home

ミステリの祭典

login
TON2さんの登録情報
平均点:5.65点 書評数:330件

プロフィール| 書評

No.150 6点 黄色い部屋の謎
ガストン・ルルー
(2012/11/26 20:49登録)
集英社文庫「乱歩が選ぶ黄金時代ミステリー②」
厳重に戸締りされた黄色い部屋で起こった事件。1908年の作品ですが、既に密室の様々なパターンが出尽くしている中での、新たな密室の構築です。
犯人の設定が「アクロイド殺し」ばりの、違反すれすれというところではないでしょうか。


No.149 6点 新・世界の七不思議
鯨統一郎
(2012/11/26 20:45登録)
創元推理文庫
「邪馬台国はどこですか」の世界バージョンで、バーに集う美貌の歴史学教授早乙女静とフリライター宮田が世界史に新解釈をなす趣向です。
世界の七不思議を扱いながら、ストーンヘンジの石柱は天を支えるためのもので日本の神社の鳥居につながっているなど、微妙に日本との関係づけをしています。
これもけっこうおもしろいと思いました。


No.148 7点 僧正殺人事件
S・S・ヴァン・ダイン
(2012/11/26 20:37登録)
集英社文庫「乱歩が選ぶ黄金ミステリー③」
ミステリーの古典的名作。乱歩が選ぶNO1の「赤毛のレドメイン家」より完成度が高いと思います。
犯人の意外性は、最もそれらしくない者というミステリーの原則に従えば途中で分かりますが、登場人物が一流の数学者ばかりというのが特徴です。
単なる衝動的な犯罪ではなく、非常に繊細で優秀な頭脳から生まれた犯罪だと、名探偵ファイロ・バンスが推理します。そして、童謡の見立ては犯人の遊びであり、自己顕示欲だと。
作者の語る数学・物理学の知識は正しいのでしょうか。


No.147 6点 ネジ式ザゼツキー
島田荘司
(2012/11/26 18:27登録)
講談社NOVELS
御手洗潔は、スウェーデンの大学の脳神経の研究者をしていて、舞台は彼の研究室だけです。
記憶の一部をなくした男が書いた奇妙な童話「タンジール蜜柑共和国への帰還」をヒントに、かつてフィリピンで起こった殺人事件の謎を解く、安楽椅子探偵ものです。
構想は「眩暈」と同じだと思います。
御手洗が天才過ぎるがゆえに、こういうとんでもない謎にしか挑戦できなくなっているように思います。
この作者らしく題名も奇抜ですが、これは御手洗ものだから、固定の読者がいることを前提にしたものでしょう。一見さんでは、この題名では手に取らないと思います。
余談ですが、この作品でヒッチコックの後期の作品が、「鳥」「マーニー」「引き裂かれたカーテン」「トパーズ」「フレンジー」「ファミリープロット」であることを知りました。全部観ています。


No.146 6点 赤毛のレドメイン家
イーデン・フィルポッツ
(2012/11/26 18:16登録)
集英社文庫「乱歩が選ぶ黄金時代ミステリー①」
乱歩が激賞し、1930年前後の作品として第1位に選んだ作品です。
犯人が己を常人と異なる才能を持つと過信し、犯罪を芸術のようにとらえ、あまりに美的に飾ろうとするがゆえに尻尾を出してしまうというのは、宮部みゆきの「模倣犯」にも通じるものがあります。
今の捜査技術なら、血痕があればDNA鑑定により誰のものかわかってしまいますが、第二次大戦前ならこんなものでしょうか。それ故に、成り立つトリックです。
犯罪も捜査も優雅だった古き良き時代の作品です。


No.145 5点 殺人の棋譜
斎藤栄
(2012/11/26 18:07登録)
講談社文庫「江戸川乱歩賞全集6」
昭和41年第12回受賞作。
将棋棋士最高タイトル戦の緊張感と子供の誘拐の緊張感が描かれていますが、内容が甘いです。
警察の誘拐犯に対する捜査がこんなに甘いのか?二度も犯人を取り逃がしたり、殺されてしまったり、警察は失態だらけです。だいたい誘拐犯の逮捕にわずか2~3人の捜査員だけで向かうなんてことがあるのでしょうか。
最後のどんでん返しは心情としては分かるものの、案外ありふれた内容です。


No.144 5点 天使の傷痕
西村京太郎
(2012/11/26 18:01登録)
講談社文庫「江戸川乱歩賞全集6」
昭和40年第11回の受賞作。
封建制に閉じ込められた農村の閉鎖性とサリドマイド児に対する社会の差別といった社会性を盛り込んでいますが、内容は付け焼刃のようで深みが感じられません。
だいたい本当に愛しているならば、女が男を殺人のアリバイに利用するでしょうか。
また、主人公の新聞記者の農村の人々やサリドマイド児の親たちへの「あなたたちは間違っている」というものの言い方にも、あんただけが偉いのかよと反発したくなりました。
現代ならば、ミステリーも殺人犯の心情や生活環境を詳しく語るのでしょうが、この時代はこの程度でも受賞作になってしまうのだと感じました。


No.143 6点 覆面作家の愛の歌
北村薫
(2012/11/25 17:09登録)
角川書店
「覆面作家のお茶の会」「覆面作家と溶ける男」「覆面作家の愛の歌」の3作。
覆面作家こと大富豪の娘、新妻千秋の天国的な美貌にふれてみたい。


No.142 5点 箸墓幻想
内田康夫
(2012/11/25 17:05登録)
毎日新聞社
第七代孝霊天皇の皇女で第十代崇神天皇の伯母ヤマトトトヒモモソヒメの墓といわれ、宮内庁が管理している箸墓をめぐる遺跡発掘物に関する殺人事件です。
大和は歴史・伝統とロマンスの宝庫です。少し余裕ができたら、ゆっくり回ってみたいと思いました。


No.141 2点 ドールズ
高橋克彦
(2012/11/25 16:59登録)
角川文庫
7歳の少女に江戸時代の人形師の意識がよみがえったというホラーです。
肉体を精神に奪われて・・・というのは結構ですが、今の時代に読んでも怖くありませんでした。
この作者の描く登場人物は、あまりに常識的・健康的な考えの持ち主で、面白みや凄みに欠けています。


No.140 5点 タイムスリップ森鴎外
鯨統一郎
(2012/11/25 16:56登録)
講談社NOVELS
(ネタバレ)
大正11年から80年後の平成の渋谷道玄坂にタイムスリップした森鴎外こと森林太郎。渋谷で知り合ったマイクロミニの女子高生とともに、自分を殺そうとした犯人を探り、さらに文壇の秘密をも探ろうという話です。大正末期から昭和にかけて活躍した作家たち、芥川龍之介、太宰治、小栗虫太郎、小林多喜二、直木三十五、中島敦らが皆30~40歳代前半で死んだのは、誰かに殺されたのではないか。その犯人は、探偵小説の大家だという話です。
鴎外が、携帯電話、コンビニ、テレビ、ワープロ、パソコン、ウォークマン、ラップ、スポーツジムなどに次々と順応していく過程が面白かったです。
また、現代の若者は見た目は無気力で無責任ですが、実は思いやりも行動力もあるというのが楽しいです。
肩ひじ張らずに読めます。


No.139 6点 カウント・プラン
黒川博行
(2012/11/25 16:46登録)
文藝春秋
1996年の日本推理作家協会賞(短編部門)受賞作。
「カウントプラン」「黒い白髪」「オーバー・ザ・レインボウ」「うろこ落とし」「鑑」の5編。
どれも犯罪にからんだ地元警察署の刑事の視点で描かれています。しかし彼らはスーパーマンではなく、どこにでもいるような平凡な日常を送っている人間で、事件により日常とちょっと異なった性癖や感情を持った人間と接触するというのが通しのモチーフです。


No.138 6点 アトポス
島田荘司
(2012/11/25 16:41登録)
講談社NOVELS
ノベルスで750ページもあり、あいかわらずの大作です。
ホルモン異常によるストレイジ(=アトピー)による悲劇じたてになっています。
全くつながりがないと思われる事態を、最後には関連付け説明する作者の剛腕はさすがです。しかし、ストーリーが奇異にはしりすぎ、その分現実離れしているように思います。
御手洗潔もあまりに天才すぎて、最初から登場できずにラスト150ページで事件を説明し解決します。彼の言動はフェミニストですが、人間らしさが感じられないようになりました。


No.137 6点 風化水脈 新宿鮫VIII
大沢在昌
(2012/11/25 16:33登録)
毎日新聞社
新宿鮫シリーズ7作目。
このシリーズは、新宿というまちが欲望と暴力にまみれているエネルギッシュなまちとして描かれていましたが、この作品では新宿署管内の地理の説明や江戸時代からの成り立ちの説明から入っていて、ずいぶんとおとなしくなったと感じました。
主人公の鮫島警部や暴力団員真壁の行動もストイックで分別が出てきています。
この作品では、享楽や金を求めて人が群がるまち新宿が舞台でなくてもいいのではないかと思いました。


No.136 7点 模倣犯
宮部みゆき
(2012/11/25 16:27登録)
小学館
上下巻で700ページに及ぶ大作であることとこってりとした描写でなかなか読み進めず、読了までに3週間かかりました。
今日的な社会的事件を扱うことには定評のある作者ですが、この物語はただ自分の思い通りにしたいから殺人を犯す、愉快だから殺すといった日常的には理解に苦しむ話で、犯人たちに全く感情移入できませんでした。
話は、被害者・家族と犯人を追う警察・マスコミ、犯人と家族、また被害者・警察というように進んでいきます。警察もマスコミも、犯人の心理が異常すぎて理解できません。犯人も、被害者の家族も、警察官も、ジャーナリストも心に闇を抱えています。
登場人物たちが皆興奮し、落ち込み、悩み、泣く中で、唯一冷静に自分の信念を曲げずにきた被害者の祖父が、真相が分かった後の最後で「マスコミはこれで事件は終わるというが、孫は帰ってこない。」と酒を飲んで暴れる場面は、人間の感情が理屈だけでは説明がつかないということを教えてくれます。


No.135 5点 ドグラ・マグラ
夢野久作
(2012/11/23 00:43登録)
三一書房「夢野久作全集4」
30年ほど前の学生時代に一度挑戦しましたが、「キチガイ外道祭文」のチャカポコチャカポコといったあたりで挫折しました。
ようやく読み終えました。「脳髄はものを考えるところに非ず」「祖先が受けた精神的恐怖・狂気は遺伝する」といった学説による狂人治療を通して犯罪が描かれます。
現代では、精神病理学や遺伝子工学、分子生物学などの発展により、これはトンデモ学説ですが、発表当時の読者たちはこの奇怪な理論で煙にまけたのでしょうか?
あまりに奇怪で話を広げすぎているせいか、十分に理解することができませんでした。でも、最後は夢オチの一種ではないでしょうか?
しかし、その奇怪さに敬意を表します。


No.134 7点 火の粉
雫井脩介
(2012/11/23 00:34登録)
幻冬舎文庫
(ネタバレ)
他人に愛してもらいたい、理解してほしい。そんな感情がつのりすぎて異常な人間ができてしまった。誠心誠意他人につくすが、それが隣人としての度を越え、少しでも受け入れられないと「殺人鬼」と化してしまう。しかし、世間にはいい人としか見えない。彼と長くつきあった者だけが、その狂気に触れる。
高野和明の「13階段」では死刑執行をする刑務官の「俺は人殺しだ」という思いにふれたが、この作品では裁判官も死刑判決を出すと同じような思いにとらわれるということが描かれています。
物語の舞台となる裁判官一家の会話とその家族のものの考え方が自然です。自分もこう考えるなと共感できます。大変力量のある作家だと思います。


No.133 6点 聖域
篠田節子
(2012/11/23 00:23登録)
講談社文庫
かかわった者たちを破滅へ導くという未完の原稿「聖域」。一人の文芸編集者が偶然見つけるが、得体のしれない魅力を秘めた世界へ引きずり込まれる。この小説を完成させようと、失踪した女流作家の行方を探し求めるその男は、「聖域」の舞台である東北へとたどりつく。
ミステリーなのか、伝奇なのか、オカルトなのか、ホラーなのか、スピチュァリズムなのか、よく分からないが、不思議な雰囲気があり、そこがたまらなく魅力的です。
この作者は常に宗教というものを念頭に置いて、現代において神とは何か、宗教とはどのような意味を持つのかを考えていると思います。


No.132 6点 後鳥羽伝説殺人事件
内田康夫
(2012/11/23 00:15登録)
角川春樹事務所
作者の第3作目にして、名探偵浅見光彦の初登場作品。
承久の乱により壱岐に流された後鳥羽法皇が還幸したという伝説の残る広島県から島根県にかけてが舞台で、情景模写に旅情をそそられます。
話の切れ味がよく、警察組織の抱える問題も俎上にあげられ、奇抜なトリックなど使わないことで現実味をもたせ、登場人物の内面の動きもとらえている点が共感を呼びます。


No.131 5点 湯殿山麓呪い村
山村正夫
(2012/11/20 20:11登録)
角川文庫
昭和56年角川小説賞受賞作。
出羽三霊山のひとつ湯殿山は即身成仏したミイラで有名ですが、そのミイラの呪いが現在の殺人事件とかかわるという、伝奇じたてのミステリーです。個人的には好きな分野です。
話の筋はおどろおどろしいものがありますが、あまりに人間関係が都合よくできすぎていて、ご都合主義です。

330中の書評を表示しています 181 - 200