鈍い球音 |
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作家 | 天藤真 |
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出版日 | 1980年03月 |
平均点 | 6.83点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 8点 | 人並由真 | |
(2023/12/13 21:31登録) (ネタバレなし) その年の10月24日、木曜日の夜。関東の球団「東京ヒーローズ」の監督・桂周平が、東京タワーの展望台から忽然と姿を消した。東京ヒーローズはもうじき開幕する今期の日本シリーズで、関西の強豪チーム「大阪ダイヤ」と雌雄を決する予定であり、桂監督の失踪? は日本中が注目する大勝負の行方に関わる一大事だった。桂監督の消失の場に成り行きから立ち合っていた東京ヒーローズの若手ピッチングコーチ・立花は、監督の消えた現場で、とある<奇妙な遺留品>を発見。苦境の立花は世間には桂の失踪事実を伏せたまま、監督を探す協力を、高校時代からの親友で今は「東日新聞」のスポーツ記者である矢田貝今日太郎に頼むが。 半世紀前、ミステリマガジンの新刊評で、いかにも良作のように紹介されていた本作の元版(1971年の青樹社版。現状でAmazonに書誌データなし)。 その書評を読んで(バックナンバーで入手した号だったはず?)、なんか面白そうだ、と現物を買ったものの、いきなり会話の一人称で「俺」と言いまくるメインヒロインの比奈子に「なんじゃこりゃ」と怖気を覚えて引いてしまい、そのまま冒頭数ページで放り投げた。 以上、少年時代の忘れじの思い出(笑)。 ところが時は流れて、90年代~21世紀の現在。世の中には深夜アニメだのラノベだのギャルゲーだのの場で「僕っ娘」「俺っ娘」が当たり前に無数に群雄割拠する時代になっていた……。いやー、アイマス149の結城晴、可愛いねー(大笑)。 つーわけで数年前からイマサラながらに読みたくなって家の中を探していたが、例によって蔵書が見つからない(泣笑)。 つーことでネットで手頃な価格と状態のを探していたが、ようやくコンディションのいい古書(創元文庫の2022年の再版)を200円で購入。取り寄せてすぐ読み始めた。 でまあ、こういう設定・文芸の作品だから当然、そうなるだろうとは思っていたが、人間消失など謎解きの興味を必要十分以上に組み込ませた事件ものミステリとしての醍醐味と、日本シリーズの東西チームの連戦の行方のスリリングさ、その相乗具合が予想以上に面白い! これまで読んだなかでの国産野球ミステリの、マイ・最高作は佐野洋の『完全試合』だと思っていたが、たぶんこちらはもうちょっと打球の飛距離がある。 随所にツイストを設けた手数の多さ、登場人物の大半の存在感、そして終盤の……(中略)と、これまで読んだ天藤の長編作品のなかでは間違いなくベストだろう。 (あまり大きな声では言えないが、この時期にこの手の大技を使っていたのにも良い意味でボーゼンとした。) 動機に関しても、個人的にはかなり気に入っている。ある意味で、すごい21世紀的だと思うわ。 創元文庫の解説で倉知先生もちょっと似たようなことを書いてるけど、時代を超えた普遍性と、ホメ言葉としての昭和ティストが混ぜこぜになった優秀作。 何はともあれ、遅ればせながら半世紀以上経って読んでよかったぜい。 【2023年12月15日追記】 国産野球ミステリのマイお気に入りといえば、東野の『魔球』や河合莞爾の『豪球復活』あたりも、佐野の『完全試合』に負けず劣らずスキだった。まだ見落としがあるかもしれない。訂正・補遺しておきます(汗)。 【2023年12月18日追記】 大事なことを書き忘れていた。つーわけで、21世紀に「俺っ娘(オレっ子)」を語るなら、本作は原典? 原点!? としてマストである。 特にミステリファンで「俺っ娘」についてモノを言いながら『鈍い球音』を読んでないヒトがいたら、生暖かい目で見てあげましょう。 |
No.5 | 5点 | ボナンザ | |
(2023/04/02 21:03登録) 最近あまり見ない気がするスポーツものミステリ。 天藤らしいどこかユーモラスでそれでいて熱いところは熱い佳作。 |
No.4 | 5点 | パメル | |
(2019/03/26 11:08登録) 作者お得意のユーモあふれるミステリ。野球ミステリですが、野球のルールを知らなくても楽しめると思います。(知っていればさらに楽しめるという感じ) 日本シリーズ開幕直前に、プロ野球の監督が忽然と姿を消してしまう。トレードマークの髭とベレー帽だけを残して・・・。は?何このぶっ飛んだ設定は?と冒頭から引き込まれた。 失踪なのか?誘拐なのか?何か陰謀が絡んでいるのか?いろいろな憶測が飛び交うが、終盤まで明らかにされず飽きさせない。 また、男勝りの監督の娘を筆頭に、個性派ぞろいの登場人物にも魅力があふれていいる。 野球の勝負が決まると同時に事件も解決するという構成も素晴らしい。 ただ、人間消失トリックは見当がつけやすいし、動機も今ひとつ釈然としないところが残念。 |
No.3 | 7点 | itokin | |
(2010/02/05 12:31登録) 不可解な事件の理由付けなど上手く書かれている.テンポも良くユーモアもありサッと読むのには絶好の本だ。しかし、野球の嫌いな人にはどうかな? |
No.2 | 7点 | 江守森江 | |
(2009/05/24 21:01登録) プロ野球界を舞台にしたドタバタミステリー。 普通に書いてもユーモラスになるのが作者の真骨頂。 長嶋・稲尾の全盛期のプロ野球をイメージ出来ればより楽しめるだろう。 |
No.1 | 9点 | Tetchy | |
(2008/01/30 23:08登録) まず登場人物全てが魅力的。 次に最後の先の読めない展開。ベレー帽と髭を残して監督が失踪するという仰天の発端から次から次へと収拾がつかないくらいに事件は右往左往し、終章まで散らかりぱなしといった感じで読んでいる最中はどうなるの!?って不安になってしまったほど。 そして達者な筆捌き。ユーモアが滲み出るその文体は事件が陰惨なものであってもほのかに温かみを感じさせる。 昭和の時代のプロ野球界を舞台にしているので30勝投手とか出てくるのが時代を感じさせるけど、それもまた愛嬌でしょう。 |