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ミステリの祭典

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風化水脈 新宿鮫VIII
新宿鮫シリーズ

作家 大沢在昌
出版日2000年09月
平均点7.71点
書評数7人

No.7 6点 クリスティ再読
(2021/12/25 20:46登録)
新聞連載で読んでいたから、本で読むのは初。こんなことも、ある。
自動車窃盗グループの摘発話だから、一番地味な話、といえばそう。だけどこの本の主人公は「新宿」という街自体なんだよね。だから、本書はあまり鮫島ストーリーらしさはなくて、晶もちょっとしか登場しない。鮫の旦那も狂言回しっぽい。
まあ真壁、出来すぎのキャラ。刑務所から出てきて、元の所属組も迎えてくれるのではあるけども、今の組に違和感を抱えつつ、そうそう簡単にはケツをまくれない...そういう屈折があるから、どうだろう、鶴田浩二? そんな風に言いたくなるくらいに、古き良き様式美ヤクザ映画っぽいカラーがある。
60年代末くらいの映画で、一面の荒れ果てた草原が出てきて...が淀橋浄水場の跡地ロケだったりしたものだ。その時代の前は池。東京という街の表層のすぐ下に、人工的な水道や川といった「水の風景」が埋もれている。そういう地誌というか「街の本性」を、戦後混乱期の殺人を絡めて描いているあたり、うまいものだとは思う。
オーソドックスといえば、真正面の話。評者は変化球好きが本性。

(でも仙田くん、いい奴じゃん。仙田にやや惚れる...)

No.6 6点 TON2
(2012/11/25 16:33登録)
毎日新聞社
新宿鮫シリーズ7作目。
このシリーズは、新宿というまちが欲望と暴力にまみれているエネルギッシュなまちとして描かれていましたが、この作品では新宿署管内の地理の説明や江戸時代からの成り立ちの説明から入っていて、ずいぶんとおとなしくなったと感じました。
主人公の鮫島警部や暴力団員真壁の行動もストイックで分別が出てきています。
この作品では、享楽や金を求めて人が群がるまち新宿が舞台でなくてもいいのではないかと思いました。

No.5 7点 itokin
(2010/02/05 12:19登録)
静かな物語の展開で自動車窃盗団の裏側も良く書かれているが最後の盛り上がり、物語の意外性などもう一ひねりがほしかった。

No.4 10点 E-BANKER
(2010/01/24 16:53登録)
新宿鮫シリーズの超大作。
「スゴイ作品」です。読了後もその一言しか思い浮かびませんでした。
今回の登場人物はこれまで以上に印象的です。
藤野組のヤクザ真壁、その内縁の妻・雪絵、雪絵の母、そして西新宿の謎の老人・大江・・・
鮫島を含め、すべての登場人物が「新宿」という特殊な街に翻弄されながら、どうしようもない「時の流れ」に巻き込まれていきます。
特に、雪絵の母の言葉は印象的です。「・・・せめてこの街からは逃げちゃいけないと思ったの・・・」(どういうシーンかは言えませんが) 読んでいて息が詰まりそうになりました
ラストは鮫島がかっこよく締めてくれます。
本作は、できれば単独で読まないでください。「新宿鮫シリーズ」を読み続けた読者のみが味わえる感動だと思いますので・・・

No.3 7点 あびびび
(2009/11/26 23:11登録)
新宿の過去、そして現在。そこに何十年も立ち止まって生きてきた老いた男。
さらに昔風のやくざスタイルを貫き、葛藤する妙齢の男。

盗難車を巡る捜査が基本だが、この二人の生き方にスポットを当てて、物語は静かに進行する。

ほとんどアクションはないが、このシリーズの通過点として必要不可欠な一冊かも知れない。

No.2 10点 Tetchy
(2005/07/10 01:31登録)
新宿鮫シリーズの到達点というべき作品です。
『屍蘭』では物語の静かさが仇になった感がありましたが、これは逆に成熟したワインのような芳醇感をもたらしました。
読書の愉悦を心ゆくまで味わった次第です。

No.1 8点 由良小三郎
(2002/02/15 19:46登録)
このシリーズで評価の高い方の作品です。耐えるというのか待つ捜査をする鮫島のストイックなところが僕は好きです。

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