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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.385 6点 天使の耳
東野圭吾
(2015/11/08 09:45登録)
原題「交通警察の夜」と言うだけあって「交通」に纏わる何らかの事件を集めた短篇群。
表題作の、少ない枚数の中での劇的反転真相暴きは感動的。他はちょっと色褪せるが、それでも充分面白い。読んだ方がいい。

というか表題作だけ交通云々枠から大きくはみ出ている感じがしますが。。素材は確かに交差点事故だけど。ちょっと乱歩の「心理試験」を思わす対決モノでもあるね。ってやっぱり表題作ばかり語ってしまう。単体なら8点かな。


No.384 7点 嘘をもうひとつだけ
東野圭吾
(2015/11/08 08:33登録)
頭の表題作がどことなく長篇小説のムードなんですよねえ、だもんで長篇のつもりで読んでいるといきなり結末が来てびっくり、というか結末だと気付かなかった、私は、事件も一応の解決を見てこれからいよいよ本番か面白い構成だなあ、第二章上等! てなもんで期待して二作目(第二章と思い込み)を読み始めたらどうも勝手が違うぞ、とw でも良作揃いで良かったですよ。どの作も、まさかの機微から嘘が見破られるスリルは「刑事コロンボ」の哀愁面をぐっと前面に出した様な感触だね。


No.383 8点 赤い右手
ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ
(2015/11/06 17:27登録)
犯人がそこまで悪どい奴とは、予想外! 癖のある叙述、混乱させる描写で話が勝手に進行。絶妙な文学的千鳥足を見せる時系列の乱れ。何もかも伏線に見えて来る手探りのストーリー(ところが、本当にどれもこれも伏線だったんだ! 意外な例外はあったけど。。)すでに殺されたという登場人物達が、どうしても一抹の読者疑惑が消せない「語り手」の手記の中でのみ発言と行動を行うもどかしさよ。どこかわだかまりを残す人物造形にはいったい何の企みが。。
途中ふんだんに挟まれる”静的情景描写”さえ何か叙述の罠が仕組まれていそうで、退屈を全く誘わない。
この語り手は、まさか。。。。
いやいや、こちらの予想を思い切り良く超える最終局面の畳み掛けはクリスチアナ・ブランドの良作さえ思い起こさせましたよ、ほんと。


【ここよりネタバレ】


最後に明かされる実に一人五役(!! .. で合ってます!?)を含むまさかの真相は拙者の好みで大いに納得。だが、語り手に纏わり付くどうにも不自然な点(無理して自分を奮い立たせようとしている気配だったり、年齢や体格体質が実感しづらい点など)から推測されるに、作家の頭の中で当初は彼こそ犯人候補(それも一人x役)だったのではないか、との疑いを持ってしまう。だいたい最後の最後で急に冷静且つタフな探偵役に化けちゃってません、この人? ところで、帽子の偶然が宙に浮いたままなのはただ回収し切れなかっただけか(帽子を、ではなくて伏線を)? そうそう、右手を切断した理由はね、○○を隠す為には更なる○○を、みたいなものでしたね。○○の中には「不正」でも「腐敗」でも好きな言葉をお入れください。 
【ここまでネタバレ】


♪ 僕の右手を 知りませんか~
ボナンザさんの言われる「ライブ感覚」に膝を打ちました! 著者はまさかきっと、ストーリーが自然に展開するに任せて、自分はエネルギー注入役に徹して書いていたのかな。。 


No.382 10点 死の枝
松本清張
(2015/11/05 01:07登録)
数ある清張作品の中でもワン・アンド・オンリーの存在。極度にパンチ力を強化したショート・ショート群の様な味わい(各作そこまで短かないが)。”悪事や偽装はいったい何がきっかけで .. 相応の時を経て .. バレるのか”を当てる心積りで、異様に文学的な倒叙推理クイズ集として読む事も可能。清張にしては軽いタッチと言えるが、されど深い(まるで陰気な東野圭吾の様)!加速する追い詰められ感は半端で無く、スリル満点という言葉が最高に似合う。清張にしか書けない冷気も哀感も充満。最後まで首元を掴まれっ放し。堂々の満点作!絶版不可!!

交通事故死亡1名/偽狂人の犯罪/家紋/史疑/年下の男/古本/ペルシアの測天儀/不法建築/入江の記憶/不在宴会/土偶
(新潮文庫)


No.381 8点 影の車
松本清張
(2015/11/04 16:15登録)
どれも謎解き要素が強い、しかし暗黒人間ドラマの圧力でそっちは後ろに追いやられて見える、とは言え精細に見直すとやはり謎解決(論理<勘)の根幹がそこにある事に気付く、そんなニクい短篇集。ファンなら必読度強。

潜在光景/典雅な姉弟/万葉翡翠/鉢植を買う女/薄化粧の男/確証/田舎医師
(中公文庫)

今さら言う事でもないですが、清張のタイトル付けセンスは突出した味わいがありますね。それは氏の長篇について言及される場合が多い気がしますが、短篇の方も相当なものです。もう読む前から題名だけで落とされている感じ。


No.380 9点 駅路
松本清張
(2015/11/03 19:04登録)
新潮文庫のキラーコンテンツ「松本清張 傑作短編集」推理小説篇の第二巻。
第一巻「張込み」と較べたら多少は息の詰まる緊迫も緩まるが、だからと言って。。。。
清張のハードな短篇が好きなら必読。

白い闇/捜査圏外の条件/ある小官僚の抹殺/巻頭句の女/駅路/誤差/万葉翡翠/薄化粧の男/偶数/陸行水行
(新潮文庫)


No.379 5点 海のある奈良に死す
有栖川有栖
(2015/11/03 16:37登録)
これも言っちゃうとネタバレになるかな、、、 てっきり、韓国語の洒落かと思ったんですけどね、全く違う展開でした。いろいろ勉強になって楽しかったです。ミステリ核心の部分はさっぱり憶えてませんが、何故か忘れられないお話です。まさかの旅情もあった。


No.378 7点 積木の塔
鮎川哲也
(2015/11/02 18:00登録)
物語はなかなかに地味な滑り出し。とは言え鮎川流の地味だから当然その先を期待する。すると期待通りの王道アリバイ崩しに道は続く。捜査の過程を小説としてじっくり味わうのが良いです。企画色の薄い地道な作品ですね。ある意味鮎川哲也長篇の最大公約数的なこじんまりした印象を受けますが、鬼貫警部の登場のタイミングが早い事もあり(それは関係無いか?)既に氏の作品に浸かっている人が安心して読むのに適しているのかも知れません。 


No.377 8点 疑惑の影
ジョン・ディクスン・カー
(2015/11/02 15:47登録)
カー好きには最高の一作だなや、と思った記憶しか残っていない。そして自分はカー好きだったので最高に面白かった。ガチンコ勝負のどんでん返しは感涙モノだ。 再読候補の最右翼。


No.376 7点 世界短編傑作集2
アンソロジー(国内編集者)
(2015/11/02 14:33登録)
著名作家、有名トリックが挙(こぞ)っている割にどことなく地味なラインナップ。
な~んてね、もちろん充実の面白さです。
我が愛するポースト師匠(アブナー伯父)の一篇も入っているし。さて収録作もそうだけど、単純にトリックだけ見て片付けられるタイプの作家ではありませんのでね、ポーストさんは。既にどこかで本作のメイントリックをご存知という方が殆どでしょうが、是非あらためて「ズームドルフ事件」を味読していただき、古きアメリカの人間ドラマと本格ミステリと文学の妙なる融合に酔い痴れていただきたいものでありまするぞよ。


No.375 10点 黄色い部屋の謎
ガストン・ルルー
(2015/10/31 19:09登録)
ずっと読み逃していた大古典を初読です。ご他聞に漏れずネタはとうに割れてましたが、実物を手にして読んでみたらこれがアナタ、本当に本当に面白い大傑作ではないですか~~!

世に名高い大ネタトリックをまずは二つも抱えながら、更に巨大な意外なる眞相を最後に明かす。その上、物語の根幹を揺さぶりかねない予感に満ちた謎を残したまますぅっと終わる。。都合四つもの大トリック(三つと数えるも可)を見事に共栄させた、なんと器の大きな探偵小説であることか。

重厚甚大な悲劇感と強烈無比なゲーム性との奇跡の融合、この激烈交差点の只中に読者が立たねばならぬ不安定(サスペンス)感こそ、本作を永年王座に据え置いた真髄ではなかろうか!!

さて登場する探偵は二人。初老と言うには少し早い壮年探偵(名刑事)、青年と呼ぶにはちょっと早い少年探偵(この若さで新聞記者)、年の差ライヴァルの二人が一定の理解や友情、時に反目を見せつつ、事件解決に向けて正面対決。最後に「眞の探偵役」として残るのは果たして。。

殺人未遂の被害者が、何らかの重大な秘密が原因で、犯人を警察や司法の手に渡したくないらしい。 また、その秘密を (読者目線で)容疑濃厚な複数の人物がどうやら共有しているらしい。 被害者と犯人の間に在る、怖らくは過去に遡るただならない何かであろう想像し難い関係性こそ、最も大きな謎。

基本は「わたし」が語る形式で、所々少年探偵のメモが語り手に代わるが、一方で少年探偵に反感を持つ者の手記の形でストーリーを進行させる部分もあるなど、時としてユーモラスな叙述のギミックも楽しい。 
少年探偵は(時々核心をぼかしつつ)具体的に、壮年探偵も時々さわりだけ、自らの推理や直感を披瀝しながら物語が進む。そのせいもあってかストーリーの流れに淀みが無い。
壮年探偵の機敏な容疑者追跡は小気味良いが、少年探偵の読心マジック時間差種明かし癖も素敵だ。とてつも無い悲劇の顕出を予告するかの様に。。

大見得を切る眞相暴露シーンは、探偵役が裁判所に遅れて登場と言う絶妙な舞台装置もあってかリアリティと迫真力とを易々と兼備。
最後、事件を解くのみならず「物事の本当の解決」にまで上手に持ち込んだ探偵役の手腕には感動を覚えます。

眞相衝撃の後、傷みが退く快感を楽しむように探偵役の事件解説を滔々と拝聴。このバランスも見事。
全てが分かってあらためて、そう言やこれは殺人事件じゃないんだ、殺人未遂事件なんだ、そこで。。。。とストーリーの機微を反芻してみる。気持ち良く時代がかった犯罪ドラマの大きさに、ご都合主義の痕跡も吹っ飛びます。

伏線も至る所にあった。それも最終的な探偵役(壮年?or少年?)が眞犯人や眞相に気付いていた或いは疑いを抱いていた事への伏線までもが。
眞犯人は●●●。だからこそ一見無駄に思える偽嫌疑工作をねえ。。なぁるほどそりゃ気付かんかった。意図が深過ぎて。

蛇足ながら、門番や森番等、下人に属する登場人物たちの行動や発言がきちんと「立って」いるのも、謎やドラマの奥行きを際立たせるのに一役買っていると思われます。

ところで新訳ハヤカワ文庫の表紙、すごく格好良いんだけど、デザイン配置の関係で題名が一見『秘部壇蜜黄色いの』と読めてしまってね。彼女あそこが病気じゃないかと心配になるのですよ。




【最後に、ちょっとだけネタバレかも】

眞犯人の「本名」に伏線が無かったのはいかがなものか?
眞犯人は、言ってみりゃ「悪いルパン」ですよね。
密室問題より眞犯人の方を先に明かしたのにはびっくり。


No.374 8点 元号裁判
佐野洋
(2015/10/30 12:15登録)
おお、これは「社会派・日常の謎」ではないか!
運転免許証の生年月日、「昭和XX」の部分を消して上から西暦で書き直した男が、その行為を主軸に権力筋と闘う。この一連の事件(?)を新聞記事にしようと記者は飛び回る、が。。。
最初は「これ、推理小説かァ?」てなもんだったけどね、滅法面白いんですよ、本当。ためになる薀蓄も豊か。左翼魂丸出しなのもまた微笑ましからずや。

併録「年齢論争」は、こちらも良い意味で微妙な「日常の謎・ソフト社会派」のお話。誕生日と年齢の関係性について盲点論理追求の遊びは興味深し。


No.373 4点 被害者を捜せ!
パット・マガー
(2015/10/29 23:43登録)
「被害者が誰だったか」を追求するにしてもね、もしこれがいわゆる社会派流儀のストーリーだったらどんなにかスリルも哀感もあったろうかと惜しまれてね。もちろんマガーさんにそんな事は求めちゃいませんがね。「探偵を捜せ」が持っていたサスペンス性は無いし、ロジックの魅惑も物語の訴求力も、何と言ってもヒネリが無い! オラの村には電気が無え!  とは言え、古い本格好きなら自分の好みに合うかどうか試しに読んでみる価値はあるでしょう。


No.372 7点 日本庭園の秘密
エラリイ・クイーン
(2015/10/29 23:28登録)
結末で一気に熱くなりましたね。。まさかあんな残酷な人間ドラマが真相だったとはね。。ニセ国名シリーズと呼ばれるのが不憫なくら良い作品ですよ。まぁ結末以外はあんまり記憶に無いんだけど。 


No.371 4点 ハートの4
エラリイ・クイーン
(2015/10/29 23:19登録)
ゆる~く読ませていただきましたがちょっと眠かった。 毒殺トリックは。。バカの類でしょうか?(実際やったら○○○○の人でもないかぎり一瞬でバレるらしい)


No.370 7点 魔少年
森村誠一
(2015/10/28 18:15登録)
落としどころは見えちゃいるが強烈に厭なムードで読ませる表題作を初め、何とも後味の最悪な社会派ホラー・ミステリの真っ黒な玉手箱や。心の弱っとる時に開けたらあかん。

魔少年/空白の凶相/燃えつきた蝋燭/雪の絶唱/死を運ぶ天敵/殺意開発公社/殺意中毒症


No.369 8点 異常の太陽
森村誠一
(2015/10/28 18:02登録)
タイトルに違わずギラギラした発熱感にやられる野心的短篇集。危険だぜ。

異常の太陽/鳩の目/残酷な視界/肉食の食客/七日間の休暇/奔放の宴/赤い蜂は帰った


No.368 5点 サムソンの犯罪
鮎川哲也
(2015/10/28 14:36登録)
え!? 男色が罪だとでも言うのですか!? と、先にまずボケておきます。
依頼人の巻き込まれたトラブルってのが、なかなか魅力的に込み入ってたり、ちょいと変わった背景があったりの事件ばかりで興味を引きますね。前の「太鼓叩き」よりも趣向の凝らし様に力が入ってます。だけど物語進行と解決にはあまりスリルが無いですねえ、ロジックでわくわくさせるのともちょっと違うし。。ウトウトしそう。このシリーズは多少なりともみんなそう。でもまあ、そう悪かないか。


No.367 6点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2015/10/28 12:18登録)
推理クイズ的多重解答は全て否定され、よりドラスティックな真相が最後に明かされる。
多くのフォロワーにインスピレーションを与え続ける、企み足跡の歴史的一冊ですね。
寝食を忘れるほどの面白さはありませんが、カー/ディクスンにしてはどこかしら静謐な空気が漂う雰囲気も相俟って、ちょいと心に残る作品です。


No.366 6点 爬虫類館の殺人
カーター・ディクスン
(2015/10/28 12:00登録)
トリックは どうでもいいけど 面白い(五七五)の典型。
雰囲気勝負で押し切られました。
こういう「照明暗い、雰囲気明るい」系のカー乃至ディクスンは好みです。「赤後家」しかり「緑のカプセル」しかり。

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