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ミステリの祭典

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ロマンさんの登録情報
平均点:8.08点 書評数:177件

プロフィール| 書評

No.77 9点 密室キングダム
柄刀一
(2015/10/20 20:03登録)
伝説的な奇術師・吝一郎の復帰公演が、そのまま最初の事件…三重密室へと繋がり。そこから冗長さの欠片もなく次から次へと事件が起きる。密室、密室、そして密室。その全てが一つの舞台のように装飾的。機械的に密室トリックを崩せば、同時に心理的なトリックに陥る。真犯人に関してはチラッと頭を過っていたのだが、著者の目眩ましにまんまと嵌ってしまった。伏線もキッチリ回収してあり大満足な一冊。密室モノ好きさんには全力でオススメしたい。


No.76 8点 ジェゼベルの死
クリスチアナ・ブランド
(2015/10/20 20:01登録)
舞台という衆人環視の密室殺人に対しこれでもかと仮説をぶつけては事実が跳ね返す堅牢な謎のつくり。事件の中で容疑者達の隠してきた一面が露わにされていく追い込み方がえげつない。終盤の容疑者全員の自白という超絶展開から推理とその崩壊の連続はクラクラするほど。真実の手前まで明かしつつ否定させるミスディレクション、象徴だったものに意味をもたらす大胆すぎるあれの使い方、極限まで作りこまれたパズラーミステリー。


No.75 7点 陸橋殺人事件
ロナルド・A・ノックス
(2015/10/20 19:58登録)
あのノックスの十戒を作った作者らしい、探偵小説の手法でもって探偵小説のいびつさを笑うユーモアミステリー。事件関係者の迷惑も顧みず、警察への反発もあらわに行われる素人探偵行為により発見される新たな事実。しかしそれらはことごとく道化であり、結局は自分の推理に振り回されて存在しない影を追うだけのもの。より意外な方が真実らしい、というミステリーのお約束を痛烈に皮肉る、本当にすれっからしのファン向け作品。名作と言うより古くからある伝統の珍味といった感じだ。


No.74 8点 迷路館の殺人
綾辻行人
(2015/10/20 19:56登録)
推理作家達が集まる地下の迷宮。館の主の死から始まる劇的な幕開け、見立て殺人によって次々と退場していく作家達、迷路に仕掛けられた冒険小説的なサスペンスと盛り上がる展開の連続でわくわくしながら頁をめくった。冒頭で示されるフーダニットと、作中作と作中作中作による何重もの入れ子構造に何が現実か判断がつかずに惑わされる。意外な真相による驚きも強くて見事に騙された。若干アンフェアなのが欠点。情景描写が少ない代わりに館の雰囲気というのが出ていて、怪奇的な装飾にぞわぞわとした。シリーズ3作の中ではお気に入りの一作。


No.73 8点 葉桜の季節に君を想うということ
歌野晶午
(2015/10/20 19:51登録)
騙されたというより意表を突かれたという気持ちが強い。そういう方向性で認識を歪められていくのか、というか。初読の著者なので、序盤では説明が回りくどいこの書き方苦手だなと思ったりもしたが、話が時系列に並んでいない構成は「次はどんなことが明らかになるのか」と気になってどんどん読めた。『さくら』が敵側と無関係だとは思わなかったけれど、ああ繋がったときはスッキリした。最後まで読んで「うーん?」と思うところもあったものの、それなりに帳尻合ってるし伏線回収もしているし、ちゃんと筋の通った叙述モノとして成り立っていた。


No.72 7点 放課後
東野圭吾
(2015/10/20 19:41登録)
著者の江戸川乱歩賞受賞作品。初期の作品だけに、途中の伏線で結末が予想される。しかし、密室トリックを敢えてアリバイ成立のためのネタにしたり、真相を隠すための行為がいくつもあったりと、構成の凝りようは現在の作品の片鱗を窺わせる。読んでいて素直に楽しめた。動機については現実社会でも、くだらない理由で殺人が起きるので悪いとは思わなかった。


No.71 6点 トレント最後の事件
E・C・ベントリー
(2015/10/20 18:16登録)
タイトルからいくつかの結末を予想して読み進めていったのだけれど、見事にやられてしまった。発表年を考えると、「えっ、この時代にもうこういうのがあったんだ」という驚きがある。探偵小説に初めて本格的に恋愛要素を導入した作品、という前情報もある意味誤導になっていたものらしい。ひっくり返しの回数やタイミングもバッチリ、じつにスマートで小気味よい読後感になっている。この手の古典としてはなかなか愉しい作品だった。


No.70 8点 三つの棺
ジョン・ディクスン・カー
(2015/10/20 18:09登録)
密室殺人は本格推理の醍醐味。ありえないと分かっていても。ある夜、謎の客人の訪問を受けた教授は胸を打ち抜かれ、鍵のかかった部屋に他の人間はいなかった。辺りを覆う雪にも痕跡はない。続いて、やはり不可能と思われる殺人が起こる。犯人はどうやって犯行を行なったのか。主眼が置かれているのはハウダニットだが、被害者を始め登場人物の背景に漂う幻想的な雰囲気が、パズル的興味だけでなく小説として読んでも面白い。”密室講義”は「こんな昔にこんなことを…!」と、ある意味トリック以上に驚愕の一章(笑)。確かに古典であり名作。


No.69 9点 首無の如き祟るもの
三津田信三
(2015/10/20 18:02登録)
連続して発生する首斬り殺人。超常現象の如き複雑怪奇な事件を、論理的に解き明かす様は圧巻。シリーズ一作目の「厭魅」から、ラストで謎解きを二転三転させるのがお決まりだが、今回も見事にひっくり返している。一連の事件の犯人は明らかになったが、不可解な謎が幾つか残るホラー的な幕切れ。恐怖の余韻がいい。上質な本格ミステリとして、お勧めできる一冊。


No.68 7点 ドーヴァー 4/切断
ジョイス・ポーター
(2015/10/20 17:58登録)
ユーモアブラックミステリーとして世界的に有名な古典的名作。男ならいやー凄い本やと思うはず。最低の探偵(人間)としてという看板に寸分狂わず、ドタバタな状況の中、事件を解決してしまう所がミソ。メルカトルを越えたクズの探偵の迷推理とそれが当たってしまう状況、動機、クズさ、ドタバタに大いに笑いこけた。


No.67 8点 悪魔が来りて笛を吹く
横溝正史
(2015/10/20 17:55登録)
旧華族内で起こる連続殺人。近親相姦という禁忌も退廃的な雰囲気に拍車をかけていてより一層物語が際立つ。犯人はそりゃ悪魔になるわって感じで被害者こそが本当の悪魔にしかみえなかった。救いのない話の中で美禰子が最後に見せたたくましさはただ一筋の希望であったように思う。最後の最後でタイトルの意味がわかってぞくりとした。


No.66 9点 五番目のコード
D・M・ディヴァイン
(2015/10/20 17:47登録)
章の間に殺人者の告白を挟みながら連続殺人が進行する構成は適度なサスペンがあって物語りに引き込まれる。人物造形も巧みで面白い。ある程度ミステリに親しんだ読者なら真相に気付くのは用意だけど、それも本格ミステリの骨法を守ってるからこそ。上質なミステリを堪能させて頂きました。


No.65 9点 赤い右手
ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ
(2015/10/20 17:42登録)
脚のねじれた男=コークスクリューはどこに消えたのか? 彼の姿を多くの人が目撃したのになぜ語り手だけが見なかったのか? この小説では大勢の見たものを一人だけが見ないという事態が起こる。ミステリとしてアンフェアだという評価もあるようだが、私はそうは思わなかった。手掛りと真相との間に齟齬はないし、事件の全貌もきちんと筋が通っている。いわゆる叙述トリックとは一線を画しながら、文体のレベルで謎に巻きこむ腕前は見事だ。


No.64 8点 死の扉
レオ・ブルース
(2015/10/20 17:39登録)
英国のとある小間物屋で深夜、二重殺人が発生。店主のエミリーと、巡回中のスラッパー巡査が犠牲となった。歴史教師をするキャロラスは、教え子プリグリーに焚きつけられて、事件を調べることに。読みやすく英国らしさを感じれる。推理やトリックより魅力的なキャラクターによる解決までの冒険小説として読むほうが楽しめるかもしれない。しかし二重殺人の真相には驚かされた。お気に入りのキャラクターは教え子のプリグリー、偏屈だがミステリに目がない農場主 リンブリック氏、勿論名探偵 キャロラス・ディーンも素敵だった。


No.63 8点 空飛ぶ馬
北村薫
(2015/10/20 17:35登録)
落語と文学をこよなく愛する女子大生「私」と頭脳明晰な落語家・円紫さんが日常の謎に挑むシリーズ第一作で北村薫のデビュー作。以前「私」の女の子らしからぬ語り口に引っかかりを感じたのだが、彼女が落語の影響を受けている設定だとすると違和感はない。連作5篇中「砂糖合戦」が傑作。悪意や人間の厭らしさも描かれるが、最終話を温かみに充ちた表題作で締める構成の妙が良い。


No.62 7点 バイバイ、エンジェル
笠井潔
(2015/10/20 17:32登録)
現象学、哲学、思想的な対話。アンチミステリという要素。思想家・哲学者としての一面もある著者の、あらゆるものが詰め込まれていた感じ。小難しいのかと思いきや意外と読みやすかったが、物語全体に漂う陰惨で重苦しい空気には少々疲れた。首の無い死体、爆破された死体、不在証明を絡めたトリックも面白いけれど、犯人との思想的な対決という構図がまた面白かった。


No.61 10点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2015/10/20 17:28登録)
圧倒的なトリックで本格ミステリとしての存在感を見せつけながらも、決して物語をおざなりにすることなく重厚な人間ドラマを描き出し、読者に大きな驚きと感動を与えている。この作品はミステリ小説でも恋愛小説でもなく、まさに「容疑者Xの献身」について書かれた小説であったのだと感じた。悲哀に満ちた結末が強く胸を打つ。リーダビリティの高さもさすがである。なぜ東野圭吾がこれほど多くの人に読まれているのか、その答えを見つけられたような気がする。


No.60 8点 ホッグ連続殺人
ウィリアム・L・デアンドリア
(2015/10/20 17:07登録)
アメリカ北部の田舎町で起こる連続殺人事件。一見事故と思われる事件後に犯人HOGからの犯行声明が届く。HOGとは誰か?なぜ、隠ぺいできる事故を故意に手紙で知らせるのか?MWAの最優秀ペーパーバック賞を受賞し、各ミステリ雑誌の読者投票などでもオールタイムベストにランクインしている作品だけあって面白かった。第一の容疑者の秘密は容易に想像できたが、真相はなるほど。最後のHOGの意味も納得した。ちょっと偶然に頼っている感はあるが、突っ込みどころはそのくらいか。


No.59 8点 俳優パズル
パトリック・クェンティン
(2015/10/20 16:56登録)
舞台劇の練習中にトラブルが起こり果てには殺人も発生。一連の事件を解決しつつ劇を無事開演させようとするミステリなのだが、臨場感溢れていてエンターテインメント性も高く、謎が少しずつ明かされる構成は巧みであり、終盤の解決編では伏線を綺麗に回収して最高のエンディングを演出していた。道中も飽きさせず、登場人物が一人一人キャラが立っているのも良い。


No.58 10点 シャーロック・ホームズの冒険
アーサー・コナン・ドイル
(2015/10/20 16:54登録)
どの話も完成度が高く、面白い。ホームズの観察眼の鋭さに、ついつい自分まで眉間にしわを寄せて読んでいた。ホームズの推理ももちろん魅力的だが、相方ワトスンの存在もやっぱり欠かせない。あまり関係ないが、ホームズの部屋はいったいどんな匂いがするのだろう。煙草の煙や化学実験でとんでもない事になっていそうだ。

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