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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.1254 5点 パーカー・パイン登場
アガサ・クリスティー
(2022/08/09 12:24登録)
 前半、お悩み相談編。ヴァリエーションに乏しい。これから色々搦め手を考えるんでしょ、ってところで投げ出しちゃったか。
 後半、トラベル・ミステリ編。使い回しのプロットでも、探偵役を変えれば趣向も変わる。良くも悪くも。
 差別化を考えるなら、前半をもっと発展させるべきだったか。後半の探偵譚で、パーカー・パインをどっちつかずのキャラクターにしてまでこのシリーズに組み込む必然性のある話は、辛うじて最終話くらい。

 固有名詞の片仮名表記の基準には意見が多々あるだろう。「困りはてた婦人の事件」。ダンサーの名前 Juanita は “ジュアニータ” でなく “ファニータ” が良いのでは。スペイン系。翻訳は不便。
 「ナイル河の殺人」。Death on the Nile だから、実はあの長編と同題だ。翻訳は便利。


No.1253 4点 鏡陥穽
飛鳥部勝則
(2022/08/09 12:23登録)
 土呂ミネオのキャラクターは良い。でもあとはあまり面白くない。
 鏡は無制限に魔を生み出す。その増殖を、作者の筆が制御し切れなかったと思う。このプロット、小林泰三なら上手く書けたかもね。
 イチャモン:自分の顔ってそんなに見慣れている? 分身に会ったら、“えっ、自分はこんな顔?” って思うんじゃないかな。


No.1252 8点 デッド・エンド
山田正紀
(2022/08/02 11:56登録)
 山田正紀の宇宙SFしかも長編って実は珍しい。そしてJ・P・ホーガン『星を継ぐもの』あたりと同じ意味でのSFミステリである。スケールの大きなホワイダニット?
 そこに主人公個人の、言ってしまえば卑小な絶望をぶつけて対比、とするには何か足りない気がする。ただ、この謎とその真相はとても好きで、つまり全面的高評価ではないけれど必要なポイントは確保されている。


No.1251 7点 堕天使拷問刑
飛鳥部勝則
(2022/08/02 11:53登録)
 ちりばめられた衒学にストーリー展開にキャラクター、皆かなりの濃度で満足。真相には若干心許無い部分もあるが、どうにか物語を支えられたかとは思う。特に玲殺害事件についてはたまげた。
 それだけに、メタ構造は本当に邪魔。ただでさえヘヴィなのだから、まとめは少しでも切れ味を良くしないと。

 ところで主人公の経済状況って? 曲がりなりにも相続人で(未来の?)お金持ちじゃないの? どこの家が引き取るかで揉めてたのはどういうことか。


No.1250 7点 ねなしぐさ 平賀源内の殺人
乾緑郎
(2022/08/02 11:52登録)
 好きなんです、平賀源内――非常の人。元祖マルチ・タレント。江戸の風の中を飄々と流れた自由人。ミーハーなファンですけどね。
 歴史ミステリとしては誠実な作りで、そんなぶっとんだ話ではない(が、源内晩年の汚名を晴らし快哉?)。一炊の夢の如き半生記は、イメージを覆す器用貧乏者の悲哀にしみじみしつつも、まぁありきたりではある。
 つまり、良く出来てはいるが凡作。でもやっぱり贔屓しちゃうな~。


No.1249 5点 名探偵は誰だ
芦辺拓
(2022/08/02 11:51登録)
 作者曰く “これまで書かれなかった存在をフーダニットの対象とした” 作品群で、各々なかなか意外な真相が用意されている。が、それ故に、あまり面白くない。
 もともと捻った設問であるところを更に捻っても効かないのだ。唯一素直に “手掛かりを基に四人の中から一人を選ぶ” 展開の「犯人でないのは誰だ」が一番面白い。

 作者の掲げた “変則的フーダニット” の看板は却って邪魔なのでは。各タイトルを変えて、短篇集としてのテーマなど考慮せず、一編一編バラバラに読んだ方が楽しめるのではないだろうか? 戦略ミスだと思う。


No.1248 5点 入れ子細工の夜
阿津川辰海
(2022/08/02 11:50登録)
 この人は、あまりギミックを弄さずに、純度の高いロジカルな犯人当てを狙った方がいいんじゃないだろうか。「煙の殺人」をそのまま一作品として出してもいいくらいだ。


No.1247 8点 さんず
降田天
(2022/07/26 17:03登録)
 捻った依頼ばかりで “通常営業” のエピソードが無い強気な構成だ。つまり〈さんず〉の普段の活動など想像がつくだろ、と現代的なスタンスの作者だが、それで正解。このシリーズの中で “普通の自殺” なんて読んでいられませんよ。
 “カウンセリング” が鋭く無慈悲で凄い。あとは野となれって感じで綺麗に落着していない棘々した手触りが痛痒い。絶望した! 跡を濁しまくりの自殺志願者に絶望した!


No.1246 7点 沈みかけの船より、愛をこめて
乙一
(2022/07/26 17:00登録)
 ここに収められた怪しげな作風の三人の近作を比べてみると、乙一は明らかに山白朝子のミソロジー的側面を上手く取り込んでいる。登場時は山白朝子が乙一フォロワーみたいだったのに、まぁそういう逆転はよくある世界だからね。中田永一は乙一をポストパンク的に脱格と言うか漂白した感じ。パクりとまでは言わないが。一編のみ収録の山白朝子は安定の怪談専門家ぶりではあるが、実は中田永一作品のキュビズム的展開の三回半捻りあたりを意図しているんじゃないかとの気もする。
 相互の影響が見え隠れして解けないパズルの如きアンソロジー。ナイアガラ・トライアングルのようなものか(違う)。


No.1245 6点 朱房の鷹
泡坂妻夫
(2022/07/26 16:57登録)
 表題作、将軍様関連のものに粗相してしまった下手人を探偵役が御目こぼしする話。身分制度に起因する不条理の中でも最たるもの。久生十蘭にも都筑道夫にもあるプロットで、それを意識して引き継いだようにも思える。
 「角平市松」には味わうべきポイントがまるで見当たらず困った。こだわりが強く世渡り下手な職人像は寧ろありきたりに感じたし、殺人事件も余計なエピソードって気がする。
 「天狗飛び」の高所に札を貼る話は作者の持ちネタか、読むのは三度目。


No.1244 5点 予告殺人
アガサ・クリスティー
(2022/07/26 16:54登録)
 ACの割とよくあるパターン、しかも私があまり好きじゃないタイプ。

 こんな広告がシレッと掲載されちゃう。00年代日本の某作では、公序良俗に反する広告の為に社員を抱きこみ、彼が馘首される前提でその後の生活費として大金を投じていたものだが。

 三人目が殺される場面で、被害者はこの人が怪しいと気付いていたのに何の警戒もしていない。この場面は不要では。

 パトリック・シモンズといえばザ・ドゥービー・ブラザーズのギタリストと同姓同名。作者には何の責任も無いが、違和感ありまくり。


No.1243 4点 パラレル・フィクショナル
西澤保彦
(2022/07/26 16:52登録)
 ネタバレ気味だが――結末のように予知能力を主人公以外にも解禁してしまうと、じゃあ他にも能力者がいるのでは、という話になる。すると、その人も予知夢への対応(実現もしくは改変する為)として行動をしたのかもしれない。
 読み終えて振り返ると、作者の意図とは全然違った風景、予知夢能力者達による、先読みと潰し合い合戦のようなものが見えたりして。
 そしてまた、夢に夢を重ねてしまうと、最終ページは本当に現実の出来事なのか、確言出来なくなってしまう。夢オチは怖いんだよ。

 “プロバビリティの犯罪” なるタームは、ミステリ用語として別の概念が確立されているので、他の言い方を考えるべき。


No.1242 8点 風琴密室
村崎友
(2022/07/18 10:21登録)
 うわーーー、やららられれたら! 前半、良く出来ているけどその分個性には欠ける青春ミステリ、とか思っていたらドカーン! 私は見事に引っ掛かった。しかもその手掛かりに何となく気付いていながらスルーしていたんだから悔しい。アレについてダラダラと言い訳がましい説明が不要な書き方なのもナイス。ただ、密室トリック(現在のほう)のホワイは強引。撲殺死体を入水自殺に見せかけるのは苦しいし、その為に錠を掛ける必然性も無いでしょ。色々考えたけれど納得しきれなかった。
 本サイトの利用者には特に大受けするかも?


No.1241 6点 AI法廷のハッカー弁護士
竹田人造
(2022/07/16 12:03登録)
 個別のエピソードとしての前半2ケースが面白かった。主人公に反感を抱かせつつ引っ張るセンスはなかなか。ブッチャーカバー(笑)。架空のシステムを設定した上でその隙を突いているわけだから、フェアプレイもヘチマもない、その意味ではあくまでSF。

 全体の構造がよく似た作品を最近読んだような、アレはI氏の近作だったか、模倣と言うことではなくて、連作長編のパターン(最終話で伏線回収する奴)が飽和したその先、って感じで、もしかしてこういうセカイ系もどきが今後増えるのだろうか?


No.1240 8点 アグレッサーズ
神林長平
(2022/07/16 12:01登録)
 情報量が多くて読むのが大変。更に存在論や認識論で言葉が解体されて表面積が倍増してるし。人間爆弾より粉塵爆発の危険の方が大きい。我思う故に我あり、と思う故に我あり。改行が少ないので本文は真っ黒だけど、各章の始めと終わりに空白があるでしょ。あそこからジャムが自然言語以外のものを発信している気がするんだよね。


No.1239 7点 満潮に乗って
アガサ・クリスティー
(2022/07/16 11:59登録)
 基本設定が面白いし、状況の変化に応じた各人の対応も説得力がある。確かに題名通りの潮汐の流れ。もう少しロザリーン寄りで描いて欲しかったところ。お金の氾濫に飲み込まれても、人生に求めるものは人それぞれ。でもラスト、あの男でいいのかな~?

 第二篇の6章。“医学的検証というのが~まちがいだらけなんです”――謎解き用のデータとして、検死結果にミスは無いのが御約束なんだから、ミステリでソレを言うのは危険だよアガサさん。


No.1238 6点 はじまりの島
柳広司
(2022/07/16 11:58登録)
 クローズド・サークルものを幾つも読んで慣れてしまうと、驚くべきポイントを見出すのが難しくなって来るなぁ。動機絡みの部分が説明的で惜しい。寧ろ秘境冒険小説そしてグルメ小説として面白い。ゾウガメ美味そう。


No.1237 5点 入れ子の水は月に轢かれ
オーガニックゆうき
(2022/07/16 11:58登録)
 第8回アガサ・クリスティー賞受賞作。大雑把に要約すれば、入れ子の水が月に轢かれる話。大きな輪の中で翁がわーわー騒いだりも。
 地図があっても水流に関するアレコレは実感しづらい。それゆえ主人公が何かに気付いてあっと驚いてもピンと来なかった。
 割とよくあるタイプの人情話が展開される部分などは冗長。一方、敵役のグロテスクな貌が十全に描かれてはおらず、こちらにはもっと紙幅を費やして欲しかった。困ったものだ。筆力はあると思う。


No.1236 8点 黒と愛
飛鳥部勝則
(2022/07/09 15:03登録)
 歪な少年少女の青春物語からは目が離せない。破れかぶれのカタストロフも此処ではアリだと思う。
 ただ、名前を利用したあのトリック(しかも単に偶然共通なだけ)には脱力してしまった。舌先三寸でもいいから、あれに何らかの必然性を付与出来ていれば、隙無しだったんだけどな。
 “君のためなら死ねる”――タイトルは梶原一騎か。漫画からの引用はもう控えた方が良かったのでは。懲りない人だ。


No.1235 7点 名探偵が多すぎる
西村京太郎
(2022/07/09 15:02登録)
 パロディは愉し。ビミョーな密室トリックもこの世界観ならOK。やや硬めの文体も翻訳モノっぽい雰囲気作りに一役買っている。しかしこのメンバーだと “いま何語で話してるの?” とつい野暮な突込みを入れてしまうなぁ。

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