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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.514 8点 QJKJQ
佐藤究
(2018/11/19 10:57登録)
 設定は西尾維新、キャラクターは辻村深月、スピード感は舞城王太郎で結末はいつのまにか浦賀和宏? 真似と言うことではなく、新しいヴィジョンのピースとして方法論を巧みに使い回して組み上げている。その結果浮かび上がる風景は確かに新しい。やけに冷静な章題が効果的。いかにもメフィスト賞、なんだけど江戸川乱歩賞受賞作なんだなこれが。


No.513 5点 探偵は教室にいない
川澄浩平
(2018/11/19 10:52登録)
 なかなかの人物造形、但し地味、なのは悪いことではないけれど、同系統他作品との差別化という点で弱い。偏見を承知で書くと、この手の話って“そこそこ筆力はある人が一か八かを狙わない時の安全策”になっていないだろうか。
 ところで、女性の169センチって(中学生にせよ)そんなに珍しい高身長? これって要するに“どのくらいの範囲を平均値として認識するか”という問題であって、真史は先入観ゆえに気にする、歩は視野が広いので特に気にしない、と対比にする手もあったのでは。


No.512 7点 鬼畜の家
深木章子
(2018/11/16 12:41登録)
 なかなか見事に決まっている。ただ少々キャラクターが紋切り型。どんな人にもひとつふたつ変な癖ぐらいあると思うが、本作はレッテルをそのまま戯画化したようなつるっとした登場人物ばかりに感じる。実はそれって島田荘司にも通じる書きっぷりで、そんなところがツボに嵌って有利だったのかも? 島田荘司選第3回ばらのまち福山ミステリー新人賞受賞作品。


No.511 7点 斜め屋敷の犯罪
島田荘司
(2018/11/15 13:39登録)
 跳ね橋が上がった状態で壊れたら、斜塔に閉じ込められてしまう。こんなリスキーな屋敷には住みたくないなぁ。
 必要以上に戯画化された俗物的な登場人物がギャグにしか見えないのが難点。太鼓持ちのお追従とか、女性同士の確執とか。紋切り型のキャラクターには却ってそんな奴いないだろと感じてしまうのだ。その意味で、特に前半もう少し作品世界に入り易い書き方なら良かったのに。


No.510 5点 死者の雨 -モヘンジョダロの墓標-
周木律
(2018/11/13 12:10登録)
 “情報は豊かだが情感は乏しい”といった悪評ももう返上だろう、とか書きたかったが、無理! どうにも硬い。登場人物が単なる記号。この作風は需要があって主体的に選んでいるものなのだろうか? 私は“小説とはこうあるべき”という思い込みにまだまだ縛られているだろうか?


No.509 7点 ハコヅメ ~交番女子の逆襲~
泰三子
(2018/11/13 12:06登録)
 地元の市民フェスティバルに出店参加したのですが、会場警備の警察官をチラホラ見かけた時、自分の中で彼等に対する好感度が随分上がっているのに気付いてびっくりしました。『ハコヅメ』の影響大。警察庁が絵心のある職員を抜擢して始めた非公式イメージアップ・キャンペーンではないかと本気で疑っています。牧高さんが好き。


No.508 7点 奇跡の男
泡坂妻夫
(2018/11/05 10:45登録)
 洒脱な語り口に適度な作り物っぽさを漂わせた泡坂節を堪能出来る短編集なのだが、大ネタの表題作が冒頭に配置されているのでそれ以降が相対的に地味に感じられてしまう点が痛し痒し。五百円硬貨の裏表について誤認があるけれど、作者が故人だからもう修正はされないのだろうか?


No.507 8点 夏を取り戻す
岡崎琢磨
(2018/11/05 10:42登録)
 これは予想外の出来。『珈琲店タレーランの事件簿』ではミステリ要素が時々頭でっかちに感じられたが、本作では大人と子供の視点を並列することでクリア。トリックのしょぼさも、怪人二十面相じゃないんだから、或る種のリアリティだ。しかし何よりも、ストーリー・キャラクター・文体の向こうから感じられる作者の熱量が多少の瑕疵を無効化している。同時代の作家のだれそれに作風が似ているみたいなことは、ミステリの構造的な問題として最近あまり目くじらを立てなくなった私である。


No.506 6点 ルビンの壺が割れた
宿野かほる
(2018/11/02 11:37登録)
 過大評価は避けたいが、つい一気読みさせられるくらいの瞬発力はある。居酒屋の壁を殴るエピソードとその解析が印象的だった。あと、相手の反感を買わぬよう慎重に話題を選んで手探りする感じ、私は寧ろリアリティを感じた。


No.505 5点 内なる宇宙
ジェイムズ・P・ホーガン
(2018/10/31 12:25登録)
 スパイ・スリラーかと思えばいつの間にかファンタジー。盛り沢山ゆえに冗長。場面場面で面白いところはあっても、ひとつの物語としての流れが悪い。タイトルである Entoverse のネタは、このシリーズである必然性が希薄なのだから、独立させて別の話にした方が良かったのではと思う。


No.504 7点 美少年M
西尾維新
(2018/10/26 11:09登録)
 どこが探偵団だって感じでミステリ度がこうまで下がり、単なるキャラクター小説になってしまうと、私は好きだ、と言う以外に褒め言葉が思い付かなかったりして。不穏な結末が次巻への期待を掻き立てるが、果たして……?
 シリーズ中、表紙は本書が一番。


No.503 7点 グラスバードは還らない
市川憂人
(2018/10/22 11:18登録)
 魅力的な謎、に対して真相はやや物足りない、がしかし全体的なミステリの志向性は好感度高し。単行本の粗筋紹介文は、内容を明かし過ぎだしアンフェアっぽい文言も含まれるので、読まないほうが吉。

 揚げ足取り:終盤、傍点付きのそこそこ重要な会話文で、them は人・動物・物すべてに適用される単語なので、英語でその言い回しを使うと日本文として書かれているようなニュアンスにはならない、というところがあった。
 舞台がアメリカだとは書かれていないし、今何語で話してるの? と言うツッコミは野暮だけども(しかし極論として、その文言を使いたいなら日本を舞台にすべきだった、とも言える)。


No.502 8点 掟上今日子の乗車券
西尾維新
(2018/10/19 12:19登録)
 旅先で次々事件に遭遇する連作短編集。個々のネタはシンプルな思考実験だが、キャラクターと文章力があればそんな素材もこれだけ面白くなるのだと肯定的に読めるのが西尾維新である。長編にしてディテールを加えると破綻しそうな話を短編の型に合わせることで上手く料理していると思う。逆説的なロジックは亜愛一郎シリーズ(泡坂妻夫)に通じるとの連想は強引か。


No.501 7点 ψの悲劇
森博嗣
(2018/10/17 13:10登録)
 なかなか面白い、と言うか森博嗣にはこのくらいを作品の最低ラインとしてキープして欲しい。
 ただ、全体的に“たいしたことじゃない”という視点で静かに書かれているため、ネタの割に印象が地味。こういう着地点が作者の持ち味ではあるが、今作では勿体無いかも。演出過多な書き方をすればもっとエンタテイン出来たと思う。


No.500 4点 日曜は憧れの国
円居挽
(2018/10/03 11:21登録)
 “青春ミステリとしての狙い”は判らなくもないが、設定もキャラクターもありがちな感じだし、それに輝きを与える文章力があるわけでもないし、致命的なのは遭遇する事件がどれもたいして面白くないこと。成長譚としても取って付けたようで残念。歴史講座の内容が(日本史に疎い私にとっては)面白かったけれど、そんなところを評価してもねぇ。 
 ところで、カレーのレシピ。野菜を煮込む前にルーを入れたら生煮えになってしまうのでは。


No.499 5点 聖女の毒杯
井上真偽
(2018/10/01 11:05登録)
 ここまでやられるとごちゃごちゃして疲れる。ダミーとして使うには勿体無いようなトリックもあるのだから、謎解きに対する奇矯なスタンスを看板にせずに、仮説を2~3個だけピックアップしてもっとスッキリした話に仕立てたほうが、題材を生かせたような気もする。とはいえ、色々と盛ってある設定やキャラクターが面白いのも確かで悩ましいところ。


No.498 4点 碆霊の如き祀るもの
三津田信三
(2018/09/25 11:55登録)
 餓死の現場に於いて、排泄物に関する言及が無い。食べなくても出るんですよ。少なくとも絶食一日目には前日の分が腹の中にある。然るべき描写が為されていれば、被害者の状態ひいてはトリックを推測する手掛かりになったはず。私は、排泄の痕跡が無いのだから被害者は別の場所で死んで発見現場に運び込まれたのでは、とずっと考えていた。尾籠な話なので割愛、では済まないアンフェアな描写(の無さ)である。人間が排泄をしないパラレル・ワールドが舞台、と割り切って読むが吉?


No.497 6点 やぶにらみの時計
都筑道夫
(2018/09/14 12:51登録)
 ネタバレしつつ書いてしまうが――。
 9割までは面白かった。
 しかし種明かしでがっかり。どの道だまして最終目的を伏せたまま死地へ赴かせるなら、複数人のエキストラで芝居をするより、本人に直接 “詳しい事情は言えないがしばらく誰それのふりをしてこのように行動してくれ” と頼む方が簡単かつ確実ではないのか。首謀者が妙に凝った手を使う心理的な裏打ちに欠けると思う。


No.496 7点 中途の家
エラリイ・クイーン
(2018/09/10 11:08登録)
 良い意味で読み易くて面白かった。
 しかし有罪判決が出るほど彼女は疑わしかっただろうか? ストーリー展開を優先した作者が検事や陪審員を少々馬鹿に設定した、と言う印象。また、厳しく見るなら、現場に遺留品を残すのはやはり無用心であって、“それを回収出来なかった理由”が欲しかった。

 因みに、カーター・ディクスン『プレーグ・コートの殺人』には、語り手の婚約者がアレを嗜むとの設定がある。


No.495 7点 さようなら、お母さん
北里紗月
(2018/09/05 09:52登録)
 島田荘司選 第9回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞優秀作。
 主人公があまり好きになれなかった。但しそれは、相応の筆力できちんと確立されたキャラクターが結果として好きなタイプではない、と言うことであって、寧ろ作品に対する高評価の一部なのである。
 厳しく見るなら手頃なネタを幾つか上手に組み合わせただけ、だが、単なる手捌きの巧みさだけではなく、確固とした核の存在が感じられるので心強い。しかし変人学者キャラってどうしても似たような造形になっちゃうのかねぇ(嫌いではない)。

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