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ミステリの祭典

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伝奇集

作家 ホルへ・ルイス・ボルヘス
出版日1984年09月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 5点 虫暮部
(2022/09/01 12:22登録)
 こういうものを “二十世紀文学の最先端” と言われても困ってしまう。アカデミックな評価は却って邪魔なのではないか。文芸的な深みを何処に見出せば良いのか判らん。軽い妄想を大仰に肉付けして語ること自体に面白味を見出す虚仮威しの戯言小説、と言った気分で読めば楽しめなくもない。ちょっとチェスタートン風味?
 ミステリとして面白いのが「八岐の園」(これは鮮やか!)。SFとして面白いのが「バベルの図書館」「隠れた奇跡」。ミステリとして面白くないのが「刀の形」「死とコンパス」。

No.1 7点 kanamori
(2014/08/12 00:01登録)
ラテンアメリカ文学の”知の巨人”、アルゼンチン作家ホルヘ・フランシスコ・イシドロ・ルイス・ボルヘスの処女短編集。
古今東西の伝説、神話、宗教、文学、哲学などをモチーフにして、その博識を縦横無尽に駆使して詰め込んだ思索的、幻想的な物語が大半を占めています。

収録作のなかでは「円環の廃墟」や「バベルの図書館」「記憶の人、フネス」「南部」などが代表作と言われているらしいのですが、本格ミステリ読みにとっては、なんといっても「八岐の園」と「死とコンパス」が注目作品でしょう。
「死とコンパス」は、後期クイーン的問題に絡めて言及されることが多い作品で、ミッシングリンク・テーマと偽の手掛かり、名探偵という装置の在り様など、20ページ程の短編ながら、色々と興味を惹く問題を孕んだ作品。法月綸太郎氏が絶賛するのも何となく分かるような気がします。
ボルヘスは、共著で「ドン・イシドロ・パロディ 六つの難事件」という連作ミステリを書いているぐらいで、元々探偵小説に強い関心を持っていたことはよく知られており、一つの問題提起としてクイーンに先んじてコレを書いたとしたら大いに評価されるのも当然なのかもしれない。

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