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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.654 7点 赤い部屋異聞
法月綸太郎
(2020/01/20 10:56登録)
 オマージュ作品を集めた短編集。とりあえず、オマージュ云々とは無関係に概ね楽しめた。ベストは「まよい猫」。
 私が知っていた元ネタは一つだけ。元ネタ既読ならもっと違う景色が見えたかもしれないが、それは判断出来ない。オマージュを先に読んでしまうことで、いざ元ネタを読む時に興が殺がれている可能性はある。
 元ネタがどの作品か事前に判れば読者が主体的に読む読まないを選べるが、タイトルから元ネタを予想出来るのは2編だけ? 元ネタの一覧表は無く、各短編のあとに解説が付されているので、途中のページをパラパラめくって確かめることになるが、それだと余計なネタバレが目に入りかねないのが問題。
 事前に判ればいいとも限らず、読みながら嗚呼この話はアレかぁと気付くのが楽しいかもしれない。しかし(多分)なかなか幅広いセレクションで、元ネタを全部知っている読者は限られるのではないか。

 つまり、作品集の体裁に、読者の“何をどういう状態で読みたいか”と言う選択肢を奪ってしまう側面があるようだ。好きな作家なので読んだが、こういうのはこれきりにして欲しい。好き度のもっと低い作家だったら“オマージュ短編集”と言う時点で敬遠したと思う。


No.653 5点 七つの棺
折原一
(2020/01/20 10:53登録)
 トリックの傾向を考えるとパロディ形式の選択は妥当だけれど、ユーモアのセンスが自分にはあまり合わなかった。“要は見せ方なのだ” との作者の言に同意(見せ方が合わないのでアウト、と言う意味で)。


No.652 6点 鳥葬 ―まだ人間じゃない―
江波光則
(2020/01/16 13:23登録)
 鳥葬とは、モノの本によれば、単に遺体を処分する便宜として食わせるわけではなく、鳥を媒介にして空に死者を葬る、との思想だそうな。なんてロマンティックな。ついでに資源のリサイクルにもなる。私の望む葬送法第1位だ。2位は医学の為に献体してそのまま標本になること。
 いや全然そんな話じゃないんだけどね。“鳥葬”も比喩表現だしね。


No.651 5点 青列車の秘密
アガサ・クリスティー
(2020/01/09 12:01登録)
 次々に新しい人物が登場して、ええっ多過ぎるよと思ったが心配無用、読み進めるとそれぞれ適切なところに落ち着きスッキリ整理された物語だ。この作者には紋切り型のキャラクターを生き生き描く才があり、風俗小説として面白い。ミステリとしてはつまらない。
 あの人の頭文字が●だとは、推測は可能だが気付かなかった。“彼女(メイド)の名前はエレンなんですか、それともヘレンなんですか”と言う台詞が日本人向けの伏線なのである。


No.650 6点 贋作ゲーム
山田正紀
(2020/01/09 11:59登録)
 作者曰く“実行不可能な作戦を数人のチームが達成する”シリーズの短編4本。個々の作戦は面白いし、短編サイズで過不足ないネタを上手く配している。しかし基本コンセプトが共通なのでどうしても似通った印象。主人公がみな世を拗ねてうらぶれた中年男なので尚更。そして、同趣向の長編に比べて切迫感が無いと言うか、やや淡白。


No.649 7点 屈折する星屑
江波光則
(2020/01/05 12:50登録)
 厳しく言えば、殺伐とした不良の青春小説の舞台を宇宙時代に移しただけ。とは言えアレンジの仕方としては悪くないし、小手先の技ではなく作者がきちんと作品世界を“引き受けている”感じで好感が持てる。タイトルを始めとして散見されるデヴィッド・ボウイ用語は鼻に付くが、作者にとっては重要だったのだろうからまぁ大目に見よう。


No.648 8点 神々の埋葬
山田正紀
(2020/01/05 12:48登録)
 『神狩り』『弥勒戦争』『神々の埋葬』で“神シリーズ”とも呼ばれるらしい。しかし山田正紀は以降も繰り返し神をテーマに取り上げているわけで、その呼称はあくまで初期の視点による過去のものと捉えるべきだと思う。
 さて本作。スケールの大きさは言うまでもなく、若書きなりに『神狩り』等と比べると登場人物は存在感を増したが、まだストーリーを勢いで駆け抜けてしまった感がある。美味しいキャラクター設定だけしてガンガン使い捨てている。例えば後藤貢あたりのエピソードを一つでいいから(伝聞ではなく)挿入してあれば、ハードボイルドな結末の無常感もいや増したのではないか。


No.647 8点 弥勒戦争
山田正紀
(2020/01/05 12:45登録)
 乾いた筆致の仏教SF。水面下の全体像がきちんと在って、その上で氷山の一角だけ断片的に描いている感じ。逆に言えば“ここをもっと深く掘ってよ!”と言う箇所があちこちに見られ、決して小説巧者ではない。しかし妙な生々しさが時折グイッと鎌首をもたげる。なんだこれ。


No.646 7点 落涙戦争
森田季節
(2020/01/05 12:39登録)
 泣かせ屋にロックオンされた泣けない少年。涙の意味を問う(笑)理不尽な一週間が始まった――軽快な文章に絶妙な重さを乗せる才が映え、表層の雰囲気だけでなく堅いコアも持った作家のように思える。西尾維新の戯言シリーズの後半のパスティーシュ、のような騙しの物語。


No.645 3点 災厄の町
エラリイ・クイーン
(2020/01/05 12:36登録)
 何か変だ。“3通の手紙”が、どうにも納得出来ないのである。
 殺人計画を立てる。そして、実行したわけでもないのに、その状況を知らせる(つまり架空の内容の)手紙を書く――何の為に? そんな準備が必要? リハーサル(笑)?
 “妻を殺す”ごっこ遊びで、敢えて実際に書くことで心の奥の鬱屈を昇華させようと試みた、なんて解釈の方がまだ判るけどなぁ。“手紙=殺人計画の証拠”と言うことを誰も疑っていない。この奇妙な世界設定、目をつぶるには大き過ぎる。
 出番少ないけど長女ローラのキャラクターは好き。


No.644 9点 法月綸太郎の新冒険
法月綸太郎
(2020/01/05 12:35登録)
 法月綸太郎の小説作品は概ね読んでいると思う。最も印象深かったのが本書に収録の「身投げ女のブルース」である。起点に偶然を含む点はちょっと引っ掛かるが、真相として提示される鮮やかな反転がそれを補って余りある。
 他の収録作も作者のポテンシャルを遺憾なく発揮した(もしくは、余計な寄り道で浪費することを上手く回避出来た)名品が揃っていると思う。

 ただ、以下ネタバレするけれども、「リターン・ザ・ギフト」の最終章を読んでいる途中で、穂波が“腑に落ちない”と言ったことと同じ疑問を私も抱き、それに対する回答には得心が行かない。ところが考えてみれば、偽装交換殺人(未遂)によって、弟を妻殺し犯に見せかけているわけで、理由としてはそれで充分な気もする


No.643 7点 いざ言問はむ都鳥
澤木喬
(2019/12/30 10:46登録)
 分類学者の視点で世界を切り取る豊穣な筆致は、回りくどさも含めて大変心地良い。一方、掘り出される謎については、論理の面白さと同時に強引さも感じる。
 差し引きすると後者のほうが勝ってしまい、ミステリとしてはいまひとつ、なんだけどそう斬って捨ててしまうには惜しい魅力があった。


No.642 6点 天井の足跡
クレイトン・ロースン
(2019/12/30 10:41登録)
 記述者が地の文に挿むユーモアが良い。ストーリーはちょっとごちゃごちゃしている。これは書き方次第でもっと読み易くならないかなぁ。
 “天井の足跡”は事件に於いてさほど大きなウェイトを占める謎ではない。それがタイトルでなければ、あのトリックでもそこまでがっかりしなかったかも。私は、先入観で作品の総合的な傾向を見誤ったまま読み進んでしまった感がある。


No.641 7点 賞金稼ぎスリーサム!
川瀬七緒
(2019/12/30 10:37登録)
 推理力ではなく調査内容から一歩一歩核心に迫る展開、はみ出し者が集まったチーム、結構唐突に出て来る犯人の異物感など、『法医昆虫学捜査官』に準ずるものではある。但し本書の主人公達は警察官ではないので、バックアップが少ない反面、行動の自由度は高い。そのへんの設定の違いを上手く使い分けられれば、前述のシリーズと並んで作者の二本柱になるポテンシャルはあると思う。個人的にはもう少し捻って欲しいけど……。


No.640 7点 マジックミラー
有栖川有栖
(2019/12/30 10:32登録)
 ネタバレしつつ書くが、アリバイ・トリックで良く判らない点がある。某が、白鳥を小松で降りずに、わざわざ金沢まで行って小松へ引き返す手間をかけた理由は? 少しでも長く白鳥に乗っていたかった? どこかに書いてあるのを私が見落とした?


No.639 6点 気まぐれ指数
星新一
(2019/12/26 11:49登録)
 都筑道夫みたい。星新一はエログロ書かないから、都筑道夫を漂白した感じ、とでも言おうか。謎と論理を重視する為に、過剰なメロドラマ性を排した都筑。無個性なキャラクターを多用し、“人間”を描く方法が必ずしも“人物”を描くことだけとは限らない、と語った星。両者が近いところに着地したのは、考えてみれば納得出来る。
 毒の無い世界観を一旦受け入れてしまえば、このイノセントな騙し合いも楽しめた。矢鱈と繰り出される様々な比喩が、長編で読むととても目立って苦笑。


No.638 7点 ドラゴンの歯
エラリイ・クイーン
(2019/12/26 11:48登録)
 遺産相続を巡るあれこれは、書き方が巧みなので飽きずに読めるが、飽くまで想定の範囲内に終始している気もする。ようやく事態が動くのは物語の半ばあたり、そこを過ぎて俄然面白くなるものの、最後に物凄い偶然による人間関係が発覚して呆然。国名シリーズにも似たようなサプライズがあったね。あと、前作『ハートの4』と同じような“雇用者と使用人の関係性”を連続して使い回すのは如何なものか。


No.637 8点 美少年蜥蜴
西尾維新
(2019/12/26 11:42登録)
 講談社タイガ創刊ラインアップの1冊として始まったこのシリーズは、“薄っぺらい文庫本”というレーベル・コンセプト(?)を体現するかの如く、短編サイズのアイデアを舌先三寸で引き伸ばした作品に終始した観がある。そしてそれは、作者の言葉そのものに対する信頼を裏付けとした、少ない材料でどれだけ膨らませることが出来るか、と言う或る種倒錯的ながらも前向きな挑戦だったように思う。次々広げられる無茶な風呂敷にニヤニヤしつつ楽しませて貰いました。
 本作でもそれを反省するどころかますますエスカレートさせて天晴れ完結。殆どストーリーはありません、良い意味で。尚、【光編】【影編】とあるが要は上下巻。


No.636 7点 七十五羽の烏
都筑道夫
(2019/12/26 11:36登録)
 他者の為に○○した、という真相の話は読んで辛いし、そこまでするキャラクターの心が怖い。
 “走り火”の情景描写は圧巻。縦横に火花が閃く夜の闇の中へトリップしてきた。個人的にはあの場面が本書の主役。


No.635 7点 不動カリンは一切動ぜず
森田季節
(2019/12/19 11:03登録)
 青春小説。性・家族・コミュニケーション等の形が変化した時代が舞台で、発達したITがバックアップする殺し屋の手が迫ったり、変な宗教が神に迫ったりと、SF的ガジェットの面白さもあるが、それら全てを突き抜けて少女達の真摯な思いが光る。
 少女の一人、“言葉(ときは)”と言う名が、文中に混ざると読みづらい割にその命名による効果が無いのは失点。

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