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ミステリの祭典

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構造素子

作家 樋口恭介
出版日2017年11月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 4点 虫暮部
(2022/09/14 13:16登録)
 この書き方が、表現としての勿体振り方であるのは判るが、あまりにも勿体振り過ぎ。こういう “読みにくさを乗り越えてこそ成立する表現” も決して嫌いではない筈だが、本作は全然乗れなかったな~。特に反複の多さが苛立たしい。

No.1 7点 小原庄助
(2018/03/20 10:34登録)
昨年のハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。
冒頭から「宇宙の階層構造モデル」である。「L-P/V」といった文字列がいくつも登場する。でも、「理屈っぽくて難しそう」と敬遠するのは、もったいない。
本書は物語を巡る物語であり、父と子の情愛の物語なのだ。数ページ進めば、あとは一気に読みやすくなる。緻密で論理的な構成と美しい言葉がうまく溶け合い、豊かな叙情性を生み出している。
売れないSF作家ダニエル・ロバティンが亡くなり息子エドガーは母から、「エドガー曰く、世界は」と題された未完成の遺稿を手渡される。作中のダニエルは作家ではなく人工意識の研究者であり、子供を持たなかった代わりに、人工意識「エドガー001」を作り上げていた。それは、まるで無限に増殖する並行世界のように、新たな物語世界を次々と生み出していく。その様子自体が、作家が小説を書く際の試行錯誤の過程についての、分析的な描写にもなっている。
遺稿を読みながら、息子は父との思い出を、そこに重ねていく。父は、H・G・ウェルズやジュール・ベルヌを尊敬し、SF的想像力には現実を変える力があると信じていた。だからエドガー001が生み出す物語には、SFやユートピアを巡る人類の願望と挑戦の歴史も重ねられている。世界を、そして人生を、やり直せたらと父は願っていたのだろうか。
夢半ばで挫折した父に対するエドガーの思いは、理想的な世界を達成していないすべての人類の、切なさと響き合っている。

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