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ミステリの祭典

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帽子から飛び出した死
グレート・マーリニ

作家 クレイトン・ロースン
出版日1957年01月
平均点6.18点
書評数11人

No.11 5点 クリスティ再読
(2024/03/04 20:09登録)
マジックでは「種明かしは絶対にするな」と教えられるのだけど、その理由はというと「種明かしをしても、それを聞いた観客は絶対に感心したりしないし、それどころか汚いトリックに引っかかったと幻滅するのがオチだから」。本作の評者の評価もそういうあたり。マジックは現象の派手な不思議さで押し通すことができるわけだから、種明かしなんて損なことをする理由がないのだが、ミステリはそうはいかない。

まあ本作、ホント小説としては退屈で読みづらい。登場人物も多くて、しかもすべてマジック業界関係者、人物の区別もつきづらい....いや刑事だって全部律義に名前を出していたりして「誰?」となることもしばしば。密室と準密室、さらにちょっとした人間消失とか、派手な現象はあるし、クライマックスにマジックショーを持ってきて、とある有名技を披露。だから「現象の派手さ」はあるんだけども、楽しさとかサスペンスを全然醸し出さない。「11枚のトランプ」ならアマチュア・マジシャンにしたために話が楽しくなったのとは好対照。プロのマジシャンが容疑者だと、何をしても疑われるし意外なことをしても驚きとかあるわけがない。本当に損だ(苦笑)

mini さんが書かれた本書の頃のアメリカのパズラーの歴史話はまさにその通り。アメリカでパズラーが人気だった時期はほぼ10年程度で短くて、本作はその最末期の悪例みたいなものだと思った方がいいだろう。

No.10 6点 ◇・・
(2024/01/10 18:46登録)
探偵はマジシャンのグレイト・マーリニ。降霊術の最中に完全密室の部屋で人が殺されるという謎だが、その見せ方が上手い。密室談議や理系の人間なら一度は聞いたことがある数学の問題など、様々な蘊蓄が文中にたくさん出てくるのも楽しい。

No.9 5点 文生
(2017/11/09 16:44登録)
プロのマジシャンだけあって不可能犯罪を構成する手段は巧みではあるけれど、それがあまりにも堅実すぎて真相が明らかになった際のサプライズにつながっていない点が残念。その辺が種明かしを必要としないマジックと種明かしがクライマックスとなるミステリーとの差であるように感じました。同じ不可能はでもカーなどと比べるとけれ見不足であり、ストーリー自体もこなれていない感があって読みにくかったので点数は低め。

No.8 6点 ねここねこ男爵
(2017/11/04 13:48登録)
うーん普通に素晴らしいけど普通です。密室ものですが、真価はそこ以外かと。出来はいいですが特筆すべきところもなく、評価は高いですがマイベストに上げる人はいないみたいな。
「密室講義」にひとこと言いたかったみたい。
アマゾンが未整備な時代にあちこち探しまくってようやく入手した思い出がありますが、そこまでして読むべきかというと…

No.7 6点 はっすー
(2017/09/21 19:14登録)
クレイトン・ロースンの作品は短・中編作品しか読んだことが無かったのでこれが初長編でした
内容としては密室殺人・人体消失・足跡の無い殺人などと盛りだくさんで各々の真相もなかなか
特に最初の密室殺人は最後の最後までその謎を引っ張るのでトリックに期待してたらまさかの真相…見事に騙されました
ただ難点としては登場人物が無駄に多い気が…確かにフーダニットとしてはある事がわかれば一発なのですが…

No.6 6点 mini
(2016/09/28 10:02登録)
創元文庫ではこの時期毎年恒例の秋の復刊フェアである、昨日27日から”復刊応援キャンペーン”というのが始まった
まぁ別に大したキャンペーンではなく、フェア対象作品の中から読んだ作の感想をツイートすると何名かプレゼントが貰えるといった程度である
でそのラインナップだが、これも毎年恒例だが意義の薄いセレクト(大笑)
F・W・クロフツ「二つの密室」、イーデン・フィルポッツ「灰色の部屋」、シオドー・マシスン「名探偵群像」、マーガレット・ミラー「狙った獣」、とまぁ創元ではたまたま品切れではあるが、中古市場では全然レアなものは無い
強いて言えば歓迎されそうなのはクレイトン・ロースンの「棺のない死体」でしょうかねえ、でも「棺のない死体」も何年前だったかなあ復刊されているんだよね、後になってだが私もその復刊ヴァージョン入手したもん、未だ積読だけど(笑)
だから「棺のない死体」もそこまでレアじゃないでしょ、やはり大歓迎されるとすれば「首のない女」の新訳復刊でしょ、え、もしや「棺のない死体」はその為の伏線とか?

1930年後半~40年にかけてアメリカ本格長編黄金時代の末期、トリックは発掘しつくされ、クイーンやマクロイなど幾人かの作家達は作風を転換し、この分野は次第に衰微していった
この時期に活躍したガチ本格作家達というと、ライスなど一部の作家を別にすれば、ロースン、アントニイ・バウチャー、ハーバート・ブリーンあたりだろうか
これらの作家に共通なのは、トリックの為のトリックみたいなパターンに陥り、物語性は脆弱、結局はトリックにしか興味有りません的な読者にしかアピールするものがなくて袋小路に入っていくことになる、ブリーンも後期作では作風を転換してるしね
衰退したアメリカン本格に代わって主役の座を奪い返したのが、黄金時代はアメリカ勢に押され気味だった英国勢で、イネス、ブレイク、クリスピン等の40~50年代の英国教養派(乱歩命名の新本格派)であった
ロースンはまさにアメリカン本格衰退期の最後のあだ花といった感じである、こう俯瞰するとロースンの作風も見えてくるでしょ

ロースンにはマーリニものの長編が4作しかなく、その第1作目が「帽子から飛び出した死」である
これは密室もの不可能犯罪ものというレッテルを貼られているが、密室の謎の真相はそれほど大したものではない
にしては作者比では高く評価されているが、それは密室とは別のあるトリックのせいだろうね
実はですねえ、私は密室ではないもう1つのトリックは見破っちゃったんだよねえ
よくさ、ミステリー読者なのにアリバイの話が苦手で、作中で捜査陣が容疑者たちのアリバイ調べをする場面を退屈だとか苦手と言う人居るんだよね
ミステリー小説なんだから作中にアリバイ調査位は出てきてもおかしくはないと思うんだけれど、アリバイの話が絡むと面倒くさいって読者意外と多い
当サイトでもプロフィールの苦手なジャンルに”アリバイ”って書く人結構居るしね
私は割とその点、頭の中でタイムテーブル表思い浮かべながら読む癖が有るので、アリバイ調べに対してあまりアレルギーが無い
実は私のそういう読書上の癖が見破る原因になったのだ
前半読んでてさ、ちょっと頭の中で登場人物各人のアリバイを整理したんだよね、その時突然に閃いたのさ
待てよ、このアリバイが偽装だったらどうなる?
そう考えたら、密室の謎なんかどうでもよくなっちゃってさ(笑)、これは作者の中心的な狙いは密室なんかじゃなくてアリバイにあるんじゃないかと思ったのだ
「帽子から飛び出した死」を高評価する読者っていうのはさ、密室ばかりが気になってたら作者にしてやられたって人が多いんじゃないかなぁ
私はやられなかったんだよね、特に密室に興味が集中するタイプの読者じゃないから(笑)、私の採点があまり高くないのはそうした理由

No.5 7点 了然和尚
(2016/02/23 10:55登録)
読みごたえありの1冊です。冒頭に出てくる推理小説論や、度々出てくる推理小説とマジックの共通点(ミスディレクション)の話など楽しめます。
本編の方は、本格時代の作品とはいえ、これだけ本格度の高い作品は無いんじゃないでしょうか。その分、ストーリー性や描写の面白さはなく、読み手を選ぶタイプの本ですね。
ま、最大の肝である人物トリックがすごすぎて、いろいろ詳しく描写しづらい部分があり、それでも挑戦的な手がかりの記述もあるわけですから、読みにくくなるのは仕方がないです。
本作の欠点は登場人物が多すぎることですね。4、5人削って、容疑者3名ぐらいの作品で、人物のメイントリックを使えれば、もっとすごい作品になったと思います。
実際、カーやクイーンでは少数の容疑者でも、最後にやられた感のある作品を書いてますが、本作はデビュー作ということで、ロースンは慎重になったのでしょうか。

No.4 6点 ロマン
(2015/10/20 23:27登録)
奇術師探偵グレート・マリーニ。密室で殺害された被害者。現場らから逃げた容疑者は警察の尾行も巻き消えた。しかし、密室で死体となって発見された。密室の謎は複雑で…。第二の殺人事件は…。容疑者のほとんどが奇術師や霊媒師という豪華なお膳立て。これしかないという説明が見つかったかと思うと、それをひっくり返す仮説がもちだされる。最後のなぞ解きには不満もあるけれど、それでもここまでの見せ方は面白いというほかない。

No.3 6点 kanamori
(2010/08/05 21:05登録)
奇術師グレート・マーリニが探偵を務めるシリーズ第1弾。
密室のトリックは、魔術的な殺人現場の雰囲気創りに寄与していますが、真相は意外と平凡だと思いました。著者の短編のほうがはるかにキレがあります。
むしろフーダニットが本書のキモで、さりげない伏線の張り具合が絶妙です。

No.2 8点 nukkam
(2009/10/19 15:03登録)
(ネタバレなしです) 自身がアマチュア奇術師として舞台に上がったこともあるためか米国のクレイトン・ロースン(1906-1971)は不可能犯罪を扱った作品を得意としています。1938年に発表されたデビュー作の本書はまさしく本格派黄金時代の作品です。2つのメイントリックは本来なら時代遅れでもう通用しないはずのトリックですが探偵役の奇術師マーリニの推理説明を聞くとまだまだ十分使えるトリックに見えてくるから不思議です。密室トリックをめぐる議論また議論が謎解き好き読者にはたまらない趣向で、しかもジョン・ディクソン・カーの「三つの棺」(1935年)で有名な密室講義の改訂版を作中に挿入するほどの凝りようです。犯人当てとしても緻密に伏線を張っています。

No.1 7点
(2009/03/26 23:39登録)
名探偵グレート・マーリニがマジシャンというだけでなく、マジック界やいんちき霊媒の世界を舞台にした第1作です。
犯人が使った様々なトリックは、途中でどんどん解明していくのですが、それでも犯人の正体はなかなかわからないように構成されています。密室殺人、人間消失など不可能状況のてんこ盛りは、この作者の他の作品と同様、かえって煩雑な印象はありますが、全体をまとめる大胆なアイディアがひとつあるおかげで、結末の意外性がうまく決まっていると思います。

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