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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.245 7点 十三角関係
山田風太郎
(2015/08/14 11:26登録)
*長篇単体です。光文社文庫より出た「傑作選名探偵篇」の方ではなく。

題名が目を引きますよね。

これはこれは、、眞犯人まったく分かりませんでした。 充分すぎるほど疑い得た人物なのに、これが心理の盲点というヤツか。。 そして殺人の動機、これだってその根源たる部分は思い当たって当然の所、いったい何に目くらましされたのか。

終結近く「噓倶楽部」でのふざけた問答から怖るべき告白合戦へ繋がって行く件(くだり)は推理小説として誠に重厚な一連の時間ですなあ。 ありゃグッと来ますよ。

ただ被害者が世にもグロテスクな状態で発見された経緯についての解決がね、ちょっと簡単に済ませ過ぎではないかとね。

しかしねえ、これだけ主要登場人物をいっぱい出しといて、それぞれの個性を苦無くちゃんと識別出来るってのは、立派な筆だね。

暗闇の中で実行された一連の云々とその背景がね、常より私の追い求める「悪魔的アリバイトリック」をちょっと掠ったかもね。。


No.244 7点 ぼくは明日、昨日のきみとデートする
七月隆文
(2015/08/14 10:40登録)
「イニシエーション・ラヴ」を読んで恋愛はもう嫌気が差したと言うあなたに(そんな人がもしいれば)、本作を強く薦めます。
こちらは本当に綺麗な物語。嫌らしい裏切りなどありません。その代わり、世にも哀しく美しく、頭がぼーっとするほど(過去と未来の両方に向けて)ノスタルジックな、全く別種の反転が待ち受けています。。

(ここよりネタバレ気味)

こ、これはまさかの読まずの出落ち(題名ネタばらし)。。。。 と見せかけて実は何か別なこと企んでるんじゃないかな。。。 と思って読んでみたら本当に題名そのものの内容! でもがっかり感はまるでありません。 現実感の薄いSFファンタジーと現実的な幼く美しいラヴストーリーを交差させ、前者に内在する軽めのセンス・オヴ・ワンダーが後者の哀切極まりないまさかの展開に後ろから眩しい光をこっそり当てていると言った構造。 SFミステリ的大ネタは飽くまで物語を引き立てる魔法の薬でした。

ところでこの小説、なんと、ちょうど半分行ったあたりでそのSFミステリ的大ネタをあっさりばらしてしまいます。 ということは、更にもう一つの反転が最後に待ち受けているんだな。。とミステリ読みは思ってしまいますがさにあらず、後半は「ではどうしてその『大ネタ』がそんなに哀しい事なのか」の核心を突くために費やされます。 その合間合間に、美しい純愛風景をはさみながら。。 否、その日常の風景こそが哀しみの核心だったのですね。。

帯の煽り文句の様に電車内で号泣はしませんでしたが、流石に目頭が熱くなりました。 切ないから、哀しいからというよりむしろ、前述の、過去と未来両方への遠い遠いノスタルジー、こいつが後半途中から徐々に徐々にグゥ~~~ンと迫って来やがってね。

ラストシーン、いい。


No.243 8点 四つの終止符
西村京太郎
(2015/08/13 14:10登録)
母殺しの容疑で逮捕され、憤死を遂げた聾唖の青年。 その無罪を信じて調査を始めた、交流のあった飲み屋の女。。

この哀しさは沁みる。 義憤を湛え、ほの暗く静かな空気感で進む、美しい物語。


No.242 5点 黒蜥蜴
江戸川乱歩
(2015/08/13 10:54登録)
読前の憶測を遥かに上回るべったりの通俗ぶりに仰天!! 三島由紀夫の戯曲でどんだけ化けたのか気になります。

黒蜥蜴の正体に意外性があるわけでもないのは少し残念ですが、謎解き的にびっくりさせる作りの小説じゃないのだから仕方ありません。

往時の挿絵入り(創元推理文庫)で読みましたけれど、絵の彼女(黒蜥蜴)にさっぱり性的魅力を感じず、困りました。。


No.241 6点 目撃者ご一報下さい
山村美紗
(2015/08/12 12:34登録)
ノンシリーズの短編集。 表題作は処女作らしからぬ洒脱な完成度を誇る一品。
全体的に、わたしの好きな佐野洋の短編集に近い雰囲気あり。
古過ぎない昭和の香りを吸いたい方にお薦めします。

偽装の回路 /その日、あなたは死亡し /虹への疾走 /人気作家の秘密 /京都映画村殺人事件 /人形寺殺人事件 /尼僧殺人事件 /椅子とりゲーム /青い札束 /死ぬ前に電話を /目撃者ご一報下さい
(集英社文庫)


No.240 9点 二銭銅貨
江戸川乱歩
(2015/08/11 21:49登録)
(ネタバレ)

短篇「二銭銅貨」単体への評価ってんなら、そりゃもう「満足」ですわ。
最後のツイストだけ取って見たらあきまへん。 そこへ落とすまでの豪腕なミスディレクション、ミスディレクション、ミスディレクション~~~ が実はこの小説の最大の関心事そのもの、というね。 えらい爽快に騙されましたわ~。


No.239 5点 影男
江戸川乱歩
(2015/08/11 21:39登録)
なんだかツルンと読んじゃって、呆気に取られてあらおしまい、って。 イージー過ぎてプチ退屈なとこもあった。 何のオチ無く終わっちゃった。 影男が楽しそうだからいいや。


No.238 6点 魔術師
江戸川乱歩
(2015/08/11 21:29登録)
通俗な話だが、本気の猟奇度ちょっと濃い目、謎解き(勘で)の愉しみも割とある。 真面目に想像すると怖いシーン多々。 犯人は、すぐ分かっちゃいましたけどね。


No.237 5点 動く密室―洋上トリックの謎
斎藤栄
(2015/08/11 21:05登録)
結末はふぅ~んてなもんだけど、読んでる間はまず面白かったっすよ。

古いし、緩いけど、それなりのスケール感はあり。


No.236 4点 倒錯のロンド
折原一
(2015/08/11 20:44登録)
最後、そこまでナニを連発されたら滑っちゃうばかりよ醒めるよ詰まらんよ。
そこまでは結構愉しく読んでたんだ。

現実世界の「乱歩賞獲り」を取り込んでいるのは面白いと思います。 乱歩自身が「陰獣」で試みた悪戯をうっすらと連想させるってなイメージ重層具合で。


No.235 5点 最終電車を待つ女
小林久三
(2015/08/11 16:38登録)
野暮ったい佐野洋、と言った趣だが、決して悪くはない。 が、いかんせん浅いね。「暗黒告知」との落差というか相違は大きい。ま量産期の文庫オリジナルですしね。
再読を唆るわけでなし、読み捨てに最適などと言ってしまいたくなるが、面白い事は面白い。
昭和末期の緩い短篇推理が好きな方に。。 お薦めは敢えてしませんw

個人的には、哀愁の昭和シティ歌謡「最終電車に乗る女(水沢夕子)」の方が好きだ。
その唄のイメージでなんとなく流され読みしちまったかな。

妻の過去 /耳の悪魔 /霧のなかの女 /犬を連れた貴婦人 /最終電車を待つ女 /太陽の墓場
(ケイブンシャ文庫)

うん、どれも見事に内容憶えてない。


No.234 5点 四日間の奇蹟
朝倉卓弥
(2015/08/11 16:09登録)
面白く読めたけど、エンディングに感動も驚きもなかったね!
むしろ物語途上の清冽な雰囲気こそ記憶に残っている。
このミス大賞なのにミステリ要素が極薄なのには驚き。別にそれはいい。


No.233 6点 白い兎が逃げる
有栖川有栖
(2015/08/11 16:00登録)
このアリスさんは良かった。 表題作、女優さんの造形も魅力的、企画の鮮やかなアリバイ崩し、わくわくして読めました。 「地下室の処刑」における「毒殺の理由」と、それが看破されるきっかけ、唸らせるね。


No.232 4点 中途の家
エラリイ・クイーン
(2015/08/11 13:11登録)
世評も良く、かなりの期待を載せて読んでみたら、好みに合わず。
ただ、よく出来たA級推理小説ではあるように思えます。


No.231 8点 靴に棲む老婆
エラリイ・クイーン
(2015/08/11 13:05登録)
こんな家には住みたかないが、外から観るならメルヘンチックでカラフルでミステリ興味も充分のキュートな「館」もの。 もう相当な昔になるけど、読んでいて本当に愉しかったなあ。 エラリーさんの本も、ロジックで来るだけでなく舞台装置に妙な一癖かませてくれると相乗効果で本当に魅力的だ。

あんまり面白いんで母親にも薦めたら「そういう(ガーイキーチーのいっぱい出て来る)話は(気分的に)好きじゃない」と断られたんだ。懐かしいなあ。


No.230 7点 人それを情死と呼ぶ
鮎川哲也
(2015/08/10 19:01登録)
(ちょぃとネタバレ)

物語の半ば頃、犯人がどの方向にいる人物かふと勘付き、目の前の光景がグイーンと90度ずれる様なシビレる感覚を得ました。(180度の感覚じゃない所がニクい)

露骨に社会派ミステリへの果し状の様な結末の反転ぶりですが、松本清張の短篇にもこの様な騙しの一篇が有った様な、無かった様な。。

多くの方が言及される通り、ラストシーンが美しく印象的ですね。
私には二冊目の鮎川長篇でした。この辺から氏がだんだん特別な存在になりつつありました。


No.229 7点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2015/08/10 18:35登録)
ご他聞に漏れず、先に犯人と言うか仕掛けを知ってから読みましたが、物語が終盤に及ぶに連れ、仕掛けを知っているからこそのスリルがじりじりと突き上げて来、ポアロが眞犯人を追及する件(くだり)では本当に手に汗握るどころが汗かき過ぎで滑っちゃって握れもしない程でした。 逆に、もし仕掛けを知らずに読んだら(個人的にですが「幻の女」の場合のように)あのポワロによる眞犯人追い詰めのシーンの途中で「まさか!」と勘付いて急性のスリルに一気に襲われたのだと思います。 結末以外の部分がどうにも凡庸に感じられただけに、仕掛けを知ってしまってから読んで意外と正解だったかという気もしますなあ。


ところで、初読時全く気付かなかったのが、クリスティ再読さんご指摘の「死亡推定時刻」の件です。

(ここからはっきりネタバレ)

眞犯人が死亡推定時刻を決める医師であり、尚且つ物語の語り手でもあるという事は、当時まったく見過ごしていましたが、実は私が常々求めて止まない「悪魔的アリバイトリック」にかなり際どい所まで迫った怖るべき作品だったのではないか、と思われてなりません。 こりゃ再読しろという神のお告げでしょうか。


No.228 7点 いつまでもショパン
中山七里
(2015/08/10 17:55登録)
冒頭に、政府専用機に乗ったポーランド国大統領が同乗の妻や高官達もろとも謀殺されるシーン。
ポーランド軍派遣に対するイスラム過激派報復と目されるテロが連発するワルシャワ市内で、通常通りショパン・コンクールが敢行される。 “ピアニスト”と当局に呼ばれるテロリスト(眞犯人)の正体は果たして誰。。 "ピアニスト"を追い詰めたと見える若い警官の屍体がコンクール会場内で見つかったが。。と言うお話。 例によって音楽と演奏の描写が怖ろしくヴィヴィッド&リアリスティック。 私は歓迎ですが、くどいと思う人も結構いると思います。

“ピアニスト”の独白や、”ピアニスト”と警官との面会シーン(警官はこいつが眞犯人と分かった上で会っている)を挟んだり、後半から対ゲリラ戦争の現場が意味ありげに挿入されたり、その構成の妙にはかなり引きずられました。

重要登場人物の一人が途中からあからさまに怪しい行動を取る。という事は。。と睨んだ「意外な人物」が果たして眞犯人でした。。 ただね、その動機というか動機を中心に据えた上での犯人像がですね、人間ドラマとしてなら確かに重い感慨を抱かせる類でしょうけど、ず~~っと謎で引っ張って来た推理小説の結末としては深みも重みも感じません。悪く唐突。
とは言え、ほとんど最後までとても愉しく読ませてもらいました。

そうそう、途中ちょっと迷ったんですよね、まさかあのピアニストが”ピアニスト”では。。と疑ってしまったピアニストが二名ほど(今思うともう一人疑えたな)。 そんな暗黒小説じゃなくて良かった、とは思わなくもない。 それは、この小説が一定の希望を含んで終わるきらきらと美しい物語であるせいもあろう。(但し最後の「戦場の奇蹟」はちょっとやり過ぎの感あり。)


No.227 7点 暗闇坂の人喰いの木
島田荘司
(2015/08/09 00:31登録)
薄気味の悪い、歴史が蠢く物々しい筆致が読ませます。
「巨人の家」の心理的物理トリックには頭の血がサーッと引く感動を覚えますが、最後に明かされる「横浜の家」の物理的物理トリックは、、突然のアホアホ大団円を迎えられても困ります。


No.226 8点 眩暈
島田荘司
(2015/08/09 00:14登録)
冒頭から謎の巨大エネルギーに呑み込まれました。島田荘司ミステリならではの壮大なトリックに貫かれた、ただ謎とその解決にのみ捧げられる大河物語。

「手記」に、ある種の悪魔的アリバイトリックめいた秘密が隠されていた事には全く気付きませんでした。 手記内容の異様さも然ることながら、異様なマンションの構造、光景も記憶に残るなあ。。

読後振りかえれば、全ては謎とその解決の為に建築され破壊された幻の楼閣がそこに。 眩暈無しにはとても立ち去る事が出来ません。。

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