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ミステリの祭典

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たまらなく孤独で、熱い街

作家 山田正紀
出版日1984年10月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 8点 虫暮部
(2022/09/01 12:24登録)
 殺人者については諸々未解明なまま。そういうミステリ的な “納得” を脇に置けば、文脈とか整合性とかとは別のところでかなり腑に落ちる(判らなさが判る)話。“孤独” を描いたと言うと陳腐だが、そう言うしかない。
 真ん中の部分、つまり “彼” を、ここまで思い切って空白に出来たのは作者の胆力ゆえ、だろうか。
 SF作品では虚構性の強さが特徴の人だし、見る角度を変えると “誰でもない殺人者が、しかしその時その場所に確かに居た” と言う幻想小説にも思える。

No.2 6点 日影門
(2003/08/27 22:56登録)
徳間文庫の一周年記念だかに書き下ろした作品。
 たしかこのころ仁賀克雄氏の「ロンドンの恐怖」を単行本かHMMの連載で読んでいた気がする。
 私にとって、山田正紀氏は佐野洋氏(講談社文庫「轢き逃げ」はぜひ復刊してほしい)と並んで、面白味は薄いけど興味のある作家である。設定は魅力的なのに尻すぼみだったり、主人公が地味でページを捲る指が滞ったりするんだけど、最後はやっぱり地味、みたいな…。
 で、本作品。「動機なき殺人」を扱っている小説としては一番早いのではないだろうか? 笹沢左保の「異常者」や西村京太郎の「恐怖の金曜日」といったミッシング・リンクものはあったものの、ここまで訳のわかんない作品はなかっただろう。これに比べればT・ハリスの「レッド・ドラゴン」のわかりやすいことこのうえなし。
 わからないから偉い、などというつもりは毛頭ないが、倍くらいの分量で中田・浜田を肉付けしてみたら斯界の耳目を集めたのではないだろうか。横溝正史の「本陣殺人事件」と並んで、実作者にぜひ加筆してほしい。

No.1 7点 由良小三郎
(2003/03/18 19:01登録)
西澤さんの「ファンタズム」のカバーに、意識した作品として我孫子さんのアレといっしょに書名が書いてあった作品が偶然目についたので読んだののですが、「ファンタズム」や我孫子さんのアレに比べると僕には分かりやすかった。犯人以外の人物の雰囲気が気にいったのだと思います。この本については、さて最終章が必要だったかどうかの辺がモヤモヤしています。もう古い作品ですが、よかったと思います。

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