ロマンさんの登録情報 | |
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平均点:8.08点 | 書評数:177件 |
No.117 | 9点 | オリエント急行の殺人 アガサ・クリスティー |
(2015/10/21 10:54登録) 雪に閉ざされたオリエント急行の中で一人の男が殺された。体にはバラバラの十二の刺し傷。乗客は十二人。果たして犯人は誰なのか、そしてバラバラの傷が示すものは・・・。言わず世知れたアガサ・クリスティの代表作の一つ。『アクロイド殺し』と並び、推理小説をもっと自由な存在へと導いてくれた作品。 |
No.116 | 8点 | 夜の蝉 北村薫 |
(2015/10/21 10:44登録) 日常の謎ミステリー。 『空飛ぶ馬』からはじまる「私と円紫さん」シリーズの第二作。『空飛ぶ馬』より、洗練されていて、読みやすくなっているように感じた。『夜の蝉』は3編収録されてるが、どれも伏線が非常に巧妙で、読後は爽快であったり、複雑で考えさせられるものもあったり。 どれも余韻が残るものばかりで、一日に一編ずつ三日かけて、丁寧に読んでいった。 ミステリーファンは好きになれる一冊だと思う。 |
No.115 | 8点 | だれがコマドリを殺したのか? イーデン・フィルポッツ |
(2015/10/21 10:03登録) タイトルからだと、童謡殺人ものかと推するも、半ばまではミステリ的な展開すらなく、しかし、巨匠の代表作と帯に書いてたしなー、と思いながら、中盤を過ぎ、後半、ラストとどんどん加速する展開に最後は一気読み。間違いなく王道のミステリであった。流石に書かれた年代なりのトリックで現在では不可能な犯罪ではあるが、ミステリの本質という観点からは問題なく楽しめる作品だ。 |
No.114 | 6点 | 十日間の不思議 エラリイ・クイーン |
(2015/10/21 10:00登録) 時々記憶を失う旧友ハワードの頼みに応えて、彼の屋敷に滞在することを決めたエラリイ。そこでエラリイはハワードからある秘密を告白され、脅迫事件に巻き込まれていく。緊張感のある家族関係を綿密に描いた人間ドラマと、エラリイの人間くささに読み応えがあり面白く読んだ。思うことをまとめると、探偵は起こった事件を問題文として、論理的に解を導くことはできても、まだ事件が起こってない(どれを解くのか決めていない)ようなときには、推理をしても問題文が全文ではないので正しい解を導けないのではないか、と思った。 |
No.113 | 8点 | 密室殺人ゲーム王手飛車取り 歌野晶午 |
(2015/10/21 09:57登録) 究極の推理ゲームのためだけに交代で殺人を実行するという悪趣味とも取れる設定。出題者=犯人=解答者、というのは新鮮だった。犯人は既に分かっていて、動機はゲームのため。純粋にトリックのみを追求するという点が楽しめた。短編集のような構成になっていて、いくつもトリックが楽しめるところが良かった。あのようなラストになるとは思わなかったので続きが気になって仕方がない。どこか狂っている登場人物たちだが、読んでいるうちに愛着が湧いてくる。頭狂人とザンギャ君のやりとりが好き。お気に入りは「生首に聞いてみる?」 |
No.112 | 8点 | 11枚のとらんぷ 泡坂妻夫 |
(2015/10/21 09:52登録) 奇術師たる作者の本領発揮となる作品。 華やかなショーと裏腹にトラブルにまみれた舞台裏。そして起こる殺人事件は本書と同名の同人小説が小説内小説を通して殺人事件が明らかになっていく。 さながらマジックのように目を奪われていると最後の解決にはすべてが繋がりはっとする。 内容的には短編集半分なのだが全体を通すと非常に軽快なミステリーとなっており楽しんで読み進めることがて来た。 |
No.111 | 9点 | 黒い白鳥 鮎川哲也 |
(2015/10/21 09:49登録) 非常に面白かった。前半は本庁の刑事二人による事件の概要把握に費やされ、後半からはいよいよ我らが鬼貫警部によるアリバイ崩しへと流れこんでいく。理路整然とした推理の上に成り立つアリバイ崩しには興奮せざるを得ない。苦心惨憺して手がかりをつかもうとするその過程と、その結果からもたらされる一喜一憂にこそ、アリバイ崩しという一ジャンル、ひいては鮎川哲也という大作家の醍醐味が隠されているのだろうと個人的には思う。 |
No.110 | 8点 | 生ける屍の死 山口雅也 |
(2015/10/21 09:47登録) 死者が蘇る世界。理由は不明。そんな世界で殺人事件が起きる。何故そんなナンセンスなことが? という感じの謎で引っ張っていく斬新なミステリ。著者が博学なこともあり、死と死体に関する知識も作中に散見される。これはミステリ小説にとって理想的な姿ではないか。死体を扱った思考ゲームでありながらロジックやトリックばかりが重視されているのはどうなんだろう、という疑問を持っていた私にはそう思えてならない。でも長い。が、投げてしまおうかと思ったところで大笑いするようなギャグを挟んでくるので読んでしまった。上手い構成だと思う。 |
No.109 | 8点 | 福家警部補の挨拶 大倉崇裕 |
(2015/10/21 09:44登録) 冒頭で犯人視点で犯行の一部始終を描く倒叙形式のミステリ。物語の主役は犯人であり、捜査を担当する福家警部補はいつの間にかそこにいて、あらゆる情報を握り、淡々と犯人を追いつめるだけ。その姿は機械のようで人間味も現実味もない。実は良心の呵責に苦しんだ犯罪者達が福家という幻覚を見て自首して自白しているのではないかとすら思えてくる。警察という組織を知り尽くした元科警研主任の犯罪「オッカムの剃刀」、稀覯本への愛と献身故に施設図書館長が犯した「最後の一冊」が特に面白かった。 |
No.108 | 6点 | 夜歩く ジョン・ディクスン・カー |
(2015/10/21 07:21登録) ジョン・ディクスン・カーの処女作品。精神異常者のローランは妻のルイーズを殺そうとするも未遂に終わり、収容されるも妻が再婚することを聞き脱走する。その執念は恐ろしいものでローランは整形をしてその整形を施した医者を殺害し闇にまぎれる。ルイーズの新しい夫でスポーツマンのサリニーは脅迫状まがいな物を送られ、その影に恐怖し、身の安全のため警察に身辺警護される中、殺害される…地の部分に恐怖感を漂わせすぎているわりに、事件のトリックは拍子抜けだが、確かに拙いながらもディクスンらしさが凝縮されてる一冊だった。 |
No.107 | 8点 | 吸血の家 二階堂黎人 |
(2015/10/21 07:13登録) 24年前に起きた犯人の足跡がない雪の中での殺人、南京錠で閉ざされた完全な密室での殺人、美人三姉妹の出生の秘密、江戸時代から遊廓を営んでいた旧家の血塗られた過去など道具立てが横溝正史っぽくドロドロした不気味さを出してる。特に雪の中の足跡のない殺人のトリックが秀逸。トリックとロジックが巧く噛み合った著者初期の秀作といえる。 |
No.106 | 7点 | 殺人方程式 綾辻行人 |
(2015/10/21 07:06登録) 首なし死体、視線の密室、意外な犯人…と盛り沢山のミステリ。死体が苦手ですぐに具合が悪くなってしまう刑事、トンデモ推理を披露しまくる奥さん、弟のふりをして現場に出入りしまくる自由過ぎる双子の兄…とユーモアもたっぷりでテンポも良く、気軽に楽しめた。トリックはそんな馬鹿な…というような大掛かりなものだが、犯人のある事情と照らし合わせると、なるほど合理的と思える部分もあり、ただ無理矢理大物トリックをぶち込んだだけではないのは見事。『方程式』がまさに教科書に書かれているような『方程式』だったのにはビックリ。 |
No.105 | 9点 | りら荘事件 鮎川哲也 |
(2015/10/21 07:03登録) 日本の古典ミステリの著名作。名前は至る所で聞いていたのですがようやく読めました。山荘の連続殺人もの(非クローズドサークル)なのだがが、諸々の謎の作り方が物凄く巧み。なぜ犯人はトランプを現場に残していくのか?という大きなものを始め、実に様々な謎や疑問が散りばめられているが、これが一つ二つ解け出すと連鎖反応のように一気に他の答えに結び付く。この辺り傑作だと言われる所以はよく分かった。 |
No.104 | 7点 | 死の舞踏 ヘレン・マクロイ |
(2015/10/21 06:59登録) 探偵役である精神科医ベイジル・ウィリング博士登場。発端は大雪の夜雪溜まりで発見された若い女性の遺体。凍えるような夜にも関わらず遺体は発熱したように熱かった。ウィリング博士得意の人間観察から犯人に辿り着く。展開は暢気なほどゆったりとしているのに結末はどんでん返しなのだ。様々な事実を示す伏線が見事に張られているのに気づけなかった。十分楽しめる作品である。 |
No.103 | 7点 | 猫は知っていた 仁木悦子 |
(2015/10/21 00:21登録) 兄と一緒に郊外の医院の院長の娘幸子にピアノを教える事で別室に間借りする妹の悦子。悦子がチミ(猫)を探す事でおばあさんは事件の目撃者となり殺害される。犯人最有力の入院患者平坂から電話をもらうも失踪。院長と秘密を共有する看護婦の家永。暗い防空壕の壁のくぼみに眠らされたチミが家永を殺す事に。両親に死なれた後に同居している無口の桑田ユリ。演劇部の集金の紛失とそれを守ろうとしたおばあちゃん。院長による誤診の告白。兄妹の探偵が爽やかなので連続殺人事件が起こっているのに暗さを感じない。ラストで見せる兄の推理は緻密に計算されている。 |
No.102 | 8点 | サイロの死体 ロナルド・A・ノックス |
(2015/10/21 00:17登録) 大量の極め細やかな伏線、ひねくれたプロットが絡みあった、まったく無駄なところなんてないような練りこまれた作品。ストーリーはやや平坦だが、伏線やオチの皮肉はなかなか効いていたと思う。結末に至る過程でも、おかしな手がかりにニヤリとしたり、ブリードンの論理遊戯に酔いしれたりと楽しませてもらった。 |
No.101 | 7点 | スペイン岬の秘密 エラリイ・クイーン |
(2015/10/21 00:12登録) スペイン岬と呼ばれる場所の邸宅で招待客の1人が殺されていた。しかも裸で。どうして裸にされたのか?それと同時にローザと叔父が誘拐される。読者への挑戦状としては易い難易度。動機の無い無人の場所での通り魔が最も完全犯罪に近くありながら、我々は論理的思考への挑戦に強く傾倒する。その不可能性と可能性との狭間に、希望の光を見出している。そしてそれ故に、完全犯罪は偶然によって破られ、同様に探偵も偶然によって惑わされる。破られてなお犯罪を行う犯人と、惑わされてなお偶然と必然のハイブリッドたる現実に完全な論理を形作るを求める探偵に、我々は心酔する。これぞ本格。これぞミステリ。 |
No.100 | 8点 | ふたたび赤い悪夢 法月綸太郎 |
(2015/10/20 23:33登録) アイドル歌手有里奈を襲った悪夢の一夜。刺されたはずの自分が生きていて、刺した側の男の死体が発見される。ボリューム感たっぷりの本作ですが、次々と新展開が続くため飽きずに読了した。家族のことで自分の殻にこもってしまう有里奈と、前作の事件で探偵としての自分を見失ってしまった綸太郎が、今回の事件を通じて徐々に自分を取り戻していく姿が良かった。二転三転する展開も楽しめた。 |
No.99 | 6点 | 帽子から飛び出した死 クレイトン・ロースン |
(2015/10/20 23:27登録) 奇術師探偵グレート・マリーニ。密室で殺害された被害者。現場らから逃げた容疑者は警察の尾行も巻き消えた。しかし、密室で死体となって発見された。密室の謎は複雑で…。第二の殺人事件は…。容疑者のほとんどが奇術師や霊媒師という豪華なお膳立て。これしかないという説明が見つかったかと思うと、それをひっくり返す仮説がもちだされる。最後のなぞ解きには不満もあるけれど、それでもここまでの見せ方は面白いというほかない。 |
No.98 | 8点 | 螢 麻耶雄嵩 |
(2015/10/20 23:23登録) 語り手と某登場人物の一人称に違和感を抱きながら読み進めるも騙された。読者は当然のように知っている内容を登場人物達が知らないがために騙される、という話を事前に聞いていたがこういうことか、と。ラストの場面は、十年前の事件と対応させるならある意味綺麗な終わり方といえるのかもしれない。内容に関していえば後味が悪いが、文章に隠された叙述の罠に注目しながら謎解きをする、という意味では楽しめる作品であると思う。 |