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ミステリの祭典

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明智卿死体検分

作家 小森収
出版日2022年12月
平均点4.33点
書評数3人

No.3 5点 猫サーカス
(2025/01/04 18:31登録)
作中の「日の本」は、本能寺の変あたりから現代の日本と異なる方向に歴史が分岐したらしいパラレルワールド。明治維新も存在せず、幕府は織田・羽柴・徳川の三家が持ち回りで将軍に就く習わしになっている。織田家家臣の権刑部卿の・明智小壱郎光秀と、上級陰陽師の安倍天晴は、皇帝の別邸である蒲生御用邸で起きた怪事件を捜査することになった。四阿の内部を満たした雪に埋もれた男の死体が発見されたのだ。かかる異常な犯罪を成し遂げるには、中級陰陽師でも可能な術と、上級陰陽師でなければ不可能な高度な術とがあるらしい。作者自ら冒頭で明かしている通り、本書は「魔術師が多すぎる」など、科学の代わりに魔術で文明が成り立っているランドル・ギャレットの一連の作品にインスパイアされたものである。作中では日本古来の陰陽道も魔術のプログラミング言語の完成によって世界中の魔術と互換性があり、天晴も陰陽師でありながら海外でマスター魔術師の資格も取っている設定だ。関係者たちの政治的思惑の隙間をすり抜けるような謎解きのスリリングさもさることながら、全編に散りばめられたミステリやSFの先行作へのオマージュも遊び心たっぷりの楽しい一冊。

No.2 4点 虫暮部
(2023/02/24 14:38登録)
 魔術のある世界設定とか階級社会の勢力図とか、本来は “背景” である要素が大量に前面に出て来て、その隙間で物語が辛うじて進行した感じ。貧弱なネタを複数抱き合わせて作品を仕立てること自体は否定しないが、あまり成功したとは思えない。 
 ぶっちゃけ、“明智” の名前が無ければ手に取らなかった。ハッタリに引っ掛かったな~。

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No.1 4点 人並由真
(2023/02/14 06:07登録)
(ネタバレなし)
 ランドル・ギャレットの「ダーシー卿」シリーズの世界観を拝借し(ちゃんとダーシー卿当人の名前も、作中の実在人物として出て来る)、同シリーズの魔術法則を援用した「逆密室」という面白いことをやってるのはわかるのだが、文章が淡々としすぎ、外連味皆無で、提示される蠱惑的な(はずの)謎がまったく盛り上がらず、非常に退屈であった。

 Twitterでは大方の人が本作を褒めていて、ただ一人「個人的にはただただ辛い読書だった」と言っているのが、ミステリレビュアーとしてよく名前を拝見する麻里邑圭人氏だけ。
 評者としてはこの場で、二人目に「うん、王様は裸だ」と、言わせていただく。

 あの「~傑作である」小森収の実作で、面白そうな趣向&設定だから、期待していたんだけどな。世の中、うまく行かないものである。

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