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ミステリの祭典

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不可逆少年

作家 五十嵐律人
出版日2021年01月
平均点4.00点
書評数1人

No.1 4点 HORNET
(2021/10/20 19:15登録)
 ある少女が動画チャンネルで、4人の人間を順に殺害する様子を生放送。そんな衝撃的な事件が人々を震撼させる世の中で、主人公は家庭裁判所調査官として過ちを犯した少年たちの処分判定に携わっている。原則的に、教育的手段によって更生を促すことを旨とする職。しかしながら、ある女性上司は「生物学的要因によって非行に走る人間」がおり、その子たちには更生教育ではなく生物学的治療が必要だという。教育でやり直すことができないそれらの少年を、「不可逆少年」と彼女は呼んだ。

 魅力的な冒頭から始まり、「フォックス事件」に関わった少年たちの物語も興味深く、中盤まではかなり楽しんで読めた。ただ、この作者の特徴なのか、物語の核心に迫るあたりになってくるとだんだん情緒的な(不確定要素の)論理が入り込んできて、「こういう言動をしたから…こうなった」という帰結が素直にうなずけない。その因果関係もさながら、それを推理する側も、さも当然の帰結のように推理しているのがしっくりこない。辿っている道すじが、ほとんど「未必の故意」のような偶然に頼ったものというか…
 ひっくり返すことを狙いすぎると、糸のような頼りない道筋が「当然起こり得たこと」のように描かれることになっちゃうのかな。

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