| HORNETさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.33点 | 書評数:1192件 |
| No.832 | 10点 | 忌名の如き贄るもの 三津田信三 |
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(2021/08/23 22:15登録) 生名鳴(いななぎ)地方の虫絰(むしくびり)村に伝わる「忌名の儀礼」。8年前にその儀礼で九死に一生を得た女性・尼耳李千子と、言耶の大学の先輩が結婚することになった。二人の結婚を認めてもらうために、李千子たちの帰省に同行することになった言耶。奇しくも同じ時、虫絰村では李千子の腹違いの弟・市糸郎の「忌名の儀礼」が執り行われていた。ところが、儀式の途中に市糸郎が何者かに殺される。いったい、村では何が起こっているのか― 刀城言耶シリーズの第11作目。 終末にかなり近づくまで事件は1件のみで、途中も民俗学の薀蓄に多くを割き、第十五章「事件の真相」で語られる言耶の推理と真相もこねくり回したうえでの飛び道具のような着地で、正直残りのページ数を見ながら不安に思いながら読み進めたのだが・・・ 最後まで読んで、大満足! そういえばこうした手法こそ、三津田氏の真骨頂だった!! 「本格ミステリ・ディケイド」(2012・原書房)というガイド本に挿入されていたエッセイで、三津田氏は、「(ミステリには)絶対に伏線は必要になる。にも拘らず伏線のない、または弱すぎる作品が増えている気がする」と、昨今(当時)のミステリ情勢に対してかなり辛辣な見解を述べ、本格ミステリの衰退に警鐘を鳴らしていたが、さすがその三津田氏である。 上に描いた物語前半の展開も、そこに実は隠されていた伏線を最後に思い知らされ、その緻密な創作手腕に脱帽。 シリーズ中でも強く印象に残る作品だった。 |
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| No.831 | 6点 | 復讐の協奏曲 中山七里 |
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(2021/08/22 12:30登録) 少年時代に幼女誘拐殺人を犯し、「死体配達人」として世を震撼させた経歴を持つ弁護士・御子柴礼司のもとに、800人以上の一般人から懲戒請求書が届く。それは〈この国のジャスティス〉と名乗る者が、ブログで世間を扇動したためだった。対して御子柴は、すべてに損害賠償を請求し、徹底抗戦することに。事務員の日下部洋子は膨大な事務作業に追われることになった。そんな矢先、ある晩洋子が会食した男性が殺され、洋子が容疑者に。洋子の弁護を引き受けた御子柴は、いつものやり方で弁護業務を進めていく。すると、今まで知らなかった洋子の出自が明らかになり・・・ 御子柴シリーズ第5作。今回は、これまで陰で御子柴を支えてきた事務員・日下部洋子が物語の核になる。また、金と名誉だけを求める外道弁護士・宝来兼人が御子柴の事務所を手伝うという副次的な要素も加わり、シリーズを通して読んできた者には楽しめる要素が多い。 ただ、ミステリとしては仕掛け方がやや甘く、殺人事件の犯人と凶器のトリックはある、「苗字」が出てきたときにピンときた。そもそも前半で不可解な消え去り方をしているのに、それが放置されているのがひっかかっていたのですぐに分かってしまった。 本シリーズが好きなので、御子柴の「御子柴らしさ」を読み味わうこと自体私は楽しいが。 |
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| No.830 | 7点 | ボーンヤードは語らない 市川憂人 |
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(2021/08/22 11:41登録) シリーズ初の短編集だが、全てフーダニットの本格ミステリで、短編であってもきちんと作りこんで質を落とさない作家さんだなぁと思った。 どれも上質の短編だが、漣とマリアの出会いを描いた「スケープシープは笑わない」が、ミステリとしても印象に残った。 「・・・は・・・ない」というタイトルの縛りがちょっと苦しくなってるかな?とも思うけど(「赤鉛筆は要らない」なんか特に)。 |
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| No.829 | 6点 | 五色の殺人者 千田理緒 |
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(2021/08/22 11:30登録) 第30回鮎川哲也賞受賞作。 メイこと明治瑞希が介護士として働く高齢者介護施設で、利用者が撲殺される殺人事件が起きた。逃走する犯人らしき人物を目撃したのは5人。ところが、その人物の服の色について、「赤」「緑」「白」「黒」「青」と5人はバラバラの証言をする。一方、容疑者の中には職場の同僚・ハルが心を寄せている青年がいた。青年の無実を証明してほしい、とハルに泣きつかれ、ミステリ好きの「メイ探偵」が事件の真相を探り出す。 目撃者が証言する服の色が全て違うという、単純で分かりやすい謎と、ライトな文体で非常に読み易い。「赤」「緑」ときたところで、まさか今さら海外古典に多用されたアレか?と訝ったがそういうこともなく、理論的に解き明かされていた。よい意味で複雑なひねりもなくオーソドックスで、平均的に面白かった、という感想。 |
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| No.828 | 6点 | あと十五秒で死ぬ 榊林銘 |
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(2021/08/15 21:53登録) タイトルが思わず読みたくなる引きがあってよいね。 「15秒」を共通テーマにした短編集になっているが、書籍のタイトル「あと15秒で死ぬ」のは厳密には1編目の「十五秒」。これは発想といい仕組みといい、斬新かつ緻密で面白かった。 「15秒テーマ」という縛りで短編を継ぎ足したという印象もあるが、ラストの「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」などは奇妙な特殊設定下でユーモアも交えながら、ロジカルに犯人当てがなされていて楽しかった。 今後、どんな作品を書いてくれるのかは楽しみである。 |
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| No.827 | 5点 | 風よ僕らの前髪を 弥生小夜子 |
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(2021/08/15 21:45登録) 大学生・若林悠紀の伯父が何者かに殺害された。犯人が分からない中、妻である伯母はなんと、養子の志史を疑っており、悠紀に調査を依頼する。悠紀は従弟である志史の家庭教師をしていたことがあったが、確かに超然孤立した雰囲気に、何を考えているか分からないところがあった。誰にも心を許そうとしなかった志史の過去を調べるうちに、事件の背後にある切ないまでの志史の生きざまを知ることになる。第30回鮎川哲也賞優秀賞受賞作。 保護者に虐げられた子供たちの慟哭を描いた快作。ただ、昨今似たような雰囲気の作品があふれていて、こちらも慣れてきてしまっている・・・。 十分によく描けた作品だと思うのだが。 まぁ楽しめます。 |
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| No.826 | 6点 | ストーンサークルの殺人 M・W・クレイヴン |
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(2021/08/15 21:22登録) イギリス・カンブリア州にあるいくつものストーンサークルで、老人が次々焼き殺される残虐な事件が発生。さらに3番目の被害者にはなぜか停職中の警官・ワシントン・ポーの名前が刻み付けられていた...。全く身に覚えのないポーは処分を解かれ、捜査に加わることに―英国推理作家協会賞最優秀長篇賞ゴールドダガー受賞作。 猟奇的な連続殺人に、組織では浮いている(嫌われている)敏腕警官が立ち向かい、縦組織の頭の固い連中を出し抜いて真相を暴き出す―読んでいて楽しいしまぁ安心感はある。ただ、ちょっと最近の海外ものでパターン化しているのは否めないかな。 捜査本部がパーコンテンション・ポイントを「5」と読み違えていることを、手紙によって指摘してくる時点で警察内部犯であることに気づかなきゃいけないのでは?本編では主人公・ポーをはじめ、まったくそのことに触れていない。そのこともあったから、真犯人は意外なようで「意外さを狙えばまぁこの人だろうなぁ」という予感はあった。 だから犯人が誰かというよりも、過去に何があったのか?という真相の方が興味深く面白かった。偶然にすぎる糸の手繰り方はついていけない感もややあったが、ポーとティリーの親交を深める様が好ましく、読み進める面白さをかなり担っていた。 結論として、シリーズ続編が続いているそうなので読みたい。 |
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| No.825 | 5点 | ファミリーランド 澤村伊智 |
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(2021/08/12 21:06登録) すべて、情報技術が現在よりさらに進化し、老若男女すべてがタブレットでアプリを駆使するのが日常の、近未来を舞台にしたSF短編。 「コンピューターお義母さん」…アプリで嫁の行動を逐一監視し、あげくの果てには性生活まで把握する姑。最後は大団円と思いきや… 「翼の折れた金魚」…薬を使って計画出産をすることが「通常」として常識化され、自然妊娠・出産が「異常」として差別される世の中。 「マリッジ・サバイバー」…婚活成就後もサポートすると評判の婚活サイト。待っていたのは配偶者を徹頭徹尾監視するシステムと、「それが普通」という規範。 「サヨナキが飛んだ日」…家庭の医療ケアを全て行う「サヨナキ」を常備するのが常識となった世界。それに強い違和感と感じる母親と、受け入れている娘。 「今夜宇宙船の見える丘に」…介護する側の負担を考え、要介護者に非人道的とも思える処置が許された世界。 「愛を語るより左記のとおり執り行おう」…葬儀も全てヴァーチャルで行われることが常識となった世界。そこに「昔のやり方でやってくれ」と強硬に言う死期間近の老人が表れて… 各短編はそれぞれ短編として楽しむには十分の仕上がり。それより、各編のタイトルや、登場者の名称などで、特に一貫性もなく昭和~平成風俗が取り入れられているのが気になる。巻末の〈参考・引用 文献・資料リスト〉の反映先を探すことの方に気がいってしまった。 |
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| No.824 | 7点 | 兇人邸の殺人 今村昌弘 |
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(2021/08/11 17:17登録) 葉村譲と剣崎比留子は、とある企業に依頼され、テーマパークに隣接する異形の館「兇人邸」へ行くことになった。邸には、2人にも因縁深い戦後の極秘組織「班目機関」の重要資料があるという。さらにそこでは近年、テーマパークの従業員が何人も行方不明になっているとのこと。真相を暴き、資料を回収するために兇人邸へ赴いた葉村らだったが、そこで待っていたのは、とてつもない怪力をもったモンスターだった――。 班目機関の研究によって生まれたモンスター、閉ざされた空間内で繰り広げられる惨劇、という点で1作目に似た雰囲気の本作。邸の間取りが複雑なうえ、その間取りがアリバイや犯行の可不可に絡んでくるので少々読むのに手間取った。そうした間取りや、モンスターの性質など、数々の特殊条件が設定されていることから、それを生かしたロジックで推理を展開していく手法は本作者の特徴か。 多少の複雑さはあったが、論理的な推理を組み立てて犯人を明らかにしていく点ではよい意味でオーソドックスで、本格ミステリを安心して楽しめた。 |
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| No.823 | 8点 | 六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成 |
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(2021/08/11 16:58登録) 就活中の大学生・波多野祥吾は、大人気IT企業「スピラリンクス」最終選考に残った。最終選考の課題は、祥吾を含めた残った6人でのディスカッション。「全員合格もある」という人事部の言葉を受け、皆で内定をとろうと協力する6人だったが、試験日前日、突然会社から連絡が。それは、急遽採用が「1人」になり、ディスカッションの課題が「自分たちで1人の内定者を決めること」になったという衝撃の知らせだった。突如「ライバル」になってしまった6人。試験会場で待ち受けていたのは、6人の過去の罪を告発する怪文書だった――。 告発文を仕掛けた「犯人」は誰なのか?限定された空間で繰り広げられるフーダニットの面白さもさることながら、物語には「わずかばかりの筆記と、数十分の面接、ディスカッションで人の本質など見抜けるのか?」逆に「パンフレットや表向きの説明だけで、企業の何が分かるのか?」といった、「就活とはいったい何なのか?」を問うテーマ性がある。 試験当日のディスカッションで互いの信頼が揺らいでいく様子と並行して、「合格者」が数年後に関係者にインタビューする様が描かれていく。最後に明かされる真相も見事で、とても楽しめる一冊である。 |
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| No.822 | 4点 | 最後の一撃 エラリイ・クイーン |
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(2021/08/11 16:40登録) クリスマス休暇の12日間、毎晩謎の人物からプレゼントとカードが届けられ、その内容が次第に不穏なものになっていく・・・という展開自体は面白いのだが、なんといっても結末が△。隠れた双子の存在という明らかに「偽」と分かる誘導もあざとかったが、最大の謎であるカードに隠されたメッセージについては、あまりにも凝りすぎている上に、知識に拠るところが大きすぎて…。こういう「分かる人は分かる」みたいなのじゃなく、「気付いてみれば、誰にも分かるはずだった」盲点を突くのが本式じゃないかと思うのだが。 |
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| No.821 | 6点 | オクトーバー・リスト ジェフリー・ディーヴァー |
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(2021/07/31 22:15登録) ガブリエラは、秘密のリスト「オクトーバー・リスト」と多額のお金を引き換えにと、娘を誘拐された。警察には真相を通報はできない中、協力してくれる仲間と誘拐犯との交渉に。しかし物語は最終章から第1章へ逆をたどっていくという前代未聞の構成で、本事件の真相が時間軸を遡って次々に明らかにされていく。そして最後の(?)第1章―「そういうことだったのか!」 試みとしては面白いが、通常のミステリにおける推理もいわば「起こったことを逆に辿って真相にたどり着く」過程を描いているわけで、それを「推理」ではなく純粋な「種明かし」にしているだけとも言える。細かい展開においていつも結果が先に来て、そこまでの過程がそのあとに描かれるので、単純に読みにくさもあった。 とはいえラストでは、冒頭から見えていたものが全く違った意味をもつように覆され、巧みな仕掛けは作者らしさを感じた。 |
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| No.820 | 6点 | 死んだレモン フィン・ベル |
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(2021/07/31 21:49登録) 交通事故により下半身の自由を奪われ、車椅子の身となったフィン・ベル。物語はフィンが、崖で宙づりになっている絶体絶命の現在から始まる。そこから、人生をやり直すつもりでこのニュージーランドの片田舎にやってきた数か月前からの回想が描かれ、過去の事件に巻き込まれていったストーリーが展開される。 田舎の漁村という閉鎖された人間関係の中で、昔起きた幼女誘拐殺人事件。真犯人は囚われないまま現在に至り、村人はそのことから目を背けるように生きているが、村人と交わりのない変人、ゾイル兄弟の仕業だと皆が思っている。そんなゾイル兄弟の隣人となった主人公は、その理不尽な振る舞いが許せず、村人に止められつつも戦いを挑もうとする。 牧歌的な舞台で繰り広げられる陰湿な探り合いは、往年の海外ミステリの雰囲気に似ていて興趣深かった。真相がどうなっているのか皆目分からないまま進んでいく中盤は少し退屈だったが、そのぶんラストへの期待は高まり、それなりの意外な真相が用意されていたのでまずますの読後感だった。 |
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| No.819 | 6点 | 神の悪手 芦沢央 |
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(2021/07/22 17:35登録) 棋界を題材にした短編集。この人にはこんな引き出しもあるのか、と感嘆した。 正直将棋には全く詳しくないので、詳しい人のように将棋的に楽しめたわけではないが、一つ一つの「手」がそんなに分からなくても十分楽しめる。それは言い換えれば将棋の仕組みが謎に絡んでいるわけではないということなので、将棋好きな人には不満な点になるかもしれないが(特に「弱い者」「ミイラ」などは。) ラストの「恩返し」は駒師の話で、個人的には面白かった。 |
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| No.818 | 8点 | invert 城塚翡翠倒叙集 相沢沙呼 |
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(2021/07/22 17:24登録) 2019年のミステリ界を揺るがせた名作「medium」の美少女霊媒探偵・城塚翡翠再びの登場。今度のは犯行場面が先に描かれる倒叙式の中編3編。翡翠が犯人を追い詰めていく過程で、何を手がかりにしてどんな推理をしたのか、読者は推理させられる。 2作目にしていきなり「警部補 古畑任三郎」のオマージュになっていて笑えた。「よろしいですか、よろしいですか」といった語り口調もおそらく意識していて、読んでいるうちに頭の中で田村正和の声が重なって聞こえてきた(笑) 犯人が遺した微細な手がかりや、綻びをとりあげ、ラストで論理的に追い詰めていく展開は見もの。とはいえ今回はオーソドックスな倒叙モノか、と思わせておいて…読者をあっと言わせる仕掛けは健在だった。 |
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| No.817 | 7点 | 平成ストライク アンソロジー(国内編集者) |
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(2021/07/10 22:23登録) 激動の昭和が終わり、バブル経済の熱冷め止まぬうちに始まった平成。福知山線脱線事故、炎上、児童虐待、渋谷系、差別問題、新宗教、消費税、ネット冤罪、東日本大震災―平成の時代に起こった様々な事件・事象を、九人のミステリー作家が各々のテーマで紡ぐトリビュート小説集。(Bookデータベースより) 平成に起こった事件や、平成の風俗事情を下敷きにして描かれた各短編は、平成時代を生きてきた人間にとってはそれだけで面白い(「白黒館の殺人」だけはあまりその色を感じなかったが…)。さらに今を時めく豪華な作家陣でもちろんミステリとしてもなかなか。 令和を迎えた今(とってももう3年だけど)読むのがオススメ。 |
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| No.816 | 6点 | そして、海の泡になる 葉真中顕 |
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(2021/07/10 22:09登録) バブル期に株取引で無類の強さを見せ「北浜の魔女」と呼ばれた朝比奈ハル。しかしバブル崩壊後、史上最高額の負債を抱え、ハルは自己破産し、最後には人を殺めて入獄、平成が終わる年にひっそりと獄死した。 その生涯を小説に書こうと決めた"私"は、生前の姿を知る関係者に聞き取りを始める。戦後、バブル、コロナ……日本社会を鋭く描く、社会派ミステリー。 バブルに浮かれた平成の時代を舞台としながら、そこに跋扈するキナ臭い人々とその中で生き抜く女性の姿を描いた一作。「Blue」でも感じたが、平成という時代の社会風俗の様相をリアルに描く氏の作風には非常に好感もてる。 "私"が取材を重ねていくドキュメンタリータッチで展開されながら、ラストにはミステリとしての仕掛けも施されており面白い。 |
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| No.815 | 8点 | 告解 薬丸岳 |
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(2021/07/10 21:43登録) 大学生の翔太は、飲み会後に彼女に「今すぐ来てくれないと別れる」とメールを受け、飲酒運転で向かう途中に一人の老女を撥ね、命を奪ってしまうが、そのまま走り去る。ひき逃げ犯としてすべてを失った翔太は4年の服役となり、刑期を全うするが、出所後に待っていたのは被害者の夫である法輪二三久との意外な出会いだった― 最近よく見られる、犯罪被害者と加害者とのやりとりを描いた作品だが、非常にひねりのある面白い展開で、読まされた。読後感もよく満足できた一冊。 |
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| No.814 | 4点 | 我らが少女A 高村薫 |
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(2021/07/10 21:33登録) 風俗に勤める若い女性が同棲中の彼氏に衝動的に殺された。その事件自体は、すぐに犯人が捕まり、問題なく処理されていくのだが、その際に殺された女性が数十年前の未解決事件の関係者だと分かり、新たな事実が。それは現在は警察学校の教官を務める合田雄一郎の、痛恨の未解決事件だった。 各レビューを見ると、ファンにとっては非常に作者らしい作品でよいとのことだが、そうでない私にとっはただただダラダラと長く、しかも結末も「???」な感じで消化不良だった。 |
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| No.813 | 8点 | うるはしみにくし あなたのともだち 澤村伊智 |
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(2021/06/20 20:52登録) 四ツ角高校3年2組カーストの頂点、羽村更紗が突如自殺した。葬儀は彼女の顔が隠されたままという不審な様子で行われた。すると彼女の死をきっかけに、次々女生徒が見えない力によって容姿を傷付けられていく。担任の小谷舞香はこの異変の真相を探るうちに、学校に伝わる怪伝説を知る。それは、カースト下位の女子が「ユアフレンド」というおまじないにより、上位女子に復讐をするというおまじないの存在だった――。 リア充女子が実権を握り、不器量な女子は忸怩たる思いでその下に甘んじるという、スクールカーストを題材にしたホラー・ミステリ。昨今のイヤミス系でよく見る舞台ではありながらも、ホラー的な臨場感・疾走感と、「呪いをかけているのは誰なのか?」というフーダニットの魅力とが掛け合い、非常に魅力的な作品だった。 |
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