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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1140 8点 夏の王国で目覚めない
彩坂美月
(2018/09/30 13:13登録)
裏表紙より~『父が再婚し、新しい家族になじめない高校生の美咲。だから、幻想的なミステリ作家、三島加深のファンサイトで加深が好きな仲間を知ったことは大きな喜びだった。だが“ジョーカー”という人物から【架空遊戯】に誘われ、すべてが一変した。役を演じながらミステリツアーに参加し、劇中の謎を解けば、加深の未発表作がもらえる。集まったのは7人の参加者。しかし架空のはずの推理劇で次々と人が消え…』~

第12回本格ミステリ大賞候補作。色々と突っ込みどころはあるのですが、期待していた以上に楽しめました。ツボに嵌まった感じです。目新しいトリックは無いのですが、架空劇と現実との世界がうまく料理されていました。架空劇では、別荘で転落死した女性の謎を解かなければならず、現実の世界では、劇を演じている自分たちを抹殺しようとする犯人を捜すというものです。つまり、謎を解明しながら、現実での危機を打開しなければいけないという多重構造のミステリーです。意外な点は○○の○○ミステリーであったことです。


No.1139 7点 螺旋
山田正紀
(2018/09/28 15:40登録)
旧約聖書になぞった事件で、幻想的な雰囲気で物語が進みます。メインは全長6.5キロの地下水道に投げ込まれた死体が出口に流れ着かず、やがて海岸の船の上で発見されるというもの。島田荘司氏ばりの大トリックです。それ以上に感心したのが、「善と悪に対するある種の先入観が、事件そのものの全体像を微妙に歪ませている」という点にありました。


No.1138 7点 スウェーデン館の謎
有栖川有栖
(2018/09/24 17:35登録)
足跡のない雪密室自体は、既存トリックの応用ですが、そこに至るトリックが秀逸。心理的盲点を突かれました。ただ、折れた煙突の扱いはしょぼい(笑)。


No.1137 6点 伊賀忍法帖
山田風太郎
(2018/09/20 14:52登録)
裏表紙より~『戦国擾乱の世。主君筋の御台、右京太夫に邪恋を抱いた梟雄・松永弾正は、幻術師・果心居士配下の根来鴉天狗に美女狩りを命じる。美女の愛液からなる強力な媚薬、”淫石”を作らせ、籠絡しようというのだ。その毒牙に掛ったのは、伊賀忍者・笛吹城太郎の妻、篝火。死してなお犯され、弾正の愛人と首をすげ替えられたと知った城太郎は復讐を誓い、一人苛烈な闘いを七鴉天狗に挑んでゆくが・・・・・。奇想極まる山田忍法帖の代表作。』~

著者の忍法帖シリーズは初読です。何となくお色気路線のイメージが強かったのですが、その通り(笑)。まあ、ヒロー、ヒロインの純粋な恋情がエロ・グロさを薄めていますが・・・。主題は復讐にあるのですが、その復讐相手は史実では本物語の15年後まで生きています。では復讐は成し得なかったのか?・・・。実在の人物をうまく絡めて物語は構成されていますね。強いてジャンルを名付けるとすれば、「SF的伝奇時代小説」となるのでしょうか。


No.1136 7点 ささやく真実
ヘレン・マクロイ
(2018/09/15 21:19登録)
序盤での自白剤による暴露合戦や、英語を理解できない執事を雇ったつもりが、英語が喋れたなど、喜劇的要素もあり楽しめました。本作のメイン?のミスディレクションには、完全に翻弄されてしまいました(笑)。ミスディレクションのある事項が、犯人の特定に関係しているところなどは巧いと感心しました。


No.1135 6点 魔弾の射手
高木彬光
(2018/09/14 16:20登録)
神津恭介シリーズ第3弾(1950)。意外な犯人、顔のない死体という点では高評価を付けたいと思います。ただし、犯人に関し好みでないものが含まれていた点が残念。題名の「魔弾」自体は、海外作品のパクリと言われても致し方ない(苦笑)。神津恭介への挑戦状からスタートし、展開はスピーディで読み易かった。


No.1134 6点 「法隆寺の謎」殺人事件
深谷忠記
(2018/09/09 18:41登録)
サブタイトル『「はやぶさ(ブルー・トレイン)」180秒の逆転』から、時刻表トリックを想像したのですが、ある意味”逆転”を食らいました(笑)。探偵役がいま一つピンときません。探偵役が犯人像のヒントを出すのですが、決定的な推理(解決)は刑事役が行っています。主役が二人いるような感じで、どうもしっくりしません。まあ、「考える人」という探偵像なので致し方ない?。


No.1133 5点 赤後家の殺人
カーター・ディクスン
(2018/09/08 20:13登録)
全体に冗長で、単純なものを、わざと複雑化したような印象を受けてしまいました。よって、ごった煮のようでスマートさが感じられなかった。ハウダニット(毒殺)は好印象です。ただし、謎の声は拍子抜け…(苦笑)。


No.1132 6点 猫の舌に釘をうて
都筑道夫
(2018/09/04 11:27登録)
講談社版・裏表紙より~『最愛の女有紀子が、友人塚本の妻になるや私の塚本への殺意はおさえられなくなった。だが塚本を殺せば有紀子も不幸になる。そこで考えたのが代償殺人行為だ。行きつけの喫茶店の常連に塚本そっくりの男がいる。彼のコーヒーに“毒”を入れよう!! ところが展開は意外や意外。ミステリの難題一人三役に挑んだ傑作。』~

「私はこの事件の犯人であり、探偵であり、そしてどうやら、被害者にもなりそうだ」。セバスチャン・ジャプリゾ氏の「シンデレラの罠」(1962)のキャッチコピーのようですが、本作の方が1年先行(1961)しています。その点は評価したいと思います。作中でニコラス・ブレイク氏に触れていることから、「野獣死すべし」(1954)のオマージュであることが窺えます。本自体への仕掛けは、まあ、あれこれ言うようなものではなかったですね(苦笑)。


No.1131 5点 カンヴァスの向こう側
フィン・セッテホルム
(2018/08/31 15:34登録)
絵画に触れることによって、その描かれた時代にタイムスリップしてしまうというファンタジー(児童書)です。この原則で現代にどうやって戻ってくるのか?という謎があります。それをどうしてうまく生かさなかったのか不思議でなりません。途中で著者は答え(伏線?)を出してしまって、ああ勿体ないと思っていたら、まったく関係ない方法で現代に戻ってきてしまいました。残念。まあ、6章で好きな「ダリ」が描かれ、その他で「荘子」や「ボッテチェリ」が登場したので+1点(笑)。


No.1130 6点 ナナフシの恋
黒田研二
(2018/08/29 10:17登録)
裏表紙より~『「新しい教室で待ってます」―呼び出しメールの発信者は25日前に自殺を図り、意識不明の重体で入院中のクラスメイト・麻帆だった。不審に思いながらも教室に集まる男女6人。消えた携帯電話、移動した教卓、教室に転がる消火器など自殺未遂現場に残された数々の謎。自分たちを集めたのは…?事件の真相に同級生たちが迫る。繊細で多感な高校生たちの青春ミステリー。 』~

集められた人物が真相を推理するというもの。「そして扉が閉ざされた」(岡嶋二人氏)を思い起こしました。真相は著者らしい”ぶっ飛んだ”内容ですね(笑)。ラストはちょっぴりホッとします。


No.1129 6点 結婚なんてしたくない
黒田研二
(2018/08/27 13:17登録)
「BOOK」データベースより~『結婚を意識しながらも、シングルライフを満喫する5人の男たち。そんな彼らの前に“運命の女”が突然現れ、やがて平凡な日常生活が崩れていく。』~

ナンパ男の前に自分をパパと呼ぶ少女が現れる。アニメのフィギュアに恋する男の前には、同じ趣味の美人が現れ、お互いのフィギュアを共有するため結婚しようと言い寄ってくる。同性愛の男性には、それをカモフラージュするため、同趣味の女性が共同生活を申し出る等、5人の男の物語が交互に進行する。そして、それらが絡み合って・・・。ユーモアミステリーに分類されるのか?。


No.1128 6点 警察署長
スチュアート・ウッズ
(2018/08/25 13:34登録)
(東西ミステリー・ベスト100の40位)ジョージア州の田舎デラノの三代にわたる警察署長の物語で、ミステリーというより大河小説ですね。主題は人種差別や政治に係るもので、犯人の心理や動機などはほとんど語られません。よって高評価はつけ難い。


No.1127 9点 妖魔の森の家
ジョン・ディクスン・カー
(2018/08/23 10:00登録)
表題作のみの評価。物理的密室、心理的密室等々、数々あれど、表題作は「ユダの窓(9点)」「斜め屋敷の犯罪(9)」「ビッグ・ボウの殺人(8)」を押さえ、マイベストNo.1にランクイン(笑)。まあ、密室ものの短篇はほとんど読んでいないので、もっとすごい密室があるのかもしれませんが・・・。何しろ、伏線が素晴らしい。動機の隠し方がうまい。なお、マイナスポイントは、「第三の銃弾」(別途評価済み)と同様な理由。


No.1126 9点 神曲法廷
山田正紀
(2018/08/20 18:35登録)
参りました。こんなラストが待ち受けているとは?!。

~神宮ドームで火災事故が発生。防火管理責任者が業務上過失致死傷罪で起訴される。公判直前、絶対に凶器を持ち込むことができないはずの東京地裁の控室で担当弁護士が刺殺され、さらに報道陣が見守る中、裁判官室(10F)から出られないはずの判事が、法廷(5F)の被告人席で絞殺されてしまった。~

ダンテの「神曲」をモチーフに描かれています。主人公の検事・佐伯神一郎は神経症を患い、神の声が聞こえるという設定です。この点で「後期クイーン的問題」を簡単にクリア?(笑)。と言っても神が答えを教えてくれるのではありません。チャンと推理する本格ものです。


No.1125 6点 死人はスキーをしない
パトリシア・モイーズ
(2018/08/18 09:35登録)
派手さはないが、細かいところまでよく練られた作品といった印象。証言の小出しには若干イライラ(苦笑)。ラストでの男爵の行動が唐突に感じられた。なんとも惜しい。もう少し彼の心理描写があれば「男の美学」としての印象が大きく変わっていただろう。


No.1124 5点 ポストカプセル
折原一
(2018/08/12 15:59登録)
ラブレター、遺書、脅迫状などが15年後に届くという短編集(7篇)。それらがラストで一つに収斂するというもの。ブラックユーモアが主体で、著者の得意な「叙述」は少々で物足りない?(笑)。


No.1123 5点 ステップフォードの妻たち
アイラ・レヴィン
(2018/08/11 13:18登録)
1975年キャサリン・ロスさん主演、2004年ニコール・キッドマンさん主演で映画化されています。ステップフォードに引っ越してきたジョアンナは、周りの主婦がみんな家事に精を出すばかりで、遊ぶことをしない、それが不満であった。最近引っ越してきたばかりの二人の開放的な主婦と知りあい、ほっとするも、その二人もやがて家事に専念するようになってしまう。次は自分の番なのか?と不安が募ってゆく・・・。ラストの描写は評価が分かれるだろうな。


No.1122 4点 硝子の塔
アイラ・レヴィン
(2018/08/10 19:43登録)
不吉な番地、マディソン・アベニュー1300番地に建つ高層マンション。ここ3年間に4人が不審死していた。更に何者かが各部屋に隠しカメラを取り付け、住人たちを覗いていた・・・。シャロン・ストーンさん主演で映画化されたといえば、内容は推して知るべしでしょう(笑)。まあ、エロティック・サイコ・サスペンスとでも言えばいいのでしょうか。私の思い描く、著者のイメージとは違った作品でした。


No.1121 6点 蜘蛛の巣
アガサ・クリスティー
(2018/08/06 09:46登録)
第一印象は、読書より劇を見た方が笑えるだろうな・・・でした。主人公・クラリサのノー天気さが良い。夫とその招待予定客が途中で登場して、もっとドタバタ劇になればなあ、とないものねだり(笑)。ミステリー的には、意外な真相と犯人といったところでした。

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