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ミステリの祭典

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閉鎖病棟

作家 帚木蓬生
出版日1994年04月
平均点6.40点
書評数5人

No.5 7点 斎藤警部
(2016/03/23 10:23登録)

ミステリの ミの字を見せて 他は棄てり

冒頭に悲劇的エピソードを三章。それぞれ時代も異なり、いかにも物語の長い道程の何処かでミステリ的収束を見せそうな期待が煽られる。 と思えば何よこの、序盤でいきなり重たい伏線これ見よがしの起き去り! まさか、瞬殺で回収されるとか。違った。では脚の長い伏線で人生劇場を演出ってわけなのか。。? 四章からは精神科病棟の賑やかな日常と時折の非日常の描写が、それまでの三章との断絶も無く淡々と始まる。 この文章が凄くいいわけだ。 冒頭エピソードに登場した人達もそうでない人達も様々な角度で交差し合い助け合いながら今日を生き、時には明日を見つめ、過去を思うこともある。

殺人は いつになったら 起こるやら

病棟内、最初に出て来るドウさんとチュウさんはベトナム人の名前かと思ったよ。ストさん、サナエちゃん、お辞儀婆さん、ちょっと怖いダビンチ、医師くずれのハカセ、昭八ちゃんと甥の敬吾さん、嗚呼秀丸さん、嗚呼クロちゃん。。外来の島崎さんはまだ少女。新しい担当医は前任の嫌な男と違って話の分かる素敵な女医さん。婦長も意外にいい奴。一人だけ大悪役のヤクザにさえ最期に作者はこっそり優しさを注入。萩病棟のジンちゃんてのはまさか元ピンクルのジンちゃんじゃないかと心配したもんだ。 他にもいっぱい、記憶に残る魅力的な人間たちに出遭いましたよ。

サスペンスなど 時には野暮さと 周五郎  (字余り)

物語の舞台は実のところ「開放病棟」でありながら表題は「閉鎖病棟」。この齟齬には何らかの隠喩が込められていますね、きっと。
(開放より閉鎖の方が題名インパクトがあって売れそう、というのも一つにありましょうが)

結末や あゝ結末や 始まりや 西内まりや 竹内まりや

TBS社員を辞めて医者になって後に兼業作家になったという不思議に贅沢な履歴を持つこの人の作品、まだホンの少ししか読んでいませんが、書評等から察するに、ミステリ視線で見た場合、それぞれの作品でどれくらいミステリ度合い、サスペンス度合い等が強いか、実際に読んでみないと分からない(書評だけでは分からない、読者によって感じ方、捉え方がかなり違う)というタイプの作家さんの様な気がします。

ミステリの つもりで読んで 悔い無し  (字足らず)  

No.4 7点 TON2
(2013/01/24 18:24登録)
新潮文庫
 病院で生活する患者たちの様子を読んでいて、本当にせつなくなりました。山本周五郎賞受賞作らしい作品です。

No.3 6点 メルカトル
(2011/12/04 21:31登録)
閉鎖病棟と言ってもそれ程閉鎖されているわけではない。
精神科病棟の入院患者が主な登場人物であるが、主要人物はいたって普通で異常性はほとんど感じられない。
逆に読んでいる自分のほうが異常なのではないかと思えてくるのが不思議だ。
だからこそ小説として成り立つわけだが、本作はある意味我々よりも純粋で常識をわきまえたごく普通の患者達の様々な姿を、色んな事件や出来事を通して丹念に描いたヒューマンドラマである。
ミステリではないと思う。
しかし、話の端々に心動かされる場面が散りばめられており、最後の裁判のシーンは涙を堪えるのが精一杯だった。

No.2 5点 isurrender
(2011/11/27 23:25登録)
小説としては大満足
だが、ミステリではない
だからこの点数

No.1 7点
(2009/08/12 14:37登録)
精神科病棟での人間模様が、患者側の視点で、緻密で丹念に描かれています。静かに流れるストーリーと緻密な描写によって、かつて体験したことのない、途轍もなく不可思議な閉鎖空間に誘われていきます。残念ながらサスペンスは感じられませんが、むしろそれがこの作品の持ち味なのかもしれません。そして、普通の推理小説では味わえない読後感を得ることができます。
この作品は「感動」のドラマで、ミステリではないとの評価が一般的です。ミステリの定義をかなり広義で捉える私にとっても、ボーダーぎりぎりかもしれません。でも、「罪と罰」を登録したぐらいだから、同レベルだと思って、登録してみました。それに、冒頭の引き込みは間違いなくミステリだし、途中にもその要素は十分にあると思います。

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