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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.21点 書評数:2304件

プロフィール| 書評

No.2164 6点 彼女が探偵でなければ
逸木裕
(2026/01/31 13:50登録)
 シリーズ前作に比べて、全体的に謎のグレードが下がってないか? みどりさんの性格も、折り合いの付け方が上手くなっているので、あのヴィヴィッドな異物感が目減りしてしまった。
 本作はサザエさん方式ではなく、年を経た探偵の変化のありようを主軸に据えているので、妥当な展開ではあるのだろうが、二冊続けて読んだせいもあり、(少なくとも表層的には)大人しくなって少々物足りないと感じた。


No.2163 8点 五つの季節に探偵は
逸木裕
(2026/01/31 13:50登録)
 意外にも、探偵であることの苦悩云々に対して、“なに青臭いこと言ってるんだ” とは思わなかった。共感とまでは行かずともその妥当性を受け入れられるキャラクター造形の妙。そして多分、その気持を表す文言の選択が上手い。
 各エピソードも粒揃いで、何なら日本推理作家協会賞受賞の「スケーターズ・ワルツ」が一番物足りないんだけど、それは途中で真相に気付いちゃったから。


No.2162 7点 濱地健三郎の奇かる事件簿
有栖川有栖
(2026/01/31 13:49登録)
 このシリーズはいつの間にか、パズラーにすると取りこぼしてしまうものを書く為の上手い方便に育った感じがする。作者もそれが判った上で熱心に余談を書いている(?)。同作者の鉄道ホラー集にも通じる味。
 「ある崩壊」「怪奇にして危険な状態」が良かった。「観覧席の祖父」の祖父とのエピソードも好き。


No.2161 6点 死と砂時計
鳥飼否宇
(2026/01/31 13:48登録)
 逆説モノ、なんてジャンルがあるかどうか定かではないが、この手の奴はロジカルな丁々発止は程々に、ズバッと斬り込む逆説が肝。その点でこの連作の切れ味は物凄く鋭いとまでは言えない。とはいえ四話目は真摯な魂の為せる業。五話目も純愛物語だね!
 私が処刑されるなら方法はギロチンが好ましい。しかしジャリーミスタン終末監獄では選択肢に含まれていないのだ。これは人権侵害ではないだろうか(頼めば用意してくれそうだけど)。


No.2160 5点 大鞠家殺人事件
芦辺拓
(2026/01/31 13:47登録)
 冒頭二割くらい、殆どミステリ要素が無い。代わりに時代背景・戦争・地域的特性が普通小説のように描かれる。これがあまり面白くない。
 事件が起こり始めても、やはり普通小説的背景が強調され気味で動きが遅くサスペンスに欠ける。ミステリ的にもそんなに物凄い謎だとは思えない。
 ミステリに振り切るのではなく、その背景の要素(戦時下の大阪の商人文化)も小説の真ん中に引っ張り出して二本柱に据えているのに、その柱がどちらも弱い。ミステリ賞二冠だってことで期待が強過ぎたかな。


No.2159 7点 わざわざゾンビを殺す人間なんていない。
小林泰三
(2026/01/25 14:02登録)
 ミステリのような何か。
 まぁ小林泰三作品は超常現象の有無にかかわらず第一義的には “気持悪いキャラクターの会話小説” なので、殺人事件の調査から話が逸れてもそれはそれで一貫して “本領” の内なのである。その観点で言えば決してジャンルが拡散などしていないのである。ただ、背広のロジックは判りにくかったな。
 イーターには面食らった。流石の描写力であるが、人肉ならともかくゾンビの肉を食うと言うセンスは私の共感を超えている。あ、活性化遺体、ね。


No.2158 6点 森栄莞爾と十二人の父を知らない子供たち
逸木裕
(2026/01/25 14:02登録)
 正直、個人的にそこまで乗れる題材ではない。にもかかわらず意外な程楽しめた。作者がしっかり調べているのは判るし、それを子供たち個々の物語に組み込む手際も巧み。
 更に、“この展開だと結末のパターンは限られている” と思ったら、全然想像しない方向だったので驚いた。
 私は “もっと適当に考えてればいいのに” と言う神原に一番近いかな。


No.2157 6点 ふしぎとぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件
橋本治
(2026/01/25 14:02登録)
 なんじゃこりゃ……と思いつつ読み進めたが、読み終わると印象が(少し)変わる。これはミステリの形を借りた社会評論。或る種の空虚さを表すのにこれ程のページを費やすのはどうかと思うが、橋本治はミステリ作家ではないし、読みにくくはないのが救い。
 ミステリ的な薄さは否めず、ミステリに慣れていない読者のほうがその点に引っ掛からずに作者の意図を汲めるかもしれないが、そういう読者にミステリとはこういうものだと思われるのは嫌だなぁ。


No.2156 6点 私たちはどこで間違ってしまったんだろう
美輪和音
(2026/01/25 14:01登録)
 プロローグであんな風に “監獄実験” を持ち出したら、それだけで全体の構成は決まったようなもの。“冤罪かと思ったら本当に犯人だった” と言う意外な展開はせず、予想通りにああなってそうなってこうなった。その範囲内に於いてはしっかり読ませる書きっぷりである。
 ただ、事件そのものが何かのニュースで読んだような内容なので、作品に対する向き合い方に迷うのである。これは小説形式による異議申し立てなのだろうか?


No.2155 5点 月面にアームストロングの足跡は存在しない
穂波了
(2026/01/25 14:01登録)
 再度宇宙を舞台にして、これはデビュー作への “甘過ぎる” との批判に対するリヴェンジを意図したのではなかろうか。自分は冒瀆も理不尽も冷静に呑み込めるぞ、と。
 或る程度名誉挽回は叶ったけど、インフォーマーの “動機” とか、まだまだ色々甘い。でもそれを恥ずかしげも無く書けるのは、それはそれで貴重かも。 


No.2154 4点 千年ゲーム
山田彩人
(2026/01/18 14:55登録)
 VWのゲームがどうのこうの。具体的にどれと似ているということではないが、同系統の先行作が色々ありそうだし、物語として展開があまり面白くない。まるでこういう題材で書かれた最初の小説であるかのような無邪気さ。作者はちょっと考えが甘い。


No.2153 6点 百年の時効
伏尾美紀
(2026/01/18 14:55登録)
 この事件、解くのに長大な時間を必要とする類の謎だとは、“必要” の定義は置いとくとして、あまり思えない。そこだけ見ればスッキリとしたパズラーにしても良かったくらい。
 解決に五十年もかかったのは、人員配置やら何やらの警察サイドの事情が大きい。なかなかアイロニックである。

 あと、私は “元号とは計算が面倒なだけの無意味なシステムである” と思っているクチなので、本作に限らず “(改元で)一つの時代が終わりを迎えた” とか大仰かつ感傷的な記述を見ると笑ってしまう。
 章題にも元号を掲げているが、日本人だけがそこに変な色分けを幻視してしまうのだ。“法律や価値観、それに慣習も異なる” のは確かだが、キー・ワードに元号を使ってしまうと客観性が乏しくなると思う。


No.2152 8点 輝きの七日間
山本弘
(2026/01/18 14:55登録)
 A・C・クラーク『幼年期の終わり』の欠点を修正したような話。作者の祈りと、もっと言えば苛立ちと憤りを直球でこれでもかとぶん回し、それをアリにしてしまうのは、設定のおかげだけではなく、作者が本気だと伝わってくるから。作品そのものが突っ込み待ちのようでいて、しかしこの熱量では突っ込む隙が無い。“面倒なおっさん” の面目躍如と言えよう。
 
 つまり、“これはSFではありません。”――である。


No.2151 7点 第二警察
吉田親司
(2026/01/18 14:54登録)
 基盤は謀略小説なんだけど、あれよあれよと言う間に世界の見え方が侵食され反転する。何とも剣呑なクロニクル。ディストピアの定義を問うようだ。アナザー真賀田四季か(笑)。
 最大の特異点かつブラック・ボックスである韋駄アキラ以外全員モブなのは構造的必然。しかし好きになれるキャラクターが皆無なのはちょっと困る……だがそうやって人間を “駒” に見せることこそ作品の狙いにも思えて……うーむ。


No.2150 5点 カウント・ゼロ
ウィリアム・ギブスン
(2026/01/18 14:54登録)
 うーむ。この作品、サイバーパンクの世界観の深化にストーリーテリングが巻き込まれて、尚且つ物語として三つの流れが平行するので、どうも判りづらい。しかも話の進め方は(パズラーではなく)ハード・ボイルド的な論理が強くて、スピード感はあるが納得感はさほどでもない。平行させずに(だって殆ど絡み合わないし)各々を纏めて順々に語った方が、まだ良かったのではないか。
 ありがちな展開をSFのガジェットでコーティング。方法論としては大いにアリだけど、私は本作、そこまで上手くは乗れなかった。


No.2149 7点 猫物語(白)
西尾維新
(2026/01/12 13:14登録)
 委員長は阿良々木暦を過大評価してない? あんなことやこんなことをやらかす野郎を良い方に解釈し過ぎてない? まぁ再読なので、時系列的にはあれこれは未だ起きてないんだけどね。
 つまりこれは、一人称で過大評価をこれでもかとばかりに書き連ねることで、“私、本気ですよ” とか書く以上に記述者の本気っぷりを表しているのである。羽川さん目が曇っとるな~、熱に浮かされとるな~、と読者に実感させているのである。高等テクニックである。


No.2148 7点 猫物語(黒)
西尾維新
(2026/01/12 13:13登録)
 つい “完璧な委員長” キャラを使ってしまい、シリーズを書き進むにつれて作者は困じ果てたのではないだろうか。
 この世に存在する筈がないものを、設定の主軸の一つに据えてしまったのだから。歪みが集まっても微笑んで際限なく飲み込んでしまう、そのこと自体が歪みなのである。忍野メメに “気持ち悪い” と言わせたのは、作者の本音が漏れたのだと思う。
 本作はシリーズを続ける為の荒療治。毒を垂らして麻痺を麻痺させるみたいに強引に切り替えた。でも羽川さん、やっぱり黒じゃなく清純な白でお願いします。


No.2147 7点 不可思議アイランド
山田正紀
(2026/01/12 13:12登録)
 キャリア十年目、短編集に収録し損ねていたものをジャンル不問で集めた、文字通り “分類不能” な短編集。
 「自殺省」は、山田正紀の中でもああいう類のグレーな不条理さは異色なんだけれど、全キャリアの短編で見ても三本の指に入る傑作だと私は思う。
 一方で挫折の記録(中断したシリーズ)も残っちゃって、つわものどもが夢の跡、である。


No.2146 6点 ハンニバル・ライジング
トマス・ハリス
(2026/01/12 13:12登録)
 リトアニアの城に住んでいた伯爵家の聡明な少年は如何にして “怪物” と成りしか。
 シリーズ前作『ハンニバル』でチラ見せされていた過去のトラウマの詳細な完全版である。そして、言ってしまえば、それ以上のものではない。
 物凄く大雑把な見方だが、本書の内容は前作で示された大枠の通りであって、それを上回る驚き、捻り、と言ったものは感じられなかった。まぁそういう感じだよね、と普通に納得。勿論、新たな登場人物によってエピソードに膨らみが持たされてはいるけれど。
 寧ろ気になるのはこの部分より後、レクターが収監されるに至った成り行きだな~。彼も敗北したわけだから。ミッシング・リンクは未だ埋まっていないのだ。


No.2145 5点 銃とチョコレート
乙一
(2026/01/12 13:11登録)
 人も街も、単にどこか異国と言うだけでなく、薄い膜一枚で隔てられているような、もどかしい距離感。主な原因は平仮名と漢字の使い分け方だろうか。
 これは作中作設定みたいなメタな仕掛けがあるな――と確信したが考え過ぎだった。単にもどかしいだけ。
 物語の流れも伏線の張り方も、いつもの乙一作品と比べて遜色は無いのに、限定された枠組みの中の人形劇を観ているよう(ちょっと悪い意味で)。文体って重要だな~と思った。

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