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ミステリの祭典

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ロマンさんの登録情報
平均点:8.08点 書評数:177件

プロフィール| 書評

No.137 8点 死の相続
セオドア・ロスコー
(2015/10/22 15:37登録)
ブードゥー教で有名なハイチに住む資産家だが性悪な伯父が死に遺産相続権を手に入れたピット。彼女は相続権を拒否するために葬儀への出席を拒むが恋人である主人公はハイチに無理やり、同行する。だが、欲深くておかしい論理の遺産相続人が次々と殺される。高圧的または朴訥とした現地の警察と上手く、コミュニケーションができずに捜査が進められるが暴動が発生。なんと、カコ(ならず者)を率いているのはゾンビだという!遂にパニックになった警察からも殴られ、生き埋めにされる主人公。もはや、これは冒険パニック推理小説だ!


No.136 8点 不自然な死
ドロシー・L・セイヤーズ
(2015/10/22 15:35登録)
ある老婦人の死を調査する事になったピーター卿。担当医師ですら、明らかに出来なかった不審な死を明らかに出来るのか。トリックは現代ではよく知られる様になった古典的なものだが、この作品の頃は驚異的だったと思う。むしろ被害者は末期ガンであり、放っておけば自然と亡くなる病状であるのに、何故殺人のリスクを負う必要があるのか。誰が犯人かより何故に重点が置かれている作品。会話が楽しい、場面の情景が直ぐに浮かぶ、心に長く残る、詰まりはストーリー・テリングが抜群に良いという事なのだ。


No.135 7点 見えないグリーン
ジョン・スラデック
(2015/10/21 16:45登録)
〈素人探偵七人会〉のメンバー達が姿の見えない"グリーン"に次々と殺されていく長編ミステリ。最後まで犯人は全く分からず。どの殺人方法も面白かったが、やはりトイレの中での密室が一番良い。張り巡らせた伏線が全て解答に結びつく緻密な構成も素晴らしいし、情報をフェアに提供しつつも、安易なフーダニットに仕上がっていない点も好印象。


No.134 6点 スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティー
(2015/10/21 16:37登録)
昔から何度も読み返してきた名探偵ポアロ初登場にしてクリスティーの処女作。のどかな田園のお屋敷で傷病兵として休暇を過ごすはずだったヘイスティングズ大尉。滞在するスタイルズ荘の女主人が毒殺され、旧友ポアロと共に事件解明へ踏み出した。容疑者は複雑な事情を抱える家族か大勢の家事使用人の誰か? 終盤の一同集めた推理披露までに犯人の目星はついてもアリバイとトリックに悩まされる。ポアロの卑劣な犯人追求の執念と目くらましはお見事。ロマンチストなヘイスティングズの手記形式で恋愛沙汰が色濃く反映されるのも楽しい。


No.133 5点 8の殺人
我孫子武丸
(2015/10/21 16:32登録)
事件自体は軽くないし、推理もきちんとしようとしているので、本格としての魅力もあると思う。ただトリックは簡単だったし、犯人像もいまいちに感じた。とにかく会話や行動で面白いところが多く登場人物に魅力があったのがよかったが、まだ三兄弟を中心に人物としての薄さを感じた。


No.132 8点 木製の王子
麻耶雄嵩
(2015/10/21 15:05登録)
一時間の分刻みのアリバイトリックがメインだが、そのほかにも間間に挿入る人物の独白や三年前木更津が解決出来なかった事件、安城の肉親捜しなどが物語を複雑に拡散させていく。目も眩むような緻密なアリバイはそれだけでミステリとして十分魅力的だが、それに加えて動機までも計算しつくされて配置されており、すべてが解き明かされたときに得られる納得感は物語の展開に関わらずやはり爽快。広がっていくだけに思われた風呂敷をあっという間に綺麗に畳んでゆく技量は筆舌に尽くし難い。


No.131 10点 星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン
(2015/10/21 15:01登録)
SF不朽の名作。月面で見つかった5万年前の人間と思われる死体の謎を巡り、展開していく物語。非常に「サイエンス」しているのが良い。当然、その謎がわかる瞬間の面白さは大きいのだけど、何よりもその謎が解明されるまでのサイエンスな過程に非常に惹きつけられた。これぞサイエンス・フィクションだと思わず唸る。プロローグとエピローグの繋がり方も秀逸。加速していく物語と科学描写、宇宙の壮大な光景にページを捲る手が止まらない。読んでいくうちにタイトルの意味がわかってくる構成が本当に良い。


No.130 9点 幻の女
ウィリアム・アイリッシュ
(2015/10/21 14:58登録)
無実の罪で死刑を宣告された男を救うべく、真実を求めて奔走する人々。ストーリーの型も真相も、今となっては目を瞠るよう珍しさではないが、それでも最後まで惹き付ける力強さがある。何となく予想した結末だったにも関わらず、伏線を回収しながら読み返したくなる。雑然とした雰囲気の中、キャロルの凛とした、そして執念さえ感じる意志の強さが輝いて見えた。そしてちょっと気取った感じの文体や言い回しも素敵。冒頭の一文は言わずもがな、「“時”というものは、どんな男やどんな女よりも大きな殺人者なのだ。」ここも印象的だった。


No.129 8点 過ぎ行く風はみどり色
倉知淳
(2015/10/21 14:54登録)
密室となった離れで第一の殺人が、降霊会の最中に第二の殺人事件が起きる。天然カーと称されるだけあって、本格のガジェットに彩られながらもおどろおどろしい感じはなく、軽妙でさわやかなのは作者らしい筆致と猫丸先輩のキャラクターゆえか。トリックは意外性はもちろん、推理の要になっているところが秀逸。タイトルの意味がわかるさわやかな読後感もよい。


No.128 10点 魍魎の匣
京極夏彦
(2015/10/21 14:51登録)
事件は別々に起こる。人身事故から物語は始まる。一方ではバラバラの腕や脚が見つかり、他方で死にかけの人間の誘拐が起こり、また違うどこかでは霊能者が魍魎を操り金銭を預かる。それらの別々の事件は、匣という共通点を持ちながら、どこかで繋がり、しかしどこかに齟齬がある。それはまるでオカルトの様に。事件の断片は、ブラックボックスに詰め込まれて、全てが同じものとしてレッテルを貼られる。そのひとつひとつを、その境界面を解き明かして解きほぐして、言語化する。そのミステリをミステリたらしめた境界面たる「魍魎」に乾杯。


No.127 8点 笑わない数学者
森博嗣
(2015/10/21 12:20登録)
三ツ星館での親族が集まるパーティーに招待された西之園萌絵と犀川創平。その夜、館に建ったオリオン像が消え、殺人事件が起こる。設定、展開などは派手だが、トリックは至ってシンプル。オリオン像消失のトリックも、読んでいて分かってしまったし、それが分かると殺人の犯人が誰なのかもおおよそ見当が付く。と、なってしまうと、拍子抜けしてしまいそうなものだが、そんなことは問題無く面白かった。この作品自体、天王寺博士という天才を中心に描いているように見えるし、トリックは見破られてもよかったのかもしれない、そう思った。実際、天王寺博士の存在感は凄まじいものがあり、彼と犀川達との会話も本当に面白く、特に印象深かった。


No.126 8点 エラリー・クイーンの新冒険
エラリイ・クイーン
(2015/10/21 12:11登録)
「神の灯」を読んだのだが…結構力技だなという印象。しかし、題名が暗示した手掛かりなど、やはり本作は傑作だった。また、前短編集がどちらかと言えば、物証を核とした論理を主体としていたのに対し、本書は人間の動き方を重視した作品が多いように感じる。「神の灯」にしても、ある人物の○○に対する動きがヒントとなっているのだ。クイーン中後期の特徴も見られる、なかなかお得な作品集であろう。その他お気に入りは「血をふく肖像画の冒険」「人間が犬をかむ」。


No.125 8点 北の夕鶴2/3の殺人
島田荘司
(2015/10/21 12:07登録)
失踪した元妻が容疑者に上がり、仕組まれたトリックを吉敷が暴く。義経北行伝説を絡めた奇奇怪怪ムード満点の不可能犯罪。最後の最後に明かされるトリックには思わずニヤリ。島田荘司らしい大掛かりなトリックだけども、中身は意外にも精密。特に、鎧武者の扱い方に関しては素直に感心してしまった。やっぱり島田荘司は凄い、と改めて思った傑作。


No.124 7点 ウッドストック行最終バス
コリン・デクスター
(2015/10/21 12:02登録)
夕闇の迫るオックスフォード。なかなか来ないウッドストック行きのバスにしびれを切らして、二人の娘がヒッチハイクを始めた。その晩、娘の一人が死体となって発見された。もう一人の娘はどこに消えたのか、なぜ名乗り出ないのか?次々と生じる謎にとりくむテムズ・バレイ警察のモース主任警部が導き出した回答とは…殺人事件において主人公の警部が推理するも新たな証言が出てきて、また別の推理をするも今度は新たな証拠が出てきて、を何回も何回も繰り返す。関係者は最初からきちんと協力しようよ、と何回も突っみたくなるが、警部のユーモア溢れるキャラとビックリな結論とでなかなか楽しめた。


No.123 8点 貴婦人として死す
カーター・ディクスン
(2015/10/21 11:54登録)
老医師の手記という形で語られる本書。断崖絶壁に消えた二人の足跡トリックには最後まで悩まされる。戦争が影を落としていく中、HM卿の登場には大笑いさせられ、垣間見える人情にじんとくる。怪奇趣味や密室はないが、皮肉な人間ドラマといい相変わらず最後まで読む手を引っ張っていってくれる。形式的にある作品を連想したが杞憂だった。『貴婦人として死す』という題名については色々考えさせる。


No.122 9点 仮面山荘殺人事件
東野圭吾
(2015/10/21 11:50登録)
結婚式の直前に婚約者 森崎朋美 を亡くした樫間高之は、避暑の為に森崎家の別荘に呼ばれる。ところが男女8人が集まって早々、銀行強盗犯が侵入し占拠されてしまう。脱出を試みるも仲間にそれを阻止する者が現れ、強盗犯では成し得ない形で殺人事件も起ってしまう。叙述ミステリーとしてレベル高し。自分は疑いの目で読んでしまったため、かなり早い段階で仕掛けに気づく。随所に細かい伏線があり、それに気がつくと嬉しさが増幅。「フジの登場・描写」は作者が読者に与える最大のヒントか。不信感を感じれば深読みすることになるし、素直に読み進めれば、最後にまんまと騙されることになる。緊張感もあり、男女の心理描写も巧み。楽しめる1冊。


No.121 8点 サマー・アポカリプス
笠井潔
(2015/10/21 11:40登録)
黙示録を見立てた連続殺人という事件設定は如何にも本格探偵小説的ながら、それをカタリ派や人間存在に纏わる善と悪に絡め、哲学的、思想学的、宗教学的問答の中に断片として組み込んでしまう発想は著者ならでは。学が足りず全てを理解する事は出来なかったが、その詩情溢れる文章は読んでいるだけで頭の奥がジンと痺れるような陶酔感を与えてくれた。物語と論戦が分かち難く結び付いた構成は美しい。それでも個人的な好みを言うなら、よりスッキリ読める前作を選ぶか。盛り沢山の内容に読了後は心地良い疲労感があった。


No.120 8点 法月綸太郎の功績
法月綸太郎
(2015/10/21 11:36登録)
推理作家の法月綸太郎が探偵役を務めるシリーズの短編集。「ロジックとパズル好きにおススメ」的な紹介に敷居が高いなと感じていたが、これが全くの杞憂。いずれも大掛かりなトリックで驚かせてくれる作品ではないけれど、解けそうで解けない謎を一緒になってあーでもない、こーでもないと考えさせつつ、シンプルな論理がピタリとハマった解答にスッキリさせられるという連続で、思いのほか楽しませてくれる。なかでも「都市伝説パズル」の論理の鮮やかさは秀逸の一言。これならぜひとも著者の長編も読んでみなければと期待をかきたてる一冊だった。


No.119 9点 本陣殺人事件
横溝正史
(2015/10/21 11:33登録)
本作は戦後初の本格推理小説であり、雪の密室トリックをメイントリックに据えた作品でもある。因習めいた舞台装置、曰くありげな登場人物、奇怪な殺人事件という完璧な道具立てに日本家屋ならではの物理トリックと心理トリックが神配合された傑作。同時収録「黒猫亭事件」の顔のない屍体トリックの秀逸さは言わずもがなだが、今回改めて「車井戸はなぜ軋る」の第三者視点の語りから紡がれる物悲しい真相に瞠目した。傑作揃いの1冊。


No.118 8点 ジャンピング・ジェニイ
アントニイ・バークリー
(2015/10/21 10:59登録)
シェリンガム・シリーズで最高傑作と言われる作品。病的な虚言や自殺を仄めかす発言を繰り返し、ヒロイン気取りで顰蹙を買っていた女が死んだ。自殺としか思えない死体状況だがそこには椅子が置いていたために殺人の疑いが。まずは死んだ女に皆共々、ウンザリしていたシェリンガムが自殺を装わせて椅子を置いていたり、裁判で皆に自殺を証明するように打ち合わせたりしている場面に探偵の良心に唖然とさせられる人も居られるだろう。でも私は死ぬ勇気もないのに「死んでやる」と連発する輩は縊り殺したくなる程、嫌いなので皆を幸せにした結末に拍手。

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