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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.774 7点 匿名交叉
降田天
(2020/08/20 17:51登録)
 前作と似た趣向とはいえ、仕掛けが効いていて楽しめた(刊行順に読んでないのが良かったかも)。登場人物への共感と嫌悪感を両立させる匙加減が上手い。

 ネタバレしつつ揚げ足取り。
 “ネット上でつながったAとBがリアルでも身近な関係だった”と言うのは御都合主義的ではないか? との疑問に対して、“それを承知の上で結び付けた第三者C”が示され一応納得。
 しかし、その行動は“AとBが、互いのブログについては知らない”ことが前提。その状況は充分有り得るし、そうでなくてもCの不利益にはならないから、決定的な矛盾ではない。
 ただ、Cがその“前提”について何も考慮していないのは、作者が“Cの持つ情報の範囲”を意識せずに筆を滑らせちゃった感じもする。


No.773 5点 陽気な容疑者たち
天藤真
(2020/08/20 17:46登録)
 ベースの部分をしっかり持っていて、その上で軽妙な表現を上手にコントロールしているような筆致は好感度大。ユーモア小説として高く評価したいのだがしかし。
 
 ネタバレしつつ書くが、ミステリとしては何か変だ。
 これは、不測の事態によって計画変更を余儀なくされ即興的にプランBを実行、と言う話である。
 さてそれでは、当初の計画で、侵入する予定だったのは誰か? 誰もいないのだ。探偵役の解説でもその点がいつの間にかあやふやになっていて、もしや読者を煙に巻くことがあの会話の目的だったのか。

 もう一点。“目撃者”がいるけれど、あの存在は何なのか。見て、告げて、かと言って犯人に絡むわけでもない。あの人は何がしたかったのか。作者はあの人で何がしたかったのか。


No.772 5点 スキュラ&カリュブディス 死の口吻
相沢沙呼
(2020/08/20 17:45登録)
 設計段階ではそこそこ良かったのに、安い材料で組み立てちゃった? 読み易さを優先していると考えればこれはこれでアリか。
 私は予備知識無しで純ミステリのつもりで読み始めたので、中盤の逸脱して行く感じは良かった。私はねむりの部屋なら住める。


No.771 6点 忘却のレーテ
法条遥
(2020/08/12 13:10登録)
 冷徹な文体が“狙い過ぎ”な感じで多少鼻に付くきらいはあるものの、決して出来が悪いわけではない。
 ただ、こういうガジェットを組み合わせた話は幾つも読んだ。それらの類似性については大らかに受け入れているつもりだが、どうしても後出しの方が不利になってしまう。特に“天才”はパターン化しがちだ。


No.770 7点 緋文字
エラリイ・クイーン
(2020/08/12 13:09登録)
 動機を理由にアレが(減刑や猶予でなく)無罪になるとは驚き。しかもそれが当然の不文律として広く認知されている? どの程度リアルな話なのだろうか? 実際にああいう事件を誘発しかねないのでは? 陪審員制の危うさが印象に残った。
 ダークなんて名前アリなのかと思ったらスペルは Dirk とのこと。


No.769 8点 宇宙の孤児
ロバート・A・ハインライン
(2020/08/04 11:41登録)
 中編2編を組み合わせた長編、と言う出自のおかげか、勿体振ったところが無く、スケールの大きな物語がテンポ良く読める。この手の設定(中世的な閉鎖世界、実は巨大宇宙船で……)の作品の中では、必要にして充分な要素が的確に配置された、規範のような一編ではないか。
 一つの肩に二つの首が並んだジョウ=ジムは主役を喰って本作の顔。昨今こういう異形キャラクターは作家が自主規制しがちでもう出て来ないかなぁ……。


No.768 7点 罪人の選択
貴志祐介
(2020/08/04 11:40登録)
 ミステリ1、SF3の短編集。
 表題作はヒントの台詞が判り易く、仕掛けが概ね読めた。しかしそれでつまらなくなるわけでなく、“こう来たか” と楽しめた。この手の謎は、特殊な知識が無くても “こういう性質のモノがあればこうなる” と推測出来れば “御名答!” でいいよね。
 「赤い雨」。子供っぽい登場人物ばかりでジュヴナイルかと思ったが、初出は別冊文藝春秋。


No.767 4点 カフェバー「クロ」の殺人調書
青柳友子
(2020/08/04 11:38登録)
 この軽さは私には合わなかった。'80年代後半東京の社会風俗言葉遣いについての資料、ってところ。“ナウい”やら“花金”やら、本気で使っているのかジョークなのか今となっては判断出来ません。「露天風呂の泥棒」が、謎解きストーリーでない故に却って面白かったことは明記しておくべきだろうか。


No.766 8点 すみれ屋敷の罪人
降田天
(2020/08/04 11:36登録)
 いわゆる叙述トリックは使われていない(よね?)が、証言の積み重ねで視点人物がコロコロ変わる、いかにも仕掛けのありそうな形態。なので、ついメタ的な方向への警戒に余計なリソースを割きつつ読んでしまったことが悔やまれる。もっと素直に物語自体に没入して大丈夫だった。
 多面的に語られる群像劇。人の世の光と影。見え方を二転三転させる構成も良く出来ている。そしてその上で、作者の筆は人物の“情”に重きを置いており、私はその熱量にこそ撃たれた。技術の使い方を知っている人、だと思う。


No.765 6点 M.G.H.楽園の鏡像
三雲岳斗
(2020/07/31 12:26登録)
 “森博嗣以降”の理系キャラクターって感じ? しかし主人公はともかく、“天才”がステレオタイプに思えて物足りない。

 第一の殺人。正直、トリックに絡む部分の構造がいまひとつ把握出来ず。何が起きたかはどうにか理解したものの、“こういうことが起こり得る配置だった、ということなんだな”と逆方向に納得するしかなかった。
 第二の殺人。犯人はトリックの為の道具の類を持ち込んだわけではなく、現場の構造・設備を悪用しただけ。つまり純然たる事故でアレが起きる可能性がもともとあったのでは。欠陥施設だよねぇ。


No.764 5点 ティンカー・ベル殺し
小林泰三
(2020/07/31 12:24登録)
 このシリーズがこんなに続くとは思わなかった。こうなると評価の仕方も微妙になって来る。つまり、設定を生かしたねじれたロジックやトリックの作り方がパターン化していないか、そして、土台にあるのは他人のネタじゃないか、と言うことである。しかし“アーヴァタール”の設定と既成のメルヘン世界の親和性は高いし、それ自体がコンセプトだし。うーむ。
 本作にはもう一つ問題があって、メインのトリックには先行例(結構知名度あると思う)があるのだ。私はそのへん比較的鷹揚なつもりだが今回はがっかりしてしまった。


No.763 5点 弓形の月
泡坂妻夫
(2020/07/31 12:20登録)
 ミステリをとろとろ煮込んで、半分煮崩れたところでハイどうぞ。スープは珍味だけど具の歯応えは無くなっちゃった。両方の美味さを具有するタイミングで火を止めるのは難しいんだろうなぁ。

 真吹三津雄の血縁つながりでの関係者と、劇団つながりでの関係者が、同じマンションに住んでいて互いにそれと知らずに知り合いになっている。これはどうも御都合主義的。現実には有り得るその手の偶然も、フィクションだと私は気になる。
 本作に限らないが、泡坂作品は隙あらば和服の販促小説になるので苦笑。


No.762 7点 しらみつぶしの時計
法月綸太郎
(2020/07/31 12:19登録)
 十年ぶりに再読。「猫の巡礼」が素晴らしい――けど、ずっとこれ有栖川有栖作品だと思っていた。何処で記憶が混乱したのやら。
 「使用中」他者の作品をあんな風に引用しなくても、法月本人のアイデアは単独でちゃんと伝わるのに。
 
 以下、ネタバレになっちゃうかな?
 「ダブル・プレイ」ラスト前の“この見ず知らずの男こそ、本物の○○にちがいない”は余計な一文ではないだろうか?
 どういう思考回路でそこに到達したのか。
 ①自分と●●の殺意のタイミングが偶然かち合ったわけではなく、全体が一つにつながった事件である。
 ②未知の共犯者が存在するわけではなく、既に出て来た名前だけで事件は完結している。
 以上二点を前提にしないとその結論には至らない。主人公の持つ情報だけではそれはクリア出来ないと思う。


No.761 8点 偽りの春 神倉駅前交番狩野雷太の推理
降田天
(2020/07/27 12:09登録)
 倒叙形式の警察モノ短編集。さほど鮮やかな推理が炸裂するでもなく、入り組んだトリックが仕掛けられるでもなく。犯罪より人物の造形を中心に据えた、つまり小手先ではない筆力がより求められるスタイルに挑み、しかもかなり成功している。素直に感心した。「見知らぬ親友」が特に良い。
 ――と思ったら最後に飛び道具。コレが中途半端。と言うか主人公の企ては面白いが、“天才”の描き方が表層的で説得力不足。このネタだけ別個にもっとじっくり書けばいいのに。


No.760 6点 悪の起源
エラリイ・クイーン
(2020/07/26 14:59登録)
 前回読んだのは中学校の頃。読み返す意義はあった。英語がそこそこ判るようになったので、あの手紙の部分をしっかり味わえたから。
 犬の死体と脅迫状で相手が死んだ。それは殺人罪に該当するのか、と言う問題が全然問題にされていない。
 もう一件。殺すつもりで空包を撃った、当人は実包だと思っていた、撃たれた側は空包だと承知の上で、敢えて撃たれる状況を作った。コレは殺人未遂罪? 不能犯? あの人が何罪で起訴されたかも明記されていない。そういう法律談義は作者の手に余ったのか。
 ところで“アボカド”を“西洋梨”としているのは変だね。


No.759 7点 あなたの知らないあなたの部屋
青柳友子
(2020/07/26 14:56登録)
 こちらの予想を覆す矢継ぎ早な展開に唸らされた。複数視点のそれぞれに寄り添う文章も的確で、読みながらあっちの味方になったりこっちの味方になったり。難点は、誰が誰かアンフェアな表記があること。ラストで取り違えが生じる明確な原因が見当たらないこと。
 第42回日本推理作家協会賞長編部門候補作。


No.758 7点 襲撃のメロディ
山田正紀
(2020/07/26 14:54登録)
 '70年代のうらぶれた世相のようなムードにそのまま巨大電子頭脳など幾つかのテクノロジーをぶち込んだ、今読むと少々奇妙な'90年代ディストピアを舞台にした反体制アクション。勢いと冷たさを併せ持つ筆致に胸が躍る。作戦内容に理屈として判らない部分(何故そういう行為によって列車がそういう対応を示すのか、とか)があるけど、それは私の理解力の問題。


No.757 5点 時をきざむ潮
藤本泉
(2020/07/26 14:50登録)
 泥臭い警察小説と“まつろわぬ民”云々の伝奇ネタのツギハギ。破綻を恐れない物語の核の存在感は力強い反面、推進力には欠ける。捜査が停滞するとこちらも退屈してしまった。水江・海江とヒロイン(?)が二人いる設定はあまり生きていない。ラストの場面に何か予想外のびっくり自然現象を期待していたら、単に“規模が大きい”だけでがっかり。


No.756 6点 犯罪ホロスコープⅡ 三人の女神の問題
法月綸太郎
(2020/07/26 14:49登録)
 決定的な傑作は無いが、どれもまぁそれなりに良く出来ている。“交換殺人のカラクリ”や“背理法推理”がマーヴェラス。
 元ネタのあるネーミングを犯人役に割り振るのは如何なものか。芸能人なら喜ぶかな?


No.755 5点 キス・キス
ロアルド・ダール
(2020/07/21 11:52登録)
 間抜けな人物ばかり登場するが、それが“愛すべき~”と言う感じではないのでイライラした。「豚」「天国への登り道」以外は、期待し過ぎたせいで相対的に物足りない。だって『チョコレート工場の秘密』の作者だよ。何かもっと物凄いものを期待しちゃった私を誰が責められるだろうか。

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