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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1692件

プロフィール| 書評

No.1172 7点 黙示録殺人事件
西村京太郎
(2019/01/29 20:12登録)
裏表紙より~『“現代の狂気”をダイナミックに描き出した力作推理長編』~

目的達成のためには自殺をも推奨するという狂気(洗脳)が描かれている社会的な要素の強い作品(1980年)。洗脳されてしまうと何を言っても無駄ということがよくわかります。恐ろしいことです。


No.1171 5点 盗まれた都市
西村京太郎
(2019/01/27 19:16登録)
設定(洗脳)が数百人の村であれば理解できますが、人口十万都市となるといかがなものか?という気持ち。SFチックな気分で読まざるを得ず、残念でありました。ドイツ、日本以外の国、例えばアメリカを舞台にした方がよかったのかも?。


No.1170 8点 監禁面接
ピエール・ルメートル
(2019/01/25 15:40登録)
「BOOK」データベースより~『重役たちを襲撃、監禁、尋問せよ。どんづまり人生の一発逆転にかける失業者アラン、57歳。企業の人事部長だったアラン、57歳。リストラで職を追われ、失業4年目。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今はアルバイトで糊口をしのいでいた。だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが人材派遣会社の社長じきじきに告げられた最終試験の内容は異様なものだった。―就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ。重役たちの危機管理能力と、採用候補者の力量の双方を同時に査定するというのだ。遂にバイトも失ったアランは試験に臨むことを決め、企業人としての経験と、人生どんづまりの仲間たちの協力も得て、就職先企業の徹底調査を開始した。そしてその日がやってきた。テロリストを演じる役者たちと他の就職希望者とともに、アランは重役室を襲撃する!だが、ここまでで物語はまだ3分の1。ぶっとんだアイデア、次々に発生する予想外のイベント。「そのまえ」「そのとき」「そのあと」の三部構成に読者は翻弄される。残酷描写を封印したルメートルが知的たくらみとブラックな世界観で贈るノンストップ再就職サスペンス!』~

翻訳は2018年ですが、発表は2010年で、「その女、アレックス」(2011年)より前の作品です。物語は3部構成で、アレックス同様、先の読めないような展開となっています。サスペンスもののミステリーとして十分楽しめますが、作者の狙いは中高年失業者の悲哀を描くことにあったような気がします。


No.1169 7点 探偵の秋あるいは猥の悲劇
岩崎正吾
(2019/01/20 15:06登録)
「Yの悲劇」の本歌取りということで拝読。同書を読んでいなくともOKですね。4部作を読んでいれば、ラストで、さらにニヤリとすることができると思います。ミスディレクションがあからさまで楽しい。といっても犯人は分かりませんでした。『猥』の悲劇~なるほど、うまい!。


No.1168 6点 ゼロ計画を阻止せよ
西村京太郎
(2019/01/17 20:13登録)
1977年の作品。同年発表に「華麗なる誘拐」があります。同じ誘拐ものですが、本作の方がやや下回るかな?といった印象。といっても、スピード感はあり、大胆な発想など読みごたえは十分ありますね。まあ、左文字探偵の「読み」が当たり過ぎの嫌いもありますが・・・(笑)。


No.1167 8点 TAS 特別師弟捜査員
中山七里
(2019/01/15 15:18登録)
~「ねえ。慎也くん、放課後ヒマだったりする?」演劇部のアイドル・楓から突然声をかけられたことで、慎也の胸は高鳴った。その彼女が校舎の3階から転落死してしまった。慎也は、楓が所属していた演劇部に入部し、楓の周辺人物に接触を図ってゆく。~

題名からは想像もつかない、コテコテの青春ミステリーです。事件よりも演劇にのめりこんでしまう主人公に好感を持ってしまいました。転落死は、事件ではなく実は事故であったというハッピーエンドを望んでしまっている自分がいました(笑)。著者が、そんな甘っちょろい結末を用意するはずはないのですが・・・。他の書評で、触れている人はいないですが、私はハウダニットとその大伏線に感心し高評価としました。


No.1166 4点 虹の歯ブラシ 上木らいち発散
早坂吝
(2019/01/11 20:08登録)
バカミスと多重解決が好みであれば、評価は高くなるのかな?といった印象。「青」の章~葛飾北斎の春画「蛸と海女」を思い起こさせてくれ、まずまずの評価。「紫」の章~らいちはコピーの現物を見ていない。にもかかわらずトリックを見破ってしまうのはいかがなものか。写真に興味がある等の伏線が欲しいところ。なお、藍川刑事は援交費をどのように工面しているのか?気になって仕方ない(笑)。「藍」の章~一見、指紋は逆になりそうだが、実はその可能性は少ないのでは?。「赤」の章~お遊びなんだろうけれど、理屈をこねくり回されただけでピンときませんでした。


No.1165 6点 札幌・オホーツク 逆転の殺人
深谷忠記
(2019/01/10 11:33登録)
著者の言葉に「今回は特に伏線に意をそそいだつもりなので、読者の挑戦を期待したい。」とあります。著者はある事柄にかなりしつこく言及していましたので、それでは伏線とはならず、読者に逆読みされてしまうのでは?と心配になりました。結果(真相)はその通りで、ドンピシャ(笑)。最近読んだN氏の作品で、同種のトリックがありましたが、そちらは読者が読み過ごししてしまうのではないかと思えるほどあっさりしたものでした。著者の性格が垣間見えた感じがしましたね。本トリックは、今のところ先駆的なものでGood。


No.1164 5点 殺人者は眠らない
ウィリアム・カッツ
(2019/01/06 09:49登録)
裏表紙より~『不眠症に悩むアンは向かいに住むマークに好意を抱いく。しかし、マークの正体は連続殺人鬼。「見張られている」と疑うマーク。なんとか始末しなければ。だが、マークの真意を知らず、アンは一人勝手な恋にのめり込んでいく。』~


ラストの方はサイコ系でお気に入りなんですが、途中が何とも言えません。本来ハラハラドキドキするはずが、主人公アンのお馬鹿さ加減にイライラ(苦笑)。ブラック・コメディ的要素があるので、もっとドタバタ系にした方が楽しめたかも?。


No.1163 5点 ブルーローズは眠らない
市川憂人
(2018/12/28 20:36登録)
謎が次々と提示されるので、前の謎をすぐに忘れてしまいます(苦笑)。フー、ホワイ、ハウダニットとサービスのてんこ盛りですね。動機、密室、○○殺人、時間軸・人物に係るトリックなどと欲張り過ぎ?の感も。結局、何がメインなのか、的を絞れないままの読書となってしまいました。なお、○○アレルギーがあり、他作品の評価と同様に減点となりました。


No.1162 5点 フェイスメーカー
ウィリアム・カッツ
(2018/12/22 10:08登録)
事故で顔面に重傷を負った女性記者。彼女の顔は天才形成外科医により見事に修復された。しかし、彼女と全く同じ顔の女性がいることが判明。その女性は行方不明になっていた。女性記者は真相を探りだそうとするが・・・。

恐怖小説としての展開は楽しめました。読者としては動機が気になるところですが、何となくうやむやとなってしまったのが残念。


No.1161 7点 下り特急「富士」(ラブ・トレイン)殺人事件
西村京太郎
(2018/12/16 13:46登録)
ミッションインポッシブルのような騙し合い。テンポもいい。題名(ラブ・トレイン)も気に入っているのですが、初刊のカッパ・ノベルスだけで、のちの徳間文庫ではカットされています(涙笑)。暗号の謎解きや、大仕掛けな真相は十分楽しめました。


No.1160 5点 半七捕物帳
岡本綺堂
(2018/12/14 18:55登録)
読み物としては楽しめました。ただミステリーとしてはどうなんだろうという疑問。「モルグ街の殺人」や「シャーロックホームズもの」と同様に、ミステリーとしての評価よりも歴史的意義に重点を置くしかないような(苦笑)。いわゆる探偵風味の「捕物帳」の嚆矢として。なお、解説の都筑道夫氏による「推理小説」説には抵抗を感じてしまいました。何故なら、「推理」というものがほとんどなく、閃きやハッタリ、さらに岡っ引きの立場を利用した強引さで事件を解決しているわけですから・・・。ミステリーという観点から辛目の採点となりました。悪しからず。


No.1159 6点 死にいたる火星人の扉
フレドリック・ブラウン
(2018/12/10 09:42登録)
登場人物表に「火星人・ヤッダン」とありますが、SFではありません(笑)。ただ、二つの殺人事件(密室、溺死)のうち、片方のハウダニットについては、私的には信じていないので、どちらかと言えばSF的発想と言えるのかもしれません。主人公の青年エドのキャラクターは捨てがたいい、いい味が出ていると思います。


No.1158 4点 メーラーデーモンの戦慄
早坂吝
(2018/12/06 10:04登録)
過去の作品、特に前作を読んでいないと、どこがどう面白いのか分からない。特に主人公のキャラクターが不明。また休暇中の刑事が何を悩んでいるのかも分からない。


No.1157 6点 スマホを落としただけなのに
志駕晃
(2018/12/02 15:57登録)
(ネタバレあります。)スラスラと読め楽しめました。ただ、チグハグした点(印象)があります。一つは犯人像が失敗では?という思いです。当初、彼女と付き合ってみたいという犯人の思いからスタートします。その為に色々工作をするわけですが、実はサイコキラーであったということです。サイコキラーなら、さっさと彼女を拉致して目的を達成すれば?と思ってしまいます。本書の目的は、落としたスマホから徐々に秘密を覗かれていくという恐怖感を描くことにあると思います。そして読者はどのような方法で犯人は彼女を自分に惹きつけようとするのか?と期待するはずです。結局、犯人がサイコキラーなので、色々な工作が無駄であったような気がして残念でなりません。いわゆる犯人像に関するギャップです。もう一点は、彼女の秘密が明らかにされるのですがインパクトがありません。秘密が暴かれるのではないかという心理描写がもっとあれば、ラストのどんでん返しが生きてきたと思います。非常に勿体ないです。なお、北川景子さん主演で映画化(未観)されており、彼女をイメージしながらの読書となりました(笑)。


No.1156 6点 リアルフェイス
知念実希人
(2018/11/29 18:52登録)
裏表紙より~『美を創り出す芸術家のように、依頼者の顔を変える天才美容外科医・柊貴之。金さえ積めばどんな要望にも応える彼のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。いまの妻の顔を前妻の顔に変えろ、ある男を別人にしてほしいなど。さらに、整形美女連続殺人事件の謎が……。』~

登場人物のキャラクターがラノベ風?なのか、かなり軽めです。天才美容外科医・柊が引き受ける整形手術が3本。短篇風で、それぞれオチがありました。その背後で柊の弟子で連続殺人鬼である神楽という人物が動き出すといった展開。スラスラ読めます。


No.1155 7点 華麗なる誘拐
西村京太郎
(2018/11/25 15:29登録)
数ある誘拐ものの中で、これほど大胆なものはないのでは?。身代金の受け取り方法の発想も良い。犯人は早々に判明するので、フーダニットを期待する作品ではないと思います。探偵対犯人の頭脳戦を楽しむ作品ですね。


No.1154 7点 チャイナ蜜柑の秘密
エラリイ・クイーン
(2018/11/19 13:13登録)
フレデリック・ダネイ氏の自薦ベスト3の一冊、かつニューヨーク・タイムズが著者の最大傑作と激賞しているとのことで拝読。激賞のポイントは「あべこべ」のトリックではなく、「密室」にあると思いましたね。なるほどと唸りました(笑)。二つのドアのうち一つが開いているので密室でない、あるいは準密室との意見もあるようですが、見方を変えれば完全なる「密室」ですね。なお、登場人物表(角川文庫2015版)が意味不明であること、また題名に騙されたような気がしたことで減点しました。


No.1153 6点 春にして君を離れ
アガサ・クリスティー
(2018/11/16 22:58登録)
ミステリーではないので評価が難しい。現代では、あえて心理ミステリーとでもこじつけることは可能かもしれません。著者自身はミステリーとしてとらえていなかったようですね。それは、別のペンネームで出版し、推理モノを求める読者を失望させないよう、クリスティと同一人物と分からぬよう箝口令を敷いていたということからも窺えます。また自伝によれば、「この小説に私は『春にして君を離れ』という題をつけた。シェークスピアの十四行詩の冒頭の語「われ、そなたと春に遠からざる」から取った。この小説がどんなふうなものかは、もちろんわたし自身にはわからない。つまらないかもしれない、書き方がまずく、全然なっていないかもしれない。だが、誠実さと純粋さをもって書いた、本当に書きたいと思うことを書いたのだから、作者としては最高の誇りである。」ともあります。名作、しかしミステリーではない。悩んだ挙句、6点としました。

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