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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2224件

プロフィール| 書評

No.744 6点 ジャン=ジャックの自意識の場合
樺山三英
(2020/06/30 11:46登録)
 なんとも読み辛い文章の連続。しかしこの手の、文体によって世界を成立させる類の小説は、斜め読みでは意味が無いのだ。悪く言えばインテリ気取りな筆致で描かれるイメージはそこまで斬新と言うわけでもなく、また最終的に平仄が合っているとも言い難く、止めるきっかけが無いので読み続けたとの感がなくもないが、差し挟まれる手紙を息抜きにして辿り着いた最後の行には若干の感動らしきものも確かにあった。嗚呼疲れた。


No.743 5点 長い家の殺人
歌野晶午
(2020/06/30 11:44登録)
 小説に登場するバンドマンに説得力を感じたことはあまり無い。作者は音楽に詳しくない読者も想定して書くから、CDのライナー・ノーツや音楽雑誌の記事とは拠って立つところが違うのは止むを得ない。私の得意分野である故に却って相性が悪い、と言う皮肉だ。そんなわけで本作もキャラクター的な部分でいまひとつ乗れず。
 第二章で引用される“If I'm not back again...”はクイーン「Bohemian Rhapsody」。“Mama, just killed a man...”てな歌だからミステリに相応しいかも。
 
 揚げ足取り。最初の殺人で、'54年のストラトキャスターを納めたギターケースの行方が判らなくなり、死体のある部屋で発見された。ところが中身を確認する描写が一切無いまま、いつの間にか“ギターは無傷で戻ってきた”と周知の事実のように地の文でサラッと語られている。ケースそのものの状態は? ピック等の小物類は取られていない? 作者はそういう確認が不要だと知っていたので、ついそこを疎かにしちゃった。だってそのケースは実はおっとネタバレ。


No.742 5点 雲をつかむ死
アガサ・クリスティー
(2020/06/26 12:03登録)
 21章で自作品のネタバレを。駄目だポアロ、その真相は内緒でしょ。
 “あの連中(考古学者)ときたら、ほら吹きばかりですよ” にもニヤリ。
 探偵作家クランシイ氏が考えた解決も捨てがたい。


No.741 5点 三幕の殺人
アガサ・クリスティー
(2020/06/26 12:01登録)
 ハヤカワ版です。
 動機の有無について、心の奥の奥まで他者が証明することはどだい無理なのである。“犯人にはパーティ出席者の大多数に対する秘かな殺意があって、誰でもいいから殺したかった”という推測を否定することは出来ない。それ故に、最初の殺人の動機は是が非でも本人の口から語って欲しかった。
 ところで第一幕の3。ポアロ曰く“ウィスキーはめったに飲みませんので。砂糖水を少々いただければ”――これはジョーク? 砂糖水を飲む習慣が本当にある?


No.740 8点 十日間の不思議
エラリイ・クイーン
(2020/06/26 12:00登録)
 前半はちと冗長。
 第一部末尾のエラリイの推理から俄然面白くなる。
 総合的には、後半がもたらす読後のインパクトを重視して高評価していいかと思う。

 “自分の行動が信用出来ずに怯える依頼者”は前作長編『フォックス家の殺人』でも使った要素で、二度ネタ厳禁! と言う程ではないが、2作続けてそれってのはどうなんだろう。間に3年ブランクがあるにしても、自己プロデュースと言う点で甘かったのではないか。


No.739 7点 フォックス家の殺人
エラリイ・クイーン
(2020/06/26 12:00登録)
 後出しの情報が色々出て来たりして、パズラーとしてはいまひとつ。“調べる過程”の物語としては面白い。しかしこの設定なら“いつ毒が混入したか”と言う不可能性をもっと強調したほうが良かったんじゃないの。それでは謎が簡単過ぎる?

 ACのアレに、アニマルつながりで元ネタを示して挑戦している?


No.738 8点 紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人
歌田年
(2020/06/18 12:28登録)
 人はしばしば自分の興味の対象ばかり見る。場面の端々で紙の種類を気にするマニアックな主人公は“特殊な人のリアリティ”を上手く表現していると思う。敢えてさらりと描くことで可笑しみを醸し出す文体をものにしているのも心強い。
 調査が色々都合良く進み過ぎだろと言う部分はあるが、或る種の予定調和がアリになる作品世界がそれなりに成立しているのであまり気にならず、事件を手繰り寄せる手捌きの爽快感のほうが胸に残った。


No.737 7点 50億ドルの遺産
山田正紀
(2020/06/18 12:26登録)
 あれっ?――“この島に隠されている五十億ドルの兵器のことでも、あちこちで、いいふらすことにしますかね”
 第三章で主人公がこんな風に駆け引きを試みるが、それはプロジェクトにとっても望ましいことである。どこまで事情を知っているか不明、と言う不安材料はあるが、内幕を打ち明ける程のことではない。相手が冷静なら、勝手にし給え、で放り出されるところ。

 寄せ集め集団によるハンド・メイドの戦術は山田正紀の十八番。毎度気持が昂る。


No.736 6点 眠りの神
犬塚理人
(2020/06/18 12:22登録)
 しっかり書かれてはいる。それが仇になって少々優等生的? 安楽死については調べたものを出しただけと言う感じ。こういうテーマ故に思い切った暴論を示すことに二の足を踏んだ感がなくもない。ベーシックな筆力はある人だと思うので、もっとぶっ飛んでもいいのではないか(個人的には、死を美化するキャラクターをもっと前面に出しても良かったかと)。


No.735 7点 死者が飲む水
島田荘司
(2020/06/18 12:20登録)
 この動機は単なる八つ当たりでしょう。但し、それゆえの“殺人者になどなりたくはなかった、運命にあやつられているような気がした”と言う心情は、さほど緻密ではない計画をその場の流れで決行したような犯人に見合っている気がした。
 “実の子だから”との理由で容疑者から外すのは作者の手抜きだな~。きちんとロジックを考えるのが面倒だった?


No.734 5点 三幕の殺意
中町信
(2020/06/18 12:17登録)
 一応及第点だが、読み進める為のエンジンが弱かった。魅力的な登場人物がいないせい?
 題名のせいでどうしても構成に目が行くが、“三幕”という概念が物語に於いてそんなに重要? 第二幕と第三幕の境目が何故あそこなのか、良く判らなかった。


No.733 8点 ペルシャ猫の謎
有栖川有栖
(2020/06/11 12:27登録)
 表題作、私は高評価します。“現実に起きる現象だから小説や芝居に取り入れられているんです”――その通り! 目撃証言だけで有罪判決は出ないだろうが、コレで濡れ衣を着せられたら、目撃者も “嘘” を吐いているわけではないだけに、対処するのは大変だ。
 他の短編はいまひとつ。


No.732 8点 猫には推理がよく似合う
深木章子
(2020/06/11 12:25登録)
 ミステリ風猫小説。かと思っていたら、豈図らんやきっちりしたミステリに仕上がっていた。スの付く名前のス入り猫。室内飼いなら巣入り猫。エピローグは期待通り!


No.731 9点 奇術探偵 曾我佳城全集
泡坂妻夫
(2020/06/11 12:24登録)
 なにしろ20年に亘って書き継がれたシリーズなので、こうしてまとまると、ミステリ作家としての泡坂妻夫の全盛期と低迷期が一望に収まってしまうのが罪なところ。

 “奇術は楽しんで見るのが一番いいんです。もっと上手な見方は、その場の雰囲気をもっと楽しくするように、奇術師に協力する”
 判っちゃいるけどやめられない、ネタバレしつつ揚げ足取り。

 「消える銃弾」道具まで作って、明らかに計画的犯行。なのにその道具の後始末は御粗末。持ち出して処分出来なくなった突発的事由、なんてのがあれば良かったのでは。

 「花火と銃声」解決編がちょっと説明不足。
 ①壁の中の銃弾を見付けるのに警察は金属探知機を必要とした。事件当時には更にカレンダーが掛けられていた。それを犯人が自力で発見出来たのか?
 ②事前に被害者から聞き出しておいたなら、弾痕の位置・カレンダー両方について告げるほうが自然な気がする。その場合、佳城は推理で “(カレンダーは犯人が)予想しなかったもの” と述べているが、その蓋然性は高くないと思う。
 ③犯人は前回の殺人について、死体を秘かに処分する、という方法でとりあえず隠蔽に成功している。今回その手は使えなかったのか?

 「だるまさんがころした」「浮気な鍵」で紹介される錠のマジックや “夢のエキスプレス” は、ただ単に “そういう仕掛けがある道具” ということではないのか。凄いのは作った人であって、所有者がそれを持っているおかげでマジシャンとして評価される、と言う価値観は良く判らない。


No.730 6点 倒錯の死角−201号室の女−
折原一
(2020/06/11 12:21登録)
 母親の行動は不自然で説得力が足りない。真相解説の部分がくだくだしい。しかし作者の志の高さは判る。


No.729 7点 キングを探せ
法月綸太郎
(2020/06/11 12:20登録)
 トランプのランク(番号)と被害者の名前の共通性に、犯人も捜査陣もこだわっているのが可笑しかった。しかもそのおかげで被害者の絞り込みに成功しちゃうし。そもそも件のトランプを後生大事に保存していたことと言い、犯人が捜査陣に対してフェア・プレイを心掛けています、みたいな感じで妙。


No.728 7点 オリエント急行の殺人
アガサ・クリスティー
(2020/06/04 11:52登録)
 メインのネタはどうしたって忘れようがないけれど、詳細についての記憶は曖昧、と言う状況で読み返すと、本作は一幕の舞台劇の如し。いやむしろTVのドッキリ企画か。役者による芸風の違いも(それなりに)書き分けていて見事。肩に力が入ってつい失言しちゃう人。素のままで通したようなハマリ役。そして別人格を演じ切った名優……。


No.727 6点 エッジウェア卿の死
アガサ・クリスティー
(2020/06/04 11:51登録)
 殺人発生以前からポアロが巻き込まれている設定だが、巻き込んだ人物の考え方は“作者の都合”のようで不自然に感じた。
 
 ところで、7章の冒頭。
 ポアロ「尋問はしたのでしょうな?」
 ジャップ警部「しましたとも、そして、あの十四人が一人残らず云々~」

 これは次作についての大胆な伏線か、それとも自分が何気なく書いた台詞に触発されてアレを思い付いたのか。


No.726 6点 津軽路に死の雪が舞う
青柳友子
(2020/06/04 11:50登録)
 情炎ミステリー、と謳われている。ボクシング、性風俗産業、イタコ、の三題噺と言った趣で、更に旅情あり男たちの三角関係ありとなかなか読ませる。ミヤちゃんのキャラクターは美味しいね。
 ところが後半は雲行きが怪しい。徐々に明らかになる、主人公の人生の裏側で起きていた諸々は色々強引で、腑に落ちるとは言えなかった。
 総じて古いタイプの劇画(池上遼一とか)みたいな印象。前半は良い意味で、後半は悪い意味で。因みに、題名は内容に全然合っていない。


No.725 5点 新 顎十郎捕物帳
都筑道夫
(2020/06/04 11:48登録)
 揃いも揃って下手人達は無駄に芝居っ気が過ぎるものだから、何故そこまでやるの? と言う話ばかり。そんな中で、「えげれす伊呂波」は地味ながら筋がすっきり通っていて良し。「きつね姫」の理屈も面白い。「浅草寺消失」でEQ「神の灯」に挑戦するも、これは都筑の完敗だ。

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