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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2149件

プロフィール| 書評

No.669 5点 宇宙細胞
黒葉雅人
(2020/02/03 13:27登録)
 ぶっちゃけ、『ΑΩ』(小林泰三)みたいだ。“片手”と言う設定から『寄生獣』(岩明均)も想起させられる。『鉄腕バーディー』(ゆうきまさみ)にはバチルスなんてのが登場するし、遡れば『ソラリスの陽のもとに』(スタニスワフ・レム)、新しいところでは『粘菌人間ヒトモジ』(間瀬元朗)等。不定形の生命体とぐにぐにぷよぷよと言うのは一部の人類に普遍的な憧憬なのかもしれない。
 出発点を考えると割と順当な展開で、物凄い驚きは無い。ラストの部分も、もっとグイグイ読ませる文章力があればねぇ……偏執的な文体は意図的なものだと思うが、私とは微妙にセンスが合わなかった。全体的に、もう一つ何か欲しい感じだ。


No.668 5点 キリオン・スレイの生活と推理
都筑道夫
(2020/02/03 13:23登録)
 “こういう奇妙な事件にしたい、その為には犯人がこういう風に動けばいいはずだ”と言う作者の思惑だけで登場人物が駒のように行動して不自然。犯人やその関係者の作為が妙に回りくどかったり、心情的に何故そこでそう動くのか納得しづらかったり。物語としての枝葉末節をもっと整えるべきだった。


No.667 7点 ユートロニカのこちら側
小川哲
(2020/02/03 13:22登録)
 情報技術による“ありそうな未来”、と言うことで大枠のパターンには既視感がある。しかし物語る手管の上手さ、脇役の説得力、あちこちに埋め込まれた小ネタなど、メイン・テーマ以外の要素が良く出来ていてそういう部分で勝ちだ。個人情報の監視によって発見される予備犯罪者への対処、なんて問題も俎上に乗せられている。


No.666 7点 終末曲面
山田正紀
(2020/02/03 13:19登録)
短編と言う枠の中に押し込められた物語の軋みが聞こえる。背景としてもっと大きな世界が感じられ、いわば設定としては長編的、結末は短編的、故に文字で表現された以上のエッセンスが行き場を失くしてえも言われぬ焦燥感を生み出した。特に「薫煙肉のなかの鉄」の世界にはもっと浸りたかった。
 「銀の弾丸」は、日本人作家による史上二作目のクトゥルフもの作品だとか(一作目は高木彬光「邪教の神」)。


No.665 5点 イシャーの武器店
A・E・ヴァン・ヴォークト
(2020/01/30 12:37登録)
 二大組織の対立を背景に、スパイ・スリラーや経済事件やロマンス等々の小ネタを混ぜ、面白い部分もあるのだが総体としていまひとつ噛み合っていない。原因は、“武器店”なる存在に説得力が足りない(単なる反政府組織と何が違うの?)にもかかわらず存在感は大きいので、物語の基本設定があやふやになっていることか。過大評価は避けたい。


No.664 6点 牧師館の殺人
アガサ・クリスティー
(2020/01/30 12:32登録)
 随分と俗っぽい牧師さんだ。GOOD!
 ところどころにさりげなく埋め込まれたユーモアも冴えている。

 「夜中の十二時にスーツケースを持って、森の中で何をするつもりだったんでしょう?」
 「ひょっとすると――古墳の中で眠るつもりだったのかもしれませんよ」

 とか。これに何も突っ込まずにシレッと続くところが GOOD!

 “最初はまさかアクロイドではと疑った”←私も!


No.663 8点 息吹
テッド・チャン
(2020/01/30 12:31登録)
 極端に寡作な兼業作家が、しかし評価も人気も上々、と言うポジションに就けるのは、作品が高水準なだけでなく、取替えの利かない個性あってのことであろう。
 「商人と錬金術師の門」は、まぁ面白いが、意図的に借り物のスタイルで書いているせいもあって“個性”と言う感じはしない。
 それを除けば、どれもかなり高水準かつ個性的。「息吹」など、まさにセンス・オヴ・ワンダー、笑いも感動も許容する無二の世界だ。
 ただ、「ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル」は――訳文の巧みさも相俟ってディジエント達の愛らしさがたまらない。考えさせられつつも胸が温かくなる傑作――なのだが、既視感がある。具体的に何に似ていると言うわけでも、この作品に限った話だと言うわけでもないけれど、AIやITを題材にしたSFは“その時期の最先端を見て、更にその先を想像する”と言う点で早い者勝ち競争みたいになっていないだろうか? 「偽りのない事実、偽りのない気持ち」にもそのケがある。タイム・ラグが生じ易い寡作の短編作家は不利。


No.662 5点 花の下にて春死なむ
北森鴻
(2020/01/30 12:29登録)
 表題作と「魚の交わり」で描かれた哀切な人生と謎の絡みはなかなか読み応えアリ。この2編だけなら高評価出来た。
 しかしそれ以外は、ミステリとしても人情話としても中途半端。文章力がその不足を充分補えたとも言い難い。“わいわい語り合う推理クラブもの”と言う形式を、上手く使いこなせていない気がした。


No.661 6点 樹木葬 ―死者の代弁者―
江波光則
(2020/01/27 11:09登録)
 何年たっても世界は殺伐として、子供達は死ねとか死ぬとか喚き続けるのだろう。でも歳を重ねたって繕い方が多少身に付く程度だ。人間になるのはとても面倒臭い。作者はどこまでも一人称のまま、読者の背中を少しだけ蹴飛ばして放置する。


No.660 7点 声の網
星新一
(2020/01/27 11:03登録)
 広義の“レトロフューチャー”か。電話が携帯電話に進化しないまま別方向へ向かった時間線。同作者のショート・ショート群ともまた違った空気感(登場人物がエヌ氏ではなく具体的な日本人の名前である点も大きいかも)を持つ作品世界の予見性には驚いた。無色透明な文体で綴られる、微かな不穏さを孕む静謐な物語は、それ故に、怖い。
 実は、インターネットが普及する以前に本書を一度読んでいるのだが、その時に抱いた感想は全く記憶にない。もう二度とそんな読み方は出来ないだろう。嗚呼口惜しい。


No.659 5点 最長不倒距離
都筑道夫
(2020/01/23 10:46登録)
 作者の意図は判るが、論理が徒にチマチマしているし、物語としてあまり面白くない。私の読み方が下手ってことで。
 夜中の12時に置時計が鳴る場面があるけれど、客から文句が出ないのだろうか。


No.658 8点 キリングクラブ
石川智健
(2020/01/23 10:45登録)
 この導入部で『DINER』(平山夢明)を連想するのは致し方なかろう。正直、前半のうちは“或る種のパターンに則って上手に書いており見事、だがそれだけ”と悔し紛れのイチャモンのような感想だった。しかし後半の、設定自体をレッド・ヘリングに据えたが如き展開にはびっくり、脱帽。
 第四章、脳外科医の意外な行く末はとても面白かった。第五章の出版社のエピソードはその後に全くつながっておらず不要なのでは。


No.657 5点 大江戸ミッション・インポッシブル 顔役を消せ
山田正紀
(2020/01/23 10:44登録)
 天保の江戸を舞台に闇の勢力が激突(密室殺人も発生)。人間離れした遣い手がアレコレ登場するが、ギリギリ現世に留まっている(か?)。
 近年はSF回帰の傾向が目立つ作者だが、こんなシリーズに対する意欲もあるのかと意外に思った。終盤は強引な展開で無理に見せ場を作った感あり、以下次巻。


No.656 6点 イヴの末裔たちの明日
松崎有理
(2020/01/20 11:04登録)
 結構バラバラな作風の短編集だが、器用貧乏には見えないところが立派。御題は脱獄・宝探し・新薬実験……最も異色な「まごうかたなき」が特に良かった。
 ただ、思わせぶりなリンクが有ったり無かったりで、“アレは何だったの”と言う疑問が幾つか無くも無い。例えば、主人公がキスチョコを路上に散らしたことと宇宙生命体がキスチョコ型であることは関係があるのか? とか……。


No.655 6点 密葬 ―わたしを離さないで―
江波光則
(2020/01/20 10:59登録)
 物語的にも心情的にも内向きに完結した『鳥葬』にどんな続きがあるのかと訝ったが、それでも人生は続くわけだ。捻りは無いけれど、嫌な人物を魅力的に描く腕も、投げ遣りな文芸論も、なかなか悪くない。


No.654 7点 赤い部屋異聞
法月綸太郎
(2020/01/20 10:56登録)
 オマージュ作品を集めた短編集。とりあえず、オマージュ云々とは無関係に概ね楽しめた。ベストは「まよい猫」。
 私が知っていた元ネタは一つだけ。元ネタ既読ならもっと違う景色が見えたかもしれないが、それは判断出来ない。オマージュを先に読んでしまうことで、いざ元ネタを読む時に興が殺がれている可能性はある。
 元ネタがどの作品か事前に判れば読者が主体的に読む読まないを選べるが、タイトルから元ネタを予想出来るのは2編だけ? 元ネタの一覧表は無く、各短編のあとに解説が付されているので、途中のページをパラパラめくって確かめることになるが、それだと余計なネタバレが目に入りかねないのが問題。
 事前に判ればいいとも限らず、読みながら嗚呼この話はアレかぁと気付くのが楽しいかもしれない。しかし(多分)なかなか幅広いセレクションで、元ネタを全部知っている読者は限られるのではないか。

 つまり、作品集の体裁に、読者の“何をどういう状態で読みたいか”と言う選択肢を奪ってしまう側面があるようだ。好きな作家なので読んだが、こういうのはこれきりにして欲しい。好き度のもっと低い作家だったら“オマージュ短編集”と言う時点で敬遠したと思う。


No.653 5点 七つの棺
折原一
(2020/01/20 10:53登録)
 トリックの傾向を考えるとパロディ形式の選択は妥当だけれど、ユーモアのセンスが自分にはあまり合わなかった。“要は見せ方なのだ”との作者の言に同意(見せ方が合わないのでアウト、と言う意味で)。


No.652 6点 鳥葬 ―まだ人間じゃない―
江波光則
(2020/01/16 13:23登録)
 鳥葬とは、モノの本によれば、単に遺体を処分する便宜として食わせるわけではなく、鳥を媒介にして空に死者を葬る、との思想だそうな。なんてロマンティックな。ついでに資源のリサイクルにもなる。私の望む葬送法第1位だ。2位は医学の為に献体してそのまま標本になること。
 いや全然そんな話じゃないんだけどね。“鳥葬”も比喩表現だしね。


No.651 5点 青列車の秘密
アガサ・クリスティー
(2020/01/09 12:01登録)
 次々に新しい人物が登場して、ええっ多過ぎるよと思ったが心配無用、読み進めるとそれぞれ適切なところに落ち着きスッキリ整理された物語だ。この作者には紋切り型のキャラクターを生き生き描く才があり、風俗小説として面白い。ミステリとしてはつまらない。
 あの人の頭文字が●だとは、推測は可能だが気付かなかった。“彼女(メイド)の名前はエレンなんですか、それともヘレンなんですか”と言う台詞が日本人向けの伏線なのである。


No.650 6点 贋作ゲーム
山田正紀
(2020/01/09 11:59登録)
 作者曰く“実行不可能な作戦を数人のチームが達成する”シリーズの短編4本。個々の作戦は面白いし、短編サイズで過不足ないネタを上手く配している。しかし基本コンセプトが共通なのでどうしても似通った印象。主人公がみな世を拗ねてうらぶれた中年男なので尚更。そして、同趣向の長編に比べて切迫感が無いと言うか、やや淡白。

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