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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.22点 書評数:1848件

プロフィール| 書評

No.1248 4点 パラレル・フィクショナル
西澤保彦
(2022/07/26 16:52登録)
 ネタバレ気味だが――結末のように予知能力を主人公以外にも解禁してしまうと、じゃあ他にも能力者がいるのでは、という話になる。すると、その人も予知夢への対応(実現もしくは改変する為)として行動をしたのかもしれない。
 読み終えて振り返ると、作者の意図とは全然違った風景、予知夢能力者達による、先読みと潰し合い合戦のようなものが見えたりして。
 そしてまた、夢に夢を重ねてしまうと、最終ページは本当に現実の出来事なのか、確言出来なくなってしまう。夢オチは怖いんだよ。

 “プロバビリティの犯罪” なるタームは、ミステリ用語として別の概念が確立されているので、他の言い方を考えるべき。


No.1247 8点 風琴密室
村崎友
(2022/07/18 10:21登録)
 うわーーー、やららられれたら! 前半、良く出来ているけどその分個性には欠ける青春ミステリ、とか思っていたらドカーン! 私は見事に引っ掛かった。しかもその手掛かりに何となく気付いていながらスルーしていたんだから悔しい。アレについてダラダラと言い訳がましい説明が不要な書き方なのもナイス。ただ、密室トリック(現在のほう)のホワイは強引。撲殺死体を入水自殺に見せかけるのは苦しいし、その為に錠を掛ける必然性も無いでしょ。色々考えたけれど納得しきれなかった。
 本サイトの利用者には特に大受けするかも?


No.1246 6点 AI法廷のハッカー弁護士
竹田人造
(2022/07/16 12:03登録)
 個別のエピソードとしての前半2ケースが面白かった。主人公に反感を抱かせつつ引っ張るセンスはなかなか。ブッチャーカバー(笑)。架空のシステムを設定した上でその隙を突いているわけだから、フェアプレイもヘチマもない、その意味ではあくまでSF。

 全体の構造がよく似た作品を最近読んだような、アレはI氏の近作だったか、模倣と言うことではなくて、連作長編のパターン(最終話で伏線回収する奴)が飽和したその先、って感じで、もしかしてこういうセカイ系もどきが今後増えるのだろうか?


No.1245 8点 アグレッサーズ
神林長平
(2022/07/16 12:01登録)
 情報量が多くて読むのが大変。更に存在論や認識論で言葉が解体されて表面積が倍増してるし。人間爆弾より粉塵爆発の危険の方が大きい。我思う故に我あり、と思う故に我あり。改行が少ないので本文は真っ黒だけど、各章の始めと終わりに空白があるでしょ。あそこからジャムが自然言語以外のものを発信している気がするんだよね。


No.1244 7点 満潮に乗って
アガサ・クリスティー
(2022/07/16 11:59登録)
 基本設定が面白いし、状況の変化に応じた各人の対応も説得力がある。確かに題名通りの潮汐の流れ。もう少しロザリーン寄りで描いて欲しかったところ。お金の氾濫に飲み込まれても、人生に求めるものは人それぞれ。でもラスト、あの男でいいのかな~?

 第二篇の6章。“医学的検証というのが~まちがいだらけなんです”――謎解き用のデータとして、検死結果にミスは無いのが御約束なんだから、ミステリでソレを言うのは危険だよアガサさん。


No.1243 6点 はじまりの島
柳広司
(2022/07/16 11:58登録)
 クローズド・サークルものを幾つも読んで慣れてしまうと、驚くべきポイントを見出すのが難しくなって来るなぁ。動機絡みの部分が説明的で惜しい。寧ろ秘境冒険小説そしてグルメ小説として面白い。ゾウガメ美味そう。


No.1242 5点 入れ子の水は月に轢かれ
オーガニックゆうき
(2022/07/16 11:58登録)
 第8回アガサ・クリスティー賞受賞作。大雑把に要約すれば、入れ子の水が月に轢かれる話。大きな輪の中で翁がわーわー騒いだりも。
 地図があっても水流に関するアレコレは実感しづらい。それゆえ主人公が何かに気付いてあっと驚いてもピンと来なかった。
 割とよくあるタイプの人情話が展開される部分などは冗長。一方、敵役のグロテスクな貌が十全に描かれてはおらず、こちらにはもっと紙幅を費やして欲しかった。困ったものだ。筆力はあると思う。


No.1241 8点 黒と愛
飛鳥部勝則
(2022/07/09 15:03登録)
 歪な少年少女の青春物語からは目が離せない。破れかぶれのカタストロフも此処ではアリだと思う。
 ただ、名前を利用したあのトリック(しかも単に偶然共通なだけ)には脱力してしまった。舌先三寸でもいいから、あれに何らかの必然性を付与出来ていれば、隙無しだったんだけどな。
 タイトルは梶原一騎か。漫画からの引用はもう控えた方が良かったのでは。懲りない人だ。


No.1240 7点 名探偵が多すぎる
西村京太郎
(2022/07/09 15:02登録)
 パロディは愉し。ビミョーな密室トリックもこの世界観ならOK。やや硬めの文体も翻訳モノっぽい雰囲気作りに一役買っている。しかしこのメンバーだと “いま何語で話してるの?” とつい野暮な突込みを入れてしまうなぁ。


No.1239 6点 シャーリー・ホームズとバスカヴィル家の狗
高殿円
(2022/07/09 15:02登録)
 この手のパスティーシュには “ホームズ” と言う共通言語で作者と話しているような楽しさがある。でもここまで原典をなぞるのはどうなのか。まぁ現代風な捻りとキャラ立ちは確か。張ったまま放置の伏線が色々……そこも原典を模倣している?


No.1238 5点 残心 凜の弦音
我孫子武丸
(2022/07/09 15:01登録)
 作者は開き直っているが、青春ミステリとして始まったシリーズからミステリ度がめっきり減って “青春(時々ミステリ)小説” って感じ。作者が自分の中で成長するキャラクターに対して誠実に書いている感じは伝わってくる。でもミステリ要素を減らし過ぎだよ……。
 ミステリ抜きの純青春小説は殆ど読んでいないので評価軸が今一つ判らないが、このシリーズ、キャラクターをあまりキラキラと魅力的に描いてしまうのはコンセプトから外れるのであって、そのへんの匙加減は悪くない。特に最終話の波多野さん。


No.1237 4点 迷宮遡行
貫井徳郎
(2022/07/09 14:59登録)
 登場人物達が色々不適切な判断を下すことで物語が回って行くのは、イライラさせられるがまぁいい。絡み合った個々の思惑を解きほぐしてみると、辻褄の合わない部分もありそうだが大目に見る。
 問題は、切羽詰まっていっぱいいっぱいな筈の主人公の語り口が、妙に浮かれて御気楽に感じられること。ユーモアの使い方が悪くて逆効果に思えた。


No.1236 5点 密室黄金時代の殺人 雪の館と六つのトリック
鴨崎暖炉
(2022/07/02 15:40登録)
 “日本で初めて起きた密室殺人事件” について。“犯人は明らか” と “犯行の不可能性” は、やはり矛盾である。犯人を示すのは状況証拠しかなく、起訴するのに充分だとは全く思えないのだが……。

 軽妙な文体は、しかし借り物っぽく、世界構築にあまり貢献出来ていない。
 密室を “理由” から解き放つ設定は遊び心ってことでいいにしても、トリックをこんなに幾つも使うと相対的に価値が下がる。と言うか、どうしても作品内で比較してしまうわけで、戦略ミスでは。
 ドミノのトリックは良かった。

 ところで、某新人賞受賞作の選評で最終候補として紹介されていたものが、本作を髣髴とさせるのである(題名・作者名は別)。
 落選作をブラッシュアップの上で別の賞に応募して受賞、であれば、良く頑張りましたと言ったところ。
 可能性を言えば、他者が選評を読んで拝借したのかもしれない。それはあまり褒められたことではない。
 しかし、同様のアイデアを偶然他者が思い付くことだってあるだろう。刊行の当ての無い作品について、選評に載ったのであのプロットは私のものだから使うな、と言うのも厚かましい気がする。
 選評の公開は、誰のどういう権限に基づいて許容されているのだろうか。どうせ落とすならバラさないでよ、と思う投稿者もいそうだが。


No.1235 5点 凧をみる武士
泡坂妻夫
(2022/07/02 15:39登録)
 「雛の宵宮」のような身代わりを、何の因果も含めず押し付けるのは、結果往来とはいえ如何なものか辰親分。
 「幽霊大夫」は、大夫の意図や情夫との因縁が関係者の口からあっさり割れてしまうのが、説明的で物足りない。“謎解き” ではなく “事情通探し” になっている。


No.1234 5点 死が最後にやってくる
アガサ・クリスティー
(2022/07/02 15:36登録)
 もっと変な話を期待していたんだけどなぁ。

 その意味で “死者への歎願文” は素敵なガジェット。なのにその後の展開には絡まず勿体無い。
 使い慣れた駒に目新しい背景を切り貼りしたところ、ギャップが悪目立ちしてしまった。違和感は最後まで消えず、不器用だなぁと思った(褒めてない)。


No.1233 5点 深い失速
戸川昌子
(2022/07/02 15:31登録)
 一体何が起こっているのか良く判らず。事件の表層が上手く描かれていないので、真相はそれなりに面白いのに説明的に感じた。心の不安定な人物が多々登場するが、モティヴェーションが不明のまま深入りして行く語り手が最右翼だったりして。


No.1232 5点 シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱
高殿円
(2022/07/02 15:16登録)
 “ホームズ・パスティーシュ” と言う要素に寄り掛かり過ぎ。いやしかし、パスティーシュはパスティーシュであること自体がコンセプトだから寧ろ正当なサーヴィス精神なのか? 手放しで称賛は出来ないが、愛は感じる。


No.1231 5点 涼宮ハルヒの動揺
谷川流
(2022/06/26 12:01登録)
 推理ゲーム第二弾「猫はどこに行った?」。このトリック、類型がパッと思い浮かばない。何か元ネタ的なものがあるのだろうか? 伸ばさず “ミステリ” と表記しているあたり作者は実はマニアではとの疑惑が浮上。“ライトノベル的なチープなトリック” 縛りでアイデアを出すのは結構大変では。

 他の短編はどれも今一つ。


No.1230 7点 宇宙25時
荒巻義雄
(2022/06/26 11:59登録)
 作者名を隠して“誰が書いた?”と問われたら私は迷わず山田正紀と答えてしまいそう。真似と言うことではなく、参照元が共通なんだろう。
 先行の文学作品を取り込んでいる部分があって、そういうやり方は好きではない。が、本作ではその効果も否定出来ない。それはたまたま私がそれを既読だったから。カフカ、カミュ、ドストエフスキーって、70年代後半のSF読者にとって、そんなに課題図書みたいに読まれていた存在だったのだろうか。


No.1229 9点 絶望ノート
歌野晶午
(2022/06/26 11:56登録)
 面白過ぎて評しづらいな。ビデオのアップロードについては未消化な感じがある。刑事と探偵の会話が尻切れ蜻蛉なのも気になる。しかし、歌野晶午作品は概ね読んだが、私はこれが一番好き。

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