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ミステリの祭典

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恍惚病棟

作家 山田正紀
出版日1992年07月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 6点 虫暮部
(2023/02/17 13:38登録)
 大まかな謎は二つある。“病棟で何が起きているのか?” は、ミステリの柔らかい部分と硬い部分の予想外の混ざり方と言う感じで驚かされた。一方、その舞台で発生した悪意による出来事については、曖昧な部分が多くスッキリしなかった。

 主人公のキャラクターについて。読者視点で読み取れる印象と、作中で他の人達が彼女に接する時の評価にギャップを感じた。“過大評価されている人” と言う意図的な設定なのだろうか。
 研修医・新谷のノートは、発表当時のセンスとしても失笑ものである(筈)。それこそ痴呆老人からのメッセージかと思った。

No.3 5点 nukkam
(2017/09/18 23:27登録)
(ネタバレなしです) 1992年発表の本書のハルキ文庫版の「あとがき」で発表当時「新・社会派」と評価されたことに対して作者が憮然としているのが興味深いです(そもそも作者のミステリー分類の中には「社会派」というジャンルがなかったようですが)。しかし(メルカトルさんのご講評で指摘されているように)用語が時代の古さを感じさせるところはあるものの、作中の「痴呆症」(現在用語では「認知症」)の描写や犯行の背景にはある種の社会性を感じさせます。同じ「あとがき」の中で作者は「現実がそのまま幻想に転化し、幻想が現実を強固に裏打ちする本格ミステリー」を模索していた時期の作品と本書を位置づけていますが、主人公の視点や思考描写には一点の曖昧さもないのに終盤になって(やや唐突に)もやもや感が増してくるのはその試行錯誤の表れなのでしょう。

No.2 6点 蟷螂の斧
(2014/02/26 14:44登録)
著者自薦のうちの1冊。認知症の患者を収容する病院での事件を扱った異色ミステリー。事件の真相自体はそれほどでもなかった。しかし、氏がこの手のトリックを使うとは思ってもいなかったので、そちらの方が驚きでした。完全に騙されました。ラストのオチも微笑ましい。

No.1 6点 メルカトル
(2014/02/11 22:23登録)
再読です。
舞台は聖テレサ医大病院精神神経科老人病棟。主人公の女子大生美穂は担当の7人の痴呆性老人、今で言う認知症の老人たちにおもちゃの電話を与え、テレフォンクラブと呼んで症状の軽減を図っていた。
ところが、その患者たちが次々と不審な事故死を遂げる。美穂はそれらの事故を研修医の新谷らと調査に乗り出すのだが・・・
といったストーリーで、本作は社会派の一面を覗かせながらも、しっかりとした本格ミステリとしての精神を貫いた、異色の意欲作である。
冒頭からラストまで、様々な大技小技の仕掛けが施されており、最後の最後まで息を抜けない。およそ世間での知名度は無きに等しいが、これは山田正紀の隠れた代表作なのかもしれない。
まだ看護師が看護婦と呼ばれていた時代の作品なので、若干古さを感じさせるが、今読んでも新鮮さは変わらないと素直に思った。

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