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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1696件

プロフィール| 書評

No.496 6点 ヒートアップ
中山七里
(2013/10/10 20:13登録)
「魔女は甦る」の続編ですが、主人公は変わっています。麻薬取締官・七尾とヤクザがコンビを組み、ヒート(非合法ドラッグ)の売人を追うという展開です。このコンビのやり取りは楽しめます。後半はアクション映画並みの展開となります。前作同様、ミステリーよりアクションに重きが置かれているような気がします。


No.495 6点 魔女は甦る
中山七里
(2013/10/10 20:12登録)
ミステリーというより、パニックホラー系の作品です。前半は、バラバラ死体を捜査する刑事を中心に物語は進みます。真相が判明した後半は、ヒッチコックの有名作品+ミラ・ジョヴォヴィッチ主演映画のような展開です。被害者(男性)が、その場所へ訪れた目的は?(この真相を知りたいのですが・・・)、負傷した刑事と、被害者の恋人のその後は?と未完のままで終了。続編「ヒートアップ」でということか?


No.494 8点 狂人の部屋
ポール・アルテ
(2013/10/08 12:22登録)
裏表紙より『ハットン荘のその部屋で、百年ほど前、部屋に引きこもっていた文学青年が怪死したのだ。死因はまったくの不明。奇怪なことに、部屋の絨毯は水でぐっしょりと濡れていた…以来、あかずの間となっていた部屋を現在の当主ハリスが開いた途端に、怪事が屋敷に襲いかかった。ハリスは、部屋の窓から墜落死し、その直後に部屋の中を見た彼の妻が卒倒したのだ。しかも、部屋の絨毯は百年前と同じように濡れていた。』
ハリスの弟に予言能力があり、上記事件や、その後の怪奇現象を言い当てるという謎。妻が部屋の中で何を見て卒倒したのかという謎で引っ張ってゆきます。この真相(後者)はユニークでしたね。また、探偵役の青年と人妻(元恋人)とのロマンスが、事件と絡まっている点で、いい味を出していると思います。プロローグとエピローグで「棺を開けたら何がある?」も決まっていました。近年、海外で本格ミステリーを書く作家は少ないらしいので、希少価値の存在であるのかもしれません。本書を著者の最高傑作と押す声が多いらしいのですが、いい作品であるのは間違いがないと思います。


No.493 7点 第四の扉
ポール・アルテ
(2013/10/06 19:40登録)
(ネタバレあり)密室がメイントリックかと思わせ、実は・・・という凝った作品です。また3分の2くらいまでの物語(一人称形式)が突如、○○により打ち切られる。そして突然のツイスト博士の登場となる。この展開も新鮮でした。密室を期待すると、裏切られるかもといった感じですね。本作は1987年ですが、ほぼ同時期発表のU氏(日本)のN殺人と似ています。やはり、プロット勝負といった作品だと思います。


No.492 5点 猿島館の殺人~モンキー・パズル~
折原一
(2013/10/04 19:12登録)
黒星警部と葉山虹子のコンビによるシリーズ。ちょっぴりお色気混じりのユーモアもので、結構好きなタイプで楽しめます。パロディなので、トリック自体にそれほど期待はしませんが・・・(笑)。「オリエント急行の殺人」が頻繁に出てきていたので、ラストはまさかとは思いましたが、違いました。(ホッ・・・)


No.491 6点 アメリカ探偵作家クラブが選んだミステリBEST100
事典・ガイド
(2013/10/03 20:44登録)
1995年、アメリカ探偵作家クラブ(ミステリの著作を発表している作家200名)が選んだベスト100。選出方法は、ジャンルを①古典②サスペンス③ハード・ボイルド、探偵④警察⑤スパイ、スリラー⑥犯罪⑦本格推理⑧歴史ミステリ⑨ユーモア・ミステリ⑩法廷とし、ジャンルごとに5作品を投票。結果、2090作品、880人の作家が選ばれ、総合ベスト100、並びに各ジャンルのベスト10が発表されたもの。本邦「東西ミステリーベスト100(2013年版)」のベスト10のうち、「Yの悲劇・エラリー・クイーン」(2位)「幻の女・ウイリアム・アイリッシュ」(4位)「火刑法廷・ジョン・ディクスン・カー」(10位)の3作品はランクインしていないという結果。日米の嗜好の差か?。米ではハード・ボイルド、スパイものが好まれている印象。なお、冒険ものは、ミステリーのジャンル外らしい。各ジャンルの1位は、①古典「シャーロック・ホームズ・シリーズ」(アーサー・コナン・ドイル)②サスペンス「レベッカ」(ダフネ・デュ・モーリア)③ハードボイルド・探偵「マルタの鷹」(ダシール・ハメット)④警察「死者の舞踏場」(トニイ・ヒラーマン)⑤スパイ・スリラー「寒い国から帰ってきたスパイ」(ジョン・ル・カレ)⑥犯罪「ゴッドファーザー」(マリオ・プーヅォ)⑦本格推理「そして誰もいなくなった」(アガサ・クリスティ)⑧歴史「時の娘」(ジョセフィン・ティ)⑨ユーモア「フレッチ/殺人方程式」(グレゴリー・マクドナルド)⑩法廷「推定無罪」(スコット・トゥロー)。本格ものジャンルでは、アガサ・クリスティがダントツ。上位20作品のうち8作品がランクイン。次に、ドロシー・L・セイヤーズが5作品。9位に「三つの棺」(カー)18位「災厄の町」(クイーン)となっている。その他、好きな作家、探偵、凶器、ミステリ映画などのアンケート結果も掲載されている。凶器では第1位が好きなダールの「冷凍の小羊の脚」で思わずニヤリ。本書のきっかけは、総合24位に「罪と罰」(ドストエフスキー)がランクインしており、本サイトでの書評ではミステリー分類に?マークがあったことより、興味を持ったものです。以下、関連文を参考までに記載。≪ミステリ史上の最高傑作といえば?もちろん『ナイン・テイラーズ』に決まってるわ。ちょっと待った、断然『時の娘』だよ。おいおい、『マルタの鷹』を忘れちゃいないか?いや、むしろ『バスカヴィル家の犬』をあげるべきだろうね。それじゃ『罪と罰』は?これもミステリよ。(中略)ただ愛好家同志あれこれ言い合っているだけでも楽しいものだ。≫≪『月長石』は、推理小説の枠内におさまりきらない小説でもあり、トップテン(古典部門)入りした作品の半数にも同じことがいえる。たとえば、『白衣の女』、『罪と罰』、『吸血鬼ドラキュラ』、『螺旋階段』、『エドウィン・ドルードの謎』もまた然り。これらは犯罪小説というより、むしろ謎という引き綱をつけた純文学である。私見を述べれば、両者の違いは、純文学がなにより観念を表現することを主眼としてかかれるのに対し、ミステリは、まず読者を楽しませることを第一主義とし、二次的な狙いとしてさまざまな観念を盛り込んで読者をひきつけるところにある。検査官(アメリカ探偵作家クラブの意味)は、純文学をリストから除外しようとするだろうか?いや、そんなことはない。たとえばドストエフスキーがラスコーリニコフというひとりの学生の恐ろしい心の起伏を推理小説とはまったく異なる目的で描いたのだとしても、『罪と罰』はやはり、後世の推理作家たちの尊敬すべき手本と位置づけてよいと思われる。というのも、1920年代から40年代までの流れがどうであれ、今日では、ほとんどの推理小説が純文学の要素をふんだんに持ちあわせているからである。・・・≫同感です。     只今、「レッド・オクトーバーを追え」(未読・ショーン・コネリー主演の映画は観た)の著者トム・クランシー氏の訃報がニュースで流れました。合掌。


No.490 5点 おんな牢秘抄
山田風太郎
(2013/10/03 13:35登録)
ミステリー度を期待すると微妙な感じがします。時代劇なので、トリック自体は小粒になってしまうのは仕方ないことと思います。痛快時代劇として読めば楽しめると思います。


No.489 5点 ある殺意
P・D・ジェイムズ
(2013/10/02 12:04登録)
ロンドンのある診療所で殺人が起こり、内部の犯行が明らかになる。警視による事情聴取が、一人ひとり行われる様子と登場人物の私生活が語られる。人間描写に定評があるとのことですが、この展開は冗長としか思えませんでした。顛末も想定内でした。


No.488 5点 殺意
フランシス・アイルズ
(2013/09/30 09:09登録)
倒叙物の有名作ということで手に取りましたが、倒叙というより、犯罪心理小説(女性に翻弄される男のコメディタッチの物語)との感を持ちました。そういう意味では楽しめましたが、各登場人物に共感する点(感情移入)がなかったことが残念です。完全犯罪を狙うにしては、裁判で指摘されたように杜撰過ぎていましたね。そういう犯人像が作者の狙いかもしれませんが・・・。ただ、エピローグでの出来事については、何の根拠も提示されておらず、単に奇をてらったものとしか思えませんでしたので、その点マイナスとなりました。


No.487 9点 贖罪の奏鳴曲
中山七里
(2013/09/27 12:43登録)
倒叙ミステリー~法廷ミステリー~社会派ミステリーと変遷してゆき、どんでん返しも控えているという贅沢な作品ですね。展開が速かったので、じっくりと長編で読みたい気がしました。どんでん返しのテーマだけでも面白い作品に出来上がっていると思いますが、主題は、題名の通り「贖罪」(過去に罪を犯した人間が、それを償う意味は?)というヘビーなテーマです。また、ある種のタブー(カエル男も同様)に挑戦した意欲作とも感じることができました。また、悪徳弁護士の描き方がうまいですね。果たして、悪者なのか、はたまた善人?・・・読者を不思議な気持ちにさせます。やはり圧巻は、法廷場面でしょうか。


No.486 8点 ナイン・テイラーズ
ドロシー・L・セイヤーズ
(2013/09/26 10:10登録)
東西ベスト45位、英米ベストランクイン作品。素直に評判通りの作品だと思います。読むのに時間がかかりましたが、後味は心地良いです。表現が難しいのですが、文学的な香りがする異色作とでもいえばよいのでしょうか。


No.485 5点 毒を食らわば
ドロシー・L・セイヤーズ
(2013/09/19 18:04登録)
英米ベストランクイン作品。やや納得性に欠ける点は、主人公の直感で、被告が犯人でないことと、犯人の目星をすぐつけてしまったことです。よって、メインは、動機探しと、ハウダニットに絞られてきます。ハウダニットについては、伏線があまりにもアカラサマすぎましたね。これがミスリードであれば、やられた感があるのですが・・・。犯人の努力?は面白いアイデアでした。サブストーリーとして、主人公が被告人(女性推理作家)に恋をするのですが、この行方が気になるところです。


No.484 8点 狙った獣
マーガレット・ミラー
(2013/09/11 12:19登録)
英米ベストランクイン作品。1956年MWA最優秀長編賞受賞作。著者は、ロス・マクと結婚後、ノイローゼで入院の経験があるとのこと。その経験があるためか、崩れかけた精神状態を非常にうまく描いています。単なるサイコ・サスペンス系と思って読んでいたので、まさかエンディング・サプライズが用意されていたとは!!。


No.483 6点 死のようにロマンティック
サイモン・ブレット
(2013/09/06 17:23登録)
3人の主な登場人物の性意識をメインに語られ、特異な感じのする叙述サスペンスでした。プロローグで、殺人が語られ、誰が殺されたのかは推測できません。(ある程度のミスリードはあるのですが・・・)ラストは、皮肉が利かされていました。


No.482 4点 玄武塔事件
太田忠司
(2013/09/03 22:14登録)
著者のあとがきに「嵐によって隔離された村、怪しげな屋敷、泣き喚く老婆、薄幸の女性、過去の陰惨な事件、密室状態での犯人消失、意外な犯人・・・(中略)口当たりをあっさりに仕上げ、さくさくと召し上がっていただけるよう心がけました」とあります。題材は面白いと思いますが、中身が本当にあっさりしていて拍子抜けしてしまいました。ジュブナイルなので、致し方ないのかもしれません。


No.481 8点 日本で別れた女
リチャード・ニーリィ
(2013/09/01 20:48登録)
(タイトル・女27)ニーリイ節炸裂といったところです。巧みなプロットと何本かのサプライズが仕掛けられています。折原一氏が、本著者から多大な影響を受けていることが覗えますね。氏の作品(翻訳)は7冊と少なく、残り1冊で完読となります。寂しい限りです。


No.480 7点 幽霊の2/3
ヘレン・マクロイ
(2013/09/01 10:16登録)
人気作家がパーティで毒殺されるが、参加者に動機のある者が見当たらない・・・。題名、動機隠し(真相)は、うまいと思いました。難を言えば、人気作家の過去を調べることに重点が置かれているため、警察の捜査状況(毒殺方法)にほとんど触れられていない。従って、犯人からの立場で、いつバレるのかという緊迫感が伝わってこなかった。作家の処女作を加筆訂正する(読者は内容を知っている)のですが、評論家にその加筆訂正した部分を酷評される(原作の方がよい)点など笑ってしまいました。この辺も伏線の妙で感心しました。


No.479 6点 不自然な死
ドロシー・L・セイヤーズ
(2013/08/29 17:44登録)
(ネタバレあり)倒叙に近い形で、ハウダニット、ホワイダニットに重点が置かれています。ホワイダニットは理解できますが、ハウダニットについては、現在では不可能なはず。しかし、当時としては斬新な手だったと思います。犯人の描写(特に心理描写)がほとんどなく、それがなんとも不気味な感じがします。伏線の扱い方が面白かったですね。バイク事故の修理場面(伏線とは分かりませんでした)や、有閑マダムの誘惑後のキスシーン(これはピンときました(笑))。1作目は、バンター(従僕)がいい味を出していましたが、本作はクリンプスン(女性・聞き込み代理人)の行動(懺悔のメモを読むべきか読まざるべきかなど)が楽しめました。表紙(創元推理文庫)を読後(決して前はダメです)じっくり見ることをお勧めします。あることがわかります。


No.478 6点 本格ミステリ鑑賞術
事典・ガイド
(2013/08/28 18:14登録)
第13回(2013年)本格ミステリ大賞・評論・研究部門受賞作。「フェア・アンフェア」「伏線」「叙述」に興味があったので拝読。伏線のネタバレ例示があり、わかりやすいし、面白い。結局は読者がどう判断するかということになるのでしょう。読者にはマニアックな人から普通のファンまでいるので、作者はどの辺まで記述するのか苦労するのだと思います。個人的には伏線がしっかりしていればOKなタイプです。本書にも「いかに奇抜な発想やトリックを盛り込み、アンフェアでない形で記述したところで、伏線が弱ければその効果は弱まるだろう(それはフェアプレイに値しないともいえる)」とあります。同感で普通のファンである私的には「ハサミ」「容疑者」がこれに該当し(2作品のファンには失礼します)、「葉桜」はまったくOKということになります。・・・著者の「ミステリ史に残る最後の一行」として~「○○を殺した犯人は?」これを逆から読むと犯人の名前がわかる~これは単なる言葉遊びで言い過ぎでしょう(笑)。


No.477 6点 雲なす証言
ドロシー・L・セイヤーズ
(2013/08/27 14:00登録)
アメリカ探偵作家クラブの「史上最高の推理小説100冊」(1995)の77位。1924年の作品なので、現在の本格物の定義らしきものに当てはめるのは酷なような気がします。結末は、前例(1922)があるものの、当時としては面白いアイデアだったと思います。探偵小説を装った「喜劇」であるような気がして、この評価とします。

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