復活の日 |
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作家 | 小松左京 |
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出版日 | 1964年01月 |
平均点 | 8.00点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 9点 | 文生 | |
(2022/09/17 07:38登録) 春先に流行の兆しを見せ始めたイタリア風邪が5月には世界中で深刻な事態をもたらし、秋にはほぼすべての人類が滅んでしまう過程を克明に描いているのが怖い。個人的にはパンデミックもので一番好きな作品であり、日本沈没に並ぶパニック小説の大傑作。 |
No.3 | 8点 | 糸色女少 | |
(2022/08/22 22:31登録) 生物兵器として開発された致死量ウィルスが軍の施設から漏出する。その症状は一見インフルエンザと区別できないため、人類は真相を知る間もなく滅亡の淵へと追い込まれる。 破滅SFの古典であり、コロナ禍で改めて注目されたパンデミックの描写は、半世紀以上前の作品とは思えない迫真性に満ちている。だが本書を単なる予言の書とするなら、その真価は矮小化しかねない。人類を極小のウィルスと極大の宇宙との間の「宙づりの存在」とすることで、近代文学では自明のものとされてきた人間観を更新することこそ作者の狙いだったはずだ。 私たちが疫病という人類共通の敵を前にしてもなお、目先の面子や利権などに囚われている今、真に再読されるべきは第一部の最後で発せられる哲学者の遺言であろう。 |
No.2 | 8点 | 虫暮部 | |
(2020/05/27 11:35登録) 半世紀前のパンデミックSF。 “スピードアップされた国際交通を通じて、ほとんど全世界に、種を植えつけていた” “たかがかぜぐらいで、非常事態宣言は大げさすぎると思うだろうが” “アメリカはじまって以来の、バカげた大統領” 等々、ニヤリとさせられるエピソードが並ぶ。 諸々の知見を総動員した説得力に富む展開、であるだけに、プロローグ(→感染拡大後の地球の姿を予め示している)は不要だったと強く感じる。本編が答え合わせみたいになっちゃうんだよね。 |
No.1 | 7点 | E-BANKER | |
(2015/07/18 19:37登録) 1964年(昭和39年)に発表されたSF超大作。 作者らしい壮大なスケールを持つ長編作品に仕上がっている。 今回はハルキ文庫版にて読了。 ~MM・八八菌・・・実験では摂氏五度で異常な増殖を見せ、感染後五時間で九十八パーセントのハツカネズミが死滅! 生物化学兵器として開発されたこの菌を搭載した小型機が冬のアルプス山中に墜落する。やがて春を迎え、爆発的な勢いで世界各地を襲い始めた菌の前に人類はなすすべなく滅亡する・・・。南極に一万人足らずの人々を残して。人類滅亡の恐怖と再生への模索という壮大なテーマを描き切る感動のドラマ~ 小松左京の初読みがコレ。 「首都消失」や「日本沈没」は映像作品では見ているけど、文字で接するのは初めてだった。 まぁさすがだよなぁ・・・ 途中からは壮大なスケール感と畳み掛けるような展開に圧倒されてしまった。 「災厄の年」と題された第一部では、事故の結果ばらまかれた菌によって、世界各地で人々が倒れ、国という国が壊れていく様が描かれる。 新種のインフルエンザと思われた疾病が実は大いなる欺瞞と判明する刹那。 (MARSの驚異に晒されている現在と何か被っているような気が・・・) ほんの数ヶ月で世界中の人類が死滅し、南極大陸にいる人々だけが生き残ることになるが、冬の氷に閉ざされた南極では如何ともしがたく、徒に時間が経過してしまう。 数年後の世界が描かれる第二部。 「復活の日」と題された本章では、菌以外のもうひとつの驚異とされる核ミサイルの報復攻撃を防ぐため、命を懸けてワシントンに向かう日本人隊員の姿が描かれる。 そして訪れる感動のラスト・・・ 粗筋だけ書いてても何だかワクワクしてくるのではないか? もちろん本作は出版当時の科学情勢や世界の力学が色濃く反映されているのだが、約五十年後の現在においても十分に通用するストーリー&プロットだと思う。 角川書店で映画化されているのだが、是非それも見てみたい。 |