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ミステリの祭典

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殺人の棋譜

作家 斎藤栄
出版日1966年01月
平均点4.50点
書評数4人

No.4 4点 小原庄助
(2025/05/12 21:04登録)
物語は、将棋界最高位戦の挑戦者に決定した直後のプロ棋士、河辺真吾八段の愛娘が誘拐されることから始まる。犯人は身代金一千万円を軽飛行機から投下することを要求し、これを巧にまきあげることに成功。裏をかかれた形となった捜査陣は犯人追求に全力を挙げ、やがて主犯の人物と共犯者に迫っていく。
またその一方で、河辺八段の最高位戦三番勝負も一勝一敗、最後の一戦で雌雄を決するところまでくる。犯人の行方と、何よりも愛娘の運命、そして河辺自身の勝敗は、と全編にサスペンスが満ち溢れた、それでいて純粋な本格推理となっているのである。
棋士を主人公に、タイトル戦と幼児誘拐を絡ませた筋立ては斬新であり、身代金の受け渡しに飛行機とVHF通信を使ったことと、謎の数字を解明していく個所はよく出来ている。難を言えば、読みものとしての面白さを狙う余り、結末を劇的にし過ぎることと、犯人の動機とその立場が首肯できないことだろう。

No.3 5点 TON2
(2012/11/26 18:07登録)
講談社文庫「江戸川乱歩賞全集6」
昭和41年第12回受賞作。
将棋棋士最高タイトル戦の緊張感と子供の誘拐の緊張感が描かれていますが、内容が甘いです。
警察の誘拐犯に対する捜査がこんなに甘いのか?二度も犯人を取り逃がしたり、殺されてしまったり、警察は失態だらけです。だいたい誘拐犯の逮捕にわずか2~3人の捜査員だけで向かうなんてことがあるのでしょうか。
最後のどんでん返しは心情としては分かるものの、案外ありふれた内容です。

No.2 5点
(2010/06/05 12:34登録)
江戸川乱歩賞受賞の斎藤栄氏の出世作。乱歩賞という冠と、タイトルの「棋譜」という字句からすれば、いかにも暗号ミステリーの秀作という感じを思わせるが、そうではなく、ごくごく普通のミステリーであった。タイトルだけが一人歩きしたような感じだ(プリズン・トリックのように出版社がネーミングを後付けしたのでは?)。
ただ、本格モノとしては並の出来ではあるがサスペンスが十分にあったので駄作ということはなく、ほどほどに楽しめた作品だった。なお続編として、「殺人の棋譜」の時代から17年後の設定の「新・殺人の棋譜」も発刊されている。

No.1 4点 江守森江
(2010/03/22 15:23登録)
本格ミステリ中心に選考されていた頃の乱歩賞受賞作でタイトルから将棋ミステリーだと分かる。
当時、将棋会館に偶に通う程度なへっぽこではあるが、将棋ファンだったので、将棋とミステリーがどの様に融合したか期待しながら読んだ。
将棋自体はタイトル戦の対局をサスペンスに絡めただけの誘拐物で、これが野球や他の対戦競技全てに転用可能な作品である事にガッカリした。
一応暗号ミステリー&誘拐物としては水準レベルなのだが、タイトルに「棋譜」と銘打つならゲームとしての将棋を融合させる位はしてほしかった。
もっとも、それが達成されていたなら今でも将棋ミステリーの金字塔として燦然と輝いているだろう。

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