クロフツ短編集1 フレンチシリーズ |
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作家 | F・W・クロフツ |
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出版日 | 1965年12月 |
平均点 | 5.33点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 5点 | 人並由真 | |
(2021/08/16 01:34登録) (ネタバレなし) 最初にページを開いてから数年。その間にしばらくほったらかしにして、長いこと間が空く。 さらに移動中の車中用とか、出先での待ち時間用に持っていっても、続けて何本か読むとすぐアキが来る。 一本一本はソコソコ楽しいものも多いのに、並べると同工異曲ぶりが先に来てしまい、印象が悪くなる感じだ。 本サイトのレビューの方々の否定的意見にも、それと反対の総括的な肯定的意見にも、それぞれ賛同。 買ってどっかに埋もれている『2』も出てくればもったいないから読むだろうが、多少の覚悟は必要である。 |
No.5 | 5点 | 弾十六 | |
(2020/03/08 10:50登録) 1955年出版のMany a Slip(Hodder and Stoughton)の全訳。創元文庫は『クロフツ短編集1』の表記だが『1』と『2』に関連性は無く、それぞれ独立した短篇集。(昔の創元文庫には良くある話。今なら洒落た題がつく筈) 全篇「イヴニング・スタンダード」(ロンドン)に掲載したものに補筆した、と著者前書きにある。犯罪者のヘマがテーマ。 全て倒叙物のようだが、手がかりの記述が不十分な感じ。読者への挑戦めいたことが前書きにあるが、本気ではないでしょう。犯人目線で犯行が記述され、最後にフレンチ警部が締める構成。短くて記述が簡潔なのですらすら読めるのが良いところ。でもいっぺんに消化すると胸焼けしそう。 雑誌掲載はFictionMags Indexによるもの。(2025-06-03修正: 初出がだいぶ明らかになっていた) ---------- ⑴床板上の殺人 Crime on the Footplate (初出The Evening Standard 1949-12-28): 評価5点 お得意の鉄道もの。主人公は機関助手。なかなか良い着眼点。 (2020-3-7記載) ---------- ⑵上げ潮 The Flowing Tide (初出The Evening Standard 1953-01-02): 評価5点 主人公は弁護士。財産管理も行なっている。けっこう大掛かりな偽装なので、他にも手がかりはありそう。 p25 年金受給権(アンニュイティー): Annuityは保険会社がやってる個人年金みたいなものか。 (2020-3-7記載) ---------- ⑶自署 The Sign Manual: 評価5点 主人公は建築会社の製図工。これも直ぐに捕まりそうな偽装。sign manualは「(特に公文書への)自署; 公式文書への主権者の署名」という意味らしい。ここでは「自白書への署名」というような意味か。 p37 五百ポンド: 英国消費者物価指数基準1955/2020(26.41倍)で£1=3747円。£500=187万円。 (2020-3-8記載) ---------- ⑷シャンピニオン・パイ The Mushroom Patties (初出The Evening Standard 1953-10-21) ⑸スーツケース The Suitcase (初出The Evening Standard 1959-08-09) ⑹薬壜 The Medicine Bottle (初出The Evening Standard 1959-09-18); 再録EQMM 1951-12 as "The Oversight") ⑺写真 The Photograph (EQMM 1953-05 as "Unbeakable Alibi") 初出は The Evening Standard 1952-07-07 as "The Photographer" か? ⑻ウォータールー、八時十二分発 The 8.12 from Waterloo (初出The Evening Standard 1950-02-23) ⑼冷たい急流 The Icy Torrent (10)人道橋 The Footbridge (初出The Evening Standard 1952-04-23) (11)四時のお茶 Tea at Four (初出The Evening Standard 1952-09-09) (12)新式セメント The New Cement (13)最上階 The Upper Flat (初出The Evening Standard 1953-01-01) (14)フロントガラスこわし The Broken Windscreen (初出The Evening Standard 1953-01-03) (15)山上の岩 The Mountain Ledge (初出The Evening Standard 1952-12-31) (16)かくれた目撃者 The Unseen Observer (初出The Evening Standard 1953-08-31) (17)ブーメラン Boomerang (18)アスピリン The Aspirins (19)ビング兄弟 The Brothers Bing (20)かもめ岩(ガル・ロツク) Gull Rock (初出The Evening Standard 1952-04-15) (21)無人塔 The Ruined Tower (初出The Evening Standard 1951-05-26) |
No.4 | 5点 | ボナンザ | |
(2019/03/24 10:52登録) やや単調に感じられるのは否めないが、上質な倒叙ものを集めた短編集だと思う。 |
No.3 | 5点 | E-BANKER | |
(2017/04/15 09:51登録) ~狡猾な完全犯罪を企む犯罪者や殺人鬼は、手口を偽装して現代警察の目を欺こうとする。一見、平凡な日常茶飯事や単純な事故の背後に、こうした恐るべき犯罪が秘められている場合が少なくない。本書はクロフツの数々の長編で活躍するフレンジ警部の目覚しい業績を収録した本格短篇集である・・・~ ということなのだが、全二十一編で構成される本作。ひとつひとつの作品は短編というよりショートショート+α程度の分量でしかない。 しかも、殆どが倒叙形式で、『犯人が止むにやまれぬ事情で殺人を犯す』⇒『アリバイを中心としたトリックを企図し弄する』⇒『ちょっとした穴をフレンチ警部(或いは警視)に発見される』⇒『逮捕』という構成になっている。 要は、限りなくワンパターンの作品が並んでいる、というわけだ。 これは・・・退屈だな。 クロフツもフレンチ警部の好きだけど、さすがに後半からはげんなりしてきた。Ⅱは読まないな。 一応、以下かいつまんで短評。 ①「床板上の殺人」=作者得意の列車を舞台とした殺人事件。ちょっとした物証が命取りとなる。 ④「シャンピニオン・ハイ」=これくらい気付けよ!っていうミスを犯す真犯人・・・ ⑨「ウオータールー、八時十二分発」=これも列車もの。結構多い。このミスも酷い。 ⑩「冷たい急流」=最後にガツン・・・っていうインパクト。死者の意地ってやつだな。 ⑫「新式セメント」=倒叙形式でない作品。かといって特別面白いわけではないのだが・・・ ⑮「山上の岩棚」=法定でフレンチが突如告発! 真犯人「ゾォー!」っていうラスト。 ⑰「ブーメラン」=犯人もまさに「アッ!」って思った見落としだろうな。 ⑳「かもめ岩」=犯人もまさに「アッ!」って思った見落としだろうな×2 全21編。 もう・・・お腹いっぱい(!) (ベストは・・・考えつかない。) |
No.2 | 6点 | 斎藤警部 | |
(2016/03/25 02:12登録) 抒情と言ったら大げさ、薄っすら漂う雰囲気が魅力的。そこに倒叙ミステリクイズ的タイムリミット感に後押しされたスリルが噛み合い、通常の短篇集には見られない密かな愉しみを撒き散らす。言ってみりゃきれいな推理クイズ本。シムノン「13の秘密」に通ずる良さがあります。原題’Many a Slip(失敗いっぱい)’なる本国英国での企画短篇集。 床板上の殺人 /上げ潮 /自署 /シャンピニオン・パイ /スーツケース /薬壜 /写真 /ウォータールー、八時十二分発 /冷たい急流 /人道橋 /四時のお茶 /新式セメント /最上階 /フロントガラスこわし /山上の岩 /かくれた目撃者 /ブーメラン /アスピリン /ビング兄弟 /かもめ岩 /無人塔 (創元推理文庫) 真相が明かされてみれば本当にちょっとした、常識の延長の様な解決の話が目立つが、そんな日常感さえ愛おしく味わえる対象になっているのはやはり作者の誠実にして端正な筆運びに依るもの。わたしは最後の二篇「かもめ岩」「無人塔」がその犯罪舞台のうら寂しい仄暗い口数の少ないムードも手伝ってか、特に印象深い。そんな二篇で〆るのがいい。 こういう本こそ何度も読み返しちゃうんだよな。。 |
No.1 | 6点 | 空 | |
(2014/04/24 22:55登録) 殺人犯人のミスに「事前に気づけば読者の勝ち、気がつかなかったら、著者の勝ち」と作者前書きに記された、21編の短編集です。この前書きからもわかるとおり、ほとんどが倒叙もの。ただし『新式セメント』だけは通常の謎解きになっていて、実は個人的に最も気に入ったのもこの作品です。1編がほぼ14~5ページ程度の掌編に近い作品ばかりですが、動機や犯人の心理描写もそれなりに描かれていて、なんとか推理パズルというだけではないレベルには達しています。語り口も、犯人の一人称形式にしたり、フレンチ警視の回想形式だったりと変化をつける工夫もしています。また前書きにもかかわらず、そんなミス、わかるわけないと思えるものもありますし、特に読者に挑戦した形になっていないものもあり、なかなか楽しめました。 犯人の「ミス」についての出来栄えでは、『薬瓶』、『写真』『ブーメラン』あたりがいいと思いました。 |