ですが松本清張氏の短編「火と汐」のネタバレがあるので要注意 |
No.154 | 5点 | ジークフリートの剣 深水黎一郎 |
(2017/06/17 01:09登録) 怪しげな占い師は主人公には不気味な宣告をしそして婚約者には非情にも死の宣告をする この後この言葉がどう繋がっていくのだろうと惹きつけられる ただ婚約者は呆気なく死亡してしまうし最後の最後まで全くと言っていい程事件は発生しない 舞台の閉幕が近づいていく中オペラの蘊蓄とナンパな主人公が女性を口説き落とすという展開で物足りなさを感じる ミステリとしての魅力は少なく極論を言えば序章と終章で成立してしまうストーリー ラストの数ページでの構成は見事で結末も美しく巧さは感じられたが面白いとは思わなかった |
No.153 | 6点 | 房総・武蔵野殺人ライン 深谷忠記 |
(2017/06/12 19:30登録) タイトルからするとトラベルミステリのように思えるが実は本格的な法廷ミステリ それにしてもこの作者は●●・●●殺人ラインという安易なタイトルが多いですね 「もう少し考えれば」とお節介を焼きたくなる 旅情味は無くそしてアリバイ崩しやトリックで楽しめるわけでも無く地味な印象は否めない 事件の様相が新証言により次から次へと変化していく展開で巧みなミスリードにより真犯人に中々たどり着けないように仕組まれている ある人物の関係性が突然露になり推理する余地が無い点は残念だが意外性には驚かされる |
No.152 | 5点 | 眠りの森 東野圭吾 |
(2017/06/06 01:22登録) 華やかなイメージのあるバレエの世界だが現実はプロになってもお金を稼ぐのが難しく食事制限での体型維持を強いられるなど厳しくさらに閉鎖的な人間関係が当たり前というのを思い知らされる そのバレエ団を舞台にした殺人事件 正当防衛問題を含んだ事件とその後に起きた殺人事件との繋がりは何か?と興味をそそられる そしてバレエに情熱を注ぐ者たちゆえの悩みや憎しみがある真相に繋がっていく 後半に明かされる真相は美しくそして切ない また余韻が残るラストも素晴らしい ただミステリとしては淡々としていて盛り上がりに欠けるしトリックやフーダニットで驚かされるという事は難しい点が残念 |
No.151 | 6点 | スウェーデン館の謎 有栖川有栖 |
(2017/06/01 13:09登録) この作品はなんといっても消えた足跡トリックだと思うがそれを証明するためにいくつかの手掛かりをロジカルに組み立てていくさまが鮮やかで謎解きの面白さを堪能出来る 作者は海外のある作品に良く似たものがあると気付くが同じ足跡トリックでもルーツが異なるため大丈夫だと確信が持てたため発表に踏み切ったそうです ただ犯人の行動は無理があるしリスクが大きすぎると感じてしまった トリックよりロジックが好きという方にはお薦め出来ます |
No.150 | 5点 | 火の接吻 戸川昌子 |
(2017/05/27 01:18登録) 何が起きているのか何が起きようとしているのかが見えずらく幻想的で奇妙な作風が特徴的な作者 この作品も「消防士」「放火魔」「刑事」の三視点で微妙に繋がり微妙に食い違うため 現実と妄想の区別が定かでは無いまま進行していき少々読みずらさを感じる 人間関係の解明と謎の解明とが一体となった心理サスペンスで物語は二転三転する展開で楽しめる ただし伏線は弱いし何故●●●ンなのか何故●●●男なのかの謎は残ったままなところが不満 |
No.149 | 6点 | なんでも屋大蔵でございます 岡嶋二人 |
(2017/05/22 13:31登録) 五編からなる短編集で「日常の謎」の先駆けとも言われている作品 法を犯す事で無ければ依頼があれば何でも引き受けるというなんでも屋さんが難事件を次々と解決していく 主人公が飄々としているため全体的にホンワカした雰囲気が漂っており軽い感じがする点は好みから外れているが肝心の部分は細部まで計算された本格ミステリに仕上がっておりフーダニットとして十分楽しめる |
No.148 | 4点 | 二の悲劇 法月綸太郎 |
(2017/05/17 01:11登録) ノスタルジックな恋愛小説をミステリ風味に仕立ててみましたというような感じの作品 内向的な乙女の様々な葛藤がもどかしく語られた純愛小説でどうも肌に合わなかった ある真相は意外性があるがトリックやフーダニットで楽しむ事は難しいと思う 二人称叙述という変わった手法を用いており終盤に至るための語りとしては非常に有効的だったという点は評価出来る |
No.147 | 6点 | 密室20秒の謎 日下圭介 |
(2017/05/12 12:55登録) マンションのエレベーターを舞台に連続殺人事件が発生する 犠牲者はいずれも一人でエレベーターに乗りノンストップで一階に着くまでに殺されるという不可解な状況 マンションの住民は一癖も二癖もある人ばかりで興味をそそられる ただコンパクトな作品でありながらやたらと登場人物が多いため(警官を除いて30人ぐらい)名前と人物像が一致しなくなり混乱してくる 途中で諦め初めから読み返しメモする事にしました 些細な事件など散りばめられた伏線の回収も上手いしフーダニットとして十分楽しめる しかし密室トリックは好みから外れているし(西澤保彦氏のある作品に似ている感じ)全体に流れているヘンテコなユーモア感覚がどうも肌に合わなかった |
No.146 | 7点 | 奇面館の殺人 綾辻行人 |
(2017/05/08 13:56登録) あるインタビューで作者はこの作品の着想のきっかけは楳図かずお氏のホラー漫画「笑い仮面」と答えていた ただこの作品はホラー要素は無くどちらかと言えば初期の館シリーズに近いと思います 人の入れ替えはあったのか?そして妖しく揺らめく”もう一人の自分”の影など様々な想像を掻き立ててくれ惹きつけられる 探偵役は思いも寄らぬ仮説などあらゆる可能性を提示しそれらを一つづつ消し込んでいき真相に近づいていく推理の過程が楽しめる ハウダニットとしては中村青司設計ならではの館の秘密を堪能できるしフーダニット・ホワイダニットにしても最後の最後まで楽しませてくれる ただ皆さんが不満として指摘されている点は同感なところもあります |
No.145 | 6点 | 黒白の囮 高木彬光 |
(2017/04/30 00:59登録) 捜査陣を攪乱するためにあの手この手を使って周到に練られた計画殺人 様々な確執や人間関係が露になっていき全ての人間が怪しく思えてくる 読者への挑戦も盛り込まれておりフーダニットとしても意外性があるし二転三転する展開力で飽きさせません 冤罪者を一人も出さないをモットーとする「グズ茂」こと近松検事も味があって良い ただしあるトリックは特殊な知識が必要だしアリバイの崩れ方が偶然以外の何物でも無い所が不満 |
No.144 | 8点 | エコール・ド・パリ殺人事件 深水黎一郎 |
(2017/04/23 01:05登録) 密室殺人の謎を解く鍵は被害者自身が執筆した「呪われた芸術家たち」の中に隠されているという構成が見事 まさに芸術と本格ミステリの融合で個性豊かなキャラも楽しめる 散りばめられた伏線を一気に回収し終盤に明かされる真相は衝撃度が高い 芸術家たちの蘊蓄や作品の特徴・数々のエピソードが語られ芸術の興味を抱かせてくれる |