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ミステリの祭典

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∠渉さんの登録情報
平均点:6.03点 書評数:120件

プロフィール| 書評

No.60 10点 ドロレス・クレイボーン
スティーヴン・キング
(2014/12/18 22:19登録)
全編主人公のドロレス・クレイボーンの、取り調べ室での一人語り。このおばちゃんがまぁしゃべるしゃべる。最初は「またダラダラ始まったよ」なんて思ってるのもつかの間、このあばちゃんの生き様がだんだん見えてくる。見えてくれば見えてくるほど、見えてないものの多さに気付く。小さな町を暗く包んだ皆既日食が隠した彼女の真実に、もう涙ちょちょぎれなのである。
この叩き上げの肝っ玉かあさんこそ、キングが描く「イイ女」なのである。


No.59 9点 まどろみ消去
森博嗣
(2014/12/18 22:03登録)
個人的にはマストアイテムな短編集。読むたびに雰囲気が変わるというか、自分も少し洗練された気分になっちゃうというか、まぁ気のせいなんですけどね。

『虚空の黙禱者』/さんざん「理系ミステリ」って言われてきたのでいきなりのこれは痛快だなぁ。
『純白の女』/詩から話をふくらませたのか、プロットに詩を織り交ぜたのか、実験的だけど、面白く纏まっています。
『彼女の迷宮』/面白いんだけど作中のミステリィ小説が迷宮入りしてしまう心残り感。
『真夜中の悲鳴』/4つ目でやっと理系っぽいミステリィ。ヒロインのスピカちゃんが萌えです。リケジョ、リケジョ。
『やさしい恋人へ僕から』/ストーリィにニヤニヤしてしまう森ファンは最後のオチでアリャリャってなってしまう作品。大好き。
『ミステリィ対戦の前夜』/ファンサービス①
『誰もいなくなった』/ファンサービス②
『何をするためにきたのか』/大学生向けの青春小説。アリだな。
『悩める刑事』/後に長編で使われるアイデアが見え隠れ。
『心の法則』/意味不明すぎて何回も読み返すんだけどやっぱ意味不明なんだよなぁ。もっとこういう短編があってもいいと思う。
『キシマ先生の静かな生活』/やっぱこれが1番かなぁ。何回読んでもグッとくる、キシマせんせの生き方。僕は良い生き方だと思う、というか願望というか・・・。

シリーズ物から入った人は、短編も、ぜひ。


No.58 8点 封印再度
森博嗣
(2014/12/14 17:29登録)
この作品を読んだときに、この人は本気で「キャラ萌え小説」を書いているんだなと感じた。「萌絵ムカツク~」な人もそれはそれで感情移入ってことですよね。読者に甘えた表現だけが「キャラ萌え」じゃないことをまざまざと見せつけられたし、僕は充分萌えた。
あと、文句をいうわけでもないし、否定するわけでもないけれど、萌絵の嘘について命を軽視しているという批判をしている批評をちらほらとサイト内外で見受けたけど、ミステリィを楽しんでる僕らとそこはどっこいどっこいでいいのでは?と。それをミステリィ好きが言っちゃうのはちょっとアンフェアなような・・・と感じてしまったもので。まぁ個人的な意見なのでどうでもいいんですが。
あとパズル小説としては、もちろんのこと楽しめた。
なんか、野暮な書評になっちゃったなぁ。なんとかならんもんか。せっかく好きな作家さんなのに。反省。


No.57 4点 名探偵のコーヒーのいれ方
クレオ・コイル
(2014/12/14 17:18登録)
カフェインなしで読み切ってしまった。


No.56 10点 詩的私的ジャック
森博嗣
(2014/12/14 17:16登録)
S&Mシリーズからひとつえらぶとしたら、自分はこれかな。森博嗣が何をしたいのかがようやく少しわかったような気がした。論理性を突き詰めるとミステリィが消滅してしまうという驚きのカタルシス。まぁ論理性なんて幻想なんでしょうが。もちろん、密室のトリックには脱帽したし、総合的にみれば、最も納得のいく手段だと思った。そこにはもはや動機が入り込む余地はないのかとさえ思える。まぁそれっぽいモノはありましたが。切なく、ポエティで、多分ミステリィだった。そしてすべて幻想。


No.55 7点 ライディング・ザ・ブレット
スティーヴン・キング
(2014/12/07 14:59登録)
短編ですがボリュームたっぷりなシチュエーションスリラーである。病気の母の見舞いに行くためにヒッチハイクで病院に向かう大学生がつかまえた車にはなんと・・・!

みたいな、古典的なシチュエーションなんだけど、ストーリィの顛末は予想を裏切る良いものになっていると思う。バリエーション豊かで、ディテールが細かくて、なおかつ短く集約されているので、絶叫マシンのような瞬間的な恐怖と解放感のある作品になっている。しかも泣けちゃうんだからニクい。


No.54 6点 第四解剖室
スティーヴン・キング
(2014/12/07 14:45登録)
表題作『第四解剖室』の迫りくる緊張感とわが道を行くオチにもう心うばれてしまいましたが、他にもかなり良いのが揃っているなぁ、と。

『黒いスーツの男』/少年時代に見た不気味なスーツの男は実在したのか、夢だったのか。老人が回顧する少年時代のいびつな思い出。

『愛するものはぜんぶさらいとられる』/自殺願望を持つ、「トイレの落書き収集家」のセールスマン。彼のささやかな幸せが自殺を前に悲哀へとかわっていく。

『ジャック・ハミルトンの死』/どんな窮地にも絶えず、強固になっていった3人のワルの友情とその最期の物語。史実を基に作り上げたアメリカ大不況時代のファンタジィ。

『死の部屋にて』/囚われの身になった男の、尋問室からの大逆転、大脱出サスペンスアクション。こんなのもできるのかー。ブルース・ウィリスらへんにやって欲しい!

でもってラストは<ダーク・タワー>シリーズの番外編が収録。ローランドがひたすら大変な目に遭います。ファンはやっぱり見た方が。

非常にバラエティ豊かで、とっくのとうにホラー作家の殻は破ってます。まぁでも怖いんだけどね。


No.53 10点 笑わない数学者
森博嗣
(2014/12/04 22:07登録)
「いやぁ、個人的には超傑作なんだけど、みんなの評価みたらけっこう賛否あるんだなぁ。こういう時思い切った点数をつけるのははばかれるというかなんというか・・・。なんか逆トリックとかいうのもちょっと恥ずかしいなぁ・・・。ここはちょっと批評家ぶってこんな作品ズルいよなぁ的な方向でいこうかなぁ・・・。どうしよう。。。」




「君が決めるんだ。」





「10点で!!!!逆トリック万歳っ!!!!!」


・・とまぁこんな経緯で無事10点をつけることができましたが、やはり賛否があってとても興味深かったです。でも「不定」なわけだから、1点の解釈も10点の解釈もたぶん間違いではないんでしょう(必死の自己肯定)。トリックがなんであれ、犯人がだれであれ、作品がどうであれ、評価がどうであれ、決めるのは僕。それでよし。



No.52 8点 ヴォイド・シェイパ
森博嗣
(2014/12/04 21:35登録)
捕物帳/歴史ミステリにしたはいいけど、たぶん違う笑。まぁS&Mもミステリかって言われたらグレーゾーンだし、森作品は全体的にノンジャンル感があるので笑って許して欲しい剣豪小説シリーズなのである。

主人公は侍で、舞台もたぶん江戸時代なので何とか時代小説としての体裁は保っているが、各章ごとに大立ち回りがあるわけでもなく、時代背景の描写もすごい薄めだし、主人公・ゼンの一人称目線で話が進むのも、これまた厄介である。人里離れた山奥で師匠・カシュウとともにすごしてきたゼンが、カシュウの死を機に山から下りて放浪するわけだが、ゼンは山生まれ山暮らしなので人間社会のことは何も知らない。そんなゼンの視点からしか情報が受け取れないので、読者にもゼンの視点が強いられる。いつもは俯瞰から見下ろしていた第三者的な視点はこの作品には通用しないのである。ただひたすらゼンの見る景色をゼンの息遣いを、ゼンの精神世界を読者は追い続けるしかない。そんなゼンの成長が、私はもう楽しみで仕方がない。なんて笑。


No.51 6点 レベッカ・ポールソンのお告げ-13の恐怖とエロスの物語
アンソロジー(海外編集者)
(2014/10/21 22:21登録)
「セックスのない恐怖小説は存在するのか」という話から始まったアンソロジー企画。でもって結論は、どうやら無かったようです(笑)。まぁそんなことも無いとは思いますが、少なくとも恐怖小説の根底には「愛」があるとは思います。家族の愛、博愛主義、ラブ&ピース・・・だがしかし!とくに男女の愛は恐怖が棲みついてるようです。こわいなぁ。表題作の『レベッカ・ポールソンのお告げ』なんかはキングらしすぎて逆に面白いんですが、『建築請負師』のようなゾクゾクなホラーもあるし、と思いきや『死神と独身女』みたいなまさかのエロギャグ短編(!)があるし、ひとえにエログロホラーといっても、こんなにあなどれないとは。


No.50 7点 冷たい密室と博士たち
森博嗣
(2014/09/23 19:46登録)
シリーズ10作品のなかではある意味最も異色な作品。他の森作品でもあんまりないくらいのオーソドックスな本格であるゆえ異色に感じてしまう。前作からの寒暖差もたっぷり。『F』同様、実験(研究)用施設内での密室殺人というそそるシチュエーションながら、動機をのぞけば実に論理的で、構造的な問題がほとんどない型どおりな出来。前後の作品群と比べると温度差を感じてしまう。じゃあこの作品ってなんなんじゃろなぁって感じで再読し始めましたが、この犯人像を描くことが必要だったのかなぁと思いました。動機の不透明さはありますが、プライドや他人の干渉が研究や実験に対する純粋な気持ちを阻害してしまう人間像、そしてその不安をとりのぞくことが犯人にとっての「安定性」であり、ゆえに「不安定」になってしまうという人間像。つまりは僕らみたいなフツーな人間です。少なくとも真賀田四季はこんなことしないな、という対比が描かれているのかなぁと思いました。『F』のアンサーのひとつ、という印象です。

あと、萌絵じゃないけど喜多先生かっこいい。あ、これだけでも読む意味あるな笑。


No.49 9点 すべてがFになる
森博嗣
(2014/09/18 14:58登録)
ドラマ化するんだなぁ。映像的なようで弊害も多そう。
とはいえ、映像化の話にワクワクというか、ソワソワしてしまう森博嗣ファン。『すべてがFになる』、非常に思い出深い作品である。レビュー載せるにあたって、本サイトの、10年以上にわたる160人の方のレビューを拝読しましたが、賛否、賛否、賛否。読書って面白い。とことん読者を選ぶところが森作品の特徴らしいということがわかった。
それにしても密室殺人、衝撃的だったなぁ。あのシチュエーションの抜群さはデビュー作のインパクトとしては申し分ない。どんなトリックで真賀田博士は抜け出したのか、どうやって殺したのか、なぜ殺したのか。犀川先生は理詰め理詰めで解いていく。萌絵は頭の回転は速いし、研究所のスタッフも頭はよさそうなんだけど真相に迫れない。客観性がないのね。こんなトリックは常識的に考えられない。バカげてる。でも理論的には適ってる。この筋道がこの作品の本道なんですね。びっくりしました。思考が育てられた感じでした。
論理的に構造をたてたときに、それを人間が行うこととして、破綻するのかしないのか。挑戦的ですね。
そう考えるとこの動機は究極的でしたねぇ。オブジェクト指向、なるほどです。
ミステリと思って読むと、フェアかアンフェア・・・グレーなところですね。でも、ミステリだと思って読まなければ瑣末なことです。それができる本のような気がしました。

あと、この作品、時代設定がすごく大事な気がしますが、、、ドラマではどうするんだろう??楽しみ??


No.48 7点 ペット・セマタリー
スティーヴン・キング
(2014/07/19 16:14登録)
もはや感動をおぼえる怖さ。大切な人の「死」によって起こる日常の崩壊、死と向き合うことの難しさ、そして立ち直ることができずに起こってしまう日常の崩壊の連鎖。ホラーってこういうことだよなぁって思ってはいるけれど、改めて真正面から「死」をつきつけられると、ホラーでも辛いなぁ。土地にしみこむ「人が生き返る墓」の都市伝説が、先人たちが築いてきた「死」の歴史として残る街と、その街で息子の「死」を迎えることになる家族の物語。ホラーという一種のエンターテイメント作品でありながら、物語のすみずみから感じる純粋さが切ないホラー作品でした。


No.47 6点 墜ちていく僕たち
森博嗣
(2014/05/09 22:23登録)
なんか泣けた。なんか泣けたからこれはもういい小説です。結局何にもないのが良い。


No.46 5点 死の花の咲く家
仁木悦子
(2014/04/28 17:29登録)
子供が出てくるとやっぱり良いですね。仁木作品は。読みやすくて、心地いい。仁木さんの背伸びしない感じが好きです。仁木さんは僕にとって、日本ミステリの窓口にいる受付嬢的存在なのです。

「鬼子母の手」、「夏雲の下で」、「空色の魔女」が好きだったかな。子どもを子どもらしくちゃんと描いててすごい。なかなかいないですよね。これ書ける人。


No.45 7点 トム・ゴードンに恋した少女
スティーヴン・キング
(2014/04/21 20:13登録)
少女が森で迷子になる話です。
ひたすら迷子になる話なんですが、少女の成長記として読めたり、スリラーな感じもするし、家族の愛情とはなんぞやって読み方もできるし、ファンタスティックな匂いもします。森で迷子になっただけなんですが、深い緑地に囲まれる様は人間の不安の心理とうまく重なるし、不安と恐怖を超えて極限状態に陥る心理描写も巧く、強く生きようとする少女の姿には唸らせられました。
物語のひっぱり具合は、流石キングといったところ。もはや名人芸。


No.44 7点 夜がはじまるとき
スティーヴン・キング
(2014/04/14 21:53登録)
夕暮れがすぎて、夜がはじまりました。

『N』/★★☆☆☆
古典的な題材を踏襲しながらきっちり怖い。強迫性障害が伝播していく話なのですが、怖い怖いと思いながら結末まで読んでしまう自分はもう強迫街道まっしぐらでした。「あぁおれキング読んでるなぁ」ってタイプの作品かな。

『魔性の猫』/★☆☆☆☆
猫ってのはこの作品くらい悪い奴だと思ってる笑。なかなか悪童な猫を書いててなんかちょっと嬉しかった。

『ニューヨーク・タイムズを特別割引価格で』/★☆☆☆☆
キングはロマンチストだけど、綺麗ごとは書きません。たとえ男と女の物語でも。

『聾唖者』/★★☆☆☆
聞こえていようがいまいが、聞いていようがいまいが、耳はふたつあるわけだ。くわばらくわばら。

『アヤーナ』/★☆☆☆☆
生と死の条理と不条理を"奇跡"を交えて書き上げた快作。胸がつまります。

『どんずまりの窮地』/★★★★☆
正直この作品のインパクトで記憶が占められてて他の作品の記憶は曖昧です笑。とてつもないウ〇コ祭りでえげつない。ゲスいぞ、キング。これも巨匠の円熟の極みなのか、はたまたゲスの極みなのか。『どんずまりの窮地』って題名もこれまた秀逸。

『夕暮れ~』に次いで秀作揃い。愉しみました。


No.43 4点 職場、好きですか?
眉村卓
(2014/04/07 21:29登録)
所謂ショートショートってやつですか。こういう地味地味SFなかなか嫌いじゃない。現象に対してあんまり深くつっこまないで、「不思議は不思議だから不思議だ」ってスタンスがいい。そこに働くことに対するアイロニーもあって、ふと気づいたら考え込んでる自分がいました。
とくにいいなと思ったショートは『必死の夏休み』、『きらわれもの』、『青くん』、『もくろみ』、『Q工業』、『触媒』、『スーパーレディ』、『欠落秀才』あたりですかね。あんまり絞り切れなかったなぁ。


No.42 5点 ZOKURANGER
森博嗣
(2014/04/07 21:16登録)
ZOKUシリーズ最終章。
怒涛の展開のおてんこ盛りですが妄想が過ぎてシリーズ史上最大の混沌。いままであんま好きじゃなかったバーブ・斉藤がちょっと好きなったんで、終わりなんて言わんとまたやって欲しい。


No.41 7点 夕暮れをすぎて
スティーヴン・キング
(2014/04/07 21:08登録)
キングの第五短編集。

①『ウィラ』/★★★☆☆
文章が素敵なロマンスホラー。雰囲気がぐんぐん伝わってきて引き寄せられる。そして切なく。

②『ジンジャーブレッド・ガール』/★★★☆☆
完成度としては一番だと思う。キングの好きで得意なタイプのサイコスリラーって感じ。溌溂としていく女性の姿にこの作品の緻密さを感じる。

③『ハーヴィーの夢』/★☆☆☆☆
これもキングらしく緻密。じめっとするホラー。

④『パーキングエリア』/☆☆☆☆☆
これはギャグってことでいいんだよなぁ・・・笑。作家が主役の物語だとついついキングを思い浮かべて読んじゃうけどライナーノーツ読んだらあながちあながち、キングだった。

⑤『エアロバイク』/★★★☆☆
これは完全にギャグです笑。個人的に一番好き。増田こうすけに書いてほしい。シュールに虜。

⑥『彼らが残したもの』/★★☆☆☆
9.11に関してはいろんな見解と、いろんな解決と、いろんな解釈と、いろんな妥協があると思いますが、アメリカのいち作家として書かずにはいられなかったのでしょう。


⑦『卒業の午後』/☆☆☆☆☆
キングの脳内ワールド、爆発。どう読めばいいんだか。短いからいいけど。


初期の短編集と比べるとだいぶ毛色は変わりましたが、僕にとっては相変わらず魅力的です。

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